空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

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2012-02-14 19:35:13 | Weblog
@robo7c7c ナナシ=ロボ(福島市) 「"まあ真面目に言って15年くらい欲しいでしょうか" http://blog.goo.ne.jp/teiresias/e/95271b30cede1c4564338abe6e29d9f1 てー事はアレか、「武道必修化」は事故頻発で急遽重要政策に浮上で改善でも7-8年は掛かるちう事か。ガキ少ねぇって大騒ぎしてんのにポコポコ壊しても大丈夫か(苦笑)」(2012/2/14)

 はじめの数年はみんな気を張って事故が起きないようにするでしょうけど,そこで気の緩みがでたところで事故が連発するかもしれないなあとは思います。
 あるいは,ちょっと技を覚えたところで,休み時間とかに悪ふざけした子がうっかり友達を殺しちゃうとかありそうではある。

毎日新聞 社説:武道必修化 柔道は延期すべきだ 2012年2月12日

武道必修化への不安が急速に広がっている。学習指導要領が改定され、4月から中学1、2年の体育の授業で実施される

 今初めて確認した。必修化は中学1-2年対象。

直視しなければならない数字がある。中学と高校での柔道事故で昨年度までの28年間に114人の子どもが命を落とし、275人が重度の障害を負った

 つまり,年間3人死亡。但し中学・高校合わせてなので,中学1-2年相当分は単純計算で年間1名の割合となる(高校全入を前提とする)。同様に重度の障害については年間ほぼ10名の割合(同様に中学1-2年相当分としては3名程度)。

 未経験者が,しかも多数やった日には損耗率がどれほどかは考えたくもない。

 …柔道部員が,まー10人に一人と考えてみよう。それなら授業参加者はその10倍,年間死亡者は従って単純には10名の割合。もちろん,素人・初心者にそんな激しい技を積極的にやらせるとも思えないので,10人死ぬとは限らない。あとこの計算だと,柔道部員,多すぎ。

 ともあれ,柔道部員は10人に一人いたとしよう。それなら,30人クラスに3人,40人クラスなら4人いる計算。指導者一人に補助が3人ないし4人いることになる。目は届かなさそうだ,いくら経験者でもだ。

 ところで:

全日本柔道連盟が13年度から導入する公認指導者資格制度は学校の先生について「現場の実情を考慮し、条件付きで資格を認める例外措置」を設ける。規定された講習を受けていなくても資格認定するということだ

 なので,経験者ということになっているところの未経験者が指導者であり得るという,ひどいことに。

 さて,Wikipediaの宮城教育大学によれば,中等教育教員養成課程の専攻は10個,定員は107名。従って体育科には各年11名が(一応)期待できる(※1)。

 大学は4年で課程を修了する。従って,武道必修化方針が示された4年前に,如 何 な る 授 業 を す べ き で あ る の か に つ い て の 教 本 が 完 備 し て い れ ば,この4月,新課程に十分に対応できる(建前である)教員が11名,宮城県の中学校に供給されるのだとしよう。

 ところで学校統計要覧(平成21年度) 宮城県教育庁総務課のデータによれば,県内の中学校は226校。従って,宮城教育大が宮城県の全中学校に新課程対応の体育教員を供給し終わるのは,単純計算で20年(ないし21年)後。うん,いろいろ諦めようか。

 まあ勿論,この四年間,毎年体育教員(理念的には全員)参加の柔道ないし剣道(あるいは空手?)講習会があれば間に合うわけですが。例えば,実技2時間X30回+教育法座学2時間X15回とか(並のスポーツ少年団1年分の開講時間と,大学の教育法講義半期分を想定)。これでさえ90時間,45回か。まあ実行は無理でしょう。先生たちにはそれほどの時間がない(※2)。

 さて,以上の想定は,教員向け教本が既に完備していることを前提としてのこと。
 つまり,必修方針を打ち出す前に,10年ほどもかけてモデル校での実践を通じ,そこそこ死なないガイドラインが出来上がっていたと想定してのこと(実はできていたのならごめんなさい。っていうか,うちの高校では柔道か剣道が必須だったけどなあ。そういう経験をきっちり吸い取ってあれば,割とスピーディに教本が作れるだろうなあ)。

 うん,多分,いろいろ無理。

 理想的に柔道の授業することはできないとしても―

 必修したことにする可能性はないでもないが,推奨しない。いくらなんでも,そりゃあ,ない。

 やらざるを得ないが,しかし例えば受け身だけに専念させるというナイスなアイディアをどこぞで見た。だがしっかり受け身をするのもやり方知っていてのことだろうし,うまいこと技をかけてくれる人がいてのことであるから,やっぱり指導者に負担がかかるのは変わらない。

