五行目の先に

日々の生活の余白に書きとめておきたいこと。

10月30日(火)曇:ビデオ係

2007-10-31 12:47:47 | 仕事
 まだノドが痛む。いつもより1時間余計に寝て、遅めの大学着。メールの返信を何通か書いていたらすぐに昼休みになる。

 昼食を摂り、午後からのTuesday実習のため、附属中学校へ。学生さんたちの授業を記録するため、ビデオを担いでいく。いや、そんなたいそうなものでもなくて、カバンにコンパクトなカメラを入れ、三脚を持参するだけ。授業準備の間にセッティングをして、あとは回しっぱなし。休み時間もカメラを止めることはせず、そのまま記録し続けることにしている。

 写真と同様、ビデオも液晶モニタを覗いているといろいろな発見がある。実習生のクセ(悪い意味ではなく)とか、退屈してきた生徒が発する暗黙のサインとか。だから直接授業風景をみるよりも、モニタを通じてみているほうが面白い。

 休み時間になると、カメラに興味を示した中学生が寄ってくる。今も撮ってるんですか?と聞かれたので、そうだよ、休み時間の行動も貴重な記録になるから全部撮ってるよ、と答える。ところが、少しして走り回っていた生徒がコードに足を引っかけて、コンセントが抜けてしまった。おかげで前半の部分の映像がパーになってしまった。実習生が注意するかと思ったが、何もいわないので、僕も黙っておく。「恒常的教育実習」なんだから、こういったところにも目配りできるといいのになあ、と思う。

 後期のT実習は、授業の準備や技術という点ではかなりのレベルにあることが、門外漢の僕でもわかる。ただちょっと気がかりなのは、協議の場面で議論される内容が座席の決め方であったり、おしゃべりをしている生徒への注意喚起であったり、個人的には些末な論点にばかり向いてしまっているように思えることだ。今日の授業などは、そもそも授業のプロットにかなり問題があった。そういった点をなおざりにしてしまうようなこの実習のあり方には、やはり疑問を感じざるをえない。

 宿舎に戻り、1時間ほど眠る。頭痛はほぼ治まった。7時ちょうどに大学に着くように車で大学へ。明後日の授業の準備に取りかかる。今年度の後期は木曜日に授業が集中しているので、準備のための時間の配分がちょっと難しい。すでにわずかな貯金は使い果たして、自転車操業になっている。

 帰りがけに音楽家(←誤変換ではない)のI先生と「Cherry's Bar」に寄る。大学院生の指導の話しなどをする。僕など院生を指導教員として受け持つなんて何年先のことなのか、見当もつかないが、院生本人よりも教員のほうが「みえて」しまったとき、どう対処するかは確かに難しいところだ。それが押しつけになることもあるし、そんな押しつけを望む院生もいれば、いやがる院生もいる。学部生の指導とは全然違った難しさがある。

 先生がスミ・ジョーの「オンリー・ラヴ」というCDを貸してくださった。帰りの車の中で聴く。ミュージカル「ジキル&ハイド」の「Someone Like You」と「ミス・サイゴン」の「I Still Believe」がいい。また舞台が観たくなってきた。

10月29日(月)雨時々曇:仮卒論指導

2007-10-30 00:30:50 | 仕事
 朝目が覚めるとノドがヒリヒリと痛む。昨夜寝る前からイヤな予感はしていた。布団に潜ってからも体がゾクゾクしていたのだ。僕の場合、風邪はいつもノドからやってくる。体温を測って、数字はみなかったことにする。ちゃんとみてしまったら、それだけで今日一日気分がなえてしまう。

 タニクリニックの風邪の頓服を飲んで、宿舎を出る。自転車で弘前公共職業安定所へ。人文学部のY先生のお誘いで、昨日から来弘されている「首都圏青年ユニオン」の河添誠さんの弘前職安訪問に同行させていただくことになっている。だが、約束の時間に到着してもY先生しかいらっしゃらない。ちょっと不安になるも、すぐに河添さん、「働く青年つがるの会」のSさん、Nさんがやってこられた。

 雇用指導官の方へのインタビューに同席させてもらう。青森の雇用動向や、職安の活動状況などがよくわかった。僕からも新規学卒就職者の定着状況などについて質問させていただいた。

 1時間ほどの聞き取りを終えて職安の外に出ると、雨が降ってきた。しかも途中から合流した人文学部のK先生のゼミ生2人を合わせると、全部で7人。昼食を食べに行くにしても、車1台では乗り切れない。急いで宿舎に戻り、車で職安に引き返す。2台に分かれて「真そばや 會」に行く。今日の体調からして、あたたかい會そばは実においしく感じられた。ここでは割とざっくばらんにお話しさせていただく。

 大学に場所を変え、今度は河添さんへの聞き取り。青年ユニオンの活動全般から、個別の事例とそれに対する支援活動の内容について、かなり突っ込んだ内容の話しを聞かせていただいた。インターネットカフェに寝泊まりする人びとへの調査の様子についてもご教示いただくことができた。

 3時近くになって、少しお腹が空いたので、パンをひとつ買って研究室へ。頭痛がして、何だかくらくらする。マッサージチェアに腰掛けて、膝掛けを引っ被って少しばかり目を閉じる。あんまり無茶できないトシになったか、と思う。

 少しして、先ほどパンを買った帰りに声をかけられた4年生のYさん、Oさんが研究室にやってくる。卒論に関してアドバイスをください、とのことだった。自分の指導生ではないし、社会学の卒論を書くわけでもないから、ある意味難しく、またある意味気楽といえば気楽である。

 本音をいえば、今日はちょっとしんどいところだったのだが、それでも、わざわざ僕のところまで足を運んでくれたわけだから、レジュメを読ませてもらって、気づいた点をいくつか挙げていく。細かいこと、専門的なところについてはコメントすることはできないが、論文の核となる問いを立てる必要があること、本ではなく雑誌論文レベルで先行研究を渉猟する必要があること、そしてそれらを具体的にどう進めていったらよいか、といったことを話す。いずれもありきたりのことで、すでにそうした指導を受けているのだろうけれど、指導教官の先生とは別の人間がいうと、それはそれで伝わり方も違うだろう、と思った。

 2人がずいぶんと考えあぐねていたのは、どうやってオリジナリティーを出すか、ということだった。確かに卒論においてオリジナリティーを出すことはとても重要だ。でも、どれだけ頭をひねったところで、大学生が半年くらいで考えついたことというのは、たいてい誰かにすでに書かれてしまっているというのがほとんどだ。

 実際、僕の卒論なんていうのもそうである。今読み返してみると、とにかく自分の関心に沿った文献を読み込んで、整理しただけのものだ。自分で「発見」したと思ったことは、少しして先行研究を読んでいったら、とっくに誰かに書かれていて、がっかりした。ただ、そんなとき、指導教官だった大久保先生には、ただの偶然とはいえ、一流の研究者と同じ考えをもつに至ったという経験じたいは自信をもっていい、というアドバイスをもらった記憶がある。このアドバイスを頼りにして、何とか書き上げて提出できたのだった。そんなエピソードも話す。

 2人にそれぞれ思ったことを話していたら、2時間半くらい経ってしまった。あらかたいいたいことはいったので、学食に行き、一緒にご飯を食べながら、しばし雑談。今の4年生というのは、僕とはほとんど接点のないままに卒業していく人たちである。東京に行ったときの話しとか、就職活動のときの苦労などを聞かせてもらって面白かった。

 こちらから実のあるアドバイスができなくても、考えたことを話すというだけで結構ガス抜きになるようである。僕としても、今のゼミ生2人が卒論を書く段になったとき、どのような指導をしてあげたらよいか、皆目見当がつかないところからスタートすることを思えば、このようにトレーニングを積ませてもらえるのはありがたいことである。また必要だったらおいで、といって研究室に戻る。

