空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

とある学者による「下層階級」の実情解析と解放への処方箋

2018-01-15 19:38:29 | ノート
 一読して「うわだめだ」と思った:

gendai.ismedia 橋本 健二 平均年収186万円…日本に現れた新たな「下層階級」の実情 14 Jan 2018

いま日本の社会は、大きな転換点を迎えている。格差拡大が進むとともに、巨大な下層階級が姿を現わしたからである。その数はおよそ930万人で、就業人口の約15%を占め、急速に拡大しつつある。それは、次のような人々である
2015年に全国の1万6000人、2016年に首都圏に住む6000人を対象に行なった調査の結果、資本主義のメインストリームに位置する資本家階級、新中間階級、正規労働者という三つの階級の間には格差や差異が依然として存在するものの、これらとアンダークラスは、あらゆる点で異質であることが明らかになった

 とまあ、割と暗然たる現状認識の提示。これが現実だとすれば、そして治癒すべき病なのだとすれば、どのような方策があるか―

しかし希望もある。実は同じように低賃金で働くパート主婦、資本主義から距離を置く専業主婦、そして大資本との競争に苦しむ旧中間階級は、格差に対するスタンスで、アンダークラスに接近している。所得再分配によって格差を縮小させ、貧困を解消するための政策を支持する傾向が、アンダークラスと同じくらいに強いのである。新しい階級社会に生まれた、新しい政治的対立軸である

 ふむなるほど、と思って次を読んだらまあ:「また新中間階級と正規労働者は、格差拡大を容認する傾向が強いといっても、一枚岩ではない。その内部には、格差拡大に反対して所得再分配を支持し」、うむたとえば私などもそうだな!と後続の文章を見ると「同時に他民族との協調と平和主義の立場に立つリベラル派が、かなりの比率で存在している」とあって、ちょっとうに?と首をひねる。

 所得再分配機能をいま少し強化するのは、同一国民として同一の社会を営む同胞として当然のことであり、別に他民族との協調と直結しない。朝鮮出身だろーがなんだろうが、この国の構成員として協働する間柄であればこそ、国税でもってこの関係を維持すべきなのであってな、と思うのだが。

 そして私は平和主義であり、リベラルをもって任じる。生活保護・安全の保障を強化するため、それなりの経済発展を要する事情のもと、落第点寸前っぽい気がするがやむを得ず、また国政選挙で過半数を安定して確保してかつ内閣支持率・政党支持率も一定水準を維持することから自民党をそれなりに支持する立場である。

 ところがこの論者曰く、「自民党を積極的に支持しているのは、民族排外主義と軍備優先、そして自己責任論にもとづく格差拡大容認論に凝り固まった一握りの人々であり、それ以外は、必ずしも強く支持するわけではない穏健保守とでもいうべき人々である」。

 …うん、私は穏健保守といったあたりだね。これは自認できる。で、そーいう人に対するお言葉がこうだ:

現状を変えるために必要なのは、格差縮小を一致点として、アンダークラス、主婦、旧中間階級、そして新中間階級と労働者階級のなかのリベラル派の支持を、一手に集めることができるような政治勢力を形成することだ

 …いくつもの論点があり、それをパッケージとして売り出されているのが現実の選挙の姿であり、「格差縮小!」だけで「買い!」と思ってもらえるほど魅力的な商品を提示されていない、という現実を認めるべきなんじゃないですかねー…。

とくに旧中間階級は、かつては自民党の強固な支持基盤だったが、近年では自民党支持率が低下し、野党支持が他の階級より多くなっている

 この分析についても、「じゃあなぜ野党が勝利してないんですか?」という問題を設定すれば、「その野党支持者が、全体的には少数派だからですよね?」という突っ込みになろう。

 まとめ:





 アベ=ジミントー=クランを忍殺すれば世の中はっぴー!みたいな単純な世界観を前提としてませんかね。そのあたり、世論調査にさえほの見えるところがある:

日経新聞 安倍政権下の改憲反対54% 原発即時停止49%賛成 共同通信世論調査 2018/1/14 19:00

 …安倍政権下でなければいいんだね?という突込みがありえよう。
 …なんであれほどバカアホマヌケテーノーと罵ってきた安倍首相を、これほどまでの重大メルクマールとして扱わねばならないのか、真剣に反省してみてはどうだろう。バカアホマヌケテーノーのアベ「自民党を積極的に支持しているのは、民族排外主義と軍備優先、そして自己責任論にもとづく格差拡大容認論に凝り固まった一握りの人々」であるとして、言っても聞かない頑迷な者たちなのだとして、それ以外の人々の説得にこの5年ほど、失敗し続けてきたわけだろう。その反省はどこで誰がしていて、その結果としての行動はどんなものなのか。

 …私が学生に語りかける言葉は、「せっかく景気がちょっとはマシっぽいんだから、一緒にカネモチになろうぜ!」である。カネをじゃかすかもうけて、気前良く税金を払い、それを適宜再スタートなどのために再分配するという世界観だ。

 あっちをけずり、こっちをけずり、一緒に貧乏になろうぜ!という世界観を提示されて喜ぶひとって、あんまりいないんじゃないかなーと思うんだが、これは私の人格が歪んでいるからだろうか。

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メモ ()
2018-01-30 13:12:44
とある学者さんの言葉にある

> 資本主義から距離を置く専業主婦

というのは、

> 資本主義のメインストリームに位置する資本家階級、新中間階級、正規労働者という三つの階級

とやらの奥様でいらっしゃるものと思われるが、こういう人たちに
「ということで、そういうカネモチからたぁっくさん税金をぶんどって、カワイソーなひとたちに分配を多くしてあげようぜ! 君たちのダンナたちの手取りは少なくなって、君たちの取り分も少なくなるけど、これが正義だよなっ!」
と呼びかけて、さてはたしてどれほどの支持が得られそうかなあと考えてみるのは必要なことかと思う。

おそらく、順調にパイがふえる世界観でなら、「あまった分なら、再分配に振り分けてもいいよぉ」、と言ってもらえる率が高いかと思うんだが。
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