一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

「尺岳~皿倉山」 ……九州自然歩道の元標をめざして……

2008年04月20日 | 山岳会時代の山行


国見山、黒髪山、八幡岳、天山、金山、背振山、蛤岳、九千部山など、
佐賀県の有名な山を歩いていると、
必ずと言っていいほど「九州自然歩道」に出会う。
いや佐賀県内にとどまらず、九州内の主だった山に出かけても同じようなことが言える。
よく整備された道もあれば、道標が朽ちて倒れていたりする廃道のような道もある。
舗装されたことによって、とても自然歩道とは呼べないものになった道もある。
そして、新しい道ができたことにより、残念ながら消えてしまった道もある。
九州自然歩道が誕生したのが1981年。
もうすでに27年が経過している。
ロングトレイルとして誕生した頃は、きっと素晴らしいコースだったに違いない。
だが、時代の変化と共に、九州自然歩道も場所によっては廃れ、その本来の目的を失いつつある。
それでも、現在でも、九州自然歩道にこだわって、そのルートを歩き続けている人は少なくない。
九州自然歩道をすべて踏破するために、旅行会社やアウトドア店によってツアーが組まれたりもしている。
九州自然歩道は、なんとなく気になる存在だ。

その気になる「九州自然歩道」のスタート地点が北九州の皿倉山にある。
今回の、からつ労山の月例山行は、尺岳から九州自然歩道を逆に歩き、皿倉山にあるという九州自然歩道の元標をめざす。
今回参加したのは33名(一般参加4名を含む)。
Aコース(畑観音~尺岳~市の瀬峠~皿倉山~河内貯水池)
Bコース(西花尾山登山口~花尾山~帆柱山~権現山~皿倉山~河内貯水池)
Aコースの方がちょっとハードで、約6時間のコース。
参加者にコースを選択してもらうと、ほぼ半々に分かれた。
Aコース16名、Bコース17名。
私はAコースを選択。

07:30
畑観音に到着。A班の16名が降り、バスはB班の17名を乗せて、西花尾山登山口に向かった。
A班は、登山準備、ストレッチの後、初参加の方がおられたので、それぞれ自己紹介をする。
07:42
畑観音を出発。


大都会の近郊の山にしては、自然が豊富に残っている。
珍しい花ではないが、春の花がたくさん咲いていた。
シャガの花は、とりわけ多かった。


カキドオシもいっぱい!


クサイチゴの白い花も美しい。


尺岳に至る登山道は、ほとんどが自然林で、気持ち良かった。


水場も多く、湿った場所には、ヤマネコノメソウ(花後)があった。


08:54
尺岳の肩を通過。
08:56
尺岳平を通過。
09:00
尺岳山頂に到着。
素晴らし眺め。
福智山が見えた。


これから向かう皿倉山も見えた。


あまり見かけないスミレが山頂に咲いていた。
シハイスミレ……かな?


09:08
尺岳山頂を出発。
しばらく歩いた所で、フデリンドウを発見!


この花を見ると、私は何だかとても嬉しい!


尺岳から市の瀬峠の間は、美しい縦走路が続くのだが、残念なことにタイヤの跡がある。
モトクロス用バイクか、マウンテンバイクのようだ。
自然歩道のあちこちに「バイク・自転車乗り入れ禁止」の看板があるから、珍しいことではないのだろう。
背振山系の石谷山~九千部山の縦走路でもタイヤの跡を見たことがあるが、林道が山頂付近まで延びている山の宿命なのだろうか。
モトクロス、マウンテンバイク、トレイルランニングと、山中を競技の場にしたものが増えてきた。
バイクや自転車や人の足で、登山道を走り回る。
個人的に楽しむだけでなく、スポーツ競技として順位をつけたりもする。
それだけ必死に走り回るので、周囲の野草や樹木には目がいかない。
登山道は轍ができ、荒れ、木の根は傷めつけられ、野草は踏みつけられる。
自然歩道の本来の目的は、自然とのふれあいであった筈だ。
それが今、自然歩道は、優劣を競う競技の場になっている。


09:43
かえで峠で休憩。
10:00
「田代別れ」を通過。
10:26
観音越を通過。
10:45
双伍山山頂近くで休憩。
11:34
田床峠を通過。
11:55
市の瀬峠に到着。
ここで昼食。


12:40
市の瀬峠を出発。
ここから皿倉山の間でも、いろいろな植物に出逢った。


何種類ものスミレ。


ちょっと不気味なコウライテンナンショウ。


13:26
権現山分岐に到着。
ここで16名の内10名が権現山に向かう。
残り6名は、そのまま皿倉山へ向かう。
13:38
権現山山頂に到着。
ここには誰もいなかった。


