8時半起床。インスタントコーヒーとイギリストーストの朝食。まだまだ荷物は片づかない。が、やはり春休みに一度くらいは純粋な旅行というものをしてみたい。こんなご時世ではあるけれど、列車の旅に出ることにした。
弘前駅に行く。予めきっぷは取ってある。改札口の前に出ている出店で駅弁を買う。この駅から列車に乗るというのも震災以後初めてだ。ダイヤはほぼ通常に近くなってはいるが、五能線あたりは「リゾートしらかみ」が運休していたりする。滅多に見かけないキハ40の深浦行き単行が停車していた。

秋田行きの「つがる4号」に乗り込む。進行方向に向かって右側の席に座る。慣れ親しんだ風景から、少しずつ山間へと入っていく。空は重たく曇っていて、まだ田畑には雪がある。

お腹が空いてきた。秋田までの時間を計ってお弁当のフタを開ける。「母っちゃのにぎりまま弁当」である。若布のおにぎり、高菜のおにぎり、紅ショウガのおいなりさんに、イカメンチ、細竹とみがきニシンの煮物、嶽きみ、ほたての串焼き、りんごの山ぶどうシロップ煮といったものが入っている。コンパクトだが味は◎だ。うまかった。

秋田駅定刻着。以前は新潟まで「いなほ」が通しで走っていたが、今はここで乗り換えなくてはならない。すぐ向かいのホームで「いなほ10号」が待っていた。


指定席はかなり混んでいる。自由席は空いている。今は青森方面から鉄道だけで東京方面に出るのにこのルートしかないから、仕方がないところか。
海側の席に座り、ぼんやりと景色を眺める。そのうちに日本海が見えてきた。波は至って穏やかだ。海沿いの道をタンクローリーや貨物を満載したトラックが北に向かって走っていく。

酒田・鶴岡のあたりからどっと人が乗り込んできて、座席は満席になった。立客もいる。これまでに乗ったこの列車では、ここまで混んでいるということはなかった。それでも車内は静かである。大学生と思しきグループからも、おしゃべりの声が聞こえてこない。列車は淡々と走る。日没まではまだかなり時間があるが、少しずつ陽が傾いてきた。

こちらも定刻通りに新潟に着いた。ホテルにチェックインをしてから出かける。電車のなかでは何も食べなかったので、お腹が空いた。だが夕食にはまだ早い。こういうときには新潟ならではの「みかづき」のイタリアンに限る。バスセンターのなかのお店で食べる。この何ともいえずチープな感じがよい。それでも味は僕好みである。いつもいろいろな味つけを試してみようと思いつつ、結局定番のオリジナルを選んでしまう。

T・ジョイ新潟万代で、2度目の「SP 革命篇」を観る。弘前で観たときよりも大きな画面で迫力十分。パンフレットでちゃんとおさらいをしてから観たから、今度はかなりの程度ストーリーだの伏線だのを理解することができた。これはやっぱり完結しないんじゃなかろうか。何しろ最後にほんのわずかな場面で出てくる看守役に柄本佑を起用している。何となく、こんなちょい役で終わるはずはないんじゃないか、と勘ぐってしまいたくなるのである。その辺もまた作り手の意図だとしたら、なかなか手が込んでいるなあ。
映画館を出て、散歩に出かける。万代橋から川沿いに歩いて、朱鷺メッセの展望台に上る。さすがに高いだけあって、ここからの夜景は素晴らしい。もっとも全体的に節電をしているようだ。こちらも東北電力管内だからだろうか。

今日はここで夕食を、と思っていたお店が2軒続けて休業していた。しかもいずれも定休日ではなく臨時休業というのがついていない。あてもなくぶらぶらと歩いているうちに、雨も落ちてきた。手ぶらで出かけたから、傘も持ち合わせていない。ぱっと目に入った喜多方ラーメンの「大安食堂」というお店に入る。新潟に来ておいて喜多方ラーメンというのもどうかと思ったが、かなり冷えてきたから温かいラーメンがよい。
普通のラーメンと半チャーハンを頼んでみると、これがなかなかうまかった。体も温まって、元気を取り戻す。

店の外に出ると、雨もほとんど上がっていた。万代橋を歩いて渡る。渡ってから、振り返る。その美しさやよし。

ホテルに帰る途中のコンビニで、乾電池式の携帯充電器を購入する。こちらでは当たり前のように、たくさん売っていた。弘前近辺では、すっかり品切れしていて、入荷未定となっている。こんなに違うものかと驚いた。こんなことで、少しばかり遠くまでやってきたのだ、というのを実感する。