 今日はどうしても今日中に片づけておきたい仕事がもう1件ある。これがまたなかなか捗らない。どうにもしんどいところなのだが、そんなときに届く1通のメールで気持ちがほぐれる、なんてこともある。一読して、ハハと笑う。おかげで何とかもうひとふんばりすることができた。

10月28日(日)晴:次に向けて

2007-10-29 00:45:39 | 
 7時に目を覚ます。今日は昨日までとはうってかわっての快晴。せめて1日くらいは晴れてくれないとと思っていたので、多少救われた思い。

 割と早く動いたつもりなのだが、ホテルを出たのが7時40分。約束の8時(最終日なので1時間前倒しした)には間に合いそうにない。山手線で駒込に行き、南北線で後楽園に行くルートを考えたのだが、2人の泊まっているホテルには大塚駅前から出ているバスで行くほうが歩く距離は短くて済む。どうせ遅れるのだからとバスを選択。日曜の春日通りは空いていて、バスはすいすいと走る。30分くらい遅れるかと思ったが、8時15分に到着した。

 まずは東京駅に行き、コインロッカーに荷物を預ける。東京駅構内には多くのコインロッカーがあるが、たいていすぐに満杯になってしまう。1つのコインロッカーを求めて構内をさまよい歩くことも珍しくない(一昨日がまさにそういう状態だった)。今日は最初から3人分をしっかり確保できてよかった。

 2人の希望で浅草に行く。上野で銀座線に乗り換え、田原町で降りて、まずは合羽橋道具街を歩いてみる。閉まっている店が多かったが、食品サンプルを売っているお店はやはり興味を引いたようで、あれこれ手にとって眺めてみる。新仲見世のほうから浅草寺に向かう。途中で脇にそれて、「満願堂」の芋きんを買い、食べながら歩く。

 雷門の前で記念撮影。シャッターを押してくれる人を探すのに手間取っていたら、人力車引きのお兄さんが撮ってくれた。浅草は好きな場所で、時々訪れていたが、雷門をしっかりみたのは初めてかもしれない。



 日曜日ということで、仲見世はかなりの人出である。



 両側の店を時々覗きながら、まずは浅草寺へ。丁寧にお参りをしてから、おみくじを引く。僕のは「凶」。専用の結び場所に結びつける。何でも「凶」だけ結んで、それ以外は持ち帰るようにとのことだ。先日の岩木山神社のときは「吉」だったから、とりあえず岩木山のほうを優先して信心しよう。

 仲見世を戻る。2人はアニメキャラクターのおみやげ探しに余念がない。僕は僕で観光地のおみやげ店ならではのキッチュなものを探す。

 吾妻橋のたもとから出る水上バスに乗ろうということになった。いいお天気だし、開け放たれた窓から眺める川沿いの町並みはよろしかろう、ということで。何となく、以前よりも川べりのビニールシートの数が減っているような気がする。

 浜離宮で下船する。そのまま浜離宮庭園を散策。以前ゼミで、弘前に来たときに印象的だったのは緑が少ないことだ、といったことがある。もちろん、弘前公園のような緑豊かな場所はある。しかし、気候的に木を保全するのが大変なのか、うちの大学などは意外と緑の少ないところだと思う(決してないわけではないけれど)。その点実は東京は結構緑地帯が多い。浜離宮もそのひとつで、とても都心とは思えないほどに豊かな緑が広がっている。



 汐留で軽くパスタを食べてから、銀座線で渋谷へ。帰りの新幹線の時間から逆算して、1時間に満たない時間しかないが、ひととおり歩き回ってみる。センター街などは、日曜のお昼ということもあってか、自警団の姿はみえなかった。以前と比べると、やはり「安全度」が上がったような印象をもつ。

 東急百貨店、パルコ、西武百貨店、マルイといった店の前を通り、それから細い道に入って、坂を下るというのを何回か繰り返す。坂を歩くことで渋谷の地形がよくわかる。そしてこの複雑な地形もまた、ポケットというか、裏店というか、そういったところの多い渋谷を支える重要な背景になっている。

 渋谷ハチ公口に展示してある、かつての東急デハ5000形の内部に入ってみる。昭和29年に登場した、張殻構造の軽量高性能車両である。片面だけシートが設えてあって、かつての渋谷駅周辺の写真なども展示してある。運転席から眺める交差点の風景というのも面白い。



 ついでにハチ公像もカメラに収める。待ち合わせによく利用していたのはいつも夕方から夜だったから、白昼この像をちゃんとみたのはこれが初めてかもしれない。



 そろそろ時間だ。山手線で東京駅へ。もう1日東京に滞在するWさんと別れ、Aさんと新幹線に乗り込む。

 少し疲れが出て、時折ウトウトする。目を覚ましては、しばらくAさんと話す。どうしてうちのゼミに来てくれたのか、といった話しは何となく聞かせてもらっていたが、教育学部を選んだ理由とか、子どものころ、将来何になりたいと思っていたか、といったことを聞くのは初めてである。僕自身はどうであったか、ということを返しつつ、とても面白く聞かせてもらった。今回はゼミ生2人の間でも、これまで以上にあれこれ話す時間をもてたようである。

 今回の巡見で、2人とってとくに印象に残ったのは、やはり大久保先生との出会いと、隊長の案内で見学したネットカフェだそうである。いずれも人を介しての機会である。町をみる、といっても、人あっての町なわけだから、それぞれの機会を用意してくださった人々に感謝してくれるのは僕としてもうれしいことである。

 同時に、今回みられなかった場所についても、新たな関心がわいてきたようである。そもそも、東京という町はたかだか2泊3日くらいでわかるものではない。だからこそ、また足を運んで、より多くのことを見聞きしたいという意欲が彼女たちに湧いてきたのだとしたら、今度の巡見はひとまず成功である。次回は、もっと積極的に、自主的に巡見プランを組んでくれるよう、期待している。費用的に、そう簡単にできるものではないが、僕としても今から楽しみである。

 青森で下車したAさんを見送って、弘前に戻る。夕食後、少しだけ大学で仕事をしてから「花の湯」へ。ここ2日ばかり入れなかった広い風呂を楽しんで、しばし疲れを癒す。

10月27日(土)雨:雨降る東京

2007-10-28 22:08:04 | 
 朝7時半に起きる。昨夜はブログを書いているうちに眠ってしまい、ふと目覚めて4時過ぎくらいにベッドに潜り込んだのをかろうじて覚えている。ホテルの1階で配給されるパンとコンソメスープ、コーヒーを部屋に持っていって食べる。

 蒲田から水道橋に向かう。ゼミ生の2人には9時に迎えに行くと伝えてある。しかし少々遅刻して9時15分に着く。本来ならば今日は浅草に行く予定だったのだが、この雨ではちょっと無理そうだ。予定を変更してお台場に行くことにする。

 新橋からゆりかもめに乗る。せっかくなので1本待って一番前の席に座る。だが雨でガラスが曇ってしまい、迫力はいまひとつ。青海駅で下車して、「VenusFort」へ。しかし開店は11時で、まだ30分ほどある。せっかくなので観覧車に乗る。相当見晴らしがいいはずなのだが、こちらも視界がかなり制約される。下りてから、隣の東京レジャーランドでエアホッケーとビリヤードボウリング(?)を楽しむ。どうせこの雨では屋外でカメラを構えることはかなわない。ならば遊びに徹しよう。

 外は荒天でも「VenusFort」の内部はいつでも青空である。これぞまさしきシミュラークル的空間。2人はひよこのぬいぐるみのお店あたりをチェックしている。小腹が空いたので、「チーズケーキファクトリー」で小休止。何も弘前にあるお店でなくても、と思ったけれど、無性にチーズケーキが食べたくなったので。

