東京駅の改札を出て、丸ビルのLOFTへ。今日発売の「ほぼ日手帳Spring2009」を買う。まだまだ十分に使いこなすには至っていないが、書きやすい作りとひまつぶしに読むちょっとしたコラムが気に入っていて、今年で3年目になる。
山手線で浜松町に行き、四季劇場へ。途中「らーめん万代」で昼食。本当はお隣のおそば屋さんが好きなのだが、日曜日は休みだ。
せっかく東京に帰ってきたのだから、ミュージカルの1つでも、とチケットは予め取ってあった。最初「ウィキッド」にしようかとも思ったのだが、一度「55 Steps」も観ておこう、ということになったのである。
率直にいうと、あまり期待した舞台ではなかった。ゆえに席も一番安いC席だ。学生のころは、C席よりもさらに安い立見席でよく観た。上方の視界が3階席で制限されるC席よりも、一番高いところから見下ろす感じの立見席のほうが好きだった。
「55 Steps」は、ガラコン形式のショーである。これまでに劇団四季が上演した作品はもとより、それ以外のミュージカルナンバーもラインナップされている。
歌はもちろん舞台と同じだが、ダンスのほうはオリジナルの振り付けである。構成・振付・演出は四季のトップダンサーでもある加藤敬二。今日は出演もしている。
1幕はヴィヴァルディの四季や「アプローズ」のナンバーから。これらはこれまでの「Song & Dance」シリーズでも用いられていた流れ。ただし舞台装置がかなり凝っている。オープニングで登場する、生バンドが2段に分かれたセットが舞台上を移動する。そして「アイーダ」「ライオンキング」「壁抜け男」「マンマ・ミーア!」「美女と野獣」といった作品からのナンバーが続く。大好きな「アイーダ」の曲が3つも入っていて、うれしい。それぞれの曲は性格の違ったものだけれど、うまく「つなぎ」ができていて、テンポがいい。構成の妙である。
上演作品以外には、「ノートルダムの鐘」や「メリー・ポピンズ」、「サウンド・オブ・ミュージック」「リトル・マーメイド」の曲も聴くことができる。観客参加型の「ドレミの歌」は、マリア先生役(?)の井上智恵さんが、雰囲気といい歌声といい、ぴったりはまっていた。舞台に上がって演奏するお客さんだけでなく、客席全体が楽しめるような趣向。
キャストはヴォーカルパートとダンスパートに分かれているが、必ずしも厳密ではない。「ビー・アワ・ゲスト」なんかはダンサーの松島勇気さんがソロパートを歌っていたりもする。ヴォーカルパートのメンバーもしっかり踊る。この辺の器用さは四季の一番の魅力だと思う。
2幕は前半が劇団四季のオリジナルミュージカルから、後半がアンドリュー・ロイド=ウェバー作品といった構成。オリジナルミュージカルの部分は、歌をじっくり聴かせるのが趣旨であるのはわかるのだけれど、リサイタルのようになってしまって、1幕のような躍動感が乏しかったのが残念。それと、1曲1曲はいいのだけれど、バラしてしまうと作品が持っていたメッセージがどこかに行ってしまう。ここら辺は海外作品とオリジナル作品の違いか。何に起因しているんだろう。
ロイド=ウェバー作品は、聴き慣れているとはいえ、やはり振付の面白さで存分に楽しむことができた。「メモリー」は、やはり早水小夜子さんが歌うと、ぐっとくるものがある。
僕にとって一番よかったのは、「ソング・アンド・ダンス」からの「ヴァリエーションズ」。歌詞のない、ダンスナンバーである。先頭で踊っているのは坂田加奈子さん。黒いシンプルな衣装で、7人の男性ダンサーを従えている姿がたまらなくカッコいい。この舞台のお目当ては、何といってもこの人なのだ。「コンタクト」の黄色いドレスの女の印象が鮮烈に残っている。京都の「コンタクト」千秋楽を最後に、しばらく舞台から離れていたようだったが、昨年「CATS」で復帰したのを知った。そちらは観られなかったが、この作品では坂田さんの本領発揮である。
「締め」の「スーパースター」の後、カーテンコールは「クレイジー・フォー・ユー」「マンマ・ミーア!」「ウィキッド」から。「クレイジー~」は最も観た作品だし(だからもっと曲を使ってもらいたかった)、最後の「魔法使いと私」も好きな曲。この辺の選曲は本当に素晴らしかった。十分な満足感に浸ることができた。
作品の世界にどっぷりとハマって観るのもいいが、あまり感情移入することなく、ちょっと引いた感じで音楽と踊りを楽しむこういった作品もいい。思った以上に楽しめた。これならチケットをケチるんじゃなかった。もう1回くらい観られたらと思う。東京にいたときには、授業の後なんかにふらりと立ち寄ったりできたんだがなあ。
劇場を出た後、すぐには帰りたくない気分になるのは今も昔も変わっていない。

帰りの新幹線までは2時間ほどある。中途半端な時間だ。とくに寄るところも思いつかないので、東京駅に向かって歩くことにした。浜離宮庭園沿いの道を歩く。風が強いが、かまわず歩き続ける。汐留のあたりはひととおり高層ビルが建ち揃ったようだ。ますますもって緑とビルのミスマッチに拍車がかかった感じ。

新橋駅のあたりには、ちょっと変わったところがある。築地市場への専用線の跡地にはぽつんと踏切の警報機が残されていたりする。

そしてきわめつけは中銀カプセルタワー。故黒川紀章の代表作のひとつである。周りの超高層ビル群に圧倒されて、ちょっと存在感が薄れてしまったものの、近くに寄ってみると、やっぱりキテレツ。1階にはモデルルームがあって、ガラス越しにビジネスホテルのような機能的な部屋の作りを覗くことができる。

取り壊しの噂もあるようだが、何とか残して欲しいものだ。
歩行者天国の銀座通りを歩く。みゆき通りのところで折れて、有楽町へ。そういえば、こっちのスタバに連続して振られたのを思い出し、行きつけの床屋さんのあるビルの店に行く。ここも混んでいて、座席は埋まっていたが、首尾よく座ることができた。これでやるべきことはやった。よしよし。
有楽町から東京までは電車に乗る。乗っていた山手線と併走する形で寝台特急「富士・はやぶさ」(いわゆる「ふじぶさ」)が東京駅に入線した。ホームまでみに行ってみると、カメラをもったマニアが殺到していた。九州方面のブルトレ消滅まで、いよいよ秒読み段階だ。終焉のときが近づくにつれ、もっとヒートアップしていくんだろうなあ。


弘前駅に降り立つと、ちらほらと小雪が舞っていた。東京ではほとんど着用しなかった手袋を取り出し、マフラーをしっかりと巻いた。