13:56
皿倉山山頂に到着。
さっそく、九州自然歩道の元標の所に行ってみる。
そして、ガッカリした。
柵がしてあって、近づけないのだ。
どうやら芝生保護のためらしい。
何の為の芝生なのだろう。
ケーブルカーでも車でも登れる山なのだ。
大勢の人が山頂を訪れる。
芝生にしていれば、当然はげる。
はげるから柵をして入らせないというのは本末転倒ではないか?
何が自然歩道だ!
九州自然歩道の元標の周りは、芝生なんかじゃなく、自然の野草でいいじゃないか!


柵越しに、元標(裏面)に書かれている言葉を読む。
そこには、こう書かれていた。

「自然歩道の効用は、体力をつくること、もう一つは自然に親しむことである。将来自然歩道で体力増強のための競技が行われることがあれば、大変不幸なことだが、そのときはちゅうちょなく一番遅かった人に賞を与える。」

長距離自然歩道提唱者ベントン・マッケイの言葉とある。
ベントン・マッケイといえば、世界最初の自然歩道「アパラチヤン・トレイル」の提唱者。
九州自然歩道を誕生させた時、こんな素晴らしい言葉を元標に記しているのだ。
それなのに、27年後の今は、元標の周りには柵が設けられ、自然歩道は、バイクや自転車やトレイルランナーが走り回る。
ベントン・マッケイの言葉が、なんだか今という時代を予言していたようで、皮肉な結果となっている。


元標に触れることもできずに、そこを離れる。
皿倉山山頂は、鉄塔やアンテナが建ち並び、とても山頂とは思えない風景だ。
だが、嬉しいことに、皿倉山からの眺めは素晴らしかった。
いつまでも眺めていたいほど素晴らしかった。
冷たい風が、6時間歩いてきて火照った躰に心地よかった。
下山の声が掛かり、立ち去ろうとした時、スロープカーが上がってきた。


私は、いつの日か、またこの場所に立つことがあるだろうかと考えた。
もし、その日があったとして、その時には、元標に触れることができる山頂であって欲しいと心から思った。

※尺岳山頂、皿倉山山頂での集合写真は、からつ労山HPの方に後日掲載されます。

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4 コメント

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美しい花々 (タク)
2008-04-23 05:21:57
コスモスさんへ
いつも見てくれてありがとうございます。
お仕事が忙しくて、大変ですね。
山登りがしたくて、ウズウズしているのではないですか?
3月の岩宇土山は、フクジュソウが本当に素晴らしかったです。
コスモスさんにも見せたいと思いました。
今月の尺岳・皿倉山も、フデリンドウなど、春の花いっぱいでした。
GWには、テントを担いで屋久島縦走します。
そして、5月の月例山行は天主山。
ヤマシャクヤクが有名な山です。
コスモスさんが参加できないのは、本当に残念!
このブログに、縄文杉やヤマシャクヤクの写真を載せますので、6月迄はそれで我慢して下さいね。
6月は平治岳でしたね。
ミヤマキリシマが満開だとイイですね。
コスモスさんが参加されていない間に、新しい人が4人ほど入会されましたよ。
では、6月に平治岳で逢いましょう!
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登山がしたい (メイビ 「コスモス」)
2008-04-23 01:07:36
タクさん お久しぶりです。いつも ブログ拝見してます。先月の福寿草もきれいでしたね。今回もフデリンドウの水色の花を始めて見ました。ありがとうございます。6月の登山には行きますのでその時はよろしくお願いします。
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見直す時期に (タク)
2008-04-22 21:37:56
そよかぜさんへ
私も九州自然歩道の元標にタッチできるものと思っていました。
まさか柵がしてあって、近づくこともできないとは……
ビックリです!
写真でも分かる通り、かなり広範囲にわたって立入禁止になっているのです。
柵の内側にはベンチなどもあり、なんだか寒々とした風景でした。
元標はもとより、自然歩道全体を見直す時期が来ているのかもしれませんね。
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自然歩道 (そよかぜ)
2008-04-22 20:45:34
私も自然歩道を歩いたことがありますが、今や自然とは程遠い車道歩きも多く、少々うんざりします。
確かに、素晴しい道もたくさんあるのですが、舗装道路に寸断されていますよね。
皿倉の現状を見ると、釈然としませんね。九州の自然歩道の出発点でありながら、芝生なんて・・・ ただの草原で十分なのに。
タクさんの怒りがよくわかります。
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