 青海から豊洲に出て、「ららぽーと豊洲」に行く。雨だけでなく風も強くなってきた。この内部にある「キッザニア」を見学しようということになった。しかし予約がいっぱいで、当日券だと相当待たされそうなこと、結構入場料が高いことなどを勘案して、とりあえず今日は見送り。こういうのを利用する場合には事前情報の収集が必要なのだと知る。

  「ららぽーと豊洲」もジャスコ的な場であることは確かなのだが、青森のジャスコとは趣を異にする。その違いは何だろうと話す。とりあえずの結論は、前者には高齢者の姿がほとんど見あたらないということだった。

 豊洲から月島へ。かねてから東京に行ったら月島でもんじゃを食べようということになっていた。何度か行ったことがある「近どう」というお店で食べる。まずは僕が焼いてみせて(お手本にはならなかった)、それから店員さんに焼いてもらう。少し体が冷えていたから、鉄板の熱を感じながらのんびりおしゃべりしつつ食べるというのはいい。締めにはあんこ巻を頼む。もんじゃ焼き屋が並ぶ月島の中で(僕自身はこの光景はあんまり好きじゃない)、ひときわ魅力的な路地をいくつか覗いてみる。

 大江戸線で六本木へ。六本木ヒルズに向かおうとしたが、あまりの風雨の強さに断念。雨に濡れずに行ける場所、ということで羽田空港に行くことにする。「はやて東京フリーきっぷ」でモノレールが無料で乗れるのも好都合。空港第二ビルでおみやげを選ぶ。展望デッキまで上がってみたが、台風接近で開放されていなかったのが残念。

 浜松町まで引き返し、京浜東北線で蒲田に向かう。調査で張り込んでいた隊長と合流する。せっかくなのでインターネットカフェに入ってみる。ゼミ生の2人もテレビのニュースなどである程度のことは知っていたようだが、実際にみてみるといろいろと驚くことがあったようだ。

 いい時間になったので、夕食に。大久保先生のブログにしばしば登場している、とんかつの「鈴文」に行ってみる。事前にお電話で行き方を教えていただいた。隊長と僕は特ロースかつ定食を、2人はヒレかつ定食を注文。出てくると、特ロースかつはものすごいボリュームである。こんなに分厚いとんかつというのを、僕はこれまで食べたことはない。しかもやわらかく、それほどしつこくもない。とてもおいしい。先生が書かれている作法にならい(?)、最初は塩で、それからしょうゆを試して、ソースで食べる。だが、あまりのボリュームに、各自ひたすら一心に食べるといった感じで、しばらくはみんな黙々と食べていた。すっかりお腹がふくれた。あまりある満足感である。

 2人には、一足早く水道橋に帰ってもらった。無事戻れるか気をもんだが、ちゃんと到着後に連絡をくれ、安堵する。

 隊長と僕は昨夜と同様に張り込む。限られた時間ではあったが、何人かの方に応じてもらうことができた。とくに、最後にお話しを伺った方は、本来の調査の趣旨からは外れていたものの、とても印象深いライフストーリーを聞かせてくださった。家業継承といったことの難しさを考えさせられた。中小自営業の多い大森や蒲田といった土地ならではの事情というものを知る。こういったことがフィールドワークの面白さなのだろう。前回もそうであったが、自分の研究と直接関わるかどうかとは関係なしに、フィールドから得ることはとても大きい。

 夜10時半を過ぎて、ようやく雨も上がった。今回はここでおしまいということで、電車に乗る。車中で、前回の調査で感じたことと、今回の調査との違いをあれこれ話す。やはり蒲田まで足を運んだことの意義は大きかったように思う。隊長は新宿で下車し、僕は大塚まで行く。今日はパソコンなど、重い荷物を全部持っての移動で、ちょっとこたえた。隊長にはその点気遣っていただいたが、大丈夫。

 空も少しずつ晴れてきた。巡見最終日の明日は、いい天気になって欲しい。

10月26日(金)雨時々曇:先生の先生に会う

2007-10-27 02:50:53 | 

 朝10時過ぎに実家から昭島駅まで送ってもらう。乗るつもりだった青梅特快が車両故障によって運転中止とのアナウンスを聞く。迷惑なのは確かだが、中央線のトラブルによる遅延は、ちょっと懐かしい感じがする。

 今朝青森からやってくるAさんWさんとは東京駅の銀の鈴広場での待ち合わせ。ところが少し早めに銀の鈴広場に着いて驚いた。かつてと趣きが全く違っている。昨日オープンしたばかりの「GRANSTA」の中に銀の鈴は鎮座していた。

 しばらくして2人と無事落ち合うことができた。まずは荷物を水道橋のホテルに預けに行く。そのまま文京シビックセンターまで歩いて、25階のレストランで昼食。大学院時代にお客さんがあるとよくここを利用していたのだが、ずいぶん眺めが変化したような気がする。

 水道橋から秋葉原へ。再開発終了後の秋葉原に行くのは初めて。真新しい高層ビルを見上げる。

 少しばかり町を歩く。2人はチラシを配るメイドさんに驚いていた。実物をみるのはもちろん初めてとのこと。

 今日は天気も今ひとつで、それほど多くの場所を回ることができそうにない。とりあえず上野動物園に行くことにした。動物園に着くまでの道すがら、上野公園内では大道芸人のパフォーマンスをみることができた。

 動物園に入ると雨が本格的に降り出してきた。少し急ぎ足で園内を回る。いろいろな動物の中で、依然としてパンダの存在感は抜きん出ている。今後も主役の座を譲ることはないだろう。雨にもめげず、くまなく回って歩く。モノレールに乗って東園にも足を伸ばす。ペンギンなどは雨もおかまいなし。

 小動物館の珍しいネズミなども面白かった。閉園ぎりぎりまでいて、土砂降りの中を上野公園を抜け、銀座線、東西線と乗り継いで早稲田に向かう。

 お約束の時間より10分ほど遅れて大久保先生の研究室にお邪魔する。まずは自己紹介をする。2人は多少緊張していたようだが、先生のフレンドリーな話しぶりにすぐになじめたようだった。6時限の「社会と文化」という講義を聴講させていただく。先生にお会いすることはもちろんだが、ぜひとも生の講義を聴いてもらいたかった。達人の講義とはこういうものだということを実感できる機会というのはそうそうあるものではない。

 もともとは僕からもちかけた話しだったのだが、当初から2人は結構乗り気だった。日ごろから大久保先生の影響というものを折りに触れて話してきたからかもしれない。第三者的にみても、自分の先生の先生に会うというのは意外と面白そうではある。僕は学生の時分に大久保先生の先生(のお一人)の授業も受けていたから、それほどありがたみを感じることはなかったのだが。

 「社会と文化」の授業は、「近代社会と『個人』崇拝」というテーマで、近代化過程において「わたし」というものが大切なものとして考えられるに至る経緯についてであった。前半は社会移動や都市化による個人の析出過程について解説し、途中ETV特集「日本人と自画像」の映像が用いて、絵画による自己表現のもつ近代性を示した後で、相互作用によって作られる自己イメージを図式的に示す、といった内容だった。マクロな構造の変化のレベルの問題と、ミクロな相互作用という、異なったフェーズを映像を挟んでつなぎ合わせているのは見事のひと言である。先生がとりわけこだわっているとおっしゃっている、プロットの妙である。

 あわせて感心したのは、とにかく授業を聴く学生の静かなこと。夜間学部の授業ということもあるが、先生の冗談に反応があるとき以外は、それこそ水を打ったような静けさである。うちの大学の授業も私語は少ないほうだと思うが、ここまでではないなあ。

