たかしの啄木歌碑礼賛

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上坊牧野の一本桜

2013-05-23 | ぶらり盛岡
上坊(うわぼう)牧野の一本桜   岩手県八幡平市松尾寄木

盛岡の桜は散ってしまい、盛岡近傍での満開の桜はここだけです。5月17日の早朝に訪れた時には“つぼみ”でしたが、22日は満開でした。小岩井農場の一本桜は全国的に知れ渡っておりますが、ここ上坊の一本桜も最近多くの人に知れわたり今日も品川ナンバーの車の人など多くの人が残雪の岩手山を背景にした一本桜を撮影していました。小岩井農場の一本桜の撮影場所は一か所なので同じ角度からの写真になりますが、上坊の一本桜はすべての角度から撮れるので楽しみです。去年は13日あたりが満開でしたので今年は10ほど遅れています。ここの桜はカスミザクラといい、満開から2~3日で散ってしまうということですので、次の日曜日まではもたないでしょう。



(2013.5.22)







盛岡からは東北自動車道西根I.C.の手前を左折し10kmほど進むと焼走り熔岩流があり、そこから200mに焼き走り温泉、さらに4kmほど進むと上坊牧野です。

焼走り熔岩流(やけはしりようがんりゅう)は、岩手県八幡平市にある、岩手山中腹から流出した溶岩流により形成された岩原である。国の特別天然記念物に指定されている。その面積は149.63ヘクタール、溶岩流の延長は約4キロメートルで、その中には散策路があり自由に見られます。なお、焼走り溶岩流が形成された火山活動の年代は300年ほど前といわれています。













溶岩流の中の散策路とは別の散策路がありその終点には、見晴らし台があり、ここからも溶岩流を見ることが出来ます。そこには当地を訪れた宮沢賢治による詩、「鎔岩流」の碑が建てられています。










  溶岩流     宮沢賢治

喪神のしろいかがみが
薬師火口のいただきにかかり
日かげになつた火山礫堆(れきたい)の中腹から
畏るべくかなしむべき砕塊熔岩(ブロツクレーバ)の黒
わたくしはさつきの柏や松の野原をよぎるときから
なにかあかるい曠原風の情調を
ばらばらにするやうなひどいけしきが
展かれるとはおもつてゐた
けれどもここは空気も深い淵になつてゐて
ごく強力な鬼神たちの棲みかだ
一ぴきの鳥さへも見えない
わたくしがあぶなくその一一の岩塊(ブロツク)をふみ
すこしの小高いところにのぼり
さらにつくづくとこの焼石のひろがりをみわたせば
雪を越えてきたつめたい風はみねから吹き
雲はあらはれてつぎからつぎと消え
いちいちの火山塊(ブロツク)の黒いかげ
貞享四年のちひさな噴火から
およそ二百三十五年のあひだに
空気のなかの酸素や炭酸瓦斯
これら清洌な試薬(しやく)によつて
どれくらゐの風化(ふうくわ)が行はれ
どんな植物が生えたかを
見ようとして私(わたし)の来たのに対し
それは恐ろしい二種の苔で答へた
その白つぽい厚いすぎごけの
表面がかさかさに乾いてゐるので
わたくしはまた麺麭ともかんがへ
ちやうどひるの食事をもたないとこから
ひじやうな饗応(きやうおう)ともかんずるのだが
(なぜならたべものといふものは
 それをみてよろこぶもので
 それからあとはたべるものだから)     
ここらでそんなかんがへは
あんまり僭越かもしれない
とにかくわたくしは荷物をおろし
灰いろの苔に靴やからだを埋め
一つの赤い苹果(りんご)をたべる
うるうるしながら苹果に噛みつけば
雪を越えてきたつめたい風はみねから吹き
野はらの白樺の葉は紅(べに)や金(キン)やせはしくゆすれ
北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる
  (あれがぼくのしやつだ
   青いリンネルの農民シヤツだ)












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