長い繁殖期 2002年9月
8月の末にもなると、地上の残暑とは裏腹に、上空は秋らしい青空がひろがることもある。多摩川ではカワラヒワが集まりだして、ハリエンジュの梢でコロコロとなつかしい声を聞かせる。気のせいか河原もどこかものさびしい。繁殖期が終って、もう囀る鳥の声も………。と思いきや、まだセッカが鳴いていた。
多摩川でのセッカの鳴き納めは、年によって差があるが、8月の末から9月の半ばくらいになる。ほっと氏の繁殖に関する情報もそのころまである。というか、どれも8月と9月のものばかり。なんでこんなに遅いのだろう。たとえば餌運びが8月の下旬に観察されているし、巣立ちビナをつれた家族群について計7件の記録があるが、8月が3件、9月は4件で、最も遅いのは95年の記録で9月18日になっている。
セッカの初囀は3月下旬から4月上旬なので、それを繁殖期のはじまりとすると、それから9月までが長い繁殖期間ということになる。その間、2回から3回繁殖を繰り返すと生態図鑑などには書いてある。しかし、もっとも盛んだと思われる6~7月になぜ観察記録がないんだろう。
こんな時は、例によって日本野鳥の会神奈川支部の『神奈川の鳥 神奈川県鳥類目録』の2、3、4集を開く。そこにはうらやましいくらいセッカの情報が載っている。
その中の繁殖に関するデータは3集の合計で30件。そのうち8月以降のデータが13件。なかには10月9日の巣立ちビナの観察もある。30件のうち8月以降が13件なら特に多くはないように見えるが、巣立ちビナを連れた家族群の記録だけをみると、全部で8件あるうち、8月以降だけで5件になる。ほかの3件は年を省略するが、6月10日、6月27日、7月29日となっている。
家族群以外のデータは、巣材運びや餌運び、育雛に関するもので、それらは一応早い時期からある。だからほっと氏の観察不足はやっぱりその通り。が、それにしても巣立ちビナに関する情報は、こちらもおもに秋口ばかりというのはどういうことか。
これはつまり、セッカの場合、あとの方ほど、子育てがうまくいくということなんだろうか。『原色日本野鳥生態図鑑―陸鳥編』には「巣は高い捕食圧にさらされており、巣立ち成功率は非常に低い」と記されている。2回3回と繁殖を繰りかえしても、なかなか巣立ちまでもっていけないという現実があるのだろう。そのためふつうなら多いはずの6、7月でも家族群などの観察が案外少ないということになるらしい。捕食相手はだれなのか同書には記述はないが、この時期は他の生物も繁殖適期だろうから、どうしてもえさに食われてしまう。それでも自然はうまいぐあいに配慮されていて、秋口までくさらずに努力を続ければ、なんとか育てられる。そのころまでセッカの子育てに必要な虫やクモが用意されているということなのか。
長い繁殖期といえば、キジバトも長い。一年中のようにみえる。そこで、つぎのテーマは
キジバトの鳴かない日
身近なキジバトにもたまには注目してみましょう。年中鳴いているようですが。
8月の末にもなると、地上の残暑とは裏腹に、上空は秋らしい青空がひろがることもある。多摩川ではカワラヒワが集まりだして、ハリエンジュの梢でコロコロとなつかしい声を聞かせる。気のせいか河原もどこかものさびしい。繁殖期が終って、もう囀る鳥の声も………。と思いきや、まだセッカが鳴いていた。
多摩川でのセッカの鳴き納めは、年によって差があるが、8月の末から9月の半ばくらいになる。ほっと氏の繁殖に関する情報もそのころまである。というか、どれも8月と9月のものばかり。なんでこんなに遅いのだろう。たとえば餌運びが8月の下旬に観察されているし、巣立ちビナをつれた家族群について計7件の記録があるが、8月が3件、9月は4件で、最も遅いのは95年の記録で9月18日になっている。
セッカの初囀は3月下旬から4月上旬なので、それを繁殖期のはじまりとすると、それから9月までが長い繁殖期間ということになる。その間、2回から3回繁殖を繰り返すと生態図鑑などには書いてある。しかし、もっとも盛んだと思われる6~7月になぜ観察記録がないんだろう。
こんな時は、例によって日本野鳥の会神奈川支部の『神奈川の鳥 神奈川県鳥類目録』の2、3、4集を開く。そこにはうらやましいくらいセッカの情報が載っている。
その中の繁殖に関するデータは3集の合計で30件。そのうち8月以降のデータが13件。なかには10月9日の巣立ちビナの観察もある。30件のうち8月以降が13件なら特に多くはないように見えるが、巣立ちビナを連れた家族群の記録だけをみると、全部で8件あるうち、8月以降だけで5件になる。ほかの3件は年を省略するが、6月10日、6月27日、7月29日となっている。
家族群以外のデータは、巣材運びや餌運び、育雛に関するもので、それらは一応早い時期からある。だからほっと氏の観察不足はやっぱりその通り。が、それにしても巣立ちビナに関する情報は、こちらもおもに秋口ばかりというのはどういうことか。
これはつまり、セッカの場合、あとの方ほど、子育てがうまくいくということなんだろうか。『原色日本野鳥生態図鑑―陸鳥編』には「巣は高い捕食圧にさらされており、巣立ち成功率は非常に低い」と記されている。2回3回と繁殖を繰りかえしても、なかなか巣立ちまでもっていけないという現実があるのだろう。そのためふつうなら多いはずの6、7月でも家族群などの観察が案外少ないということになるらしい。捕食相手はだれなのか同書には記述はないが、この時期は他の生物も繁殖適期だろうから、どうしてもえさに食われてしまう。それでも自然はうまいぐあいに配慮されていて、秋口までくさらずに努力を続ければ、なんとか育てられる。そのころまでセッカの子育てに必要な虫やクモが用意されているということなのか。
長い繁殖期といえば、キジバトも長い。一年中のようにみえる。そこで、つぎのテーマは
キジバトの鳴かない日
身近なキジバトにもたまには注目してみましょう。年中鳴いているようですが。