 早稲田駅前の「秀永」で夕食。4人で座るには少々狭いテーブルだったが、この店の味は以前と変わっていない。4つのメニューを頼んで、少しずつつつきながら食べる。授業の感想なんかをおしゃべりする。ゼミ生の2人もよくしゃべっている。2人とも、普段は割とよく話してくれるが、初対面の人、それも大学の先生とあれば話しづらかろうと思っていたが、全くの杞憂だった。

 窮屈な「秀永」から、「カフェゴトー」に場所を移す。ベイクドチーズケーキとチョコレートケーキを注文。ここから話しが意外な方向に進む。まさかこの4人でそんな話しをするとは思ってもみなかったが、結構盛り上がったからよしとするか。当然のことながら、僕は学生さんと接するときはあくまでも「教員」としての振る舞いを前面に出すようにしているから、あまり自己の内面に関わるような話しはしない。だから今夜の話しは、2人にとってはある意味新鮮であったろう。それもこれも大久保先生の「力量」である。しかし、学生さんに人生相談している教員というのもいかがなものかと反省する。とはいえ、とても楽しかった。この楽しいという感覚を、2人も共有してくれたことは、僕にとって何よりの喜びである。大久保先生は、「フィールドノート」のほうで、「後から振り返ったときに、この東京での一夜は高瀬ゼミにとって思い出深い夜となることであろう」と書かれているが、それは本当にそうだろうと思っている。

 もっとお話ししていたかったが、僕には今夜もうひと仕事ある。大久保先生とは飯田橋でお別れし、2人をホテルに送り届けてから蒲田に向かう。すでに隊長と落ち合う時刻を過ぎている。一刻も早く着きたいのに、電車がもたもた走っているように思えてならない。11時を回ったところでホテルにチェックインを済ませ、すぐに商店街に出る。メールを送り、アーケードの中をキョロキョロしながら走る。少しして、向こうからやってくる隊長と会うことができた。早速張り込み調査に合流。 ほっとひと安心。

 少しずつ場所を変えながらの調査。しかし前回の調査以上に応じてもらえない。雰囲気もこれまでみてきた町とはずいぶん違うような気がする。あらためて難しさを実感する。1時過ぎに今日の分の作業を打ち切って、ホテルまで帰る。途中「サンロード蒲田」といった商店街を抜ける。平行する「サンライズ蒲田」よりこちらのほうが雰囲気的に好き。池上線のガードの脇(と下)には、「バーボンロード」という昭和の雰囲気そのままの飲み屋街もある。隊長同様、僕も蒲田という町がすっかり気に入ってしまった。

 ホテルに帰り、シャワーを浴びる。明日ちゃんと早起きできるかが唯一の気がかり。初日から、相当な充実ぶりだ。


10月25日(木)晴:夕刻発

2007-10-26 00:02:06 | 

  昨夜は朝7時半に目覚まし時計をセットした。だが起きられない。もう30分余計に寝ることにして、8時に目を覚ます。いつもより1時間ほど早起きなのは、今日のゼミの文献報告のレジュメができていないからである。昨夜干しておいたシャツが乾いたのを確認して、カバンに詰め込む。東京出張の準備も整っていないのだ。ドタバタと宿舎を出る。旅行に必要なものは衣類以外は研究室にある。何とかなるだろう。

 研究室に着いて、隊長に現地での宿泊先の案内メールを送ってからレジュメを作る。文献報告の担当は、ゼミ生が2人しかおらず、隔週になってしまうのはさすがに大変だろう、という配慮から僕も加わることにしたのだが、担当教員がこのざまではどうにも示しがつかない。何とか2コマの授業が始まる10分前にできあがった。その間、2コマの総合演習の学生さんがレジュメを持ってきたので、コピーする。僕のものよりずっとちゃんとしているので、ますます恥じ入る次第。来年度からゼミ生が4人になれば、僕は当然外れるつもりでいる。

 2コマの総合演習は、加瀬和俊さんの『集団就職の時代』を読む。先週の「裸の十九才」のイメージと重ね合わせながら議論する。少し毒を含んだ議論かとは思ったが、求人と求職それぞれのミスマッチが、「教育」の論理をかぶせることで隠蔽されてしまう構造をどのように評価するか、みんなに考えてもらった。

 昼休みに事務方への書類を提出しに行く。隊長のところに寄って簡単な打ち合わせを、と思ったが、お忙しそうだったので直接現地で、ということにする。おかげで多少の時間的余裕ができた。生協の弁当(中華丼とチャーシューサラダ)を買い、youtubeを観ながら食べる。

  3コマの比較社会学は質的調査法について話す。例によって終わりの25分ほどは実践に充てる。2人1組になって、一方は「朝起きてから家を出るまで」について、もう片方は「今日の昼食」について、それぞれ3分ほどで聞き取りをしてもらう。これは単に聞き取りをやってみることそのものに意義があるのではなく、聞き手によって引き出せる情報量には違い(差)があることを身をもって実感してもらう(来週その事例集を配布するので、そこであれこれ気づいてもらえるだろう)ことをねらいとしている。こういう作業をしてもらうとき、うちの学生さんはちゃちゃっと動いてくれるのでとてもやりやすい。

  授業後の休み時間に技術科のS先生とお会いする。カリキュラムの件でご尽力いただいたこと、それから新ゼミ生を紹介してくださったことにお礼を申し上げる。今度来てくれる人は、S先生のところに相談に行き、そこで先生が僕のところに行ってみてはどうかと勧めてくださったのだ。

 
引き続いて研究室でのゼミ。今日はいつもより30分短く、きっちり1時間で行う。『東京から考える』のⅢ章を読む。六本木(ならびに恵比寿)と足立区の格差が、単純な二項対立的なものではない、という議論に面白さがあるのだが、シミュラークル的都市なんていうのは今回の巡見で押さえておきたいポイントだから、なかなか有意義な話しができた。明日の集合時間や場所を確認して、研究室を出る。

 16時少し前に弘前駅に着いて、「つがる30号」に乗り込む。去年の今ごろは毎週この列車に乗って東京に帰っていた。最近は東京に行く際にはいつも朝方の列車を利用しているから、久々の夕刻発である。そういえば向かい側のホームの「リゾートしらかみ」をみながら出発していたっけ。

 少しばかり走り出すと、岩木山の全容をみることができる。まぶしい夕日の中にみえる岩木山の美しさは格別である。

 1年前はとにかく無我夢中で、そして慣れないことに不安を抱いてばかりで、落ち着いて景色を楽しむこともあまりなかったように思う。1年経って、多少余裕がでてきたということか。昨年と決定的に違うのは、今は心の支えとなるような人々とのつながりを得たことである。秋という季節と、夕方という時間のせいか、そんな1年の重みをしみじみと感じながら、東京に向かっている。時刻はもうすぐ8時になろうというところだ。


10月24日(水)晴:打ち上げ

2007-10-25 01:50:40 | Weblog
 昨夜遅かった分、いつもより30分ほど遅く起きる。幸い、午前中はこれといった仕事がない。正午から会議がひとつ。これも思ったより早く終わった。

 スコーラムで昼食。食後のコーヒーを飲んでいたら、サッカー帰りのH先生と妹さん、社会学のY先生と民俗学のY先生にお会いした。席を移動して、話しに加わる。妹さんは夕方の飛行機で帰られるそうだ。思いがけずもう一度ちゃんとご挨拶することができた。せっかくなので教育学部もみていってください(人文学部よりボロイので)、と研究室に来てもらう。もともと学校の先生をされていた方なので、いつか戻っていただく日のために、と新書を2冊進呈する。

 しばらくして、金曜日にゼミの相談に来てくれた学生さんがハンコをもらいにやって来た。これで何とか来年度も2人のゼミ生(今回決定したのは生涯教育課程で、教員養成課程の学生さんはもっと先になって所属ゼミを決めることになっている)を迎えることができそうだ。同級生の存在というのは大きいから、どうしても1人よりは2人のほうがいいのである。今いるゼミ生をみていても、2人の相互作用で伸びてきている部分が大きいように思うのだ。

