Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

上海の日本人留学生が感じたこと

2005-04-25 14:12:51 | 国際
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成17年(2005年)4月25日 通巻第1108増刊号を読んでいたら、ちょっと興味深く感じられた「読者の声」が載っていたので、ここにコピーしておくことにする。

それにしても、昨今、中国の若者たちに「南京大虐殺」のことがこれほど強烈に浸透しているという事実は、中支那方面軍軍司令官松井石根大将の戦争犯罪責任 → 東京裁判における松井石根大将への有罪判決と絞死刑執行 → 靖国神社への合祀 という一連の経緯も当然詳しく教えられているのだろう。

小泉首相の靖国参拝は、中国の若者たちは前提として「南京大虐殺」の知識を持っており、そうした知識に基づいて、「南京大虐殺 → その犯罪者を祀る施設「靖国神社」 → だから小泉首相の靖国参拝はいけない」という思考構造になっているらしい。

自由のない社会に生きる若者たちがどのような思考構造になっていくのか、その現実を見せつけられると慄然とするものがある。日中両国、国民の自由の格差はあまりにも大きい。


【読者の声】

私は中国上海の大学院へ留学し、この3月卒業、帰国いたしました。留学中のクラスでは同級生が50人ほどおりました。彼らと交流を通して彼らの反日について感じたこととして次がありました。
  1. コンパなど、胸襟を開きはじめるとまず聞かれるのが、南京事件(南京大、南京大虐殺、1937)のこと。60%近くを占めた女性を除いた地方学生には、ほとんど聞かれました。ただ上海など都市部は空気を読むことに長けているのか、あまり聞かれたことはありません。

  2. 続いて聞かれるのは、南京事件についてどの程度知っているのかということ。南京事件を「どう思うか」ではなく、「どのくらい知っているのか」という聞かれ方をされます。つまり、日本人は南京事件のことは知らない、もしくはほとんど知らない、と思われているということです。

  3. 更に、南京事件について議論をしようというのではなく、教えてやろうという態度をとる同級生が多いということ

  4. そして最後は、「知らないのはお前のせいではない。(正しく教えない)小泉首相が悪い」。といっても、私を責めることはないのですが、小泉首相を異常に悪者にして終わるのがほとんどです。
新聞やネットを中心としたメディアによるものと思われますが、どの学生も小泉首相の名前は知っているということです。今回の上海などの暴動で、よく見ていると、小泉首相のプラカードが非常に多く、中国内の不満のガス抜きのため、小泉首相個人がスケープゴートに仕立てあげられたデモだったのではないかと考えることもあります。

中国政府は、小泉政権さえ変われば、日本に対してリセットしてどんな対応でもできる、と高を括っていたのではないのでしょうか。(YK生、東京)

日本と中国の「謝罪」は違う?

2005-04-25 12:30:54 | 国際
中国情報局」の伝えるところによれば、香港メディアは「村山談話には『お詫び』はあるが『謝罪』はない。『お詫び』と『謝罪』は別々のもので、日本は『お詫び』をすることによって『謝罪』を回避しようとしているのだ」と報じているという。

『お詫び』と『謝罪』とはどう違っているのか。単に軽重の違いだというなら、極めて主観的なものではないか。彼らは両国語の語感の僅かな違いに拘泥して、日本領事館を破壊するまでに激昂したのだろうか。そんなことはあるまい。

村上談話の中では、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と表現されている。外務省の英文訳では、"express here once again my feelings of deep remorse and state my heartfelt apology" としている。だが、この表現は中国人たちにとって『お詫び』ではあっても、『謝罪』ではないようだ。

確かに、村山談話には「心からのお詫びの気持ち("my feelings of deep remorse and state my heartfelt apology")」という表現しか見られない。けれども、日本語の「お詫び」はまさに『謝罪』であるし、英語の"apology"も『謝罪』を意味している。彼らが日本語の「お詫び」を中国語の「歉意」の意味しかないと解釈するのは、彼らの心中にあまりにも自己本位なモノの見方があるからではないか。

要するに彼らは、日本側がどんなに『お詫び』や『謝罪』をおこない、それを際限なく繰り返したとしても、決して許すことはないだろう。彼らには日中両国が対立を続けている状況が望ましいというわけだ。

中国情報局
「おわびは謝罪ではない」、小泉首相演説を否定か
発信:2005/04/23(土) 16:21:04

「おわびは謝罪ではない」。香港メディアの小泉・首相による22日の「村山談話」を踏襲した演説に対する評論を、人民日報はじめ、中国の大手媒体が引用、インターネットなどを通じて大々的に報じている。

