ケガレの起源と銅鐸の意味 岩戸神話の読み方と被差別民の起源 餅なし正月の意味と起源

ケガレの起源は射日・招日神話由来の余った危険な太陽であり、それを象徴するのが銅鐸です。銅鐸はアマテラスに置換わりました。

野鳥の個体数くらべ 羽村市内:野鳥調査の記録 その1 一覧表は省略

2007年09月28日 14時56分10秒 | 観察記録から
野鳥の個体数くらべ
羽村市内:野鳥調査の記録 その1
 18~19ページの一覧表は羽村市内で鳥の数をかぞえた記録をもとに作成したもの。市内を通るJR青梅線の東と西の2ヶ所にコースを設定して、3年間、のべ216回歩いた。期間は1999年4月から2002年3月まで。
 ひとつのコースを10日に1度、月3回、2コースで計6回。天候はいずれも晴れまたは曇り。早朝、日の出後30分くらいから歩きはじめる。だから、夏と冬では2時間ほどのズレがある。歩く時間は1時間あまり。東1~4のコースが約2800m、西1~4のコースが約2300m。時速は2kmあまり。鳥の数をかぞえる観察幅は左右それぞれ目測で25m以内。
 東西のコースとも、環境のちがいによって4区に分けており、1区から4区へ連続して歩いた。ただし、起点に自転車を置いているので、歩き終えてもとの位置へもどるのが遠いとつらいので、周回コースに近いものにした。そのため、起点と終点が接近してしまったので、行動範囲の広い鳥の場合、ダブって記録している可能性がある。それぞれの距離は500mから750m。18~19ページの表では、各区で得られた野鳥の3年間の合計個体数を、区ごとに1000mあたりに換算して、比較できるようにした。したがって、鳥の実数ではなく指数として見てほしい。
 東西8区の自然環境を、樹林地の存在など、緑被率の高いほうから順位づけすると、西2、東1、西4、西3、東3、東2、西1、東4となる。全体的には西地区のほうが樹木などの緑が多い。各区の特徴はつぎのとおり。
西2区 多摩川に近い阿蘇神社の社叢林
東1区 段丘崖の緑地を利用した公園、周囲は宅地と工場
西4区 片側は段丘崖の林、もう一方は住宅地、学校
西3区 緑の多い古くからの住宅地
東3区 分離帯のある道路と宅地、畑、グランドを伴う公園
東2区 比較的新しい住宅地
西1区 水田、畑などの農耕地で林地はなく、一部宅地化
東4区 工業団地と住宅地

★表は不備です。 
 環境区分を数値で現わすとつぎのようになる。
東地区環境区分
区 樹林地 農地 宅地 裸地 工場 計 距離
1区 60 0 15 18 7 100 750
2区 5 3 72 20 0 100 750
3区 14 15 19 48 4 100 600
4区 0 3 41 18 38 100 700
全域 20 5 37 26 12 100   2800

西地区環境区分
区 樹林地 農地 宅地 裸地 工場 計 距離
1区 0 83 12 5 0 100 500
2区 75 0 5 20 0 100 500
3区 19 12 44 25 0 100 600
4区 37 4 36 23 0 100 700
全域 33 25 24 18 0 100   2300

表の見方
 18~19ページの表では、3年間で出現した鳥を、その記録した個体数の多い順にならべた(一部、換算の誤差で順位が前後する)。罫線でかこんだ数字のうち、太い線はその鳥の最大数が出た地区、細い線は最小数の、または記録なしの地区をしめす。この罫線を引いたのは、元データで10件以上の記録がある鳥に限った。種名では№34のアオサギまで。最大と最小がどの地区に出ているのかで、その鳥と環境との関係がうかがわれて、数字の羅列だけよりもいくらか特徴がわかりやすいのではないだろうか。
 №55からあとは左右25mのセンサス幅のそとにいるのを記録したもの。これらの鳥はたとえば、チュウサギが畑のさきの方にいたとか、キアシシギが多摩川の上空を鳴きながら飛んでいったとか、遠くでホトトギスの声が聞こえた、カッコウの声がした、ヤマセミが上空を飛んでいったといったもの。まる3年が済んで、その後はじめて行った時にマヒワが出現した。この表には入っていない。
数字に現われた特徴
 もっとも自然度の高い西2区が、鳥の種類も37種と、いちばん多くなった。この地区の阿蘇神社の社叢林は、ケヤキの大木や、コナラ、サクラなどの落葉樹が多い。多摩川が近いので、水辺の鳥の声や、姿も見られる。しかし、鳥の数は特に多いわけではなく、センサスした林内、森の中というのはむしろ鳥は少ない。かえって森の周辺、林縁部のほうが多い、というのが歩いていても感じることだ。ただし多いといっても、この調査地では、スズメの数が多いということになる。自然度の低い地区ほどスズメの占める割合が高い。
 各鳥種の最大指数の出た地区を見ていくと、太枠でしめしたようにやはり西2区がもっとも多い。11種の鳥で最大をしめしている。シジュウカラやイカル、アオジなどのどちらかというと森林性の鳥が多い。
 西1区は農耕地で、自然度が高そうな印象があるが、実際はそうでもない。田んぼや畑だけというのは時期によっては裸地に近い状況であるし、たえず地表が攪乱されるので、かなり特殊な環境ともいえる。そういう環境にやってくる鳥種は案外少ないようだ。周辺部に草地や雑木林があってはじめて、鳥にとってもいい環境といえるのだろう。

おもな鳥について
【スズメ】
 身近な鳥の代表で、2位のヒヨドリを大きく引きはなす。最大の東3区は、じつはある会社の敷地内にえさ台があったことによる。そこにはよく数10羽集まっていたのだが、2001年5月にえさ台が撤去された。それ以後、その周辺ではほとんどスズメが観察されなくなった。数mはなれた道路の中央分離帯にケヤキが植わっていて、えさ台にくるスズメの集合場所、あるいは人が近づいたときなどの逃げ場になっていたのだが、そのケヤキはえさ台が撤去されるよりまえ、3月15日に行った時に枝が払われていた。それを境にもうあまりスズメは来なくなっていた。えさ台の撤去とケヤキの枝払いとの関係は調べていない。
 実際の調査での平均個体数は、最大の東3区で25羽。最小の西2区で2羽となっている。西2区では住宅地のもっともはずれの人家が2軒、センサスの範囲に入っているので、そこを通るとスズメが記録される。ふだんスズメは樹林内に入らないが、繁殖期だけはヒナに与える虫を捕りに林内にも入ってくる。
【ヒヨドリ】
 もとは森の鳥といわれるが、今ではまち中の環境をよく利用している鳥の代表みたいな存在。そのうえ、スズメほどには人の生活に依存しない。東1区や西2区のように緑地がまとまっていたり、西3区、西4区のように緑の多い住宅地に多い。西1区の畑では、冬になると群れでブロッコリーの葉を食べにくる。人間が食べるつぼみの部分には手を出さないらしい。葉っぱを丸裸にしても、花蕾だけは残している。ほんとうに花蕾は食べないのか、キズもつけないのか、そのへんは確認していない。
【キジバト】
 全地域にふつうに見られるが、西1区の農耕地や東4区の工場地域など樹木のとぼしいところでは少ない。かといって、西2区のような樹林地に入ってしまうとわりあいに少ない。明るい林や林縁部、公園の木立などを好む。そうした環境の典型が東1区の段丘の林と東3区にある公園などである。
【ムクドリ】
 西3区など緑の比較的多い住宅地や、西1区などの農耕地に多い。東3区の公園のグランドには夏から秋にかけて、幼鳥をまじえた群れがよく見られた。森の中にはまず入らない。西2区の80というのは森の外側や人家の周辺、それに上空を通過するもの。東1区の段丘の緑地でも、公園内のひらけた地面には来るが林内にはほとんど入らない。
【シジュウカラ】
 森林にもまち中にもふつうにいる。しかし、まち中では知られているわりには案外個体数は少なかった。密度をみると、さきに上げた全8区の緑被率の順位とほぼ一致する。その地域の緑の量というか、樹木の量をほぼ反映しているといえる結果になっている。