 夕方、駅ビルで東京へのおみやげのしかないせんべいを買う。今日は顔なじみの店員さんがいて、挨拶する。2Fのドトールでミルクレープとコーヒーでしばしブレイク。

 一度大学に戻ってから、桔梗野の「ど田舎」という居酒屋での、鰺ヶ沢の調査実習の打ち上げに顔を出す。現地での発表からちょうど1ヶ月ほど経ったことになるのだが、僕自身は2、3ヶ月前くらいのことのように思える。そのくらいこのひと月がいろいろあったということなのだけれども。

 幸いなことに、メンバー6人が全員顔を揃えることができた。現地に一緒に調査に行ったりはしても、ゼミ生のWさんを除けば、日ごろはあまり接点のない学生さんたちである。そういえば、学生さんたちだけと飲みに行くというのは、弘前に来てから初めてかもしれない。

 調査の思い出話から、教員の評判、さらには個々の恋の話しに至るまで、若い空気にたびたび圧倒された。自分自身のことを突っ込んで聞かれたりすると、もうたじたじである。

 今振り返ってみても、われわれの報告はかなりの水準のものだと思っている。手前味噌ではあるが、地域が抱えている喫緊の問題に、正面から向き合った点では、十分胸を張れるものだったと思う。そして何よりもよかったことは、メンバー同士がとても仲良くやってくれたことだった。同じ地域生活専攻とはいっても、人間関係の粗密は当然あるわけで、その辺のチームワークがカギだと思っていたが、始まってみれば全くの杞憂だった。実際、こうやって全員が集まって打ち上げをできることがその証左である。

 僕自身もそうだったが、調査実習でできたつながりというのは、結構後々まで印象に残っていくものである。各自がこれからも様々な関係性を作っていくことと思うけれども、このつながりというものも大切にしていってもらえたらと思う。それができてくれたら、本当に担当者冥利に尽きる。

 最後にお店の前で集合写真を撮って解散。僕は研究室に戻って、もうひと仕事する。明後日からの東京巡見と調査に備えて、もうひとふんばりだ。

10月23日(火)晴:1週間

2007-10-24 03:13:11 | Weblog
 火曜日と金曜日の朝は、少しだけ起きる時間が気になる。生ゴミの回収が比較的早い(といっても9時前後)からだ。独り暮らしで、食事は学内で済ませることが多いから、そうたまることはないのだが、出せるときにしっかり出しておきたい。

 午前中はあっという間に過ぎて、慌ただしく昼食を摂り、附属中学校へ。出かけようと思った矢先に電話が入って、少し遅れる。ビデオカメラと三脚を抱えて自転車を走らせる。気分はマーク・コーエンのつもり。途中の曲がり角は、富田町ではなく、ニューヨークのつもり。

 今日から後期Tuesday実習の学生さんたちによる授業実践が始まる。かなり手の込んだ用意がなされていた。トップバッターとしての順番が決まったのは2週間ほど前のことだから、決して長いとはいえない期間で、よくぞここまで準備してきたと感心する。授業の展開も、想定外の事態に見舞われながら、よくリカバリーして、最後はしっかり締めくくれていた。課題についても自覚的で、いい実践だったと思う。僕が3年生だったときと比べたら、もちろん受けたトレーニングの質の違いもあるが、本当に大したものだと思う。

 宿舎から車で大学に戻る。すぐに今日の実習の記録を作成する。これが面倒な仕事なのだが、とにかくその日のうちに片づけておきたい。後々になると余計に面倒に感じられるからだ。

 人文学部のH先生から、お寿司を食べに行きましょう、というメールをいただく。妹さんが明日弘前を発たれるので、もう一度I先生、Y先生とご一緒に、とのことだった。というわけで、3日前に「RENT」と「ハチクロ」を観たメンバーが揃う。

 「RENT」といえば、4人の皆さんに気に入ってもらえたのがうれしくて、携帯電話の着信メロディ(着うた)をそれぞれ「RENT」の楽曲に変えた。「Seasons of Love」は、とにかく出だしのこの曲がいいとおっしゃっていたI先生、ミミがお気に入りのY先生は「Out Tonight」、「I'll cover you(Reprise)」はジョアン役のトレイシー・トムズの歌声を絶賛されていたH先生といった具合。といっても、それぞれのメロディは、かけてくださった当人には聞こえないのだから、あまり意味がないような気もする。

 城東の「一休寿司」に行く。このお店に入るのは初めて。2階の座敷に通してもらう。5人なら十分すぎるくらいの広さだ。上寿司に天ぷら、牡蠣、茶碗蒸し、吸い物がついたメニューを頼む。それぞれの先生を取り巻く人々の話しで盛り上がる。H先生を取り巻く人的なネットワークというのは、本当に広い。僕もそんなネットワークのどこかに入れてもらったんだなあ、としみじみ思う。それにしても、妹さんも含めた4人とも、かなりあちこち海外滞在の経験をお持ちなのに対して、僕はほとんど皆無に近い。おかげでその辺の話しになるとすっかり置いてきぼりになる。少し野心的に海外に出て行こうとしなければいけないなあ。こんなことは、おそらく東京にいたままだったら、ほとんど考えることはなかっただろう。

 H先生ご姉妹から順番にお送りする。お2人が車を降りた後で、Y先生が「このメンバー(I先生・Y先生・僕)でこの道ってデジャブな感じ」、とおっしゃった。そりゃあそうだ、3日前にこのとおりに帰っているのである。3人で思わず笑う。Y先生が降り、今度はI先生が「明日は小専(科目名)なんだよね」とおっしゃった。このセリフは、ちょうど1週間前にも聴いたのを覚えている。H先生の妹さんが来られた初日に食事をして、その帰りの車中でのことだった。つまり、それからちょうど1週間なのである。7日間のうち、5日もお会いしていたのだから、自然と親近感が湧くというものである。むしろ、明後日からいらっしゃらないことのほうが不思議な感じがする。それくらい面白い、そしてあっという間の1週間だった。

 I先生をお送りしてから、急に今週の自分のスケジュールを勘違いしていたことに気づく。幸い10時前で、まだ大学の構内に車を乗り入れることができた。研究室に戻って、授業の準備と、木曜日のうちに提出しなければならない書類の作成に従事。今夜も「RENT」をスクリーンに映しながら仕事をする。本編が終わって、ドキュメンタリーのほうにディスクを交換する。何とかここまで、というところまで終わらせて、深夜の帰宅。ちょっと予定が狂ってしまったものの、気分は悪くはない。

10月22日(月)曇時々雨:『新スケープ―都市の異風景―』

2007-10-23 01:05:27 | 読書
 雨が降ったおかげで、いくぶん冷え込みが和らいだ気がする。もうしばらくは自転車で通勤することにしよう。「Rent」を聴きながら自転車をこぐ。

 僕の研究室の電話というのは、そうそう鳴ることがないのだが、不思議と多い日はひっきりなしにかかってくる。今日もそんな一日。それぞれが全く関係のない用件だったりするから、やっぱり不思議だ。相変わらず前の部屋の主にかかってくる電話もあったりする(たいていはセールスである)。

 午前中は事務的な用事を片づけているうちに過ぎる。今度の週末の出張手続きを取る。昼休みになって、昨夜書きかけのままにしてしまった昨日の分のブログを更新する。

 スコーラムで昼食。『繁華街の近代』を読む。しかし、近くのテーブルでゼミが始まったので、どうも落ち着かず、早々に研究室に戻る。

 少し眠くなって、ウトウトする。そんなときにドアをノックする音が聞こえて、慌てて飛び起きる。ゼミ生のAさんがやってきた。紹介したい本があって、持ってきましたとのこと。中央アーキ編『新スケープ―都市の異風景―』(誠文堂新光社)をみせてもらう。

