この数年、世界的な金融緩和、金あまりを背景に、信用の低い国や企業に対する貸付・投資が大量におこなわれてきた。
しかし欧米で金融引き締めがはじまり、こうした貸付・投資の安全性が疑問視されるようになってきている。
このブログでも、信用度の低い新興国や企業の発行する債券(ハイ・イールド債や投資適格ぎりぎりの債券)の問題についてたびたび触れてきたが、これに未公開株(プライベート・イクイティ―)の無理な買収というあらたな問題が加わりつつある。
現在問題になっているのは未上場企業の買収、そのなかでもとくにLBOといわれる買収先企業のキャッシュフロー(1年で増減した現金や当座預金といった手元のお金の量)を担保として借りたお金をつかった未上場企業の買収が問題とみなされてきている。LBOを使うと、資金(担保)の少ない企業が、その企業にみあわない大きなお金を借りることができるが、それをしっかり返済できるかいま問題になりつつある。
フィナンシャルタイムズによれば、2018年1月以降これまで100億ドル(1.1兆円:1ドル=110円)を超える大型のLBOが4件あり、リーマンショック後で最多となった。リーマンショック後の最多は2015年の3件だった。
2018年のこれまでの買収総額は約500億ドル(5.5兆円)強で、金額だけみるとリーマンショック前の半分以下にとどまっている。
しかし、フィナンシャルタイムズは、未公開株買収にかかる融資リスクがリーマンショック前のピークにならんだと指摘している。
すなわち、税金、金利、減価償却を引く前の総利益をEBITDAというが、2018年にはEBITDAの6倍以上のお金を借りて未公開株を買収しているケースが50%となりリーマンショック前のピークにならんだ。一般に、この倍率が高くなるほど融資リスクが高くなると考えられる。
フィナンシャルタイムズは、さらに気になることを書いている。
最近では、EBITDAを計算するとき、将来に見込まれるコスト削減や成長を現在の利益にふくむことが普通になってきており(リーマンショック前にはあまりなかった)、以前よりEBITDAが水増しされるようになっている。
また最近は、融資先が債務返済ができないなど経営危機におちいったとき、融資先の経営に介入できる条項のないものが融資の大半を占めるようになっており、危機時の対応が難しくなっている。
こうしたことから、フィナンシャルタイムズは、景気後退がはじまると融資の回収率が以前より低くなる可能性(融資者が大きなダメージを受ける可能性)があると指摘している。
こうした問題はこれからもたくさん出てくると思われる。景気後退で何がおこるのか、とても心配になるところである。