大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アップル決算発表: 過去1年で8兆円の自社株買い!

2018年11月04日 | 日記

 

 2018年11月1日(木)、アップルは2018年第4四半期(6-9月:アップルは9月決算)の決算を発表した。

 第4四半期の売上高は629億ドル(7兆円:1ドル=110円)、純利益は141億ドル(1.6兆円)ともに市場予測を上回った。

 しかし、クリスマス商戦があり1年でもっとも売り上げが大きくなる10-12月期(2019年第1四半期)の売り上げ予測が市場予測に届かなかったことなどから、決算発表後の市場外取引でアップル株は7%も急落することになった。

 アマゾンなど最近になってようやく大きな純利益を生み始めた他の新興株と違って、アップルは安定して高い純利益を実現してきており、ブルームバーグによれば株価収益率は18倍程度(2018/11/3)と極端なプレミアムはついていない。これは、慎重な投資姿勢でしられるバフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが最近になってアップル株を買い増していることからもうかがえる。それでも、将来の成長期待に疑問をなげかけるような決算予測に市場は大きく反応することになった。

 ところで、アップル決算でもうひとつ大きな注目を集めた数字がある。それは、727億ドル(8兆円)という過去1年間の自社株買いの数字である。市場を歪めていると批判される日銀のETF買いのめどが年6兆円。アップルの自社株買いの異様さがきわだつ。 

    アメリカでは賃金が上がらない理由の一つとして労働分配率の低下がよく指摘される。またアップルは、サムソンに比べて売り上げに占めるR&D(研究開発)の比率が意外に低いなどとも指摘される。8兆円という自社株買いの規模についてはウォール街でも疑問の声がでている。日本での報道が少ないのでここに書いておく。