この香港メディアによれば、「おわびと謝罪は別々のもので、『おわび』は少し軽く、それに比べて『謝罪』ははるかに強烈だ。一部の専門家によれば、日本は戦争に対する『おわび』を強調してはいるが、実は一貫して『謝罪』を回避している」という。

中国語で「おわび」は「歉意」、「謝罪」はそのまま「謝罪」として、以上の分析を、香港のある日本語の造詣に深い日本語教師の分析として伝えている。

香港メディアによる評論とはいえ、これは大々的に報じていることは、これが中国メディアの総意とも受け取れる。この背景としては、外務省筋による「(今回の「村山談話」を踏襲した小泉・首相の演説は)最近の一連の日中間の騒動に対する反応ではない」というコメントに対応したものと考えられる。

この外務省によるコメントを、中国のメディアでは、「中国に対して『おわび』をしたわけではない、『謝罪』とはほど遠い」と受け取り、「村山談話」の踏襲は、新味がなく、その分、「インパクトなく、真実味もない」というように分析を進めているようだ。

また、中国でも、韓国の李海瓚・首相が22日、アジア・アフリカ会議(AA会議)首脳会議で演説し、国連改革に関連して「過去の植民地支配をたたえて歴史をゆがめ、若い世代にそれを隠す国は将来に向かって進むことができない」と3回繰り返し、日本批判を行ったことを盛んに報じている。(編集担当:鈴木義純)

外務省

村山内閣総理大臣談話(村山談話)

戦後50周年の終戦記念日にあたって

平成7年8月15日

 先の大戦が終わりを告げてから、50年の歳月が流れました。今、あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。

 敗戦後、日本は、あの焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり、そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、米国をはじめ、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを、心から喜びたいと思います。

 平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

 いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。

 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

 敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。

 「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。

The Ministry of Foreign Affairs of Japan
Statement by Prime Minister Tomiichi Murayama
(Translation)

On the occasion of
the 50th anniversary
of the war's end

15 August 1995

The world has seen fifty years elapse since the war came to an end. Now, when I remember the many people both at home and abroad who fell victim to war, my heart is overwhelmed by a flood of emotions.

The peace and prosperity of today were built as Japan overcame great difficulty to arise from a devastated land after defeat in the war. That achievement is something of which we are proud, and let me herein express my heartfelt admiration for the wisdom and untiring effort of each and every one of our citizens. Let me also express once again my profound gratitude for the indispensable support and assistance extended to Japan by the countries of the world, beginning with the United States of America. I am also delighted that we have been able to build the friendly relations which we enjoy today with the neighboring countries of the Asia-Pacific region, the United States and the countries of Europe.

Now that Japan has come to enjoy peace and abundance, we tend to overlook the pricelessness and blessings of peace. Our task is to convey to younger generations the horrors of war, so that we never repeat the errors in our history. I believe that, as we join hands, especially with the peoples of neighboring countries, to ensure true peace in the Asia-Pacific region -indeed, in the entire world- it is necessary, more than anything else, that we foster relations with all countries based on deep understanding and trust. Guided by this conviction, the Government has launched the Peace, Friendship and Exchange Initiative, which consists of two parts promoting: support for historical research into relations in the modern era between Japan and the neighboring countries of Asia and elsewhere; and rapid expansion of exchanges with those countries. Furthermore, I will continue in all sincerity to do my utmost in efforts being made on the issues arisen from the war, in order to further strengthen the relations of trust between Japan and those countries.

Now, upon this historic occasion of the 50th anniversary of the war's end, we should bear in mind that we must look into the past to learn from the lessons of history, and ensure that we do not stray from the path to the peace and prosperity of human society in the future.

During a certain period in the not too distant past, Japan, following a mistaken national policy, advanced along the road to war, only to ensnare the Japanese people in a fateful crisis, and, through its colonial rule and aggression, caused tremendous damage and suffering to the people of many countries, particularly to those of Asian nations. In the hope that no such mistake be made in the future, I regard, in a spirit of humility, these irrefutable facts of history, and express here once again my feelings of deep remorse and state my heartfelt apology. Allow me also to express my feelings of profound mourning for all victims, both at home and abroad, of that history.

Building from our deep remorse on this occasion of the 50th anniversary of the end of the war, Japan must eliminate self-righteous nationalism, promote international coordination as a responsible member of the international community and, thereby, advance the principles of peace and democracy. At the same time, as the only country to have experienced the devastation of atomic bombing, Japan, with a view to the ultimate elimination of nuclear weapons, must actively strive to further global disarmament in areas such as the strengthening of the nuclear non-proliferation regime. It is my conviction that in this way alone can Japan atone for its past and lay to rest the spirits of those who perished.

It is said that one can rely on good faith. And so, at this time of remembrance, I declare to the people of Japan and abroad my intention to make good faith the foundation of our Government policy, and this is my vow.

