Anteeksi.

すみません、ちょっといいですか。フィンランド留学の見聞録。

サンクトペテルブルク3

2009-11-01 | サンクトペテルブルク
平日は、東京並みに慌ただしく人々が行き交っていたこの街も、日曜の朝ともなると、だいぶ静かになる。

アレクサンドル・ネフスキー修道院。

 

裏手に、文化人の墓地がある。墓碑も苑内の地図もロシア語しかないけれど、何とか読めるようになってきた。
チャイコフスキー(写真右)はひと際目立っていたので、すぐに分かった。音楽家は一画にまとめられていて、他にボロディン、ムゾルグスキー、ルービンシュタインなど、どうにか解読。ちょっと離れて、ドストエフスキーも発見。

誰だったか、どこかの演奏家が、「僕にとっての親友とは、バッハであり、ベートーヴェンであり… だって、もう何十年も日夜彼らとの対話を繰り返してきたのだし、それでももっとよく知りたいと思う」というようなことを言っていたのを聞いたことがある。
自分にとって、音楽家のお墓参りは、友人のお墓参り、というのも変だけど、まぁ当たらずとも遠からず、という感じがする。

 

いかにもロシアな感じの?血の上の救世主教会。名称は、当時のロシア皇帝アレクサンドル2世(ヘルシンキ大聖堂の前の銅像の人)が暗殺されたことによるらしい。
中に足を踏み入れると、壁や天井に隙間無くびっしりと描かれたモザイク画に圧倒される。ロシア正教は基本的に偶像崇拝を認めないので、同じキリスト教の教会でも、他とはかなり異なる印象を与える。

  

イサク聖堂。これまた内部の装飾、スケールの大きさが見事だった。
階段でドームの上まで出られ、市街が一望できる。

 

ところで、街を歩いていると、やたらに24時間営業をアピールする看板が目につく。最近読んだロシアに関する本によると、これは、社会主義への反動を体現しているらしい。つまり、かつて計画に追われていた人々が、今は逆に計画性のなさを謳歌しているのだとか。本当かしら。
ロシアの物価は急上昇していると聞いていたが、それでも、今年旅をした国々の中では、最低クラスだった。地下鉄60円。レストランでのビール一杯100円。1000円も出せばかなりまともな食事にありつける。



帰りは電車で。ヘルシンキ―サンクトペテルブルク間は一日二便の電車が出ており、そのうち、今回乗車したのは「シベリウス号」。
面白いのは、サンクトペテルブルクにある鉄道駅の名称は、行き先の街の名前になっていて、フィンランド駅というのがある。他に、モスクワ駅というのもあった。

 

よく分からなかったロシアが、かなり身近なものになった。先入観に反して、開放的で愛想の良い人が多かったのが印象的。

電車は、出国、入国でともに一時間ほど停車し、結局ヘルシンキまで6時間半もかかった。
疲れた。やっぱりヘルシンキが落ち着く。

サンクトペテルブルク2

2009-10-31 | サンクトペテルブルク
エルミタージュ美術館。学生証を見せると、なんと無料。

元々は、歴代皇帝の住まいであった宮殿に、ヨーロッパ芸術のコレクションを始めたのが起源らしい。三時間ほどうろうろしていたけれど、それでも駆け足で、回れなかった区画もあった。個人的には、モネ、ルノワールあたりの絵画が揃う、フランス印象派の一画がとても良かった。イタリアのルネサンス芸術もなかなか充実。一方、地元ロシアの芸術に関しては、丸ごと別のロシア美術館というところにあるらしく、ここでは拝む事ができなかった。
この半年ほどの間に、ヨーロッパの色んな街で美術館に足を運んでみて、国や時代ごとの違いがとてもよく分かるようになった。実際にその街を歩いてみての印象や、あるいはその国の音楽から受ける印象などを重ねてみると、制作者個人の差だけでなく、文化間の差が明確に読み取れて、なかなか面白い。要するに、その時代、その国の人々が、何をもって美的な価値を認めたのか、そういうことを知る手がかりを与えてくれている。まぁこれは、この留学生活の一つの副産物。

  

ロシア名物、ペリメニ。ラビオリ、というか平たく言えば餃子のような感じ。ポーランドのピエロギとも関係あるらしい。この辺りは、起源としては全部つながっているのだろうか。



二日続けて、マリインスキー劇場。この日はオペラで、演目はヴェルディの「ファルスタッフ」。ヴェルディ最後の作品らしい。
プログラムを読んで粗筋は分かったけれど、英語字幕がなく、台詞は全く分からなかった。コミカルな内容で、変な衣装や、小技の利いた喜劇的な演出も面白かった。

フィンランドでもマリインスキーの演奏を二回聞いたので、この一年だけで四回目。
しかし思うに、自分はやっぱり純粋音楽の方が好みなのかもしれない。でも、オペラやバレエももうちょっと開拓してみようと思う。


サンクトペテルブルクの夜景。とても美しく、詩的な感じ。
けれど、話に聞いていた通り、決して治安は良くはないかもしれない。人通りの多い大通りを歩いて帰ったのに、何人にも声をかけられた(多分、金出せ、とか)。一緒にいった友人は、危うくジプシーの子供たちにすられる寸前だった。まぁ被害は無かったので、何より。

  

サンクトペテルブルク1

2009-10-30 | サンクトペテルブルク
サンクトペテルブルク三日間の旅。三回に分けて振り返ってみます。

行きは夜行バスを利用。ヘルシンキを夜11時に出発し、翌朝7時頃(時差1時間あり)に到着。自分はどうも夜行バスというのが苦手で、ほとんど眠れた試しがないのだけど、今回も同様。まぁでも、片道34ユーロは安い気がする。
途中、出国と入国のそれぞれで、バスから一旦降ろされ、審査、手続きがあった。予想していたよりは、簡素なもの。ビザさえ取得すれば、割合気軽に旅行できる国かもしれない。

