大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

USスティールと全米鉄鋼労組、大幅賃上げで合意

2018年10月17日 | 日記

 2018年10月15日(月)、USスティールと全米鉄鋼労組(USW)は4年間有効の労働協約について暫定合意に達した。

 シカゴ・トリビューンおよびウォールストリートジャーナルによるとそのおもな内容は次のとおり。

(1)2018年に4%、2019年と2020年に3.5%、2021年に3%の賃上げをおこなう。ちなみに、過去3年は賃金が凍結されており、実質賃金が低下していた。

(2)4千ドル(44万円)の協約締結一時金(ボーナス)を支給する。

(3)新規採用者の最低賃金を現在の時給20.45ドル(2250円:1ドル=110円)から2023年9月までに24.66ドル(2700円)に引き上げる。

(4)詳細は不明であるが、そのかわり医療保険にかかる労働者の負担割合を引き上げる。USWは賃上げの多くは医療費の引き上げで相殺されると説明している。

 ちなみに、鉄鋼関税の引き上げによりアメリカでは鉄鋼価格が上昇。USスティールの第2四半期の売上は1年前より15%増加して36億ドル(4千億円)、純利益は18%減少して2.14億ドル(240億円)となっている。

 アメリカでは景気拡大が続くなかで賃金が上昇しないことが大きな問題になっているが、とくに製造業で賃金の停滞がめだっている。今回の賃上げが、製造業全体の賃金底上げのきっかけになるか注目される。

関連

USW(全米鉄鋼労組)、USスティールでスト権を確立(2018/9/12)


米CPI(インフレ率)の基調は変わらず(鈍化せず)

2018年10月12日 | 日記

 2018年10月11日(木)、米労働統計局は9月のインフレ率(CPI)を公表した。

 全品目のCPIは1年前とくらべ2.28%の上昇(先月は2.7%)、エネルギーと食料品を除いたCPIは2.17%の上昇(先月は2.2%)となっており、先月よりインフレ率が低下したことが明らかになった。

 ただこれには昨年9月にガソリン価格が急騰したことが大きく影響しており、それを除けばインフレ率が落ち着いたとか鈍化した形跡はなく、これまでの基調を維持している。

 すなわち今回のインフレ率低下に大きく寄与したのはエネルギー。先月の10.2%(1年前比:以下同)の上昇から4.8%の上昇に大きく上昇率が鈍化した。これによるインフレ率の目減りは0.44%ほど。これがなければ、全品目のCPIは先月とほぼ同じ2.7%になっていた。

 これは、以前のブログで指摘していたように、ガソリン価格自体は先月と今月であまりかわっていないのに前年の9月以降にガソリン価格が大きく上昇したため1年前比での上昇率が低く計算されることになった結果。

 注目されるのは9月24日に発動された一般消費財を含む対中関税第3弾の影響であるが、一般消費財は-0.3%(先月は-0.2%)の低下となっており9月調査の時点で大きな影響は認められない。今後、在庫や駆け込み輸入のバッファーがなくなるにつれて影響が出てくるものと思われる。

 今週は、アメリカのインフレ率、金利の上昇に警戒して世界的に大幅な株下落がおこった。関税引き上げの影響がこれからどのようにあらわれてくるか注意してみていきたい。


EU、2030年までに自動車の二酸化炭素排出量を35%削減することで合意

2018年10月10日 | 日記

 2018年10月9日(火)、EUは新しい自動車について二酸化炭素排出量を2025年までに15%、2030年までに35%削減することを求めることで合意した。

 アイルランドやオランダは2030年までに40%の削減を求めていたが、自動車メーカーに配慮するドイツなどの反対により上記の水準での合意になった。

 今回の合意は欧州における電気自動車の普及に拍車をかけることになりそうだ。


パキスタンがIMFに金融支援を要請へ

2018年10月09日 | 日記

 フィナンシャル・タイムズは、パキスタンがIMFに金融支援を要請しようとしていると報じた。

  パキスタンは慢性的な財政赤字と貿易赤字を抱え、今年にはいってからパキスタン・ルピーは下落が続いている。

 こうしたなか、FT紙によれば、パキスタン中銀の外貨準備は1年前の139億ドル(1.5兆円:1ドル~110円)から9月末には84億ドル(9千億円)に急減

 FT紙は、サウジアラビアに要請していた石油代金の支払い繰り延べが拒否されたため、IMFへの支援要請が不可避になったとのパキスタン高官の発言を紹介している。

 FT紙は別の記事で、支援規模としては100-120億ドル(1.1-1.4兆円)が計画されていると報じている。これが実現するとパキスタンにとっては13回目で過去最大規模のIMF支援となる。


米ブルーチップ企業、第3四半期の一株当たり利益は前年比20%の上昇予想

2018年10月09日 | 日記

 フィナンシャル・タイムズ(2018/10/7)は、2018年第3四半期における米ブルーチップ企業(各セクターを代表する優良銘柄)の一株当たり利益が前年比で19.2%(アナリスト予想)になったと報じた。

 2018年の第1四半期、第2四半期の25%につぐ高い成長見込みとなった。

 この背景にあるのが、今年から法人税が35%から21%に引き下げられたことと、レパトリ減税により海外から還流された巨額の利益を使った自社株買い

 FT紙は、一株当たり利益上昇の7%程度は減税によるものだとするアナリストの分析を紹介している。

 問題は、来年。

 来年は減税による業績底上げがなくなるので、これまでのような大幅な利益上昇が続くかどうか注目される。

 ここで気になるのが、最近上昇傾向にあるインフレ率と金利。これが、実体経済にマイナスの影響をおよぼすようになると、企業業績も大きく影響を受けることになる。

 いまや世界経済をひとりで支えるアメリカのインフレ率金利動向にこれまで以上に注意が必要になってきた。