福岡2区補選 山崎拓氏が当選

2005-04-24 22:16:36 | 国内
NHKスペシャル「日本の群像(第1回)トップの決断~継続か撤退か~」を見ていたら、衆議院福岡2区補選で、自民党元幹事長山崎拓氏(68歳)当選(確)のテロップが入った。

山崎氏が危うく政治生命を断たれかけたのは、同和問題との係わりのある女性の仕掛けに嵌ったからともいわれる。福岡中州は忘れ難い色町だけど、さまざまな危険に満ちた、蜘蛛の巣だらけの街でもあるんだろうなあ。

ここで自作川柳を紹介させていただく。スキャンダルを材料にさせていただいて。


選んでも 愛人騒ぎじゃ 困るバイ  喬彦


盟友復帰で小泉首相は勢いづき、郵政民営化法案提出に向けて一気に進むか。しかしながら、これはむしろ政局絡みとなってきたのかもしれない。これまで郵政民営化は旧経世会潰しのダイナモとなってきたが、いまや自民党潰しのダイナモという感じにさえなってきた。

胡錦涛、「五つの主張」を伝えた?

2005-04-24 14:28:58 | 国際
ジャカルタでの日中首脳会談に関し、中国側の報道では、「中国側は日本側に対し5項目の提案をおこなった」となっているようである。「5項目の提案?」と、私はちょっと不思議な感じになった。日本の新聞報道を読む限りでは、中国側が5項目もの提案をしたとは受け取れなかったからだ。

けれども、中国情報局の記事によれば、5項目のうちで実質的な意味があるのは、第2項「靖国参拝」と第3項「台湾の要人訪日」という2つの問題だけである。「何だ! 嵩上げも甚だしいじゃないか」という印象だ。

第2項では、「正確に歴史を認識し、相対すことは、あの侵略戦争に対して示す反省を実際の行動に移さなければならず、決して中国とアジア諸国の人民の感情を傷つけてはならない」として暗に小泉首相の靖国参拝を非難している。

第3項では、「台湾問題は中国のコアの利益であり、13億の中国人民の民族的感情に関連する。日本政府は従来から「一つの中国」政策の堅持と「台湾独立」への不支持を何度も標榜してきているのであるから、これからも日本側が実際の行動をもってその承諾を表現することを希望する」として、暗に李登輝元総統の日本訪問などを非難しているのだ。

従って、「5項目の提案」というのは、中国外務部の小賢い報道官あたりが、反日に勢いづく中国国民の気持を欺くため、というか、火に油を注ぐ危険を避けるため、見掛け上の嵩上げを狙ったものと思われる。村山談話を引用した前々日小泉演説があるのだから、第1項、第4項および第5項は提案だとか主張だとかと呼べる筋合いのものではなく、ましてや、中国側からなされた要求などでも何でもないのだ。

その一方で、日本の国連安保理常任理事国入りについてまったく触れていないのは、中国外務部としては、日本の国連安保理常任理事国入りにもはや反対できる状況になく、それならあえて自国民を刺激するのは得策ではないと考えているのか。

北京や上海の反日デモで掲げられていた大きな大弾幕には、「日本の国連安保理常任理事国入り断固反対」、「魚釣島は中国領土だ」などと書かれていたはずだ。だが、胡錦涛はそういう提案はしなかった。


朝日新聞(共同配信)
胡主席提案を大きく報道、中国各紙
2005年04月24日13時02分

二十四日付の中国各紙は、ジャカルタで二十三日行われた日中首脳会談についてほとんどが新華社電を掲載、「胡錦濤国家主席が中日関係で五項目を提案」「中国政府は一貫して中日関係を重視している」などと一面で大きく報じた。

ジャカルタ発の新華社電は「日本が歴史問題や台湾問題で過去の約束に背いたことは、中国やアジアの国民の感情を傷つけ、大きな不満を引き起こした」との中国側の主張を報道。一方で、胡主席が「中日関係の悪化は両国に不利なだけでなく、アジアの安定と発展にも影響する」などと述べたと強調、全体としては日中関係改善に力点を置いた伝え方になっている。

一部紙は「日本は反省を実際の行動に結び付けるべきだ」(新京報)との見出し付きで報じた。(共同)


中国情報局
日中首脳会談:中国メディア「5つの主張」伝える
発信:2005/04/24(日) 11:43:06

日本の小泉純一郎・首相と中国の胡錦涛・国家主席による日中首脳会談がインドネシアのジャカルタにて、現地時間23日夜行われた。対話促進で一致した今回の首脳会談について、中国新聞社では、「胡・主席が日中関係の困難な局面を極力速く好転させるための五つの主張を提示」という角度で報じた。