 以上、記録された鳥のうち上位5種までについて、その個体数と環境との関係を中心にみてきた。

カワウの飛来状況-多摩川、秋川合流付近について- (グラフ省略)

2007年09月24日 20時31分44秒 | 観察記録から
カワウの飛来状況
-多摩川、秋川合流付近について-
1997年2月20日

はじめに
 カワウが多摩川の中流域までさかのぼってくるようになったのは、もっとも初期の記録からでもまだ10年あまりしかたっていない。なかでも秋川合流点より上流へ来るようになったのは1989年のことらしい。
 わたしが当地で鳥を見るようになったのは90年の11月からで、記録をつけはじめたのは翌91年3月からである。つけはじめた当初からすでにカワウは飛来しており、以後、年を追うごとに飛来数が増えて、飛来する期間も次第に長期化する傾向がみられる。
 ここでは、わたしの観察地域におけるカワウの飛来状況など、その5年あまりの移り変わりについて報告する。

観察地域と記録方法
 多摩川、秋川合流点付近は中流域の上部であり、奥多摩の山から派生した丘陵地帯の末端がせまっている。河口からの直線距離は約45kmで、カワウのコロニーがある上野不忍池や浜離宮からは約40kmある。
 観察と記録のしかたは特にカワウを対象にしたものではない。早朝、河川敷を1時間半前後かけて歩き、その間に出現した鳥をすべて記録する。それを91年3月から続けている。その中で目撃したカワウについての記録である。したがってカワウが見やすい本流の水面やその上空をいつも注視し続けているわけではない。そのため、記録は観察時間内に現われたすべてのカワウではなく、見落としもあるはずである。
 また、カワウは早朝から飛来するが、それらが皆、下流から飛んでくるわけではなく、上流から飛んでくるものもいる。それらが早朝さかのぼってきれ、もうすでに下流へ下りていこうとしているのかは不明であるが、上流からの個体はすでにカウントされたものである可能性がある。その場合は、それまでにカウントされた数の合計を上回るものであれば、その数をとって、それまでの数を捨て、それまでの数に達しないものであれば、ダブってカウントする可能性があるとして、その数をとらなかった。
 観察時刻は日の出直後くらいからの早朝だけで、日中や夕方についての状況は調べていない。
 したがって、結果としての数字を見ると確かそうに見えるが、実際にはかなりの曖昧さを含んだものにならざるを得なかった。このように不確かさをともなったデータではあるが、集計してみるとカワウのこの地域への飛来状況についての一側面はつかめたと思う。
結果
 9ページのグラフは91年から96年まで、5シーズンあまりのカワウの飛来数を現わしたものである。1~10羽を10、11~20羽を20としている。































 グラフは各月を上中下旬に分け、さらにその中を前後半に分けて、1ヵ月を6等分にした。つまり、5日間で区切り、その中でもっとも数の多かった日の個体数を現わしている。ただし、観察に出かけなかった日が若干ふくまれる。
 グラフを見て気がつく特徴は、年を追うごとに、飛来数のピークが春から次第に早まり、真冬、さらに冬の初めへと移っていることである。これは何を意味するのか。それと関係があるかどうかわからないが、カワウの個体数が87年を境に急激に増えており、特に秋の増え方が著しいという資料がある(日本野鳥の会東京支部報『ユリカモメ』№490 1996年「1995年度シギ・チドリ類調査結果」)。内陸部へのカワウの飛来が次第に多くなるのもこの増加を反映していると考えられる。また、飛来する期間も少しずつ長くなっており、96年には7月にも出現し、通年化する勢いである。
 つぎにおもな記録を列記する。初認日とはその年にはじめてその種の鳥を確認した日、終認日とはその年の確認できた最後の日を意味する。カワウの場合は冬鳥として現われるので初認日は秋、終認日が春になる。
       初認日   終認日
1991年 11月23日  5月6日
1992年  11月13日  5月25日
1993年  11月23日  5月19日
1994年  10月23日  5月22日
1995年  10月17日  6月1日
1996年  10月16日  7月17日

 一度に100羽以上で現われた記録はつぎのものがある。
1994年11月23日  8時40分  130±羽 下流へ飛ぶ
1994年12月11日  8時03分  150±羽 上流へ飛ぶ
       同日  8時05分  160±羽 上流へ飛ぶ
1995年11月3日   7時31分  350±羽 上流へ飛ぶ

 96年には、100羽以上の大群は見ていない。

 カワウはカワウだけの群れで現われることが多いが、時にはサギ類やユリカモメなど、他の水鳥との混群で飛来してくることもある。その際はたいていコサギとダイサギをともなっている。アオサギが混ざっていることもある。サギ類はカワウの群れのかたまりの後半に、やや遅れてついてくる形をとることが多い。それは、カワウの動きに注意を向けながら、といった様子に見える。
 また、カワウが流れの中央で騒々しく水音をたてながら採食しているとき、サギ類は遠巻きにして、岸近くからその騒がしい食事ぶりを、半ばあっけにとられたという様子でながめている感じに見える。これはカワウの騒ぎをきらって浅瀬に寄ってくるかもしれない小魚を待っているようにも見えるが、確かにそれによって餌にありついたというところは確認していない。

 最後に多摩川中流域でのカワウの初見などについて文献から紹介する。
 日本野鳥の会東京支部では、京王線の聖蹟桜ヶ丘付近の多摩川で1980年から探鳥会をおこなっているが、その中で、はじめてカワウが記録されたのは85年3月3日である(東京支部報『ユリカモメ』№352)。また、この周辺での報告のあった最初の記録は同年2月16日となっている(『ユリカモメ』№353)。86年には観察されなかったものの、87年以後は観察される回数が増えている(日本野鳥の会研究センター『ストリクス』vol.10 1991年)。
 浅川水系では八王子カワセミ会が1985年から探鳥会を続けている。カワウは89年1月30日に初記録され、翌90年2月から突如大群が現われるようになる(『数えあげた浅川の野鳥』1996年)。
 日本野鳥の会奥多摩支部の初記録は91年3月30日、昭和記念公園である(『多摩の鳥』№80 1991年)。わたしの多摩川秋川合流点付近での初記録は同年3月13日。これより先、90年7月6日の読売新聞夕刊で「多摩川に大量のカワウが飛来してアユなどを捕食している」との記事があり、「昨年からは奥多摩や秋川にも姿を現わし始めている」となっている。地域をいう際に、「秋川」は「奥多摩」に含むと考えられるからこの場合の奥多摩はどこなのか判然としないが、89年中には秋川合流点よりも上流に進出していることは確かである。なお、浜離宮のカワウは「追い出し作戦により、今年1月9日以後姿を見ない」と97年2月19日、朝日新聞夕刊に記事がある。

鷹ノ巣山周辺の哺乳動物-クマ遭遇記念 (図面省略)

