Anteeksi.

すみません、ちょっといいですか。フィンランド留学の見聞録。

洗濯

2009-04-15 | 日常/思索
この驚きには、すでに前回の滞在で出会っていたのですが、こちらで借りている大学の寮にある共有の洗濯機は、コインランドリーならぬ、コールランドリーとでも呼ぶのでしょうか。
洗濯物を詰め込んで機械の設定をしたら、指示された番号に電話をかける。フィンランド語のメッセージが流れ、少しすると、目の前のボタンが光り、それを押すと洗濯機が回り出す、という仕組み。料金は電話代と一緒に課金されます。一回で€1.2。携帯が無ければ、洗濯もできない。さすがノキアの国。

日本の人口に対する携帯(PHS含む)普及率は2008年末時点で83%だそうだが、ある統計によると、ヘルシンキでは100%を超えている。もっとも、日本でも東京都だけに限定すれば、普及率は100%を大きく上回る(130%)ので、状況としてはあまり変わらないか。そもそも通信や販売のシステムが違うから、あまり比較してどうのこうの言うのは意味がないかもしれない。(日本の数値はいずれも総務省調べ)


ケッロ

2009-04-14 | フィンランド語
連休明け。やっと大学で事務手続きをし、学生としての身分が登録された。銀行もずっと閉まっていたのだけど、止むなく滞納していた家賃も振込みできた。


ところで今日、道を歩いていたら知らないおばさんに話しかけられた。何やら、

「ケッロ、ケッロ」

と言っている。何のことだろう。どうやら英語が通じないみたいだ。
そのとき、ふと思い出した。たしかフィンランド語では、「今、何時ですか」を「パルヨンコ ケッロ オン?」と言う。言葉の響きがちょっと面白いので、覚えていた。
もしかして、時間を聞いているのかと思い、さっと腕時計を見せると、

「ヨー キートス」

と、笑顔。多分、正解。「ヨー(joo)」は肯定的な相槌、「キートス(Kiitos)」は「ありがとう」。それくらいは知っていた。
家に帰って辞書を引くと、案の定、ケッロ(kello)は時計という意味だった。こういう風にして覚えた言葉は、生涯忘れなさそう。


フィンランド人は概して英語が上手で(特に若い人)、大学の関係者のみならず、スーパーのレジのお姉さんからバスの運転手のおっさんまでみんな流暢に英語を話します。なので今回の留学の範囲では、別にフィンランド語を一切理解しなくとも、ほとんど何の支障もないのですが、まぁでもせっかくなので少しは覚えたい。

それにフィンランド語のユニークさは、自分にとってのフィンランドの魅力を構成する一要素でもあるように思います。上に出したいくつかの単語だけ見ても、なんだかそのままムーミン谷の住人たちが喋っていそうな、そんな奥ゆかしさがある。

こちらに来て最初に触れたフィンランド語は、飛行機を降りるときにCAさんがかけてくれた言葉。

「キートス ヘイヘイ」

うーむ、思わずにやりとしてしまう(ヘイヘイは、別れの言葉)。

隣にいるフィンランド人に電話がかかってきたら、彼の話はこんな感じ、かもしれない。

「モイ ヨー ヨー ニーン ヘイヘイ」

(訳:「やあ うん うん そうだね またねー」)

うーん、やっぱり面白い。


(左)フィンランド語日常会話の本
(右)前回滞在時にヘルシンキの本屋で購入したフィンランド語⇆日本語の辞書

研究室紹介

2009-04-13 | 大学
この4連休、毎日研究室に通ったが、ついに全く人に出会わなかった。見事にOFFが徹底している。

ちょこちょこ写真を撮ってみた。

共通のゼミ室。部屋がL字型になっているので、机もそれに合わせてちょっと変わった形。
憩いの場も兼ねている。チェロの練習に使わせてもらっている。前回の記事に映っているソファは、昼寝に最適。
ホワイトボードには、何やら難しい数式やデータが書き込まれている。その中にふと目に留まったのが、「Shinzo Abe」の文字。一体どんな文脈でこの名前が出てきたのだろう。

 

廊下にはやたらポスターの類が掲示されている。研究紹介、あるいは学問分野の紹介。



共通の図書室。英語の本が中心で、わりと色んな本が置いてあるので、何かと利用できそう。システム論やゲーム論から哲学まで。
KeeneyのSmart Choiceも置いてある。この本をベースにしたソフトウェアも開発しているらしい。
日本語の本がある、と思ったら、AHPの本を出している木下栄蔵氏の著作だった。何でも、数年前に三ヶ月ほどこの研究所に滞在されたそうだ。急に親近感を覚える。