その五つの主張は、第一に、「日中共同声明」、「日中平和友好条約」、「日中共同宣言」の三つの文献を遵守し、実際の行動をもって、21世紀の日中友好協力関係の発展を目指すこと。

第二に、「歴史を鑑(かがみ)として、未来に向かう」という考え方を堅持すること。日中間の近代史上において、「日本の軍国主義が発動した侵略戦争が、中国人民に大きな災厄を与えたこと、また日本人民もその害を深く受けたこと」とし、正確に歴史を認識し、相対すことは、あの侵略戦争に対して示す反省を実際の行動に移さなければならず、決して、中国とアジア諸国の人民の感情を傷つけてはならない、とした。

第三に、台湾問題を正確に処理すること。「台湾問題は中国のコアの利益であり、13億の中国人民の民族的感情に関連する。日本政府は、『一つの中国』政策の堅持と『台湾独立』への不支持を何度も標榜してきており、日本側が実際の行動をもって、その承諾を表現することを希望する」とした。

第四に、対話を通じて、対等に協議を重ね、日中間の溝を妥当に処理、溝を解決するための方法を積極的に模索し、日中友好の大局が新たな障害や衝撃を受けることないよう回避すること。

第五に、相互理解を増進し、共同の利益を拡大、日中関係の健全かつ安定的な前向きの発展を促すため、双方が広範囲の領域における交流と協力をさらに拡大し、民間の友好的交流を強化すること。

この文面から読み取れるように、22日に小泉・首相が行った「村山談話」を踏襲した演説について、直接的に触れられておらず、むしろ「実際の行動」を強調している。特に第二項目では、小泉・首相の靖国神社参拝を、第三項目では、日台間の要人往来などを、それぞれけん制した形だ。(編集担当:鈴木義純)

日中首脳会談、新聞各紙の社説

2005-04-24 12:05:21 | 国際
中国各地における今回の反日デモに関連して、日本政府が中国政府に対し当面要求すべきことは、次のふたつに絞られるのではなかろうか。以下の述べるのは、まず私自身("Takahiko Shirai Blog")の考え方である。

まず、要求すべき第一のことは、中国政府がこれまで続けてきた「愛国主義教育」とは実際にどんな内容のものであったか、ターゲットになっている日本はもちろん、国際社会全体に対し具体的に公開してもらいたい。そして、その教育内容のどこに重大な問題があるのか、まず国連などの場を通じて国際的コンセンサスの判断に委ね、そこで問題箇所が指摘されたら、中国政府の手で速やかに改善して欲しいと思う。また、問題箇所をどのように改善したのか、中国政府としてはそれにも国際的コンセンサスを得る必要がある。

要求すべき第二のことは、過去、日中間にどのような経緯があったにせよ、それはあくまでも「過去の日本」に関することであるから、中国政府としては「現在の日本」を「悪」と糾弾するような教育は爾後決しておこなわないと国連などの場を通してみずから宣言して欲しい。

日本側からすべきこれらの要求は、大量破壊兵器の国連査察要求と同一の考え方に立っている。もちろん、中国政府の「愛国主義教育」は大量破壊兵器ではない。けれども、あたかも日本に照準を合わせた核弾頭ミサイルのように、それは他国に対し絶大な破壊力を秘めているのだ。であるからこそ、核兵器と同じような予防措置を講じなければならない。他国に対する敵対的要因の排除、つまり、精神面における一種の「軍縮」ということにある。フセイン大統領時代のイラクが密かに温存していた(と思われた)大量破壊兵器が国連査察の対象となるなら、中国共産党が中心となって中国国民に強要している愛国主義教育を、「戦争をも引き起こしかねない危険物」として国連査察の対象としても何ら不思議なことではなかろう。

もちろん、今回ジャカルタで緊急裡に開催することになった小泉首相と胡錦涛国家主席の首脳会談において、このような重要なことにまで踏み込んで細かく話すべきではなかろう。それではお互いに退路が断たれて、将来行き詰ってしまう危険がある。

けれども、小泉首相としてはこの絶好の機会に、中国が現在続けている「愛国主義教育」というものは、日本を標的とした宣戦布告の性格を持つものであり、国際平和を破壊する危険性があまりにも大きいということを、日本側の主張としてはっきりと伝えなければならない。更に、日本が抱くこの危機感は、国際社会から必ず全面的支持を受けるであろうということもはっきりと伝えなければならないであろう。

胡錦涛国家主席に対し日本の主張を率直に述べることのできた「絶好の機会」、中国側が危機的状況に陥っているため、日本側の主張に率直に耳を傾けてくれたかもしれないこの「絶好の機会」を、残念ながら、小泉首相はあたら無に帰す拙劣なやり方を選んだ。このことは彼の大きな外交的失点として、将来厳しい評価を受けることになるのではないか。