 本の内容の前に、誠文堂新光社という出版社が僕にとってはとても懐かしい。小学生のころ、ここの出版社から出ている二宮康明さんの『よく飛ぶ紙飛行機』シリーズを買っていたのだ。ボール紙のような本を直接切り抜いて作る飛行機が大好きだった。

 『新スケープ』は、とても美しい写真、とりわけその構図がどれをとっても秀逸である。ビルに映った東京タワーの姿や、再開発の波に洗われる西新宿の光景とか、あるいはすでに波に呑まれてしまった南千住あたりなんかもあって、素敵な写真集になっている。Aさんいわく、本書の中で論じられている「東京らしさ」に興味をもったのだそうだ。今度の巡見もまさしく「東京らしさ」を考えるために行くわけだから、格好の参考書になるだろう。コーヒーを飲みながら、1ページ1ページめくって、この新宿の歌舞伎町のあたりは調査で中に入ってみてこうだった、といった話しをする。Aさんにとっては新鮮な風景なのだが、僕にとっては、いずれも懐かしい眺めなのである。

 この写真集からみえてくる「東京らしさ」は、あくまでも建築家の視点から考えられたものである。僕らは社会学の観点で「東京らしさ」を探しに行くわけだから、『新スケープ』と同じものを目指す必要はない。とくに人間をどんな形で捉えられるか、ここがひとつの勘所になるんじゃないかなあ、などと話しをする。こういった対称軸があることによって、社会学的な感性が磨かれていったらいいと思う。

 学生さんにとっては、直接購読するわけでもない文献に2000円近く支出するのは、結構大変なことかもしれないが、この本なんかは後々まで価値のあるものだと思う。先々のことを考えると、こういった投資ができるかどうかが卒論あたりに反映されるような気がする。いい本を紹介してもらった。僕もAさんが帰ってからすぐに注文する。

 一度宿舎に戻ろうとしたときに、ゼミ選びの相談の学生さんがやってくる。ちょっと困ったのは、卒業後の進路に関すること。まだ卒業生を輩出していない僕のゼミとしては、公務員や教員といった具体的な志向を持っている人に対して、そういう方面に向いている、という話しはしづらい。僕自身も、ゼミの活動を職業的社会化に向けていこうという発想が今のところないものだから、要領を得ない答えに終始してしまった。少し申し訳ない気持ちになる。

 車で大学に引き返して、しばし仕事。今日もスクリーンに「RENT」を映しながらパソコンに向かう。ちょうど全編通したところで今日の仕事はおしまいにする。「花の湯」でひと風呂浴びてから帰宅。今週報告担当になっているゼミの文献に目を通して、いつもより早寝することにする。

10月21日(日)曇時々晴:恋愛問答

2007-10-22 12:24:55 | Weblog
 10時少し前に目を覚ます。昨夜はシャワーを浴びただけで寝てしまったので、どこか温泉にでも行こうかと思案する。そういえば昨夜H先生も妹さんと温泉に、とおっしゃっていたのを思い出し、もしよろしければご一緒にどうですか、とお誘いする。先週は連日さんざんごちそうになってしまったから、せめてものお返しに運転手を買って出たというわけ。

 まずは「真そばや 會」で早めの昼食。僕はいつもどおり會そばを注文する。腹ごしらえをしてから、禅林街を経由して岩木山に向かう。禅林街は季節がいいからか、結構な人出がある。ここを抜けると真正面に岩木山がみえる。いいタイミングで空が晴れてきた。

 車中ではたまたま鈴木祥子のCDをかけていた。僕はこの人の曲が大好きで、ドライブのときにはよくかけている。だが、結構知る人ぞ知る、といったアーティストでもある。だから、H先生が「これって鈴木祥子?」とおっしゃったのには驚いた。はじめから知っている人に会ったのはこれが初めてである。ならば、とカーステレオの音量を上げる。  

 岩木山神社に参詣。こちらもこの間嶽きみを買いに来たついでに訪れたときとはうってかわって、すっかり秋といった感じである。すでに大鳥居の前にいたアイスクリーム屋さんも姿を消している。長い参道を登り、手水で清めてから本殿で参拝。



 大きな楼門から参道を見下ろす風景もとても気に入っている。



 お守りを売っているところでお神籤を引く。「小吉」。可もなく不可もなしといったところか。絵馬がかけられているところの脇に結ぶ。他人の絵馬を眺めているのは面白い。切実な願いが、結構ストレートな文体で綴られている。ざっと眺めた感じでは、受験関係が6割、結婚や恋愛が4割といったところか。

 振り返って楼門を見上げる。肉眼では、楼門の向こうに、この神社のご神体である岩木山の山頂がちゃんとみえるのだが、なぜか写真ではうまく撮影できない。



 岩木山神社からすぐ近くの国民宿舎「アソベの森 いわき荘」にある温泉へ。このわずかな移動の間、鈴木祥子の「幸福の樹」という曲がかかったので、その中の一節である

 「男にはいつだって最初の恋、女には最後の恋、それが理想」

という歌詞について、そういうもんなんですかねえ、と2人の女性に聞いてみる。お2人とも、一応そうなんじゃないかなあ、といったお答えであった。うーん、僕は「最後の恋」志向のほうが強いのですがねえ。だとすると、鈴木祥子の詞のセンスはかなりいいところを突いているのだなあ、と改めて感心する。

 広い露天風呂のある大浴場のほうに入る。青森ひばで造られていて、室内に木の香りが漂っている。思ったほど熱くもない。露天風呂と内風呂とを行ったり来たりしながらのんびり浸かる。さわやかな天気といい、実にいい気分。

 帰路は山の斜面を一気に下る感じ。引き続き鈴木祥子をかける。かつて姉妹でよく聴いていたというお2人は、知っている曲を口ずさんでいる。昨日の「RENT」といい、好きなものを共有できる喜びというのは格別である。

 H先生の妹さんを弘前公園で降ろし、大学へ向かう。H先生も僕もやらなければいけない仕事を抱えていて、研究室で作業する。今日は昨日とは違って、時間を気にしながら、結構根を詰めての仕事。

 夜7時半近くになって、食事を買いに構内を正門に向かって歩くと、右側からH先生が出てこられた。これからお帰りになって夕食とのこと。ならば僕も外に食べに行くことにする。車を取りに行って、途中で音楽科のI先生を迎え、駅近くの「味京」というお店に入る。ここの火鍋がおいしいとのことだった。

 I先生、H先生に教えてもらって、初めて火鍋を食べる。漢方薬のような臭いがして、いかにも体によさそうだ。具材は白菜、エビ、ホタテ、お肉とシンプルだが、食べるにつれ体がポカポカと温まってくる。

 鍋をつつきながら、今宵は割としんみりとした、というよりもいつも以上にアカデミックな話しをする。今の社会学の世界において、エスタブリッシュするとはどういうことか、とか、学者のスノビズムとか。いつもとは違ったトーンが、またそれはそれで僕には楽しくもある。昨夜に続いて、「RENT」の世界をどんなふうにみたらいいのか、なんていう話しをI先生がしてくださった。

 その場でも直接話したのだが、僕にとって、今以上の環境というものはありえない。もちろん、不満を抱くことはないではないが、こういったサークルの中に加えてもらえていることは、これまでに経験することのなかった幸福である。

 H先生は早くお帰りになったが、僕は少し話したりないような気分でいて、それを察したI先生が、「Cherry's Bar」に行こう、とおっしゃってくださった。ここでI先生にも、先ほどの鈴木祥子の詞のことをお尋ねしてみる。先生のお答えは、「両方とも、違うようでいて同じですね」とのことだった。その後の解説がとてもいいお話しだったのだが、生憎僕の文章力ではうまくまとめられない。でも、とても腑に落ちるものだった。

