午前中はRC34以外のところをみることにした。9時からのセッションはRC4(教育社会学)のトランジッション研究の部会。ああ、教育社会学は外国においても教育社会学だ、と妙な安心感を覚えてみたり。統計を使って、こんなん出ましたけど、といったものが主流。ただし統計分析の手法はかなりベーシックな感じ。続いて本部校舎のほうに移動して、RC38(バイオグラフィー)の若者研究の部会を覗く。入れ墨の意味をカテゴリー化した分析と修復的司法のエスノグラフィーの報告が面白かった。
本部校舎のほうは石造りで実に重厚。こんな大学建築は日本ではありえないなあ。
ウニベルジタット駅近くのカフェでボロネーゼを食べる。昨日のイタリアンレストランでパスタを食べ損ねたからなのだが、どう考えても茹ですぎで、麺にコシがない。これなら僕が休日に自分で茹でているもののほうがうまいぞ。それで6ユーロだからなあ。
このフォーラムの昼休みは長い。1時半から3時半まで2時間もある。少しの間ホテルで休む。プログラムをみていると、同じ時間に2つの会場(教室)でRC34のセッションがある。しかし司会者の名前は同一だ。どういうことだろうと思って会場に行ってみると、2つのセッションを合同でやります、とのこと。でも時間は2時間と限られているからどうなるんだろう、と思ったら、報告予定者のうち、実際に会場に来ていたのは半数以下だった。どうやらこの「無断欠席」を見越してこういったプログラムになっているらしい。日本の学会で直前キャンセルなんてやらかしたら、あれこれインフォーマルな圧力がかかるもんだがなあ。
A先生、T先生、I先生の3人による日本の若者調査の報告は、きちんとペーパーが配られ(しっかり論文になっている)、パワーポイントもみやすく美しい。ここまでみてきた報告とは段違いにきちんとしている。データ分析も論理構成も群を抜いている。そのレベルの高さに、ただのオーディエンスなのにやたらとうれしくなる。アメリカの研究者はほとんど出てきていないが、日本の社会学のレベルは高いのだ、と思う。
その後の香港の報告者の報告もまたペーパー、パワーポイントもしっかりしていた。どうも几帳面にしっかりプレゼンテーションを用意してくるのが東アジア流らしい。なかには早口で原稿を読み上げるだけで、ほとんど理解することができない報告もある(もっともこれは僕の英語力のなさが悪いのだ)から、その辺の文化の相違が面白く感じられる。
5時半までRC34のセッションを聴き、ホテルに戻る。8時少し前に今宵もイアンさんと合流。たまたま彼がみつけてきたクラシック・ギターコンサートに行くことになっている。同行のメンバー全員参加だ。
会場のカタルーニャ音楽堂は、カラフルで細やかな装飾が目を引く楽しい建物だ。もちろん歴史的建造物でもある。歌舞伎座の幕見席くらいの高さから、客席とその向こうにある舞台を眺める。
ギター奏者はマニュエル・ゴンザレスさん。有名な人らしい。選曲は有名なものが中心。モーツァルトの「魔笛」をギター曲にアレンジしたもの、「アランフェス協奏曲」、「スペイン組曲」、そして「アルハンブラの思い出」などなど。一番面白かったのは、プログラムの最後に用意された「グラン・ホタ」。ゴンザレスさんのアレンジ版で、ギターを叩いてティンパニーのような音を出したり、ハーモニクスを駆使して多彩な音色を聴かせてくれた。アンコールでは「禁じられた遊び」を弾いてくれた。今まで聴いたなかで最も美しい「禁じられた遊び」だった。久々にギターコンサートに行って、僕もまたギターをやりたくなってきた。日本に帰ったら安いギターを買おうか。持って帰れるなら、こちらではいいギターがとても安く売っているのだけれど。
素晴らしいギターの演奏は、僕のような浮かれ者には大きな感動を、そして報告に全力を注いだ先生方には心地よいうたたねのひとときを与えてくれた。
音楽堂近くのお店で、今宵もカタルーニャ料理を楽しむ。貝料理がひときわおいしい。ジューシーで味が深い。パエリアは少し水気が多いような気がするが、これまたうまかった。スペイン料理はクセがなく、日本人には食べやすい。
相変わらずランブラス通りの辺りは深夜だというのに賑やかだ。ライトアップされた建物を見上げながらホテルに戻る。