 

チェロ

2009-04-12 | 音楽
こちらの人は普段からON/OFFが徹底しているのか、それともイースター休暇は特別なのか。それは来週末まで分からないけれど、とにかく、この週末は誰も学校にいない。研究室だけでなく、学校そのものに全く人という人がいない。

というわけで、学校にチェロを持ってきた。家で弾くのはちょっと難しそうだったが、ここなら気兼ねなく音が出せそう。広々としたゼミ室のようなところがあり、そこで音出し。

うーむ。気のせいか、すごく良い音がする。気がする。なんかこれは、はっきり言って、今まで自分がチェロを弾いてきて、その中でも一番の良い音が出ている、気がする。
部屋の音響が良いということもあるけど、なんだか楽器そのものの鳴り方が全く別物のようだ。言ってみれば、水を得た魚のように、瑞々しい。 元々弦楽器は欧州の気候に適したものだから、そっちで弾くと音が違う、ということは話には聞いていたけれど、これが実感ということなのだろうか。この楽器もドイツ製です。
欧州でよく鳴っても、日本に帰るとあれ?みたいな話も聞くので、楽器がよく響いて楽しいのも今のうちだったりして。

まぁ何にせよ、チェロを連れてきて良かったと、心から思った。
少し余裕ができたら、オーケストラとか、チェロの先生とか、そういうのを見つけて音楽での交流も図りたい。


パン

2009-04-12 | 日常/思索
まだこちらに来て数日なので日本の味が恋しいということもなく、むしろフィンランドの味との再会を楽しんでもいる。

と言っても、大層な料理を作るわけでもないので、例えば主食に関して。

(左)
ライ麦パン。野菜とチーズ、ハムやサーモン等はさんで食べる。ちなみにこちらのマクドナルドには、ライ麦パンの商品もある。
(右)
Karjalanpiirakka(カリヤランピーラッカ?)。日本ではカレリアンパイ、カレリア風パイとか呼ばれるみたい。名の通り、カレリア地方(フィンランド南東部からロシアにかけて)の伝統料理だそうだが、ヘルシンキのスーパーのパン屋ではほぼ100%置いてある。最も気軽に食べられるフィンランド料理と言えそう。
これもライ麦がベースの生地で、ミルク粥を包み込んだようなもの。リゾットみたいな感じか。米とパンを一緒に食べるので、日本人にとってはちょっと変な感覚かもしれないが、まあまあおいしい。


散歩

2009-04-11 | 日常/思索
寮は大学から徒歩で10分ほど。しかもその途中にスーパー、薬局、郵便局、銀行などが揃っている。とても便利。

それら寮の周りの風景を紹介。

こちらはポストと郵便局。このかわいらしいデザインはフィンランド共通。フィンランド滞在経験のある知り合いは、初めてこれを見たとき、ここは幼稚園かなと思ったらしい。

 

R KIOSKIはコンビニみたいな感じ。平日でも9時には閉まるけど。隣のalepaはスーパー。どちらもチェーン店で、ヘルシンキではそこかしこに見かける。



ottoはフィンランド語でATMを意味する。発音はずばり「夫」。旦那から金を徴収するイメージ?
ちなみに、みずほ銀行のインターナショナルキャッシュカードを用意してきたのだけど、現金が必要なときはここで下ろせる。便利。



寮の裏は広い湖になっている。こんな風景が手の届くところにある。ささやかなようだが、とても感動的だ。フィンランド在住のピアニスト館野泉さんは、フィンランドの豊かな自然を「静かに輝いている」と形容していたが、まさにそれだ。
しかし、まだ表面は凍っている。でも、上を歩くと危ないと釘をさされた。言われなかったら、好奇心からやっていたかもしれないが、さすがに気温がプラスになると、氷はかなり薄くなっていて、どこで割れるか分からないとのこと。これで死人が出ることが時々あるそうです。

 

やっぱりシベリウスの音楽はこういう風景から生まれたのだと想像してしまう。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンのような音楽は、どう考えても教会、宮廷、あるいはコンサートホール、そういった人工的な空間で演奏されるためのように思う。対照的に、シベリウスの音楽には、「風」のようなものを感じる。どこか陰鬱だけど、空間的な広がりがある。こうした風景を眼前におもむろにバイオリンを取り出す。そうして生まれたのが、例えばあの有名なバイオリン協奏曲という、イメージ。