トップレベルの会談では、国家としてのこういう主義主張のレベルまでお互いに踏み込んで話し合うことがなければ、単なる外相会談での論議と何ら変わるところがないのではなかろうか。ところで、今朝(2005年4月24日)の新聞各紙の社説ではどこまで踏み込んで論じられているだろうか。

朝日新聞毎日新聞讀賣新聞
日本経済新聞産経新聞信濃毎日新聞


朝日新聞社説(2005年4月24日)
日中会談 深刻さは変わらない

 とりあえず傷口に絆創膏(ばんそうこう)をはって出血を止めたということか。だが、傷そのものには何の治療も施されていない。いつかまた、さらに悪化して傷口が開く恐れが強い。

 インドネシアで開かれた日中首脳会談で、小泉首相と胡錦涛国家主席は両国間の友好関係を大切にし、発展させていくことで一致した。

 週末ごとに数万人規模の反日デモが中国各地で行われ、日本大使館や商店、留学生らが襲われる。国交正常化以来、最悪といっていいほど両国関係がささくれだつなかでの首脳会談だった。

 これ以上の事態の悪化を何としても食い止めなければならないという両国の思いは、会談前からはっきりしていた。

 この日、北京など中国の主要都市では、大勢の警官隊が動員されて日本大使館などの警備にあたった。共産党や政府は組織を挙げてデモを抑え込む態勢を組んだ。

 日本側も、22日のアジア・アフリカ会議で演説した小泉首相が95年の村山首相談話の表現を引用し、かつての侵略や植民地支配についての反省と謝罪の気持ちを表明した。

 そんな努力を積み重ねた結果、ようやく実現したトップ同士の顔合わせだった。

 しかし、会談の内容は厳しいものだったようだ。両首脳とも反日デモや靖国神社参拝、歴史問題などでの基本的な立場は譲らなかった。外相会談などで浮き彫りになっていた、すれ違いの構図は変わらなかった。

 結局、今回の反日デモの背景となった問題はまったく手つかずで先送りされたことになる。両国政府はこのことを重く受け止めるべきだ。

 とくに心配なのは、警官隊の威嚇や当局の指示でデモはとりあえず止まったものの、反日の熱が決して冷めたわけではないことだ。

 1919年に学生たちが反日愛国を訴えて立ち上がった五四運動を記念する5月4日に向けて、再び大規模な反日デモを組織する動きがある。

 村山談話を持ち出すことで歴史問題に対する自らの真剣な姿勢を強調しようとした小泉首相だが、まさにその日に少なくとも80人の国会議員や麻生総務相がそれぞれ靖国神社に参拝した。

 議員たちは「戦時に亡くなった方の御霊を参拝するのは自然な姿」というが、中国側にはどのように映っただろうか。靖国参拝をめぐる日中間の距離があまりに大きいことが再確認されてしまった。

 重ねて言うが、首相は靖国神社参拝に注がれる隣人の厳しい視線を受け止め、歴史問題についてもっと真剣に説明する必要がある。中国側も、反日デモでの破壊活動の責任を正面から認めない限り、日本側の反中や嫌中感情は広がるばかりであることを肝に銘じるべきだ。

 双方とも、傷口への根治治療を急がなければならない。


毎日新聞社説(2005年4月24日)
社説: 日中首脳会談 冷たい関係修復の一歩に

 小泉純一郎首相と中国の胡錦濤国家主席がインドネシアで会談した。反日デモで険悪化した日中関係を対話を通じて修復し、友好発展に努力することで一致した。

 関係のさらなる悪化に歯止めをかけた点は評価できる。しかし、胡主席は首相の靖国参拝問題を含む歴史問題に言及し、反日デモに理解を示す姿勢を変えなかった。国際常識に照らして遺憾である。

 両首脳は、一時的な対立に惑わされず日中友好の重要性を共有し合うことを確認し、広範な分野での交流に向けた共同作業計画を策定することでも一致した。

 日中間には、歴史認識や小泉首相の靖国神社参拝で対立が続いていても、経済面では相互補完関係を深めるのが互いの利益になるという共通認識がある。しかし、今回のデモ騒動で日本や諸外国の企業は、今後の対中投資に警戒感を持ち始めている。反日行動が今後も続くようでは政治だけでなく経済関係も冷却化し、双方の国民感情が一層悪化しかねない。過激な反日デモが再発すれば、首脳会談の成果も問われる。

