週刊ダイヤモンドオンライン記事より、
“ギリシャ債務元本削減で欧州61行が資本不足の衝撃”です。
“「問題は銀行の資本不足ではない。強制的な増資も必要ない」”
欧州当局は、ギリシャのデフォルトや債務元本削減に伴う資本の毀損を懸念して、銀行に増資をすべきと言っていますが、上記はそれに対するドイツ銀行アッカーマンCEOの発言です。
スペイン最大手サンタンデール銀行のボティン会長も同様の発言をしています。
まあ、確かにドイツ銀行やサンタンデール銀行にはまだ余裕があるかも知れません。
しかし、多くの銀行にとっては、やはり欧州当局の言うように厳しい状況になると思います。
先日、ギリシャやイタリア国債を大量に保有するフランス・ベルギー系金融大手のデクシアが、経営破綻による国営化第一号の金融機関となりました。
資本注入の件では、日本でも以前似たことがありました。
バブル崩壊後、公的資金で、銀行に資本注入した時のことです。
やはり、大手行は、お金は要らない、と言いました。
すると、本当は、お金が必要な銀行も、危ない銀行と思われたくないため、お金は要らない、と言わざるをえなくなり、資本注入に手を上げませんでした。
困った政府は、最終的に全行に強制的に資本注入しました。
そもそも今の環境下で増資が出来る欧州の銀行の数はごく限られるでしょう。
すると、いづれは強制注入ということになるのではなかと思います。
歴史は繰り返す、ですね。
ただ、今回の欧州と当時の日本には大きな違いがあります。
当時の日本ではまだ金融機関に対する財政支援の余裕があったのに対して、今の欧州では、政府支出に余裕のある国が大変少ないということです。
比較的余裕のあるドイツやフランスについても、他国への財政支援に対する国民感情がどんどん厳しくなっていますし、今後もっとお金が出て行くという予想から、フランス国債の格下げ懸念も出て来ています。
ユーロは17カ国もあり、支援の仕組みやその金額を変える時には全ての参加国の承認が必要となります。
財政赤字を膨らませながらも、一国内で完結出来た当時の日本とは、今の欧州は置かれた状況がかなり異なっているのです。
7月に実施されたストレステストでは、普通株等質の高い自己資本の比率(コアTier1比率)について、5%を合否判定の基準としていました。
今回は、9%にまで引き上げるとの構想が発表されています。
そのまま適用すると、超優良と言われるドイツ銀行さえ不合格になり、増資が必要だということになってしまう高いハードルです。
なぜ、当局が基準を引き上げようとしているかと言うと、“ギリシャ政府の債務元本削減率の引き上げ問題がある”からです。
“欧州首脳は債務元本の削減率を21%から、50~60%にまで引き上げるかどうかを検討し始めた。ギリシャの再建計画に狂いが生じ始めているからだ。”
そして、その削減率をギリシャ国債の投資家である“銀行が受け入れなければ選択的デフォルトは避けられず、過剰な損失を被らせれば貸し渋りにつながり、ひいては実体経済も悪化しかねない”状況となっています。
“こうした副作用を伴うにもかかわらず、それでも欧州が債務元本の削減率引き上げに固執する裏には、「なぜ財政再建の努力をしないギリシャ国民をわれわれの税金で救わなければならないのか」という自国納税者の不満を抱える各国首脳の苦悩がある。
とりわけギリシャ支援の負担額が大きいドイツは、「金融機関への痛みも伴わなければ、ギリシャ支援を続けることに国民の賛同を得られない」(市場関係者)。ここに、ギリシャ問題の難しさがある。”
国民と金融機関の状況との均衡点を見つけるのが大変です。
“10月23日、欧州首脳会議はEFSFの融資能力のさらなる拡大を実現する具体策に加えて、ギリシャの債務元本の大幅削減、銀行への資本注入の三つの対策を示す模様だ。だが、それぞれが矛盾を抱えており、危機打開の決定打とはなりえない。根本原因であるギリシャの返済能力を高める具体策が求められる。”
結局、23日の会議では結論が出ず、26日に持ち越しとなりました。
目先は、この会議の動向やそれを受けた投資家の関与割合、また、格付け会社の動向等が注目されます。
ただ、ここで話し合われていることは、あくまでも目先の資金繰りをどうするか、ということです。
経済成長することによって税収を伸ばす、その結果として財政赤字を減らしていくという本質的なものではありません。
それについて今後どうなるのかと自分なりに考えて見ることが、これからの動向を占う重要なポイントになるのではないかと思います。