国境を越えても、基本的にはひたすらフィンランドの田舎のような風景。森の中をまっすぐ走る一本道を進む。街灯りがほとんど無く、きれいな星空がとてもよく見える。
でも、この辺りだって、元々はフィンランドの土地だったんだよなぁ、と考える。やはりどうも感情的にフィンランドに肩入れし勝ちで、強大な支配者としてのロシア、というイメージが一つ、基本的なものとしてあるわけだけど、実際にそのロシアに今度は足を踏み入れてみる。何か印象を変えるもの、あるいは逆にそれを強く裏付けるものがあるだろうか。いずれにせよ、胸が高鳴る。
一転、市街地に入ると、目に入るのはキリル文字の看板、標識の数々。おぉ、いよいよ来たなぁ、という感じ。



到着した時間はまだ真っ暗。そして寒い。多分、氷点下だろう。
とりあえず、バス乗り場の側にあったマクドナルドで朝マック。英語メニューがあったので、注文は何とかなった。

他のヨーロッパの国(フィンランド含め)では、言語は違えど、基本的に文字は共有されているから、遠からず発音はできる。その点、ロシア語はお手上げ。日本に来る外国人の気持ちとは、こういうものかもしれない。
この旅の間、暇を見てはキリル文字の読み方を覚えようとしてみた。終わりの方には、何とか読めるようになった。すると、ちょっと面白い。
例えば、下の写真の看板、「стоп」「ресторан」「Ситибанк」は、それぞれ英語表記にすると「stop」「restoran(レストラン)」「citibank」。二つ目なんか、普通に読めば「ペクトパー」なんて読んでしまいそうだけど、ロシア語では、「P」「C」「H」はそれぞれ英語の「R」「S」「N」の発音になる。意外と、ごく日常に使われる英語由来の外来語も結構多いのかなと思った。

  

一日目は、一緒に行った友人の知り合いのロシア人の女の子が、街を案内してくれた。諸々のサバイバル手段を教えてくれたり、観光ポイントでは歴史的背景などガイドしてくれたり、とても助かった。そして何より、自分にとっては初めてロシア人と接する貴重な機会でもあった。

政治的には、現代でさえ一体どこへ向かおうとしているのか、全く考えの読めない国ではある。けれど、一方で例えばチャイコフスキーやラフマニノフの音楽というものを考えたときに、このような情熱的な音楽を文化と認め、確立してきた人々であるのだから、感情的にとても豊かなものを秘めている人たちなんだろう、という想像は働く。
とりあえず、この短い滞在で抱いた限りの印象では、この想像はそれほど間違っていないのではないかという気がする。

どこかをじっくり見るというより、色々歩き回ったという感じ。おかげで、すっかり目がキリル文字に慣れてきた。

とは言っても、ヘルシンキから車をたった数時間走らせたところで、これほどに違う世界が広がっているということには、やはり驚きを抑えられない。
サンクトペテルブルクは、元々、ヨーロッパを模して造られた人工的な都市。ではあるけれど、そこに埋め込まれている人々の顔立ちや雰囲気、言語、それに宗教関係の建物なんかを見るに、そう思わずにいられない。

  

お昼ご飯、ロシアと言えばこれ、ボルシチ。



街を歩いていてびっくりしたことの一つに、日本料理の店、特に寿司屋がやたら多い。メインのネフスキー通りには、大げさでなく、一ブロックに一つ、寿司屋がある。とても流行っているらしい。
その内の一つで夕食。日本を発って以来の寿司。競争がある分、レベルも洗練されるのか、これまでに海外で行ったことのある(ほとんど行くことないけど)日本料理のお店の中で、一番おいしかった。

 

マリインスキー劇場にてバレエ鑑賞。

本格バレエ鑑賞は、先週の白鳥の湖に続いて二回目だけど、今回は、元々バレエ音楽ではないものに後から踊りをつけたものらしかった。音楽自体はよく知っている、メンデルスゾーンのシンフォニー、ショパンのピアノ曲。ストーリーを気にしなくていい分、初めて純粋なバレエの楽しみ方がちょっと分かった気がする。
音楽は手放しに素晴らしかった。不覚にも、寝不足がたたって、少し寝落ち。
それに、劇場の雰囲気。そして、やっぱりロシア人はスタイルが良く、美しく、バレエも映える。ずるい。

 

ロシア大使館

2009-10-02 | サンクトペテルブルク
Ясуо Сасаки

これは何かというと、自分の名前をロシア語表記したもの。
日本語で自分の名前はどう書かれるのかと興味を持つ外国人にしばしば出会うけど、なるほど、気持ちがわかる。あまりに慣れ親しみ過ぎてもはや不可分の存在であった自分自身の名前が、こうも奇妙に、全く切り離されたように映る。

今月末にサンクトペテルブルクに行くため、ヘルシンキのロシア大使館で旅行ビザを申請してきた。
これまで(留学用を除いて)ビザ不要の国々しか旅したことがないので、入国だけでお金(と準備の時間)を取られるとは、少々煩わしい。ちなみに申請料は35ユーロ。さらに、宿泊先から招待状をもらわなくてはならない(これ自体にまたお金がかかる)。

ヘルシンキでも超一等地に広々と敷地を持つロシア大使館は、それは恐ろしいところだと聞いていたが、対応してくれたのは笑顔で親切なスタッフだった。むしろ、東京のフィンランド大使館の人の方が厳しかった印象。
我々、一般的な日本人は、ロシアという国に対して、過剰な偏見を持っているのもしれない。少しでも、実際に色々と見て来られたらと思う。