"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

「米中逆転」田中宇著、「どっちがおっかない!?中国とアメリカ」田母神俊雄、青木直人著

2010-11-03 16:22:25 | 日記
「米中逆転」の田中宇(さかい)さんは、繊維メーカーから、共同通信に移り、その後、マイクロソフトで情報を発信し始め、独立した国際アナリストです。
様々な資料に細かく目を通していらっしゃる様子がうかがえ、とても興味深い内容です。

世界は、米国の単独覇権主義から、多極化に向かっていること、多極化は、実は米国首脳も望んでいること。
一見、米国の覇権主義の発露に見える過去の出来事も、それが失敗することによって、多極化の流れを生み出して来たこと。
数々の失敗は、実は、隠れた多極化の勢力によって故意に行われたものであること・・・。
そのことに関して、私は半信半疑ですが、ブッシュ前大統領のイラク、アフガン攻撃、イスラエルへの戦争誘導等が例として挙げられています。

さらに、鳩山政権の普天間基地の移設問題含めた米とのぎくしゃくは、台頭する中国との関係強化、新しい枠組構築に伴って故意に起こされたものであると書かれています。
2004年の民主党の資料を見ると、沖縄を、日本と中国で一緒に統治することを考えていた形跡もあるとのこと。
そして、このように中国との関係を強化することは多極化の流れの中では、自然な動きだという内容です。

「どっちがおっかない!?中国とアメリカ」は、前航空幕僚長の田母神俊雄さんと、中国に詳しい青木直人さんとの共著です。
どちらからと言うと、中国の方がおっかない、という論調でしょうか。
本当の中国の姿をきちんと見るべきと警鐘を鳴らします。

この2冊の本を読みながら、自分なりに考えて見ました。
私の結論は、日本の首脳が一番おっかない、ということです。

やはり尖閣諸島など東シナ海における中国の対応を見ると、中国は、その覇権主義を前面に出す外交方針にシフトしたように思えます。
今や世界経済の牽引役でもあり、軍事力もどんどん拡大していく中で、政治的にも強気になるのは、ある意味当然なのかも知れません。

しかし、それに対する日本の対応は、船長を逮捕しながら、中国の対応を見て釈放してしまう、という矛盾に満ちたものでした。
そして、菅首相は、あくまでも、検察の判断だと言い張り、重要な外交問題で、責任感のなさを露呈しました。

前原外務大臣は、中国に対して強めのコメントを出しますが、それは、外交用に練られた内容とは思えず、東アジア首脳会議の日中首脳会談キャンセル時、足元をすくわれました。
仙谷官房長官は、中国を擁護する発言ばかりが目立ち、中国の東シナ海ガス田開発疑惑も、まだよくわからない、と放置しています。

日本を守る、という気持ちが全く伝わって来ない、戦略性がない。
政府の対応を見ていると、メドベージェフ大統領が、この機に乗じて北方領土を訪問してしまうこともわかるように思います。

なので、私も、日米関係は重要だと思います。

しかし、尖閣諸島事件で、一番得をしたのは一体だれでしょうか?

それまでは、普天間移設問題で、煮え切らない日本人が、やはり米国は大事だと米国を頼り始めた。
尖閣諸島は、日米同盟の領域だと米に言われて喜ぶ日本。
日本のマスコミも、日米同盟を強固なものにすべきとの論調。
米国は、「思いやり予算」や移転費用含めて、これからも日本からお金がどんどん入って来る目安はついたと思っているのではないでしょうか。
例のビデオのカットされた部分には、中国漁船を、海上保安庁巡視船と挟み撃ちにしている米国軍艦が映っているとのうわさもありますが。

その一方で、同時期、米国は、台湾への武器輸出問題でこじれていた中国との関係を改善しました。
ベトナムでも、中国外相から、尖閣諸島問題には口を挟むなと言われて引き下がるクリントン。
ロシア大統領の国後島訪問の件でも、米国が、ロシアにアクションを起こした様子はありません。

国は、当然、その国益を基準にして動きます。
米国にとって、中国は、今後、軍事、政治、経済すべての面で、益々大切になって行くはずです。

田中さんが、その著書でもおっしゃるように、米と中国の逆転による世界の多極化の流れは、今後、より加速化していくと思われます。

そうした難しい局面で日本に必要なのは、したたかな判断力と戦略性、そして交渉力、実行力。
今、日本に一番欠けており、かつ不可欠なことだと思います。

私見ですが、中国、ロシアは、日本での小沢さんの扱いを見て、安心して動いているようにも思います。

米中逆転 なぜ世界は多極化するのか? (角川oneテーマ21)
田中 宇
角川書店(角川グループパブリッシング)


どっちがおっかない!?中国とアメリカ
田母神 俊雄,青木 直人
幻冬舎



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