ブトボソ談義 その(3) 2004年5月
ハシブトガラスとハシボソガラスはどのように棲み分けているか。大まかに言えばブトは山にも野にも町にも都会にもいて、ボソは郊外や農耕地ということになる。それを筆者のフィールドでの記録から描いてみよう。
まず羽村市内を例にして町中での様子を、3年間の野鳥個体数調査の結果からみる。この期間に記録したブトの合計は541羽、そのうちの197羽は町中といっても、高木のつらなる帯状の段丘斜面に残した緑地で、周囲は住宅地という環境。しかし、その他の樹林地、住宅地、農耕地でもまんべんなく記録がある。
それに対してボソは340羽、そのうちの180羽は農耕地で記録された。これだけでもブトとボソの好む環境のちがいはかなりはっきりしている。季節的な変化はこの調査ではあまりはっきり出なかったが、ボソは冬にやや多く、それもやはり農耕地で多くなっている。ブトは年間を通じて変化が少ないが、しいて言えば夏から秋がやや少ないという結果がでた。
つぎに河川の環境ではどうか。これには1994年から1995年にかけての1年間の調査があるが、その結果からはどちらが多いとか優勢であるとかは言えそうもない。一応数は数えたが、河川敷に散らばる、あるいは集まるブトとボソを一定の調査距離を、一定の時間内で識別して数え分けるのは案外むずかしかった。このときの調査は鳥類全体の個体数が対象だったのでカラスばかりに時間がかけられなかった、という事情がある。
その結果カラスではあるが、ブトボソは不明という数がかなり出た。感触としてはほぼ両者拮抗している。ということは町中よりもかなりボソの割合が多いというわけで、やはり農耕地と共通している開けた環境をボソは好むことを示している。
丘陵地帯ではどうか。草花丘陵では、ブトは丘陵の外まわりにも林内にもいるし、開けたゴルフ場にも多摩川の河原にもいる。それに対してボソは林内にはまず入らない。筆者はこれまで、一度も丘陵の森のなかでボソを見たことがない。ときには林縁の木の梢に止まることがある程度か。
山ではどうか。奥多摩の鷹ノ巣山で四季を通じて48回、野鳥の記録をとった結果では、ブトが66件、ボソはゼロ。ボソは麓でも記録されなかった。登り始めはいくらか開けた場所もあるのだが、山を下りるのは夕方だし、合わせても麓での観察時間は短いので、これだけでは充分ではない。ほかの山行記録ではJR青梅線の終点がある氷川の町中や、そこから多摩川の支流日原川ぞいに1.5kmほど入った寺地でボソを見たことがある。多摩川の本流ぞいでは、川井、古里、海沢、氷川でボソを見ているが、さらに上流ではまだ見たことがない。といってもカラスの調査でこの地域へ行ったわけではないので、本流沿いではどこまでボソが入るか、はっきりしたことは言えない。
山間部でも開けた環境ならボソはいるようなので、そういう場所へも行くということは、要するに山がきらいというよりも、見通しの悪い森林や林内を好まないということなのだろう。餌の採り方に支障があるのだろうか。そこには何か決定的な避ける理由がありそうな気がする。
山を避けるといえば、ハシボソガラスばかりではなく、ムクドリもまず山へ入らないものだ。と思っていたら、そうでもない現象が今年はおこった。そこで、つぎのテーマは
ムクドリも山へ入らない、かな
ムクドリもどちらかといえば、平野の鳥、農耕地の鳥といえる。でも食べる物があると知れば出かけていくものだ。
ハシブトガラスとハシボソガラスはどのように棲み分けているか。大まかに言えばブトは山にも野にも町にも都会にもいて、ボソは郊外や農耕地ということになる。それを筆者のフィールドでの記録から描いてみよう。
まず羽村市内を例にして町中での様子を、3年間の野鳥個体数調査の結果からみる。この期間に記録したブトの合計は541羽、そのうちの197羽は町中といっても、高木のつらなる帯状の段丘斜面に残した緑地で、周囲は住宅地という環境。しかし、その他の樹林地、住宅地、農耕地でもまんべんなく記録がある。
それに対してボソは340羽、そのうちの180羽は農耕地で記録された。これだけでもブトとボソの好む環境のちがいはかなりはっきりしている。季節的な変化はこの調査ではあまりはっきり出なかったが、ボソは冬にやや多く、それもやはり農耕地で多くなっている。ブトは年間を通じて変化が少ないが、しいて言えば夏から秋がやや少ないという結果がでた。
つぎに河川の環境ではどうか。これには1994年から1995年にかけての1年間の調査があるが、その結果からはどちらが多いとか優勢であるとかは言えそうもない。一応数は数えたが、河川敷に散らばる、あるいは集まるブトとボソを一定の調査距離を、一定の時間内で識別して数え分けるのは案外むずかしかった。このときの調査は鳥類全体の個体数が対象だったのでカラスばかりに時間がかけられなかった、という事情がある。
その結果カラスではあるが、ブトボソは不明という数がかなり出た。感触としてはほぼ両者拮抗している。ということは町中よりもかなりボソの割合が多いというわけで、やはり農耕地と共通している開けた環境をボソは好むことを示している。
丘陵地帯ではどうか。草花丘陵では、ブトは丘陵の外まわりにも林内にもいるし、開けたゴルフ場にも多摩川の河原にもいる。それに対してボソは林内にはまず入らない。筆者はこれまで、一度も丘陵の森のなかでボソを見たことがない。ときには林縁の木の梢に止まることがある程度か。
山ではどうか。奥多摩の鷹ノ巣山で四季を通じて48回、野鳥の記録をとった結果では、ブトが66件、ボソはゼロ。ボソは麓でも記録されなかった。登り始めはいくらか開けた場所もあるのだが、山を下りるのは夕方だし、合わせても麓での観察時間は短いので、これだけでは充分ではない。ほかの山行記録ではJR青梅線の終点がある氷川の町中や、そこから多摩川の支流日原川ぞいに1.5kmほど入った寺地でボソを見たことがある。多摩川の本流ぞいでは、川井、古里、海沢、氷川でボソを見ているが、さらに上流ではまだ見たことがない。といってもカラスの調査でこの地域へ行ったわけではないので、本流沿いではどこまでボソが入るか、はっきりしたことは言えない。
山間部でも開けた環境ならボソはいるようなので、そういう場所へも行くということは、要するに山がきらいというよりも、見通しの悪い森林や林内を好まないということなのだろう。餌の採り方に支障があるのだろうか。そこには何か決定的な避ける理由がありそうな気がする。
山を避けるといえば、ハシボソガラスばかりではなく、ムクドリもまず山へ入らないものだ。と思っていたら、そうでもない現象が今年はおこった。そこで、つぎのテーマは
ムクドリも山へ入らない、かな
ムクドリもどちらかといえば、平野の鳥、農耕地の鳥といえる。でも食べる物があると知れば出かけていくものだ。