2007年09月24日 16時39分17秒 | 観察記録から
鷹ノ巣山周辺の哺乳動物
-クマ遭遇記念-
1997年12月27日

 93年ごろから鷹ノ巣山周辺で野鳥を見て記録しているが、その間、動物についてもついでに書きとめていた。ゆっくり歩いたり、ときどき立ち止まっては鳥を見ている時など、ときには動物に出会うことがある。鳥に興味をもつ以前、山に登るのが目的でせっせと歩いていたころにはめったに出会うことはなかったが、ひとりで山の中を静かに歩いていると案外いろいろな動物が出てくる。
 それでも鳥にくらべると件数はずっと少なくて、まとめるほどの内容もないが、散っているデータを一度集めておかなければとは思っていた。ところが97年7月、ついにクマと出会い、それならこの機会にと、このたびまとめてみることにした。クマはやはり別格で、それだけインパクトが強かったということか。
 もともとついでの記録なので、見た動物の全部ではない。大型動物は必ず書きとめていたが、リスなどは記録しない場合もあった。
 これまでに奥多摩で見た動物はクマ、シカ、カモシカ、イノシシ、サル、テン、オコジョ(?)、リス、ヒミズの9種類。オコジョはイタチの仲間、ヒミズはモグラの仲間。
 動物の生息状況についてはわたしはよくわからないが、シカやサルはふえているようだ。畑が荒らされるなどの被害も聞かれる。奥多摩の低山地域はスギ・ヒノキの植林が多く、動物には棲みにくいことだろう。どんなふうにこの地域で生息しているのか興味深いことだ。
 データからおもなものを地図に落としてみた。図1には大型動物のクマ、シカ、カモシカ、イノシシ、サルの目撃地点を、図2にはリスの目撃地点を示した。シカの声については遠いものが多く、場所を特定できないので地図には示さなかった。

(頭数、年月日、場所、標高、備考の順で)
<クマ>
1    97.07.25 稲村岩尾根  1330m
尾根北側のササ藪のなかでガサガサする音。立ち止まって待っているとクマが出る。距離約10m、道の先。クマは藪から出たところでこちらを見る。無風。直後、道の先へ走り、南側のササ藪へもぐる音。音が遠ざかる。声はなし。成獣らしい。出てきたところはケモノ道になっている。
<シカ>
1    95.03.20 稲村岩尾根  1040m 大きい
   すこし上がって1120mでも道を横切った足跡
雌1子2 95.06.12 稲村岩下    680m
稲村岩とその手前の岩の鞍部を越えていった。キュンキュン鳴く。
雌1   95.10.13 稲村岩下    640m
約30m先、沢の対岸。数歩逃げてふりかえったので口笛をふいてやったらキュンと鳴いて逃げた。
1    96.09.19 稲村岩尾根  900m
約20m先、あっという間に尾根の北側へ逃げる。その後、しばらくキューキューと鳴いていた。

 以下は鳴き声のみで、標高は声を聞いた時のこちらの高さ。声が遠い場合はシカのいた標高がかなりちがう場合もある。
鳴き声  94.10.31 稲村岩下   630m 場所不明
 〃    〃   稲村岩尾根  890m 〃
   その後も一日よく声を聞く。
 〃   94.11.09 稲村岩下   630m 場所不明
 〃   95.09.09 稲村岩尾根  1030m 遠くで鳴いている
 〃   95.10.13 日原     610m 場所不明
 〃    〃    稲村岩下   770m 上のほうで鳴いている
 〃    〃    稲村岩尾根  1350m あまり遠くなさそう
 〃    〃    倉戸山    1080m あまり遠くない
 〃   95.11.13  稲村岩尾根  960m やや遠い
 〃    〃     〃     1050m
 〃    〃     〃     1200m
 〃    〃    榧ノ木尾根  1200m
 〃   96.10.17  稲村岩尾根  1150m 遠く南のほうから
 〃    〃     〃     1240m 遠い
 〃    〃     〃     1290m 遠い
 〃    〃     〃     1350m 遠い
 〃    〃    倉戸山北   1180m 遠い
 〃    〃    倉戸山    1100m 遠い
 〃   96.12.16 稲村岩尾根  960m やや遠い
 〃   97.10.14 稲村岩尾根  850m 上の方、遠い声
 〃    〃     〃     1100m 下の方、かなり遠い
 〃    〃     〃     1560m ヒルメシクイのタワ
タワの下の方、あまり遠くない。少し先の1550mからの急登の手前、北面でさかんにキューキューキューという声がする。声といっしょにカン、カンとかたい音がする。雄同士の闘いの音か。
 〃    〃    石尾根 1590m 下の方、遠い声 
                     榧ノ木尾根の分岐点
 〃    〃 榧ノ木尾根  1250m 下の方、あまり遠くない
 〃   97.11.04 稲村岩下   680m 沢の上流の方、遠い声
 〃    〃    稲村岩尾根  1230m 南方、やや遠い
 〃    〃      〃    1350m 南、あまり遠くない
 〃    〃      〃    1420m 北の方、遠い
 〃    〃      〃   1560m 山頂方向、あまり遠くない
 〃    〃    倉戸山    1100m 下の方に聞く
 〃    〃     〃     710m 北の方に聞く

<落ち角>94.09.21 倉戸山    1100m
登山道のわきに角の根元の部分が落ちていた。リスかネズミらしい小動物の歯形がたくさんついていた。

<カモシカ>
親1子1 96.02.22 巳ノ戸橋~稲村岩下の間 610m
10m先、親は灰色、子はこげ茶色。雪の急斜面をゆっくり上へ。

<イノシシ>
親1子1 94.09.21 榧ノ木尾根  1200m
尾根上の登山道と平行してケモノ道があり、上の方から来て8mくらいまで近づいて立ち止まったが、こちらに気がつかない様子。そのままトコトコを通りすぎる。付近にはイノシシが掘ったらしい跡がいくつもあり、ヌタ場もある。

<サル>
2+   93.11.10 榧ノ木尾根 1350m 下から別の声も
1    94.08.09 稲村岩下   600m 5m先にしゃがんでいる
4    94.09.21 倉戸山    790m
50m先のヒノキ林中にいるが、近くにはクリの木やアケビがあり、アケビの実やクリのいがもかなり落ちている。
5    94.10.31 倉戸山山頂  1169m 子サル1頭を含む
1    95.04.20 倉戸山    1050m
登山道の近くにいたが、こちらに気づいて林中へ。20mくらい行ったところでこちらを見ている。
1+   97.01.09 稲村岩下   650m
1頭のほかにキュッ、クォッという声もする。
2    97.06.13 稲村岩尾根  920m
広葉樹の高いところへ上がっていたが、下りてきて逃げた。
1    97.06.13 稲村岩尾根  990m
路上に1頭、920mのかもしてない。ほかに声がする。
9+   97.07.25 石尾根    1450m
水根沢林道の入口。逃げる様子がなく、木の上で休むもの、こちらをじっと見ているもの、枝から枝へゆっくり歩くものなど、休息しているらしい。しばらく見ていると、警戒しながらも次第に 近づいてきて、ヒノキの枝を伝ってこちらの頭上まで来る。子ザルも混ざっているがかなり成長している。子ザルがヒノキの横枝にしゃがんだままフンをする。
6+   97.08.28 水根     550m
水根のバス停から5分くらい水根沢へ入った沢の対岸。1頭が枝の上で白いものを手づかみにして食べている。子ザルもいる。対岸の斜面を上流方向へ移動し始めてからすぐ見えなくなる。
4    97.10.14 稲村岩尾根  1390m
50~60m先を、枝づたいに尾根のほうへ。みな大きい。フューイッ、キューと鳴く。
複数の声 97.11.04 榧ノ木山   1350m
尾根の東側、下の方で叫ぶ声。それとは別にダンダンダンダン~~と何かをたたくような音。

<リス>
1    94.05.19 稲村岩尾根  1380m
1    94.09.21 榧ノ木尾根  1240m ヒノキ林中
1    95.02.23 倉戸山    700m
1     〃    〃      800m キュムッキュムッと声
1    95.03.20 稲村岩尾根  1350m ブナの幹に
1    95.09.09 石尾根    1590m ミズナラに
1    95.10.13 稲村岩尾根  1700m
コメツガの高さ10mくらいのところに。
1    95.12.08  稲村岩尾根  890m ツガに
1     〃     〃    1380m ブナの幹に
1    96.02.22 稲村岩尾根  910m ツガの梢近い細枝に
1    96.03.12 稲村岩尾根  960m
1    96.05.10 倉戸山    930m
1    96.06.03 稲村岩尾根  970m ツガの高さ10mに
1    96.07.12 榧ノ木尾根  1470m 石尾根分岐近く
1    96.10.17 稲村岩尾根  1020m 道の先へ走る
1     〃    〃   1280m
きのこらしい、丸く茶色いものをくわえている。
1    96.11.15  稲村岩尾根  1680m
斜めの幹をスルスル下りてきて、ササの中へ逃げる。

