
ヨウイチが12歳の時のこと。
ステンドグラス職人のヨウイチの叔父さんが、
自分の家に、
特別制作のステンドグラスを作った。
ステンドグラス制作費は今までの貯金を全部おろし、
仕上げの最後は断食までして完成させた。
このステンドグラスは、
輝きのステンドグラスというテーマで作り上げられた。
それは、
日光がこのステンドグラスに当たると、
花々がさんさん(燦々)と輝くことから、
構想された。
そして、
あんじょう、
日光が差すと、
ステンドグラスはさんさん(燦々)と輝いた。
叔父さんは大満足やった。
まさに一世一代の会心の出来やった。
そんな叔父さんのところに、
野球のユニフォーム着たヨウイチがグローブとバットを持ってきて、
「叔父さん。俺の球打てたらタダで雑用するぜ」と言ったので、
叔父さんは、
「掃除してほしいから、受けて立つ!」と力強く言った。
ヨウイチは現リトルリーグのピッチャーやったから、
軽く三振にとれると思っていた。
一方、
叔父さんも、
大学野球してたから、
こんなガキには負けたくなかった。
こうして、
熱くとも残酷なドラマは幕を切った!!
ヨウイチは、
「俺は速いぜ❗️」と凄み、
負けず嫌いの叔父さんを夢中にさせた。
叔父さんは、
ヨウイチの初球が緩かったのを見逃さなかった。
力強く球を打った!
球は街路樹に力強く当たり、
その反動で球は物凄いスピードで跳ね上がって、
叔父さんの一世一代の会心の出来であるステンドグラスを直撃した❗️
ステンドグラスは粉々に砕けた❗️❗️
叔父さんは2時間あまり絶叫した❗️
そして、
ヨウイチと2人で、
アロンアルファで砕けたステンドグラスをくっつけて、
いびつなカタチのステンドグラスとして蘇らせた。
翌日。
日光がこのいびつなステンドグラスに当たった。
ステンドグラスはさんさん(惨々)と輝いた。
叔父さんは家を出て、
ヨウイチに手紙を送り、
姿をくらました。
その手紙には以下の内容が記されていた。
「ヨウイチ。叔父さんは人生の情熱と意欲と希望のすべてをあの輝きのステンドグラスに賭けました。ステンドグラスは完成して、叔父さんの人生は栄光に包まれるはずでした。しかし、きみの球を打ったことでステンドグラスは崩れ、叔父さんの心も崩れました。けどヨウイチ、元々はあのステンドグラスは輝いていなかったのです。叔父さんの野心と慢心によって輝いていたのです。叔父さんは叔父さん自身の本物の輝きを求めて比叡山に登ります。もう、きみと会うことはないでしょう。きみはまだ子供です。叔父さんとの出来事はただの野球ごっこできみの心が傷つかないことを祈ります。どうかヨウイチ、聡明で鮮明なる照明の輝きの人生を送り、すべてをさんさん(燦々)と輝かせる光となりなさい」
その後、
ヨウイチは野球ユニフォームを着て何度か叔父さんの家を訪れた。
しかし叔父さんはいない。
それでもヨウイチは叔父さんの家を訪れ、
いつのまにか、
野球のユニフォームを脱ぎ、
ブレザー姿にローファー履いてたら、
成人式を迎え、
フレッシュマンとして会社採用されて、
現在となる。
ヨウイチは、
この朽ち果てた叔父さんの家を訪ね、
日光が無慘なステンドグラスに当たる光を見た。
そして輝かないステンドグラスをしばらく眺め、
子供時代から今に至るまで、
輝きに欠ける自分の人生を思った。
そして悟った。
鈍く淀んだ輝きでも、
それが自分にとって満足だったら、
サイコーの輝きなんじゃないかと------