玉川上水4カ所の樹木調査の比較
高槻成紀
小平、小金井、三鷹(井の頭)、杉並の4カ所で野鳥調査を行い、小平と井の頭の鳥類が豊富で小金井が貧弱であることがわかってきた。これは森林の状態によるのであろうと考え、樹木調査を行った。
1カ所で4つくらいの調査区をとったので、全部を並べると複雑すぎるので、それぞれで代表的な場所を選んで比較することにした。比較に用いたのは直径の太いものから細いものへと並べる「直径-順位曲線」である。横軸は最多の小平の234本に揃えた。
これを見るとそれぞれの特徴がよくわかる(図1)。
小平は林の幅が広いので樹木の本数が234本もあり、直径50 cmから20 cmまでの木が50本ほどある。これらは全て落葉広葉樹(コナラ、イヌシデ、クヌギなど)であり、常緑樹は細い右側にあるだけである。内訳はネズミモチやイヌツゲであった。
これに対して小金井は太いのはサクラだけで直径20 cm以上は14本に過ぎず、その他の落葉樹はヌルデ、アカメガシワなどの当年の萌芽だけだった。
三鷹(井の頭の小鳥の森)は小平ほどではないが太い木もあり直径20 cm以上が33本あった。ここの特徴は常緑樹が多いことで、小平と違い太い木にも常緑樹が混じっていた。シラカシが最も優勢であり、細い方にはネズミモチなどもあった。
杉並は直径20 cm以上の木は33本であり、林としては立派であった。最も太い木はサクラ(ヤマザクラ)であり、古い時代に植えたもので、人為的な林である。常緑樹は少なかった。
図1. 4カ所の樹木の直径を太い順に並べたグラフ。横軸派最多の234本に揃えた。樹木は常緑樹と落葉樹にわけ、落葉樹のうちサクラは別に取り上げた。
次に多様度指数を求めた。多様度指数*は、種数が多く、それらの占有率に違いがないほど指数は大きくなり、特定の種が大きな占有率を占める場合は小さくなる。ここでは直径から断面積を求め、その相対値を計算して多様度指数を算出した。その結果、小金井以外の3カ所は試数値が2前後であったが、小金井はサクラだけが大きかったため、指数は0.12と極端に小さかった。
図2. 4カ所における樹木の多様度指数
小金井で多様度指数が小さいのは野鳥の場合と同様であったが(図3)、それよりもはるかに場所ごとの違いがはっきりしていた。
図3. 野鳥の多様度指数(2021年7月)
これらをまとめると、 1)小平は雑木林的な林が良い状態で残されている、2)小金井はサクラだけになっており、林としては極めて単純で貧弱である、3)井の頭は常緑樹の多い、遷移度の進んだ林である、4)杉並は人手をかけて作られた林だが、保存状態はよい、となる。ただし、杉並では、このデータにはないが、両側に交通量の多い道路があり、これらに挟まれた幅の狭い林であり、対象としたのとは別の林ではこれよりははるかに貧弱なものもあった。
* 多様度指数H'は次のように定義される。
Sは群集に含まれる種の数。piは種iの値が、群集の全数に占める割合
調査には以下の方々のご協力をいただきました。お礼申し上げます。
朝日智子、足達千恵子、有賀喜見子、有賀誠門、大塚惠子、大西治子、大原正子、荻窪奈緒、小口治男、黒木由里子、輿水光子、近藤秀子、笹本禮子、澤口節子、高槻知子、高橋 健、田中利秋、田中 操、辻 京子、豊口信行、藤尾かず子、長峰トモイ、松山景二、水口和恵、リー智子
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