 何も真面目な堅い話しばかりしているわけではない。しかし、ひとつひとつの会話を思い出して、反芻するだけで、自分が成長していけるような気がしている。僕の宿舎はニューヨークのイーストビレッジではないけれども、僕はやはり「RENT」的な世界の中で生きている。

10月20日(土)雨:2本の映画とキムチ鍋

2007-10-21 02:19:39 | Weblog
 寝る前から覚悟していたが、途中何度も目が覚める。ようやく落ち着いたと思ったら、今度は外でドリルの音がうるさい。どうやらベランダの改修工事が本格的に始まったらしい。施工業者さんには何の落ち度もないのだが、どうにもかなわない。

 お昼少し前に大学へ行く。いくつかメールの返事を書いて、昼食に出る。その前に隊長の研究室に寄って、調査関係の用事をいくつか話す。当初は学外に食べに出ようと思ったが、ちょっと億劫になった。学食のトレイを手に取ってみたものの、どうも魅力あるメニューに乏しい。結局、生協のコンビニでおにぎりを2つとサラダを買って、研究室で食べる。研究室は底冷えがして、今日は足温器を使い始めた。

 午後はだらだらと仕事をする。集中力がないから、時間の割に大した量をこなせない。今日中に完成させるはずの講義ノートも、半分もできあがらなかった。ちょっと投げやりな気持ちで、雨が降る外を恨めしく眺める。

 夜8時少し前になって、人文学部の社会学のH先生、Y先生、音楽科のI先生を順に拾ってH先生のお宅にお邪魔する。今晩は鍋を食べよう、ということになっている。早くも鍋の季節なのである。H先生のところに伺った際には、映画のDVDを流しながらというのが定番である。今回は僕がイチオシの「RENT」を持参した。

 以前別の知り合いに観てもらったときには、あまり反応がなかった作品なのだが、僕がこれまで観た映画の中では、最も好きな作品である。さすがに音楽家、2人の社会学者、小学校の先生(H先生の妹さん)が揃うと、そのよさを余すところなく感じ取ってくださる。ドラッグ、エイズ、同性愛、貧困といった、1980年代末のニューヨークのマイノリティの世界を理解するには、それなりの感性が必要である。かなり高く評価してもらえたのが、自称レントヘッズの僕としてはとてもうれしかった。最後まで通しで観て、それからもう一度オープニングの「Seasons of Love」から「Rent」までを観、さらに特典ディスクの未公開シーンと「Alternate Ending」までしっかり観ていただいた。

 「Seasons of Love」はもとより、僕はラストで使われる「Finale B」が好きで、東京での最後の授業の締めくくりにも流したくらいなのだが、映画で用いられたエンディングの他に、「Alternate Ending」がある。どちらが好みかについては、映画版のほうがやはりいい、というのが皆さんの一致した意見だった。僕自身もそうで、エンジェルの微笑で終わる形のほうがいい。ああ、このメンバーで観られて本当によかったなあ。

 それからもう1本、I先生がお気に入りの「ハチミツとクローバー」を観る。こちらは「RENT」と同じく芸術の世界を生きる若者の物語ではあっても、その中心にあるのは恋である。しかも、そのほとんどが片思いという形で展開する。成就する恋もあれば、そうではないものもあるのだが、切なさと青臭さの絶妙のバランスがある。いや、この2つの要素のどちらに惹かれるかは、個々人のとらえ方に依存するのかもしれない。僕には後者のほうが少し強めに感じられたのだが、それはトシがトシだからだろうか。僕自身の中にも、切ない思いがあるはずなのだが、今ひとつ映画の中の切なさとはシンクロしなかったように思う。

 出演者の中では、やはり西田尚美がよかったなあ。抑えた声で話す感じがたまらなく好きだ。そういえば、関めぐみとは「八月のクリスマス」に一緒に出ていたのだったなあ。

 家のテレビで映画を楽しむ際には、こうやって何人かとおしゃべりするのがいい。迫力を楽しむなら映画館に行けばいい。今回の「RENT」の好評に味を占めて、次回は「プロデューサーズ」あたりを持っていこうと思っている。

10月19日(金)曇後小雨:王道コース

2007-10-20 15:46:43 | Weblog
 まだ10月なのだが、自転車に乗るときには手袋をする。雪が降るまでは自転車で通勤するつもりでいるが、行きはいいとして、帰りはぐっと冷えるので、そろそろ歩きに切り替えてもいいのかもしれない。

 午前中はゼミ選択の相談を1件受ける。できるだけ情報が偏らないように、前に来た学生さんと同じような内容を話したうえで、ご本人の関心について聴く。1年生に問題関心を聴くのはちょっとシビアかなあ、とも思う。少なくとも僕は同じ時期にそれほどちゃんとした関心があったわけではないから。

 スコーラムで昼食。音楽科のI先生とご一緒する。提出期限が迫っている科研費の話題になる。僕は今年は作成せずに済んだが、来年からは毎年何かしらネタを探して出していかなければならない。この時期は会う先生ごとに「科研費出しました?」ということばが挨拶の代わりになっている。

 隊長から、第二次の東京調査のスケジュールが届く。僕としても待っていた連絡だ。幸い、東京巡見と重なっている(巡見は昼間、調査は夜間)ので、まさに渡りに船である。すぐにご返事を送る。

 夕方4時からF研。哲学のS先生のご報告。一応哲学から派生した学問である社会学をやっていながら、哲学に関してはからきし知識のない僕にはわからないことだらけだったが、それでも議論を聴いているうちに断片的にわかる内容が増えてきた。僕にとってのF研の意義は、自分の狭い専門をこえた話しに接する場であるということ。門前の小僧のつもりで、一心に耳を傾け、少しでも発言する努力を重ねていけばいい。

 一度自転車で宿舎に戻り、車で大学にUターンして、I先生とH先生を乗せて土手町の「わいん食堂」へ。F研の後の飲み会。お店は広々としていて、なかなかいい感じである。せっかくいろいろなワインがあるのに、何一つ楽しめないのは少々残念ではあるが。報告者のS先生に、失礼を承知で基本的なことからいろいろ尋ねてみる。途中からH先生の妹さんも合流する。

 2次会は「BarLey」へ移動(この「わいん食堂」→「BarLey」というのはF研の王道コースなのだそうだ)。大隊長S先生、I先生、H先生と妹さん、僕の5人で飲む。大隊長とH先生の間で、どっちの意見を採るべきか右往左往する自分がいる。自分自身のことなのに、何だか笑えてしまう。I先生は体調がよろしくないようで、少々案じられる。大隊長、H先生ご姉妹の順に送り届けてから帰宅。変にテンションが上がってしまって、なかなか寝つけそうにない。

10月18日(木)晴:「裸の十九才」

2007-10-19 12:29:08 | 映画
 2コマの総合演習は、実質2回目にして文献購読を一度お休み。映画「裸の十九才」を観ることにした。集団就職の時代相を感じてもらうために選んだ作品。

 もうすぐ続編が公開される「Always 三丁目の夕日」の中に出てくる集団就職の少女(堀北真希が演じている)は、どちらかというととても恵まれた、希有な事例であるように思う。ならば、もう一方の希有な事例を観てもらうのがいい。

 「裸の十九才」は、永山則夫事件をモチーフにしており、役名や地名は仮名(たとえば板柳は細柳になっている)になっているが、それでも実際に起きた事件をかなり忠実にトレースしている。学校が斡旋した職業の過酷さ(それでも主人公山田道夫が就職したフルーツパーラーはいくらかましなほうだと思う)と、そこからの転職が往々にして転落へとつながっていった(もちろん例外もあっただろうが)ことがよくわかる。