 中国では今後、「抗日戦争勝利60周年」の記念行事が続く。1919年の学生デモに端を発した抗日運動である「五・四運動」記念日の5月4日も間近だ。小泉首相は反日デモについて、中国が適切な対応をとるよう求めた。中国当局には、日本の在外公館や日系企業、在留日本人の安全確保に万全を尽くすよう強く求めたい。

 日中のいがみ合いについて国際社会では、中国の対応をいましめる一方で、過去の清算に関しては日本が努力不足であるという受け止め方が残念ながら多い。小泉首相がアジア・アフリカ首脳会議で、過去の植民地支配と侵略に対し「反省とおわび」を表明したのも、そうした国際社会の反応を意識してのことだ。

 まして、72年の日中共同声明や95年に村山富市内閣が閣議決定した談話を経てもなお、近隣諸国との関係で「反省とおわび」が必要とされる状況がある。

 胡主席は歴史問題で「中国人の感情を傷つけないでほしい」と述べるとともに、「反省を行動で示してほしい」と求めた。発言の背景には、A級戦犯を合祀(ごうし)している靖国神社に小泉首相が参拝を続けている問題があるのは確かだ。首相も、中国と真の信頼関係を築こうとするなら、具体的な打開策を示す必要がある。

 胡主席は台湾問題に言及し、台湾の独立を支持しないよう要請した。日米安全保障協議委員会(2プラス2)で台湾海峡問題を日米共通の「戦略目標」と位置づけたことを、日本の対中強硬政策への転換と見て警戒感を示した。

 今回の首脳会談は、日中間の距離がまだまだ遠いことを見せつけた。両国間には歴史認識、靖国といった従来の難題に加え、東シナ海のガス田開発などの新たな問題も山積している。関係を安定化させるには、あらゆるレベルの対話を積み重ねていくしかない。首脳会談はその第一歩である。(2005年4月24日 1時33分)


讀賣新聞社説(2005年4月24日)
日中首脳会談]「変わらぬ中国の『歴史的事実』歪曲

 中国という国は、明確な国際法違反を認めず、謝罪もしない国だ、ということを世界に発信したのも、同然ではないか。

 今月初めから中国で大規模な「反日」デモが続発して以来、初めての日中首脳会談が行われた。小泉首相は胡錦濤国家主席に対し、デモの暴徒化による日本大使館への破壊活動などの再発防止を求めた。胡主席は謝罪をせず、賠償の意思も示さなかった。

 外交関係に関するウィーン条約は、在外公館の保護は受け入れ国の責務だと定めている。「反日」デモの暴徒は、北京の日本大使館などに投石し、100枚以上の窓ガラスを割った。中国はデモ参加者の破壊活動を抑える有効な対策を講じなかった。条約違反は明らかである。

 胡主席は、侵略戦争の反省を改めて要求した。だが「日本は反省していない」というのは中国や韓国の言いがかりだ。明白な歴史的事実の、歪曲(わいきょく)である。

 日本は、1972年の日中共同声明で「戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」と表明して以来、首脳会談や文書の形で、公式な反省・謝罪の表明を20回以上も重ねてきた。

 首脳会談に先立って、小泉首相はアジア・アフリカ会議の演説でも、先の大戦に関して「痛切なる反省と心からのおわびの気持ちを心に刻む」と述べた。

 一国の指導者が国際会議で、歴史認識に言及するのは異例だが、中韓のプロパガンダによる国際社会の“誤解”を解く機会になった。

 胡主席は「反省を実際の行動に移してほしい」と述べた。それなら、中国も愛国・反日教育の中止を「行動」で示すべきだ。中国の歴史教育が共産党の都合に合わせて事実をゆがめていることが欧米諸国でも指摘され始めている。

 首脳会談があった23日、これまで3週連続で繰り返された「反日」デモは影を潜めた。中国が規制したからだ。これは、今まで「反日」デモだけは「黙認」していた実態の裏返しに過ぎない。

 規制に転じたのは、「反日」デモが反政府暴動に発展しかねないとの懸念が出てきたこと、欧米も“チャイナリスク”として批判的に見ているのがわかってきたこと、によるのではないか。

 中国側が日中首脳会談にためらいを見せたのは、予想外の展開にどう対応すべきか戸惑っていた面もあったろう。

 経済の相互依存関係が切り離しがたくなった現在、「反日」運動の暴走は両国共に損害を被ることにしかならない。

 中国は、そうした両国関係の実情をよく見据えるべきである。(2005/4/24/01:56)


産経新聞主張(2005年4月24日)
日中首脳会談 謝罪なしの握手むなしい

 一体あの騒ぎは何だったのだろうか。

 ジャカルタで行われた日中首脳会談で、小泉純一郎首相と胡錦濤国家主席の握手を見た人は、そう感じたのではあるまいか。

 首相が、反日デモの破壊行為への謝罪要求を取り下げた結果だとすれば、極めて遺憾であり、関係改善を手放しで喜ぶわけにはいかない。

 首脳会談での「手打ち」は事前に予想されたことだった。小泉首相は二十二日、「過去の非をあげつらうのではなく、日中友好の発展が両国の利益になり、最も大事との観点で会談を進めたい」と語っていた。