 柔道をやらず,剣道とする可能性もある。わあ,防具があるから大丈夫だよ♪
 ―と思いきや,まず防具の導入にやたら金がかかる。
 竹刀はどうしてくれる。ひとクラス30人と仮定しても,予備を含め40本ほどの竹刀の手入れは誰がするんだ。剣道部のボランティアか。ささくれ出ると,失明者が出かねないぞ。責任はだれが取るんだ。カーボン竹刀を使うか。けど高いよ,あれ。

柔道が危険なのではない。医学的知見を欠いた経験頼りの指導と、事故が起きても原因究明がなされず、再発防止策もとられないという環境こそが問題なのだ

 えーでもこれまではそれでもよかったわけさ。小学校のころからからだを作って,正しい体の使い方をしみこませ,そのうち自分の手のうちにあるのは人を殺すことさえできる,恐ろしい技術なんだと認識して,身を正す。まさしく,他ならぬ「道」の精進に入る。

 再発防止策? だれか大人に,何をやっても危なくないように配慮していただいてから暴れるような不作法はないよ。そんな恥ずかしいことしないよ。そんな情けないことしないよ。ちゃんと自分たちで配慮する。自覚して行動する(もちろん,指導者の人たちは子供たちの不備を陰に陽に正すのだけれど)。

 ―でも,今はそんな暗黙知,現場に伝承される暗黙知では間に合わない状況になってしまうみたい。今までぼくらが体に染みつかせたいろんな”安全装置”を可視化し可読化 し 終 え て いないとダメらしい。

 私は中学校の現場をしらない。だから勿論,どれだけ用意できているのかもしらない。各社報道がわたわたしているのは,実は現場の蓄積を知らないだけという可能性もないではない。

 それでもやっぱり,私は急ぎすぎだと思う。

朝日新聞 先生、柔道にピリピリ 安全模索・独自副読本も 2012年2月13日10時22分

これまで、武道はダンスを含めた選択科目だったが、必修化により、中学1、2年生は男女ともに、柔道、剣道、相撲、空手、なぎなた、合気道などから選択することになる

 相撲・空手まではいいとして,長刀・合気道では指導者確保はどうするねんな…。都市部はいいかもしらんが,指導者確保も後継者育成も,地域的偏りがでやしませんか…。

文部科学省によると、空手発祥の地の沖縄は空手、剣道が盛んな佐賀は剣道を選択する学校が多いなど、多少の地域性は出るが、全国的には防具類が不要な柔道を選ぶ学校が多いという

 予算削減の波の中,そーなりますよね。

しかし、柔道の授業に関しては安全面での懸念の声も強い。名古屋大の内田良・准教授(教育社会学)によると、柔道事故で死亡した中・高生は1983年度から2010年度の28年間に全国で114人(中学39人、高校75人)。うち、14人が授業中に死亡した。 中高ともに1年生が半数以上を占め、死亡原因の大半は頭部外傷だという。内田准教授は「受け身など技術の習得が不十分なまま、投げ練習に参加した時に事故が起きる。そのあたりの意識が必要」と指摘する

 …おう,「授業中」の死者が14か。

県教委は2009年から、県柔道連盟や県剣道連盟から指導者の派遣を受け、保健体育の全教員に講習を実施した。今春には、全日本柔道連盟(東京)が出している教本を各学校に配布する。また、保健体育の教員らが集まり、生徒に教えるための県独自の副読本も作成中だ

 いやあの,勿論柔道連盟や警察さんやのご協力を仰ぐのは当然すぎるほど当然なんですが(自衛隊さんでもいいが,現場のアレルギーはあるかもしらん),国がこれまでの各地の教育実践を吸い上げて事例集を各県に配布するとかなかったんでしょうか(※3)。

 いやもう,事故が起きないよう祈るしか。



※1 定員,正確には何人でしたっけ。受験から離れて久しいのでまったく分からない(苦笑)。だがまあ,増員しても20名はないでしょうねえ。体育に20名割り振ったら,他へのしわ寄せが厳しいんじゃないでしょうか。

※2 その分,他の先生が校務を負担してあげればいいじゃないかという意見があり得るが,みんなそんなにものわかりよくはないと思います。”公平な”校務分担を求める向きはある。どーなるかといえば一部に集中するんだ。どこも同じだい。

※3 このことから思うに,私が来年からしようと思ってる某プログラムも本学内部の試みに留まり日の目を見ない可能性がががが。まあいいや,どうせ専門の研究に還元するし。
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