<オコジョ?>
4    96.08.09 稲村岩下   630m
木の根元や石の隙間を出たり入ったりしながら少しずつ移動、3mまで近づいてきた。家族だと思うが、親子性別など不明。

<ヒミズ>
1    96.03.12 稲村岩尾根  1560m
ヒルメシクイのタワで、落ち葉にもぐろうとするところを、動きがのろいので捕まえる。尻尾を持ってぶら下げるとビイッビイッビイッ、あるいはジィジィジィと鳴く。放したら雪面を数m走ってササの茎のまわりに空いた雪の隙間から中へもぐった。

<その他>
     95.12.08 石尾根   1590m 小動物の尻尾の先を拾う

○ その他の地域
シカ   1 94.07.18 日原  650m 日原川の対岸の伐開地
カモシカ 1 94.06.16 小川谷林道  950m
林道の法面に網フェンスが張られてあり、その向う側。
サル  7+ 94.7.18 川乗橋 日原街道のわき、子ザルも
サル   2 94.08.03 日原川林道へ入ってすぐの駐車場わき
テン   1 92.08.31 横スズ尾根 1200m
5~6m先、尾根のブナ林
リス   1 92.08.31 横スズ尾根 標高?
リス   1 94.05.06 鴨沢~ブナ坂の間 920m


鷹ノ巣山探鳥山行30回

2007年09月22日 19時22分11秒 | 観察記録から
鷹ノ巣山探鳥山行30回
1996年12月19日

山の鳥を知りたい
 同じ山に登りつづけるという話は以前に聞いたことがある。たとえば富士山に毎年登っているとか、生涯に何回登ったとか、六甲山に毎朝、早朝登山をしているとか、いつだったか、谷川岳に1000回登ったという人のことがテレビで紹介されていた。数多くの山に登るのはもちろんおもしろいが、こんなふうに、ひとつの山にくりかえし登りつづけるという山とのつきあいかたもある。そうやっておなじ山に登りつづけている人はその山にどんな魅力を感じているのだろう。なにを見ているのだろうか。
 わたしの場合は、山の鳥を見たいということでこれまで2年あまり、毎月奥多摩の鷹ノ巣山へ通いつづけた。べつに山の名前にこだわって鷹ノ巣山と決めているわけではない。奥多摩では比較的自然林が保たれている地域だからだ。それに日帰りで一応亜高山の鳥まで見られるところはあまりない。とくに山の鳥の垂直分布を知りたいと思った。鷹ノ巣山に達するいくつかのコースのうち、日原からの稲村岩尾根が、その点では、短い距離で一様に高度を上げていてちょうどうってつけだった。
 このコースは標高差約1200mで、ふつうは歩いてだいたい3時間半くらいで山頂に立てる。しかし、鳥を見て記録しながら登るとそうはいかない。夏場、鳥が多い時期だと6時間以上、冬の少ない時期でも5時間半はかかる。日原行きの始発バスを終点でおりて、歩きはじめるのが6時半、山頂につくのが12時過ぎから1時過ぎくらいの時刻になる。もっとも日のみじかい時期には歩きはじめはまだ暗く、夕方麓におりるころにはもう暗い。
 下山にはたいてい榧ノ木尾根を利用する。この尾根は広葉樹の林間を行く道が気持ちいい。スギ、ヒノキの中を歩かされるのは、もう奥多摩湖の湖岸近くまで下りてからのわずかの間ですむ。日中でも薄暗いスギ、ヒノキの植林のなかは変化にとぼしいから、あまり歩かずにすませたい。夏の暑い時期だけは水根沢林道を使う。沢沿いの道はいくらか涼しいし、途中3ヶ所くらいで水にありつける。石尾根を直接氷川へ下りれば、青梅線の終点奥多摩駅が近いが、六つ石山から先の下りでは、薄暗い植林地帯が多いし、あとのほうでは車道を歩くのでおもしろくない。

山の鳥は見るより聴く
 山で鳥を見るというが、実際には樹林帯のあまり見通しのよくないところがほとんどなので、声が聞こえるばかりで姿は見えないことが多い。それに、歩いているときは足元に注意する必要があるから、たいていは下を向いている。だから、鳥の探し方はゆっくり歩きながら、たえず耳をそばだてていて、鳥の声や動きのかすかな音を聞き逃さないようにするということになる。何も気配がなくてもときどきは立ち止まって周囲を見回したりもするが、それで鳥がみつかるということはあまりない。なんの手がかりもなしに双眼鏡を向けても何もみつからない。河原で鳥を見るように目で探すというのは山ではあまり役にたたないようだ。
 そこで耳から入る情報を逃すまいとするのだが、鳥がいるのはわかっても、それがなに鳥なのかは最初のうちはわからない。声だけでなんの鳥か確認するのはなかなかむずかしい。とくに山の鳥を見始めた最初のころは、登りながら、不明、不明、?、?ばかりで手帳に記録のしようがなくて無力感におそわれたほどだった。
 ふりかえってみると、昔せっせと山を登っていたころ、気がついていたのはウグイスの声ぐらいで、ほかにはなにも意識していなかった。あのころ、自分の耳には一体なにが聞こえていたのだろう。今になって不思議に思う。
 声だけでわからないことは今もときどきある。さえずってくれればけっこうわかるが、小声やみじかい声で地鳴きされるとむずかしい場合がある。たとえば、ウグイスとミソサザイの地鳴きはよく似ている。確かにいくらか違いがあって、ウグイスは「チャッチャッ」と鳴くし、ミソサザイもそのように鳴くが、もっとよく聴けば、ミソサザイはウグイスよりもやや強い調子で「キチョッキチョッ」と鳴く。さらに言えばミソサザイの「キチョッ」の最初の「キ」はつまっていて小文字の「キ」であるし、「チョッ」は「チャッ」と「チョッ」の中間くらいだ。でもこの区別がだれの耳にもそう感じられるのか、自分の耳だけにそう感じられるのかはわからない。それに文字にあらわす時には、それらの微妙な差異は表現しにくい。聴覚のするどい人の耳にはどんなふうに聞こえているのか知りたいものだ。わたしはどうもあまり鋭いほうではないらしい。というのも、いまだにヒガラとメジロの地鳴きが区別できないことがある。
 地鳴きにもそれぞれの鳥に何種類かあって、その典型的な鳴き方をしてくれれば、まずわからないことはないのだが、そう都合よくはいかない。あまり耳に神経を集中しすぎて、というよりも鳥の声を聴こう聴こうとこだわりすぎて、自分がかついでいるザックのきしむ音なんかについ立ち止まったりすることがある。なにも鳴いてないのに、なにかの声がしたような、空耳ということだってある。
 なかなか声を出さない鳥もいる。ツグミ類のアカハラやトラツグミなどは、繁殖期のさえずりはそれぞれ独特でまちがえることはないし、シロハラは冬鳥で、春に渡去するころさえずりを聞くことがある。でもふだんはあまり声を出さない。単独でいることが多いので、仲間同士呼び交わす必要がないからだろうか。地鳴きもよく似ている。こちらが知らずに近づいて、逃げる際に声を聞かされてはじめて存在に気がつくことになる。でも時すでに遅く、鳥種を確認できなくてくやしい思いをすることが少なくない。