 職を転々とし、安価な労働力として「搾取」されていく中で、貧困化していくというプロセスは、程度の違いこそあれ、現代の若者の問題にも通底しているようの思える。

 僕にとって印象的なのは、スーツを着込んだ道夫が、街頭のデモ行進をする大学生をみつめるシーン。一瞬の高揚感を覚えつつ、彼がそこに入っていくことはできない。彼のほうが、メットにサングラス、ゲバ棒の学生たちよりはるかに大人びているにもかかわらず。映画の中には描かれていないが、永山が偽の学生証を所持していたことを想起させられる場面である。どうにも埋めようがない、学生と勤労青少年の間にある溝。

 この作品が映画デビュー作である原田大二郎が実にハマっている。長身で、気障で。それと、母親役の乙羽信子の演技が素晴らしい。この時代の新藤兼人作品というと、1960年の「裸の島」のほうが有名だけれど、10年後に作られたこの作品も遜色ないものだと思う。

 内容的に、今の学生さんにどう受け止められるか、少し心許ないところもあったが、時代の空気のようなものは感じ取ってもらえたようだ。

 全編通しで観たので、2コマの授業時間をこえて、昼休みまで食い込んでしまった。3コマの授業まで10分弱しかない。昼食を摂るのは諦めて、研究室でカフェオレを1杯すすって教室に行く。4コマのゼミの開始を10分遅らせてもらって、その間に買ってきたおにぎりを2つ食べる。ゼミでは『東京から考える』の第2章を読む。郊外の概念をめぐって議論する。

 ゼミ生の2人が帰っていったところでひと息つく。今日は少し遅くまで仕事をするつもりで、宿舎に帰り、再び車で大学に戻る。しかしプロ野球のクライマックスシリーズに没頭して、仕事のほうは開店休業状態に。パリーグはネット中継で、セリーグはテレビで、2つの画面を行ったり来たりする。

 野球も終わり、ひと風呂浴びて帰ろうと車を走らせる。途中小栗山のあたりで音楽科のI先生からお電話をいただく。「Cherry's Bar」にいるのでいらっしゃいませんか、とのことだったので、Uターンして駆けつける。人文学部のH先生と妹さん、それから日本文学のY先生がいらっしゃった。着いたときには富士山の話題になっていて、富士宮が心のふるさととなっている者として議論に加わる。

 途中でY先生はお帰りになった後も4人でしばしおしゃべりする。何気ない会話の中にも、社会と文化の違いをどう説明するか、なんていう話しが出てくる。本当はメモに書き留めておきたいくらいの貴重な話しだ。I先生やH先生と話していると、時間の経過を忘れる。気がつくと1時を回っていた。今日の締めくくりもまた最高である。

10月17日(水)晴:朗報

2007-10-18 00:53:56 | 仕事
 最近にしては珍しく、昨夜はよく眠れた。いろいろと溜まっていたものを吐き出してしまったのがよかったのかもしれない。 

 自転車を大学に停めたまま帰宅したので、久しぶりに歩いていく。自転車で通勤できるのは、あと1ヶ月くらいだろうか。なかなか部屋探しをする時間を確保できないでいる。焦っても仕方がないが、何とかしたいところ。

 午前中はここのところ研究関連の文献に目を通す時間に充てている。だが、今日のように遅く出てきた日は、すぐにお昼になってしまう。

 スコーラムで昼食。食後にコーヒーを飲みながら初田亨『繁華街の近代』(東京大学出版会)を読む。以前にも一度読んでいるのだが、もう一度読みたくなって書棚から引っ張り出してきた。時系列に繁華街の興隆を描く手法は実に鮮やか。こんな風に都市と若者の歴史を書けたら、と思うのだが、なかなか難しい。

 研究室に帰り、何通かメールの返事を書くと午後3時。教授会の時間である。今日の議題はさほど多くはないが、ひとつ、重要な案件がある。幸いなことに、難なく通ってほっとした。教育学部にとっても、それに関わる人にとっても、僕にとっても、何よりの朗報である。本当によかったと思う。

 教授会終了後に一度帰宅することにして、廊下を歩いていたら、アニキにお会いした。先日、一緒に行くといっておきながら、東京の調査に行って行けなかった全日本プロレスのことを謝る。アニキいわく、全日の会場にはなぜかヤンキーが多いのだそうだ。ノアや無我のときにはそんなことはなかったから、不思議である。アニキの説によれば、ブードゥ・マーダーズあたりが彼らの心の琴線に触れるのではないか、とのことだったが、実際のところどうなのだろう。

 宿舎で食事を済ませ、車で大学に戻る。今日は同僚のFさんの誕生日であり、お祝いを申し上げようと思ったが、お忙しくされていたので、メールをお送りする。Fさんにとっては、きっと今日は通常の誕生日以上にいい一日だったのではないかと思う。

 12時近くまでかかって明日の授業の準備を終える。大した内容でもないのに、時間がかかりすぎである。コマ数の少なさにかまけて、時間の使い方がかなりルーズになっているのを反省する。

10月16日(火)晴:きょうだい

2007-10-17 03:07:41 | 
 朝食後、洗濯。これからの季節、朝洗濯物を干しても、帰るのはいつも夜だから、すっかり冷え切ってしまう。おかげで休日を除けば、部屋干しが中心になる。ただでさえ狭い部屋なのに、洗濯物がぶら下がっているとますます狭く感じる。

 いつもより遅めに大学へ。今日から後期のT実習が始まる。午前中はほとんど仕事をしないまま、生協の弁当を食べて附属中学校へ行く。今日は中学校の生徒さんと実習生との顔合わせ、それから中学校の先生の授業を観察を行うことになっている。すでに何人かの実習生は、夏の集中実習で生徒さんたちと顔なじみになっているので、あちこちで歓迎されている。傍で眺めていても実に微笑ましい。

 前期のT実習をみていても、学生さんのレベルが高いことは十分わかっていたが、集中実習を経て、さらに磨きがかかった感じだ。批判すべきポイントについてもしっかり押さえられている。僕自身は、実習実習と、やたらと経験を強調するような傾向を決して好んではいないが、それでも個々の成長に寄与しているのは確かだと思う。

 2時間あまり、立ったまま授業を観察するのは結構大変である。街頭での調査は何にもつらいことはなかったが、この違いは何によるのだろう。

 大学に帰り、少しばかり仕事の続き。夕食は、音楽科のI先生、人文学部のH先生と食べに行くことにする。折りよくH先生の妹さんも弘前に来られて、4人で「AL PORTO」へ。H先生の妹さんとは、もちろん今日が初対面なのだが、お姉さんと同様、とってもフレンドリーで、初めて会ったという感じがしない。しかもとても仲が良い。ドイツにお住まいとのことで、現地の事情をあれこれ聞かせていただいた。

 ついついネガティブな思考に走りがちな僕自身も、3人にしっかり激励していただいて、少し救われた気持ち。何ごとにもやたらと考えすぎる自分を、ちゃんと叱咤してくださるのは、両先生であり、今日はそれに妹さんも加わる。なんとありがたいことか。

 きょうだいといえば、I先生のごきょうだいのお話しも、よく食事の席で聞かせていただいている。ひるがえって、うちの弟ときたら、昨日になって、誕生日プレゼントを送ってきた。しかもほとんどお金がかかっていない。もちろん、気持ちのほうが大事なのは確かなのだが。

 人前で語れるような質の高さではないが、うちのきょうだいも割と仲良くやってきたほうだと思う。共通の趣味も多いし、話題には事欠くことがない。だが、お互い仕事が多忙になって、なかなか連絡が取りづらくなってきている。明日はちゃんとお礼の電話くらいしなければ、という気持ちになった。