大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

クリスマスとTPP

2012年12月22日 | 日記



もうすぐクリスマス。クリスマスはほとんどの店が休みになるので、今日、早めに食料の買いだめに行ってきた。そこで買ったのが、上の七面鳥。見てのとおり子供の頭ぐらいの大きさがあるが(重さは5㎏ほど)、値段はたったの16ドル(1300円:1ドル=80円で計算)。アメリカの家庭には、だいたいでかい電気オーブンがついているので、下ごしらえをしたあと、そこにほうりこんでおけば焼きあがるはずである。多分。
 ところでTPPが成立すれば、こうしたものがどっと日本国内に流れ込んでくることになる。日本では、TPPによって影響を受けるのはおもに農業と保険分野と言われているが、影響はもっと広くに及ぶはずである。これまで日本の経済学や経営学は、自動車など国際的に強い産業ばかりに目を向けてきたが、日本にはそれと同時に国際的に弱い産業がたくさんある。不況に強いということで就活で人気の食品産業も、たとえばそのひとつ。そのほかにも医薬、家庭用品など、低迷する日本経済にあって、それを下支えしている多くの産業が実は国際的には弱い産業である。建設業も、欧米諸国より高コスト体質で競争力が弱いと言われている。TPPは、こうした産業に大きな影響を及ぼす可能性があり懸念される。



 TPP推進論者は、日本企業の国際競争力の高さを信じている人が多いのではないだろうか。TPPで利益を得るのは結局は日本企業、日本経済だというわけである。しかし、上で述べたように、かならずしも楽観できない。上の写真は、アメリカでよく売れている携帯GPS。値段は80ドル(6千円)ぐらいからあり、200ドル(1万6千円)を超えると高い部類になる。今、家電量販店で見かけるのは、おもにGarmin(米)とTom Tom(オランダ)の製品である。どちらも生涯無料で地図の更新が受けられる仕組みになっている(ただし広告がつく)。高度の機能はついていないが、実用的には十分なレベルである。日本メーカーのものは、まったく見かけない。しばらく前に、ソニーが携帯GPSからの撤退を表明したが、欧米市場で今後日本メーカーが巻き返す可能性は小さい。日本企業の国際競争力は、過大評価されていることが多いように思う。TPPを前に、慎重な再評価(評価替え)が必要とされているのではないだろうか。