 一方、中国側も十九日以来、日中の協力関係の重要性を強調、反日デモの規制を本格化するキャンペーンに転じたからだ。

 両国にとって日中関係の重要性は言うまでもない。経済・貿易面での相互依存関係は深まり、北朝鮮の核問題など国際問題での協力も不可欠だ。東シナ海のガス田開発から来日中国人の犯罪問題まで課題も多い。摩擦や問題を減らし、関係発展を図る前提は、相互信頼にほかならない。

 今回の反日デモは、中国は信頼できる国かという疑問を再び惹起(じゃっき)した。日本の外交施設への破壊、在留邦人への暴力に対する抗議に、中国側は「責任は歴史問題で反省しない日本にある」と強弁し、デモを擁護した。

 先の日中外相会談で、李肇星外相は「中国は日本に申し訳ないことをしたことは一度もない」と謝罪に応じなかった。二〇〇二年の在瀋陽総領事館の主権侵害や昨年の中国原潜の領海侵犯などと同様、今回も謝罪しない中国に対し、小泉首相は責任を追及せず、適切な対応の要請にとどめた。

 胡錦濤主席は逆に、対日関係を発展させる方針を強調する一方、「歴史問題と台湾問題での対応を通じ、中国人民とアジア人民の感情を傷つけた」と批判、日本は反省すべきだと述べた。反日デモは当然という論理だ。

 胡主席は靖国神社参拝問題についても「歴史への反省を行動で」と注文を付けたという。首相は「敵対より友愛の精神が日中に有益と確認した」と述べたが、破壊行為への中国の反省がなく、注文を付けられるばかりでは、関係改善もむなしい。


日本経済新聞社説(2005年4月24日)
双方の努力で日中関係の修復を急ごう

 小泉純一郎首相と中国の胡錦濤主席が23日、日中関係の打開策を巡りインドネシアで会談した。中国で大規模かつ過激な反日デモが続発するなど、日中関係は国交正常化以来の最悪状態にある。両国首脳にはこれを機に相互訪問などを通じ本音の意見交換を定期的に行い、日中の中長期的な友好協力関係を再構築してもらいたい。そのためには双方の努力が必要だ。

 中国には反日デモにおける破壊・暴力行為の非を認め、再発防止に全力をあげるよう求める。また未来志向の日中関係を構築するために、日中戦争に過度に偏した近代史教育を見直してもらいたい。一方、日本は近隣諸国との対話を深めると同時に、戦前の歴史を直視し、過去を肯定していると疑われないように言動を戒めるべきだ。

 一連の過激なデモの先頭には、江沢民政権が推進した愛国(反日)主義教育を受けて育った若者たちが数多く見られた。インターネット世代の彼らは学校教育をもとにネット論壇で日本非難を競い合い、日ごろの憂さ晴らしを行ってきた。観念の世界で反日意識を増殖し、今回はそれを大々的に行動に移した形だ。

 この数日間、共産党政権はデモ沈静化のため、各地で日中関係の学習会を開いた。その中では毛沢東、周恩来、トウ小平の歴代指導者がいかに日中関係を重視し、善隣友好政策をとったかを強調している。反日教育の行き過ぎや誤りを修正せざるを得なくなった、とも受け取れる。

 共産主義イデオロギーの正当性を失った政権にとって、国家の統合を維持するためには愛国主義教育が必要かもしれない。しかしそれが隣国への敵がい心を増殖し、激しい対立が日常化するなら決して中国のためにならないはずだ。

 中国政府には戦後の日本が過去への反省のもとに、平和国家として中国の経済発展に協力を惜しまなかったことを公平に教えてもらいたい。 小泉首相は22日のアジア・アフリカ首脳会議で10年前の村山富市首相(当時)談話を引用し、戦前の日本の植民地支配と侵略戦争への反省とおわびを再表明した。

 国際会議でのこうした謝罪は異例であり、日本国民としてはやりきれない思いも残る。しかし小泉首相の4年連続の靖国神社参拝が近隣諸国の国民感情を刺激したことは疑いない。第2次大戦の戦勝国である欧米の旧連合国も、この問題では中国や韓国に同情的である。小泉首相が靖国問題の解決なしに謝罪を繰り返しても、事態の打開策とはならない。


