大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

インフレターゲットから失業率ターゲットへ

2012年12月12日 | 日記

 今日、連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、失業率が6.5%以下になるまで現在の低金利政策を継続すると発表した。現在の失業率は7.7%。失業率が6.5%以下になるのは2015年末以降になると見られている(注)。

 バーナンキ議長はインフレターゲット論者として有名な経済学者。日本では、インフレターゲットというのは、デフレ解消の夢の特効薬のように理解されているが、アメリカではそのような意味合いは少なく、むしろ金融政策の透明化が強調されている。すなわち、従来は、インフレ率のほか失業率など様々な要因を考慮して金融政策が決定されていたため、市場は金融政策がいつ転換するかさまざまに憶測するしかなかった。しかし、インフレターゲットは、金融政策決定の基準としてインフレ率だけを利用する。つまりたとえ失業率が高止まりしていても、インフレ率が一定の水準を超えたら金融引き締めがおこなわれることになる。市場は、インフレ率の推移を見て金融政策を正しく予測することが可能になる(しかし高失業にもかかわらず、金融政策が引き締められる可能性があり、雇用軽視の問題がある)。
 しかし今回、FRBは、逆にもっぱら失業率を金融政策決定の基準にすることを明らかにした。FRBの雇用重視の姿勢が明らかになるとともに、政策決定の透明化もなされることになった。

(注)私はもう少し楽観的な予測をしている。2011年と2012年、アメリカでは失業率がそれぞれ約1%低下している。大きなリセッションがなく、現在のペースで雇用回復が続けば、2013年末ないし2014年中に失業率が6.5%となる可能性もあるのではと思われる。ただ景気回復とともに、これまで雇用をあきらめていた人が新たに仕事を探し出し、失業率を押し上げることがよくあるので、実際に失業率が6.5%になるのはもう少し後になるかもしれない。

2014年2月12日追記

 結局、2013年12月の失業率は6.7%、2014年1月の失業率は6.6%とほぼ私が予想したとおりになった。ただしイエレンFRB新議長は、昨日おこなわれた議会の公聴会で失業率が6.5%以下になってもかなりの間、低金利を継続する必要があると述べ、今後はいつどのような基準、タイミングで低金利を見直すかが大きな問題となる。