ほっとすぺーす(№43)2006年1月
どうしてウソは遅いのか (グラフ省略)
草花丘陵でのウソの初認(そのシーズンで初めて認めた日)は11月下旬から12月上旬ころになることが多い。1羽から数羽程度の小群がたまに見られるだけで、個体数は少ない。ウソは繁殖期には亜高山帯に生息する。たとえば北アルプスでは1500mから3000m(『野鳥の事典』清棲幸保 東京堂書店 昭和41年)、岩手県の早池峰山では1200mから山頂(1914m)まで(『森に棲む野鳥の生態学』由井正敏 創文 1963年)。清棲『野鳥の事典』の垂直分布の棒グラフによると北アルプスの場合、冬には0m~2300mとなっている。その本文のウソの項目では「冬は山を下って山麓や平地で越冬をするものが多い」と記述されている。グラフと本文とで若干ニュアンスがちがう気もする。筆者による奥多摩の鷹ノ巣山や、草花丘陵での観察記録では、かなりの個体は山に残り、一部は山麓や平地へ来るという感じ。
そのなかで鷹ノ巣山の観察記録をもとにしたグラフはつぎのようになる。
ふたつのグラフは1994年10月から98年5月まで、奥多摩の鷹ノ巣山の調査で得られたウソのデータを垂直分布にしたもの。登山口の標高は550m、山頂は1736m。さきのグラフは経年のデータ、それを月ごとに集計して現わしてみたのがあとのグラフ。
この期間内では繁殖についての観察は得られなかったが、少数は繁殖期にも残るようなので、繁殖しているらしい。盛夏にはもっと高いところか、もっと緯度の高い地域へ移動するようだ。そして10月にはまたやってきて、冬には山麓部から頂上くらいまでの間に広く分散したようになる。春になるとだんだん上がっていく様子がよくグラフに現われている。
これらのデータで見るかぎり、冬を通してかなり低山帯に残り、一部だけが丘陵や平野部にも現われるということだろう。ということは、山の中に食べ物がけっこうあるということか。
草花丘陵でのデータのなかには、草や木の実を食べた記録がいくつかある。列挙すると、タマアジサイ、マルバアオダモ、カラムシ、イヌシデ、クマシデ、マルバウツギ、これらの実の中の種を食べているのだろう。そしてヤマザクラとコナラの芽。こうした植物の種や芽なら低山帯でも容易に得られそうだ。ウソはわざわざ平野まで下りてこなくても山でそれなりに食べ物が間に合うということらしい。
ところで、ほっとすぺーす№38の「3月のメンドロン」の最後に、アカショウビンの方言名で「バクロノカカ」というのを紹介した。なぜ「馬喰の嬶」と呼ぶのかわからなかったのだが、その後、あることからひらめいたので、
つぎのテーマは、アカショウビンは馬を呼ぶ
それには声に秘密があった。
どうしてウソは遅いのか (グラフ省略)
草花丘陵でのウソの初認(そのシーズンで初めて認めた日)は11月下旬から12月上旬ころになることが多い。1羽から数羽程度の小群がたまに見られるだけで、個体数は少ない。ウソは繁殖期には亜高山帯に生息する。たとえば北アルプスでは1500mから3000m(『野鳥の事典』清棲幸保 東京堂書店 昭和41年)、岩手県の早池峰山では1200mから山頂(1914m)まで(『森に棲む野鳥の生態学』由井正敏 創文 1963年)。清棲『野鳥の事典』の垂直分布の棒グラフによると北アルプスの場合、冬には0m~2300mとなっている。その本文のウソの項目では「冬は山を下って山麓や平地で越冬をするものが多い」と記述されている。グラフと本文とで若干ニュアンスがちがう気もする。筆者による奥多摩の鷹ノ巣山や、草花丘陵での観察記録では、かなりの個体は山に残り、一部は山麓や平地へ来るという感じ。
そのなかで鷹ノ巣山の観察記録をもとにしたグラフはつぎのようになる。
ふたつのグラフは1994年10月から98年5月まで、奥多摩の鷹ノ巣山の調査で得られたウソのデータを垂直分布にしたもの。登山口の標高は550m、山頂は1736m。さきのグラフは経年のデータ、それを月ごとに集計して現わしてみたのがあとのグラフ。
この期間内では繁殖についての観察は得られなかったが、少数は繁殖期にも残るようなので、繁殖しているらしい。盛夏にはもっと高いところか、もっと緯度の高い地域へ移動するようだ。そして10月にはまたやってきて、冬には山麓部から頂上くらいまでの間に広く分散したようになる。春になるとだんだん上がっていく様子がよくグラフに現われている。
これらのデータで見るかぎり、冬を通してかなり低山帯に残り、一部だけが丘陵や平野部にも現われるということだろう。ということは、山の中に食べ物がけっこうあるということか。
草花丘陵でのデータのなかには、草や木の実を食べた記録がいくつかある。列挙すると、タマアジサイ、マルバアオダモ、カラムシ、イヌシデ、クマシデ、マルバウツギ、これらの実の中の種を食べているのだろう。そしてヤマザクラとコナラの芽。こうした植物の種や芽なら低山帯でも容易に得られそうだ。ウソはわざわざ平野まで下りてこなくても山でそれなりに食べ物が間に合うということらしい。
ところで、ほっとすぺーす№38の「3月のメンドロン」の最後に、アカショウビンの方言名で「バクロノカカ」というのを紹介した。なぜ「馬喰の嬶」と呼ぶのかわからなかったのだが、その後、あることからひらめいたので、
つぎのテーマは、アカショウビンは馬を呼ぶ
それには声に秘密があった。