観察して記録して
 鳥がいると立ち止まって小さいノートに記録する。時刻、標高、鳥の種類、羽数、わかれば何の木でなにをしているかといったことを書いておく。標高は10mの単位まで記録する。登山道にはどこかの団体がつけたらしい、50m間隔で標高を記した数cmの白いパネルが立ち木の根元に釘付けされている。これは、ふつうに山を登っている時はよけいなおせっかいでわずらわしいものだが、このたびは役に立った。そのパネルと2万5千分の一地図とを見比べながら地形を確認していくと、かなり細かいところまで判断できる。むかし使っていた5万分の一地図にくらべて、2万5千分の一地図はおどろくほど精度が高い。白いパネルはその後なくなってしまったが、最近また新たにつけられた。以前の位置と少しずれているが、だいたいにおいて支障はない。
 鳥の動きの大きさからすれば、標高10mの差は問題にならないのだが、たとえばウグイスやコマドリが右に左に頻繁に鳴くところでは、それぞれの声を区別しておく必要がある。ゆっくり歩いていると、ある個体の声が最初は前のほうから、次第に近づいてそれから後ろへ遠ざかるわけで、そこへ別の個体の声が重なって、2羽3羽と鳴くと、前後左右で重なりあってしまう。それが頭のなかでごっちゃにならないようにするために、10mの単位までわけて記載しておく。ずっと後になって記録を読みかえす際にもそのほうがいいだろう。実際にはそんな正確な標高の数字が出せているとは思わないが、50mの標高差の中を、目測と歩いた感覚で五等分するわけだから、誤差は最大でも10~20m以内くらいにおさまっていると思う。これら山の鳥を見ること、そして記録していく要領は何度もやっているうちに定まってきた。
 記録コースを稲村岩尾根にしてから、出来るだけ多く行こうとして月2回出かけたこともある。しかし、あまりやり過ぎてはいけないと思った。月に一度と思うから気合が入るが、二度になると翌月までの間隔が短くなって、つぎに行くときまでに意欲が充分に満ちてこない感じがする。あきるほどやってはいけない、というのが永く続けるコツらしい。食べ過ぎるといくら好物でも、しばらくは食べたくないものだ。ただし、わたしの場合は満腹感が早く来るらしい。もっと意欲が続かないものかと、自分ではその点がものたりない。
 いつもおなじ山を、しかもおなじコースばかり歩くというのは、登山をする人には、もったいない、あるいは理解しがたいことかもしれない。でもひとつの山に深くつきあうという登りかたをするようになって、むしろほんとうに山の良さがわかるようになったような気がする。日程に追われて消化するように、あたふたと通過していくだけの登りかたではもう満足できない。毎月登るようになって、2年と2ヶ月で30回、それ以前に、コースを決めずに歩いていた、いわば準備期間といえるのをあわせると40回近く登ったことになる。そのたびに鷹ノ巣山の表情は四季折々ではあるが、むしろわたしにはその表面の変化よりも、ジッと黙ってそこにいつづける、いつ行っても重く大きく変わらないという気がする。わたしはいっとき、その表面の細い線の上を通過させてもらうにすぎない。たまたま、そのときの山の表情に出会えるだけで、鳥にも動物にも木々にも、みんなわずかに垣間見て、ちょっとあいさつしてくるだけにすぎないという気がする。だから、まだまだ通い続けなければならないだろう。

カワラヒワとカワラニガナ

2007年09月20日 15時08分41秒 | 観察記録から
カワラヒワとカワラニガナ

 7月ごろ多摩川の河原を歩くと、石原にカワラニガナの花が咲いているのをみる。草丈は10cm~25cmくらい。直径2cmほどの黄色い、タンポポに似た頭状花をつける。そのあとやはりタンポポに似た冠毛のついた種ができる。開花時期が長いので花の咲いているのと種をつけているのとがいっしょに見られる。
 カワラヒワは繁殖期にはほとんど河原に来ないのだが、この花が咲くころになると小群で訪れるようになる。そして、まだ未熟で、冠毛がひらいていない、筒状にすぼまっている状態のカワラニガナの種房を好んで食べる。
 その食べ方を観察していると、種の取りかたにいくとおりかの方法があることに気がつく。これまでに見られたいくつかの取り方を分類するとつぎのようになる。

(1)a.ふつうの姿勢でつまみ取る
   b.背伸びしてつまみ取る
   c.ジャンプしてつまみ取る
(2)d.石を踏み台にしてつまみ取る
   e.他の草の茎をはしごがわりにしてつまみ取る
(3)f.茎を踏みたおしてつまみ取る
   g.ジャンプして茎を踏みたおしてつまみ取る
   h.くちばしで引き寄せて、足で茎をおさえてつまみ取る
(4)i.くちばしで茎を折りたおしてつまみ取る

 大きく分けると上の(1)から(4)になり、さらにそれぞれの方法をこまかく分けるとaからiの全部で9とおりに分けられる。
(1)は直接くちばしで種房をつまみとって食べるもので、すこし高いところにあれば、背伸びかジャンプをしてとる。
(2)はそれではとどかない場合で、そばにちょうど適当な石があればそれを踏み台にする。また、カワラニガナの群落はメマツヨウグサと混生していることが多く、しっかりしたその茎ははしごがわりによく利用される。
(3)と(4)はカワラニガナの葉や茎の状態に積極的に変更を加えて種房をとりやすくするというものである。
(3)は歩いていって、その延長で直接茎を踏み倒してしまうもの。茎に向かってジャンプして体重をかけて踏み倒してしまうもの。くちばしで茎や葉を引きよせてから足で踏みつけるものの3とおりがある。
 そして(4)の方法はカワラヒワのふつうの姿勢で、カワラニガナの茎をくちばしで折りたおして種房をとりやすい位置にするもの。(3)のやや荒っぽくて力づくのやり方に対して(4)は知性を感じさせるもので、自分の行為がもたらす結果を予測しているようにみえる。
 この9とおりの中ではiの方法が最も楽で収穫が多いのはあきらかだ。カワラニガナの茎はごく細く弱いので、彼らにもたやすく折ることができる。このやり方ばかりする個体をしばらく追う機会があったが、せっかく折ってもろくに食べないでつぎつぎに折っていった。まるで折ることが楽しいから折っているとでもいった感じにみえた。
 これら9とおりのやり方をどのカワラヒワも同じようにするのか、それとも好みがあったり、得手、不得手などがあるのかは不明である。これまでに見た少ない観察例のなかでは、見ているあいだに(3)の荒技ばかりやる個体と(4)の折りたおしを好んでいるかのようにくりかえす個体がいた。個体識別ができないので長い時間にわたって追跡することができないが、ふつうのつまみ取り方ばかりではなく、ある方法を好んでくりかえす個体がいるのかもしれない。どれも同じようにみえるカワラヒワにもほんとうはそれぞれ個性があって、かなりちがった餌の取り方や行動のちがいがあるのかもしれない。


ヒヨドリが食べた物 (表は省略)

2007年09月19日 10時20分19秒 | 観察記録から
ヒヨドリが食べた物

1997年10月26日記

 1年を通じて身近にいる鳥のうち、なかでもヒヨドリは特に親しい鳥ではないだろうか。いつもどこかで「ピーヨ、ピーヨ」と鳴きながら活動している。その活動のうちの多くは食べ物を得ることに費やされている。一般に小鳥類が実際に何を食べているかは、野外では案外見えにくいものだ。でもヒヨドリの場合はそれでも、身近な分、いくらか目につきやすいように思う。そこで、よく散歩をする多摩川や草花丘陵での数年間の観察記録の中から、ヒヨドリが食べた物の記録を抜き出してみた。もっとも多かったのは木の実を食べた記録だった。
 第1表はヒヨドリが食べた木の実の種類と記録した回数を現わしている。ここ数年間のものであるが、これはたまたま観察、記録しただけのもので、そのまま樹種による利用の多少や好みを現わした物ではない。
 ほとんどは果肉のやわらかい漿果で、アカメガシワとヌルデは乾いた果実、またヨウシュヤマゴボウだけは草本類に分類される。
 春、花が咲いて、いち早く実をつけるサクラやクワを食べているが、盛夏にもっとも種類が多くなる。真冬にもヒサカキやアオキなどの実があるが、食糧事情が悪いのか、残り少ないアオハダの実や、ひからびたムクノキの実をとっていることもある。地上近くまで下りて、低木の実をとったり、地上に下りて、落ちている実をさがしていることもある。



