少々重い腰を上げて出かける。休日は研究室のスチームは入らないので、ファンヒーター用の灯油を補充する。ガスストーブは新しいものに替わったが、どうも使う気になれない。古いタイプのものはやや大きめで、上にヤカンを載せることができたのだが、今度のはそれができないのもマイナスポイント。
早く明日の授業準備を済ませてしまおうと急ぐ。「笑点」も音声だけ聴くことにした。それでも6時までに片づけることはできなかった。
テレビのみえるところに移動する。一応仕事は続けられるようにしてあるが、もうそわそわしている。昨日の日記には「勝敗はどっちでもいい」などと書いてみたものの、それはウソである。ここまできたら、やはり勝って欲しいのだ。
試合が始まる。幸先よく、片岡選手が出塁し、足を使って3塁へ。そして中島選手の打席。先制点がものをいうところ、ショートゴロに飛び出して挟殺。何だかツキが向こうに行ってしまったような、イヤな予感。
ライオンズの先発は西口投手。故障上がりの奇襲的な先発は、ある意味賭けである。こちらは制球が安定しない。四球、2塁打、四球ときて、挙げ句の果てに暴投であっさり先制を許す。ただし後続を断ち切ったのは後から考えると大きかった。
ほっとしたのも束の間、2回には坂本選手にホームランを浴びる。ただしそれ以外の打者に対するピッチングは、調子が上がっているようにもみえた。それでも代打を送られて早々に交代。またも日本シリーズの勝利はお預けか。大好きな投手だけに、何とかもう一花咲かせてもらいたいのだけれど。
西口投手の後を継いだ石井一久投手は素晴らしかった。滅多にない中継ぎ登板で、ピシャリと抑えて流れを引き戻してくれた。そして代打ボカチカ選手の一発。代わって投げるのはエース涌井投手。よし、行けるぞ、という気分になってきた。
実際、今日の涌井投手は好投した第1戦以上に球が伸びている感じがした。
6・7回は淡々と進んで、8回の表。片岡選手が死球を受けた際、手を叩いて喜んでいたが、僕も一緒になって手を叩く。ここで棚からフラッグを持ち出して、一人振り始める。盗塁に栗山選手の送りバントでランナー3塁。そして中島選手の打球はまたしても3塁ゴロだったが、疾風の如く片岡選手がホームを駆け抜けた。同点。小躍りする。さて、次の1点はどうなるか。この回に取れるのか。
中村選手が敬遠気味の四球、次いで野田選手も四球で歩いて、回ってきたのは平尾選手。手を組んで、祈るように画面をみつめる。ノースリーから1球見送り、次の球も打ち損じのファール。ここまでか、と思ったところでセンター前にタイムリーヒットが飛び出した。旗を振りながら、応援団とともに「地平を駈ける獅子を見た」のサビの部分を歌う。もう大興奮だ。
7回をしのいだ星野投手に代わって8回からグラマン投手がマウンドに上がる。昨日の最後のマウンドを岸投手に譲った鬱憤を晴らすかのごとく、剛球が野田捕手のミットに向かって投げ込まれる。球が揺れて、野田捕手が捕り損ねるシーンがたびたびみられた。第1戦の不安な感じはすっかり払拭されている。
9回の表は、Gのマウンドに豊田投手が上がる。個人的に、最も打ち砕いてもらいたい相手が立ちはだかった。先頭の赤田選手が3塁打を放ち、追加点のチャンスだったが、後続は打ち取られてしまい、無得点。それでも今日のグラマン投手なら大丈夫だと思った。
そして9回の裏。2番・3番・4番と危なげなく斬って取って、ついにやってきた歓喜の瞬間。手を叩き、「よっしゃぁ!!」と叫ぶ。渡辺監督の胴上げを、万歳しながらみつめる。
ファンへの感謝を語る渡辺監督、そしてMVPを獲得した好漢岸投手の、先輩西口投手への思いを込めたインタビューに感動する。これまで何度もライオンズの栄冠を目にしてきたが、正直今年の優勝が一番うれしい。昨年の屈辱を、オフの戦力の流出を、そして低い下馬評を、みんなはね返しての日本一だからだ。
ナマで優勝の瞬間を目撃した師匠(彼は7戦すべて観戦したそうである)と、これを機にライオンズファンになってくれそうな同志と、メールを交換して喜びを分かち合う。ああ、本当にうれしい。
それこそお赤飯でも炊いてお祝いしたい気分なのだが、さすがに独り身でそこまではできないので、自宅に帰り、コーラとポテトチップでささやかな祝杯を挙げる。もちろんスポーツニュースは全チャンネルチェックした。
まだアジアシリーズが残ってはいるけれども、ありがとう、そしておめでとう、われらがライオンズ!!