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寮管理人の呟き

記憶の中の友(前編)


中区東千田町の大学には多くの「都落ち学生」が集まっていた。彼らは阪大や九大を受験して見事に失敗し、嫌々ながら第二志望校に進学したのである。私なども西へ下ったという意味では同類になるのだろうが、決定的な違いは第一志望で入ったことだった。

籍を置いた学部の広島県人の占める割合は2割にも満たなかった。私はマイノリティーに属していたが、その頂点にいたのは東京から来た男(A)だった。Aは東京育ち、山崎努と獅子舞の田村を足して2で割ったようなマスクでとりわけ目立った。歯切れのよい言葉と洗練された所作に田舎者はカルチャーショックを受けたのである。

九州出身者が「格好つけやがって」と対抗意識をむき出しにするのが滑稽だったので「肩に力が入り過ぎているのはむしろお前の方だろう」と私はあえて指摘し火に油を注いだ。Aと口を利くようになった経緯は思い出せないが、おそらく友達の紹介だろう。

Aとは音楽の話をよくした。フュージョンが好きだと言うので「BLOW BY BLOW」のカセットテープを貸した。次の日、彼は「良かったよ」と感想を述べた上でギタリストの名前を尋ね「レプトン(大学北門の対面にあったレンタルCD店)」に向かった。耳が確かで行動力のある人だと思った。

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