 ヒヨドリは繁殖期を中心に昆虫類やクモをよく食べることが知られている。しかし、虫を捕る瞬間が見られることは少なく、何を捕ったのかもよくわからない。小さい虫を数多く捕っているのだろう。


 第2表では比較的めにつきやすいセミを捕る記録が多くなった。9件の記録があるが、実際に捕まえられたのは、このうち5回で、4回はセミに逃げられている。だから、食べそこなった虫をふむく記録とするべきか。
 そのほかに、ツバキ、サザンカ、それにヤマザクラなどのサクラ類の蜜も吸う。ヒサカキの花やヤナギの新芽を食べていることもある。
 このようにヒヨドリはいろいろなものを食べているので、その採り方や、食べ方も時に応じてさまざまになる。つぎに採り方、食べ方も記録しているものを抜き出してみよう。  
 羽村草花丘陵 浅間岳
1994/11/13 赤トンボをくわえて枝にとまり、羽ごと食べる。
 95/01/29 アオキの青い実をくわえてひと飲みにする。
 95/05/10 ホバリングしてコナラの葉にぶら下がり、体重をかけて
何かをむしりとる。
 95/07/15 まだ青白いミズキの実をつまみとって食べる。
1996/02/01 崖状になった急傾斜の地上に下りて、何かの実を探して
ついばんでいる。歩こうとはしないで、数十センチ飛ん
では位置を変えて、地面にしがみつくようにして、身の
まわりで餌をさがす。
96/02/01 ヒサカキの枝の茂みにもぐりこんで、体を横に傾けて、
枝を揺すらせながら黒い実をつまみとる。
96/02/03 ムクノキの枯れた実を、枝先でホバリングして、くわえ
とっては枝にとまって飲み込む。見ているうちに4~5
回くりかえす。
96/02/03 地上に下りて草の実らしいものをつまみとっては食べて
いる。
96/02/08 やぶの根元近くの枝にとまって、地上を見て餌探し。地
上に下りて、落ち葉をかきわけたりもする。
96/02/15 アオハダの残り少ない実を探しては食べている。その後
ヒサカキへ飛んですぐに7粒食べる。
96/03/27 アオキの赤い実をくわえて飛び立つ。
96/04/03 アオキの半分赤熟した大きい実をくわえて、なかなか飲
み込めずにいる。飲んだかどうか未確認。そのあとヒサ
カキの花を盛んに食べる。
96/05/23  ヤマウルシの枝にとまり、葉裏をのぞきこんでは何かを
つまみとる。青虫もとる。とどかないところはホバリン
グしてとる。
96/05/27  アカマツの枝から1.5mくらい飛びあがって虫をフライ
キャッチ。
96/06/01 ヤマザクラの赤熟した実を枝にとまってつまみとる。
96/06/01 アカマツの幹の皮の裂け目にくちばしを入れて何かつい
ばんでいる。
96/07/13 アカメガシワの枝先に、葉の柄がまとまっているところ
で、下からホバリングして虫をとる。
96/08/08 シロダモにからんだ草のつるの茂みで青虫をつまみとる。
数m先の木の横枝へ移って、たたきつけて食べる。
96/08/09 アカメガシワの樹冠の先で捕りそこなったらしいセミを
追ったが、セミはビビビビッと鳴きながら逃げきる。
96/09/04 コナラの梢で枝から背伸びして小虫をつまみとる。
96/11/19 ムクノキの実をくわえてむしりとる。枝がゆれる。
96/12/02 サネカズラの赤い実をホバリングで取って、枝へもどっ
て食べる。
1997/01/05 低木の細枝にとまって、首を伸ばして枝先にある小さな
赤い実をとる。バランスをくずして取りにくそう。
97/02/08 アオキの青い実をとって丸呑みにする。つぎにホバリン
グで青い実をとって、2m先の横枝にとまる。くわえ直
しているときに落としたが、それは無視。アオキの実は
まだ青いのしかない。

多摩川 睦橋周辺(あきる野市、福生市)
1994/11/12 枝から垂れ下がっているヌルデの実を、枝を軸にして一
瞬逆立ちして一粒取って姿勢を直す。
1996/06/07 ピーピー騒ぐので見たら、オオミズアオらしいガをくわ
えてクヌギの枝にとまった。そのガに逃げられて15mく
らい追い、草の中にガが下りたところでつかまえ、また
クヌギの横枝へ行って振ったりくわえ直したりして羽を
とる。羽1枚取り残したままくわえて飛び去る。
96/09/03 ヤナギにからんだノブドウの実を食べる。実はうす赤色
に色づいているのもあるが、赤いのも青いのも食べる。

 以上のように、その時の状況に合わせていろいろな採り方、食べ方をしている。採り方については、観察された中では細かく分けると7種類の方法を使っている。餌が少ないらしい冬には、地上近くの草やぶまで下りてきて丹念に餌を探したり、シロハラのように地上で落ち葉をかきわけている姿もみられたが、それらは不自由そうな動きに見えた。
 また、熟した実ばかりではなく、青い木の実を食べているところが、アオキ、ミズキ、ノブドウで見られた。
 注意深く見れば、餌の採り方にはまだほかにも方法があるのではないか。

モズのケンカ相手 (表は不備)

2007年09月19日 10時17分42秒 | 観察記録から
モズのケンカ相手

2000年8月26日記

 モズははやにえを作る、高鳴きをするなど昔からその習性について話題を提供してきたし、俳句の素材になるなど、身近な自然の中の点景としても親しまれてきた。草原や農耕地などの開けたところを生活の場としているので特異な行動が目にとまりやすい。モズは昆虫、トカゲ、カエルなどの小動物を餌とし、ときには小鳥やネズミまでもとらえる。このような習性から「小さな猛禽類」といわれているように、猛々しい一面をもっている。
 わたしはこの10年ほどのあいだ多摩川や、それに隣接する丘陵の一角を早朝散歩している。そこで多くの野鳥や小動物に出会う機会にめぐまれたが、その中から今回はモズについて、それもほかの種類の鳥との争いや強さの順位についての観察記録を紹介することにしよう。
 観察した地域は多摩川が秋川と合流する辺りから上流にかけての地域で、行政区ではあきる野市、福生市、羽村市になる。期間は1991年から98年、ほとんど早朝に限った。
 まず、モズがかかっていった相手、またはモズが近づいたのを嫌って自分から逃げていった相手を月別の表にしたので、それをご覧いただきたい。
 16種類の野鳥に対して、のべ27件の記録があった。これを月別、あるいは季節別にみていくと、3月から6月の繁殖期と9月から12月、秋から冬にかけての高鳴きの時期に集中している。ふたつの季節ともになわばりの防衛が特に要請される時期であり、記録の多いことと一致するのはたぶん偶然ではないだろう。ただ、目立ちやすさ、観察者としての自分の注意の向け方のムラということも影響しているかもしれない。それは任意に集めた記録だから、どうしても繁殖期と高鳴きの時期に注目しがちだということ。
 そのうえで、さらにかかっていった相手別にみていこう。
 モズがかかっていった16種類の相手のうち自分より大きいのはトビ、オオタカ、キジバト、ヒヨドリ、ツグミ、オナガの6種類。ほとんど同じ大きさはセグロセキレイ。そしてカワセミ、アリスイ、ジョウビタキ、ノビタキ、オオヨシキリ、シジュウカラ、メジロ、カワラヒワ、マヒワはモズよりも小さい。
 カワラヒワなどは、たとえばオオブタクサの茂みに群れているところへモズが一直線に飛んでくると一斉に舞い立つ。モズは何食わぬ顔でその先の木にとまり、ひとしきり高鳴きをする。そのうちにカワラヒワの群れがもどってくる。そこへまたモズが飛んでいってカワラヒワが舞い
●表は不備●
月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 鳥種別記録数
1 トビ 1 1
2 オオタカ 1 1 2
3 キジバト 1 1
4 カワセミ 1 1 2
5 アリスイ 1 1
6 セグロセキレイ 1 1 2
7 ヒヨドリ 1 1 1 3
8 ジョウビタキ 1 1 2
9 ノビタキ 1 1
10 ツグミ 1 1
11 オオヨシキリ 1 1
12 シジュウカラ 1 1 1 3
13 メジロ 1 1
14 カワラヒワ 1 1 2 4
15 マヒワ 1 1
16 オナガ 1 1
月別記録数 2 1 1 5 2 2 2 5 5 2 27