通学路も、ちょっとしたハイキングコースのよう。



春はもうすぐ。


イースター

2009-04-10 | 日常/思索
フィンランドに来るまで知らなかったのですが、こちらはこの週末を挟んで4日間、イースター休暇です。

昨日大学に行って手続きをしようと思ったら担当者は休みだし、こちらの学生さんも皆だいたいどこかに遠出するみたい。要するに、ちょうど日本のゴールデンウィークみたいなときにやってきてしまったわけです。実際、人によっては一週間くらい休むものらしい。スーパーも閉まるから、事前に週末の食料を買いだめしておくよう忠告されました。

で、今日(10日)は金曜ですが、その4連休の頭になるのです。研究室に来てみたら、見事に誰もいません。それどころか、大学内で人を見かけません。このメリハリは、日本人とは全く異質です。

せっかくだから、チェロでも弾こう。

TKK

2009-04-10 | 大学
ヘルシンキ工科大学は、英語でHelsinki University of Technology。フィンランド語でTeknillinen Korkeakoulu。これを略してTKKという通称が一般的。

フィンランドでは二番目に古い大学で、昨年(2008年)でちょうど百周年だったらしい(大学になる以前の起源はもっと古いそうですが)。学生数は大学院含め約15,000人、うち一割弱が留学生。

元々はヘルシンキにあったのが、戦後に現在のオタニエミ(ヘルシンキ市内から車で20分ほど)に移転し、その際に建築家Alvar Aaltoの設計で校舎が建てられた。暖かみのある赤レンガで統一されている。これに白樺がよく映えるわけです。



中でも一番のシンボリックな建物は、このオーディトリアム。「地球の歩き方」にも掲載されているほど。この付近の広場は、Aaltoの名を借りてAlvarin aukio(アルヴァ広場?)と呼ばれている。




少し歩くと、企業のオフィスや研究所が密集している。この様子は、フィンランドの国家戦略を如実に体現している。企業と大学は、地理的に近接するだけでなく、実際に様々なレベルでの交流が盛んに行われており、まさに教科書的な産業クラスターを形成している。どういう賞なのかは知らないけど、このオタニエミは、欧州で最もinnovativeな地域という栄誉を過去に二度も授かっているらしい。
地元企業から、Microsoftなどのグローバル企業まで。



NOKIAの本社もここに。


研究室訪問

2009-04-09 | 大学
こちらでお世話になる研究室を初訪問。

Systems Analysis Laboratory(SAL)というところで、組織としては物理系の専攻に属するらしい。
標識はフィンランド語だけど、何となく分かるでしょうか。FYSIIKAN LABORATORIO=物理の研究所。フィンランド語では、「~の」と言うときに、助詞や前置詞を使うのではなく、語尾に「n」を付けるそうです。だから、固有名詞も格変化する。鈴木の=Suzukin。佐々木の=Sasakin。



話が逸れたが、SALには数名の教授と、その下に数十名の学生がいる。システム科学の見地から意思決定の側面を論じるというスタンスは、自分のバックグラウンドとかなり近いものを感じる。全体でのカバー範囲は、ゲーム理論やORから、ソフトシステムアプローチの方面まで幅広い。らしい(詳しいことはこれから徐々に分かるだろう)。

今日は先生がお休みだったので、学生さんが食堂に連れて行ってくれたり、その他施設内を色々と案内してくれた。

とにかく一番驚いたのは、用意して下さった研究環境の素晴らしさ。
プリンタやコピー、文房具類がフリーで使えるということもそうなのだけど、なんと自分一人で使える個室まで与えてもらった。
騒音なんてない。窓を開ければ、ひんやりと肌に心地よい風が入る。窓の外に見えるのは、赤レンガの校舎とのコントラストが美しい、どこまでも晴れ渡る青空。
Amazing!

これは捗りそうです。色んなことが。


到着!

