空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

政治の役割と倫理的または情緒的判断の狭間:脱北女性と捕虜の自由

2018-01-16 11:00:50 | ノート
【教材研究】

朝鮮日報 脱北従業員送還要求、北に「ノー」と言わない韓国大統領府 2018/01/16 10:18

北朝鮮は最近、南北高官級会談で、中国国内の北朝鮮レストランから昨年集団脱北して韓国入りした女性従業員らの送還を要求している

 とんでもないことであり、要求される韓国政府側の頭痛の具合を思うと同情する。

韓国大統領府(青瓦台)の中心的関係者は15日、この件を巡る韓国政府の立場を尋ねられ「今は、そうした問題に答えるには非常にデリケートな時期ではないか。理解してほしい」と語った

 忖度ですな。

民弁(民主社会のための弁護士の会)は、女性従業員脱北事件は「企画脱北」だとして、韓国政府に向けて「自由意志に基づいて韓国入りしたのかどうかを確認すべき」と主張している

 他方で

韓国政府の消息筋は「脱北したレストラン女性従業員の大多数は、韓国で大学に進学した後、生活に満足している。現実的に、北朝鮮側の12人全員送還要求に応じるのは困難だろう」と語った

 まあその、色々と考える材料にはなる。

「2016年4月に中国・浙江省寧波の『柳京食堂』を脱出した女性従業員12人と、別ルートで韓国に定着したものの北朝鮮への送還を求めている脱北者キム・リョンヒ氏の送還なしには、離散家族再会もない」」、これが北朝鮮の立場だとか。

 韓国政府の言うとおり、脱北女性従業員ズが今は幸せな生活を送っているとして、その人権を保護するため、離散家族再会の可能性を閉ざすというのは―『誰の人権が守られるべきなのか、誰の人権が優先されるべきなのか』という微妙な問題に触れざるをえない。

 例えば、朝鮮戦争末期に、捕虜の行く末をめぐって『全員返せ』という北朝鮮と『いや、亡命希望者は返せない』という米軍とで延々対立し、でまあ、『亡命希望の北朝鮮兵捕虜ひとりの選択の自由を守るために、いったい何人の米兵・韓国兵の命が必要とされるか』という深刻な問題になったわけだ。

 …『この間まで俺たちの戦友を殺してきた×××の自由なんか知ったことかよ、犬にでも食わせておけよ』というのは、前線で戦友を失った兵の割と正直な気持ちでありえそうだし、息子を失った本土のおかーちゃんは、見も知らぬ・自分の息子を死なせたヤツめの自由を買い取るために、さらに隣の家のジミー君を死なさなければならない―と言われるわけで、かなり真剣に困る。

 そこで妥協と決断と説得と…をするのが政治の役割であろうかと思われ、なので「韓国政府仕事しろ」ということにもなる…。



 …しかしこれ,授業で使う問題提起の話題で使えるな,と思ってメモしたのだが。
 どっちみち,『一時的にせよ国外で過ごし,そちらに留まる事を希望した北朝鮮人が北朝鮮に戻されることは不幸せなことである』という大前提を背景にしていそうで,ちょっと扱いにくいかも。いやまあ,犯罪者でもないのに強制送還を求められること自体,ダメだろ,という正論もあるのだが,じゃあそもそも犯罪者でもないのに当人の意志確認もなく『戻せや』と持ちかけてくる国はどうだ,という問題もあり…。

 …できるだけ価値中立に近くあるべき教員の立場として,ちょっと使いどころに注意は必要か。

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