立つ。何度もそんなことを繰り返しているモズは遊んでいるようにも見える。ヒヨドリやキジバトでもモズが追えば逃げるし、近づくだけでも逃げていくことがある。猛禽類に対してもモズは果敢に挑んでいく。
 トビとオオタカへかかっていった3件の記録はいずれも4月と5月の繁殖期のものだった。オナガに対したのもやはり4月だ。これらは巣の防衛という意味が強いと考えられる。
 参考に日本野鳥の会神奈川支部発行の『神奈川の鳥』を見てみる。第1集は持ってないので第2集、3集を見ると両方で10種の相手に10件あったが、5月にハシボソガラスにたいして1件あったほかは10月から3月の越冬期に分散していた。データが少ないためか、特に時期が集中している傾向はなかった。逆にモズが追われた記録が5件載っていた。相手はツバメ、シジュウカラ、メジロ、シメ、オナガとなっていた。
 以上、モズの興味深い生活の一面を見てきた。野鳥の力関係はからだの大きさのほかにもいくつかの要素が考えられそうだ。そんなことに注意しながら野鳥をみるのもおもしろいかもしれない。

かごの中の野鳥 (表は省略)

2007年09月19日 10時15分22秒 | 観察記録から
かごの中の野鳥

1998年12月30日記

[はじめに]
 初夏の早朝、鳥を見に多摩川や草花丘陵へ向かう途中、市内のある家の前を通るとコマドリのさえずりが聞こえる。別の所ではヤマガラの声。自転車で通りすがりにのぞくと、軒下に鳥かごが下がっている。こうして野鳥の声を聞いた朝は腹立たしく、気分が悪い。納得できない気持ちをかかえたままフィールトへ向かうのだった。
 市内のある店へ買い物に行く。店の前の道路をへだてた反対側の人家からメジロのさえずり。垣根の隙間からのぞくと目の前に鳥かごがおいてある。 いったいこうした野鳥の飼養の実態はどうなっているのだろうか。市内全域では何か所くらいになるのだろう。これは数年前から気になっていたのだが、ようやく調べてあるく機会がおとずれた。
[調査時期]
 1998年6月20日から7月18日までのあいだに17回に分けて、福生市内のほぼ全域を歩いた。時間帯は早朝の4時30分ころから6時30分くらいにかけての2時間前後。街は静かで人も車も少なく、鳥の声を聞いてあるくにはこの時間帯がいい。ただ野鳥のさえずりの時期からするとやや最盛期を過ぎていることが懸念された。
 それ以後も同じ道をまた歩いてみたり、未確認のところへも足を運んだ。引き続いて市内の散歩を続けたので秋になって新たに得られたデータもある。さらに一部は羽村市内、あきる野市内にも延長して参考記録を集めた。

[調査方法]
 特に方法というのはない。念のいった散歩という感じで、表通りを軸にして、中通りや路地をできるだけこまめになぞって歩く。しかし、ある街区の周囲をみな歩くと元へ戻ることになり、たいへんな労力になってしまうので、「コ」の字型に歩いて元の道のさきへ出て、さらにその次へと進んでいく。斜め道路などが込み入った街区ではそうもいかないので、できるだけ鳥の声のとどく範囲内ということを意識しながら小路から小路へと調査地域をぬりつぶすように歩く。
 かごの中の野鳥の確認方法はほとんど声によった。さえずりや地鳴きをたよりに近づいていくと、ほぼその家を特定できる。ときには2軒並んだ家のどちらが発声源なのか、あるいはその奥の家なのかわからないばあいもある。軒先や庭に鳥かごが見えても、かごの中の鳥まではなかなか見えない。歩きながら手帳に場所、鳥種、鳥かごが見えるかどうか、さえずりか地鳴きかなどを記入する。
 怪しまれたり、誤解されるおそれがあるので双眼鏡は持たず、人家の前では長く立ち止まらない、手帳への記入は通り過ぎてからにする、など気を使うことも多い。一声だけ聞いたきりで後日の再確認に委ねる場合も多い。

[結果]
 98年12月現在までに14種類の野鳥を記録した。福生市内ではミソサザイとキビタキとヒガラをのぞく11種類となった。羽村市、あきる野市をふくめた飼養軒数は50軒。福生市内だけでは37軒となった。(10ページの表を参照)メジロとヤマガラが圧倒的に多く、つぎにコマドリ、ホオジロ、オオルリと続く。
 福生市内で最も多くの種類を飼っていた家では6種類いて、コマドリ、オオルリ、ヤマガラ、メジロ、ウソ、イカルとなった(表の NO.29)。全記録中では、羽村市内のある飼養者のものが最も多かった。野鳥は7種類で、キジ、コマドリ、キビタキ、オオルリ、ヒガラ、メジロ、ホオジロ、さらに飼鳥として、ソウシチョウ、ウコッケイ、キンケイが飼われていた。この家では声をかけて庭へ入れてもらい、近くで見ることができた。確認した50軒のうち、実際に鳥や鳥かごを目撃できたのは24軒にとどまった。

[雑感]
 福生市内では37軒、つまり少なくとも37人は野鳥を飼っているわけで、それで福生市の人口62,302人(98年12月1日現在)を割ると、 1,683人あたりで1人となる。非常にあらっぽい推定になるが、現在の日本の人口約1億2千6百万人あたりに換算すると、74,866人が野鳥を飼っていることになる。日本野鳥の会の会員数が53,827人(98年12月1日現在)、このほかにどれだけの野鳥愛好家がいるかわからないが、少なくとも、野外で鳥を楽しもうという野鳥の会の会員よりも、かごに閉じこめて所有したいという人の方が多いことになる。個体数を推定すると、1軒あたり少なく見積もって3羽飼っているとすれば、全国では22万羽あまりになる。
 これだけ野鳥の飼養が盛んであれば、「『かご抜け』の野鳥」というのも存在するわけだ。もともとその地にいる野鳥となると野生との区別はムリ、季節はずれなら「かごから逃げた」と推定できるかもしれないが。さらに、町中や人家周辺で鳥の声を聞いた場合、たとえば春、コマドリやオオルリの声を聞いて、姿は確認していない時などは近くの人家のかごの中で鳴いている可能性もあるから注意が必要だ。「ああ、渡り途中のオオルリが近くで鳴いている」などと早合点してはならないことになる。
 野に出て野鳥を聞く耳で、あなたの街の中を歩いてみませんか。


野鳥の声を楽しむ―草花丘陵さえずり暦― (図表は省略)

2007年09月19日 10時10分28秒 | 観察記録から
野鳥の声を楽しむ

―草花丘陵さえずり暦―


はじめに
 野山で、あるいは河原で鳥のさえずりに耳をかたむける。春から夏にかけてのさまざまな野鳥のさえずりは探鳥のなかでも大きな楽しみのひとつになっている。さえずりはだいたい4月から6月ごろまでの間がもっとも盛んであるが、種ごとにみていくと鳴く時期にはそれぞれのちがいがある。たとえば春浅い時期から鳴き出すもの、夏遅くまでさえずるもの、あるいは秋や冬にも鳴くもの、ほとんど一年中いつとなくさえずるものなど、その生態はさまざまになっている。そこで繁殖期だけでなく、年間を通じて野鳥のさえずり習性はどうなっているのか、それをまとめてみることにした。