2009-04-08 | 渡航
前の記事の続き)

コペンハーゲンから二時間弱、ヘルシンキーヴァンター国際空港に到着。それにしても、上空から眺めると、フィンランドが本当に「森と湖の国」だというのがよく分かる。

そんなわけで、再びやってきました、フィンランド。
前回の初訪問では、おおついに来たなぁという感慨があったけれど、なんだか今回は正直、週末に箱根にでも来たような気分とあまり変わらない。非日常と言えばそうだけど、それほどすごく特別かと言えばそうでもない。まぁ余分な緊張感なく肩に力を入れずに済むという意味では良いことかもしれない。

まず驚いたのは、夜の8時を過ぎているのに、空が全く明るいままだ。前回滞在していた2月あたりは、午後の3時か4時にはもう日が沈んでいた。そのイメージがあったからか、とても意外な感じだった。結局、9時過ぎまで空は明るく、すでに白夜の気配を感じる。6月にもなるとヘルシンキでも24時間明るいそうで、楽しみだ(少しは日が沈む時間があるので完全な白夜ではないらしいけど)。
しかしながら、まだ寒い。こちらにしてはもう春なのだろうけど。気温は3℃ほどで、日中でもさほど変わらない。もう一、二週間もすると少し暖かくなるようだ。
この肌を突く寒さと、一方で遅い時間まで明るいままの空の青との対比が、それだけで幻想的というか、何とも妙な感じだ。


空港には、友人のAnssiが車で迎えに来てくれた。
Anssiはヘルシンキ工科大学博士課程の学生で(専攻は経営学)、昨年の夏に来日し、うちの大学に客員研究員として二ヶ月間滞在したことで仲良くなった。約8ヶ月ぶりの再会。

今回は大学そばの学生寮に滞在するのだけど、彼がそこまで車で送ってくれた。それだけでも有り難いのに、差し当たっての食料や生活必需品も買い込んでくれていた。なんとお礼を言っていいのか分からない、とはこのことだ。英語では「Thank you」+αのことしか言えないから。とにかく、本当に感謝感謝。


そんなわけで、日本の自宅を出てから20時間くらいは経過しただろうか。無事宿舎に到着。現地時間で夜の9時過ぎ。このまま寝れば時差ボケもなく、健康的な生活が送れそうだ。
そして爆睡。どんなところでもよく眠れるこの適応力(鈍感力?)にも感謝。

出発!

2009-04-08 | 渡航
4月8日、いよいよ出発となりました。
午前中の便なので、早起きしてバスで成田空港へ。

空港に、海外出張の度に立ち寄る手打ちうどんの店がある。とてもおいしい。自分にとっては、日本食としばしのお別れをする、一つの儀式のようなものとなっている。

海外はもはやだいぶ行き慣れた感があるけど、チェロの同行は初めて。チェロの分に一席取ったのですが(詳しくはこちら)、なんとご予約のお名前は「Mr. Sasaki Cello」。そうか、男だったのか、君は。



チェロを持っていると、並ばなくても一番に乗せてくれる。「お待ち申し上げておりました」ーエコノミーだと言うのに、なんと丁重なもてなし。まぁ後から乗り込むと色々と混乱が起こるからだろうけど。チェロの持ち込みに関してはマニュアル化されているのだろう。
CAさんが座席にチェロを固定するのを手伝ってくれた。出来上がりはこんな感じ。頭を下に突っ込んで固定する、これが一番安全な方法のようです。



そう言えば、とある団体でお世話になっている海外経験の豊富なチェリストの先生が、ヨーロッパでは楽器を担いでいるとみんな親切にしてくれる、と言っていました(しかも管より弦の方が”ランク”が高いんだとか)。 「ジーパンにサンダルでもね、チェロを持っているだけで扱いがまるで違うんです」と先生は仰っていましたが、そんなものらしいです。 たしかに、少なくとも自分の過去の経験と比べる限り、そんなことも言えなくもないように思いました。乗り継ぎの空港でも、気のせいかみんな優しい。

SASは、これまでに利用したことのある航空会社の中では、快適な方だと思う。面白いのは、食事時、パン屋のような格好をした男性のクルーが、焼きたて(というか温めたて)のパンを配ってくれる。取り放題。

そんなこんなで日本を発って約11時間、経由地のコペンハーゲンに到着。初めて訪れる国に着いてまず思うことは、空港はその国の玄関であり、その雰囲気には国柄が表れる。コペンハーゲン空港はSASのハブということもありかなり大きい空港だが、暖かみのある木の床(あ、写真に映っているところは違う)、SASのシンボルカラーでもあるブルーを基調とした北欧風のデザインとインテリア。なかなか居心地が良い。けれど、次の便まで一時間ほどだったので、すぐに乗り換え。