どう記録したか
 この報告は94年1月から98年6月までの4年半のあいだに得られたデータによっている。記録の取りかたは特別なことは何もない。丘陵を歩きながらいつも持ち歩いている手帖に、その日出現した野鳥を書きとめているが、さえずったらそこに「S」と書き添えた。
 観察地の草花丘陵は東京都の西部にある。羽村市、あきる野市、青梅市にまたがる標高200m前後の丘陵地帯で、奥多摩の山々が東に次第に低くなったはずれに位置する。丘陵の北東側のすぐ下を多摩川が流れる。観察は多摩川の堤防からはじめているので川の鳥についてもいくつか取り上げている。それはイカルチドリ、イソシギ、ヒバリ、オオヨシキリ、セッカでこの5種類は丘陵内にはいない。他の多くの鳥は河原にも丘陵にもに生息しているが、ヤブサメのように丘陵内の藪の中にしか棲まないものもいる。
 草花丘陵とその周辺で見られるすべての鳥種についてのさえずりを記録するのが理想だが、さえずりとそれ以外の鳴きとの区別がむずかしい鳥も多いので、作成できたのは35種類の野鳥にとどまった。
 また、ひとつ注意していただきたいのは、これらの記録は草花丘陵におけるさえずり状況であって、各鳥種の年間のさえずりについての習性ではないということ。つまり、夏鳥や冬鳥、漂鳥などについては草花丘陵にとどまっている間の様子にすぎない。年間を通してさえずりのパターンがうかがえるのは留鳥についてのみということになる。
 これらの記録のもとになった観察日数は以下のようになる。

表1 観察日数
 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年6月中旬まで
  93回 107回 163回 110回 53回

 四季を通じてほぼ同じ程度の回数を歩いている。時刻はいつも早朝、日の出後まもなくから1時間あまりの間。したがって夏場は午前5時前後から、冬場のもっとも遅いときは7時ごろからになった。フクロウ類などをのぞいて野鳥はふつう早朝にもっとも盛んにさえずるからであるが、わたし自身が早朝に歩くのが習慣だからということもある。

まとめてみると
 35種類の鳥について4年半の記録をまとめたらあとに示す付表のようになった。大きく見ると3月から7月くらいまでのあいだに記録が集中しているが、種別に見ていくとみんな違うといってもいいくらいにさまざまなパターンとなっている。とりあえずこのデータから月ごとと、旬間ごとのさえずり種数を出してみるとつぎのようになった。
 表2からわかるように、4月、5月にもっとも多くの種類のさえずりが聴かれる。これは経験的にもうなずけること。そして10月に小さいピークがある。
 4月、5月というのはまだ帰らずにいる冬鳥が鳴いたり、渡ってきた夏鳥が鳴いたり、それに留鳥の繁殖期が重なって当然さえずる種数がふえる。10月の小さいピークもおなじように夏、冬の渡り鳥の移動期にあたるが、繁殖期ではないのでさえずりを聴くことはあ
まりない。
●表は不備です●
表2 月別さえずり種数
月 1 2 3 4
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
種数 7 11 10 8 9 11 11 14 17 20 23 26
月間種数 13 11 18 30

月 5 6 7 8
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
種数 26 23 25 23 21 20 16 16 16 13 10 11
月間種数 29 23 18 14

月 9 10 11 12
旬 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
種数 8 8 9 9 11 10 9 8 9 7 8 6
月間種数 12 16 12 11

 つぎに付表を見ていこう。中心になる年間のさえずり分布表は見
た通り。12の月をさらに上中下旬にわけて記録のある旬に○を入れた。
 右の欄の「初囀 終囀」というのは、その年はじめてさえずりを聴いた日と最後に聴いた日という意味。しかし、なかにはコジュケイやキジのように一応日付を入れてあるが、終りとつぎのシーズンの始まりとの境がいつなのか断定しにくい場合もある。というより留鳥の場合はいつでもさえずる可能性があるとしたほうがいいかもしれない。
 ここでとりあげたうちで留鳥というのはコジュケイ、キジ、イカルチドリ、キジバト、アオゲラ、ヒバリ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カワラヒワ、イカル、モズの13種である。
 ほかの渡り区分をしめすと、夏鳥はイソシギ、アオバト、カッコウ、ツツドリ、ホトトギス、クロツグミ、ヤブサメ、オオヨシキリ、メボソムシクイ、エゾムシクイ、センダイムシクイ、セッカ、キビタキ、オオルリ。冬鳥はルリビタキ、アカハラ、ツグミ、ヒガラ、カシラダカ、アオジ、ソウシチョウ。それに漂鳥がウグイス。モズは繁殖期のあと、高鳴きが聴かれるようになるまで見られない時期もあるので留鳥か漂鳥か微妙なところ。
 『小鳥はなぜ歌うのか』(小西正一 岩波新書1994年)によると日が長くなると精巣が大きくなり、生殖に関連したホルモンの分泌が増えてさえずりをうながすという。冬至を過ぎると、日の出の時刻はまだしばらく変わらないが、日の入りは少しずつ遅くなって、正月にはもうすでにいくらか日が長くなっている。だから、暮れから新年にかけて鳴けば初囀としていいのかもしれない。
 そのように見ると、ヤマガラ、シジュウカラなどは暮れには新しいシーズンが始まっているといえるだろう。イカルチドリ、キジバト、ホオジロも1月早々から鳴き出し、その後順次聴けることが多くなる。キジバトは年中鳴いているように思っていたが、こうしてまとめてみるとやはり初めと終りがあるものらしい。ぜんたいにさえずりで見るかぎり、人が春を感じるよりも鳥のほうがだいぶ早くから春を感じているといえる。
 終囀についても日付を入れてみたがやはり断定はできない。たとえばホオジロは一応8月の末頃を終囀にしたが、もっとデータが集まれば秋のさえずりとつながるかもしれない。 
 同じく右欄中に「データ不足」とあるのはおもに初年度、その鳥のさえずりに対してあまり注目していなくて、充分メモをとっていなかったという意味で、この表より実際には長い期間鳴いていただろうというもの。
 冬鳥は北へ帰る前に鳴き出したのを記録しているが、表にのせたほかにシロハラのさえずりを2回聴いたことがある。94年と96年のともに4月9日で96年の時は小声でヒリョンヒリョンピリリと聞こえた。
 ソウシチョウのさえずりは繁殖期のような複雑で大きな声とはちがい、ピロピロピロピロピロという単純なくりかえしだった。
 最後にモズをちょっと記号をかえて載せてみた。春のさえずりに対して秋の高鳴きを●にしてみたのだが、高鳴きの終りと春のさえずりの始まりとがつながってしまった。「モズの高鳴き七十五日」というくらいで、高鳴きは12月にはかなり減ってしまうのだが、その後もときどき思い出したように鳴く。それも高鳴きとすると結局このようになった。実は高鳴きの始まりももっと早い記録があるのだが、それが高鳴きなのかどうか判断に迷うので使わなかった。幼鳥が高鳴きふうに鳴くのを聴いたこともある。


雑感
 このように見てくると、一般的な印象としてのさえずりの期間とはかなり違うように感じられるかもしれない。しかし、基になったさえずり件数は圧倒的に繁殖期に多いのである。付表の○印には背景にあるデータの量までは現していないからだ。
 ひとつの試みとしてさえずり暦と名づけてつくってみた。留鳥についてはもっとデータを集めれば非繁殖期の状況もはっきりしてくるかもしれない。
 渡り鳥については渡り途中の鳴き方がどうなっているのか気になるところである。たとえば、夏鳥がこの地方をさえずりながら北上していくように、当地の冬鳥ももっと北の地方を初夏を告げながら鳴いて渡っていくのだろうか。北日本の人いかがでしょう。
こうして鳥の声には、聴いて楽しむ以外に多くの興味深い問題があるということに気づく。それが今回の一番の収穫だったといえる。