信濃毎日新聞社説(2005年4月24日)
アジア外交 足元軽視の付けは重い

 小泉純一郎首相と胡錦濤国家主席との日中首脳会談がどうにか実現した。会談を行うかどうかでせめぎ合いが演じられたこと自体、小泉外交の手詰まり感を浮き立たせる。

 会談で胡主席は「歴史を鑑(かがみ)に」することや、台湾独立不支持を行動で示すことを小泉首相に要請。日本に対する厳しい姿勢をあらためて示す形になった。

 小泉政権の発足から四年になる。政権が動き始めた当初は、ブッシュ米政権との親密な関係や日朝首脳会談の実現を通じ、外交が政権の浮揚力になっていた面がある。

 それがここへきて、各面で行き詰まりを見せている。韓国との関係は竹島領有権や教科書問題で、坂道を転げるように悪化した。対北朝鮮は膠着(こうちゃく)状態にある。北方領土問題は動かず、春に予定されていたプーチン・ロシア大統領の来日は結局、実現していない。

 近隣国といい関係を保つことが外交の基本である。日本は中国、韓国との間で不幸な歴史を引きずっているだけに、慎重なかじ取りがとりわけ大事になる。

 それなのに小泉首相は中国、韓国の国内事情、国民感情に丁寧に目配りしてこなかった。たまったひずみがいっぺんに表に出ている形である。肝心の対米関係も、牛肉輸入問題ですきま風が強まっている。

 近隣国との関係が悪化した原因の一つは、首相の靖国神社参拝にある。四年前の自民党総裁選での“公約”に沿って、首相は毎年の参拝を欠かさないできた。

 中国、韓国からはむろん、反発する声が上がる。それに対し首相は「理解してもらわないと」と言うだけだ。理解を得るための努力を真剣に重ねたようには見えない。

 丁寧な説明抜きの紋切り型ワンフレーズで押し通す―。小泉首相の政治スタイルが日本外交も袋小路に追い込んでいる形である。

 中国、韓国での反日機運には、両国の国内事情も働いている。暴力的なデモを容認するかの中国政府の姿勢は、批判されてしかるべきだろう。だからといって日本側が自分の主張だけを言い募るようでは、いい関係は作れない。

 小泉首相は今回、ジャカルタに集まった各国首脳を前に、戦後五十年の村山富市首相談話を引用する形で「痛切な反省と心からのおわびの気持ち」を述べた。今あらためて「反省とおわび」を表明せざるを得ないこと自体、外交の失敗である。

中国共産党 「愛国主義教育実施綱要」

2005-04-23 23:54:12 | 国際
中国共産党中央宣伝部が11年前の1994年8月23日に公布した「愛国主義教育実施綱要」の存在が、今回の反日デモを契機に、にわかにクローズアップされるようになった。「愛国教育」とは、小平が生みの親、江沢民が育ての親ということができよう。

この「愛国主義教育実施要綱」は、「愛国主義と社会主義は本質的に一致しており、中国の特色ある社会主義を建設することは、新時代の愛国主義のテーマである」としていることから、彼らは「愛国主義」をもって、市場経済導入後、中国共産党一党独裁体制を維持していくための精神的根幹と位置付けていることがわかる。

更にまた、「中国人民には自らの民族への自尊心があり、祖国を熱愛し全ての力を社会主義建設と祖国建設に貢献することを最も光栄とし、社会主義と祖国の利益・尊厳・栄誉に損害を与えることを最も恥辱とする」という小平の言葉を引用していることから、小平が遺訓として遺した路線を忠実に継承していこうとしていることも明らかである。

従って、「愛国主義教育実施要綱」とは、天安門事件(1989年6月)に対処した中国共産党の自己反省と、それに加えて将来対策をも含めた所産というべきであろう。

次に掲げる「愛国主義教育実施要綱」日本語訳は、筑波大学教育研究科社会科教育コース修士在学中の原田博康氏が翻訳したものである。私も少し突っ込んで勉強したいと思うので、しばらくこのブログ上に転載しておくことをお許し願いたい。

また、この日本語訳には、「青少年の参観・仰ぎ見る活動に組織して接待し...(第21項)」、「参観・仰ぎ見み・墓参りなど(第25項)」というように、中国には「仰ぎ見る教育活動」というものがあるらしいことがうかがわれる。鳥居民氏は「仰ぎ見る」の訳語を「恭観」とし、この箇所では「参観・恭観」のまま並べておられる。

「参観・恭観・墓参」― これらは具体的にどのような教育方法なのであろうか。想像できるようでもあるが、理解を超えたところもある。お分かりの方がおられたら教えて欲しい。


愛国主義教育実施綱要 (日本語訳)


1994年8月23日 中華人民共和国共産党中央委員会発表

中華民族は愛国主義の光栄ある伝統に富んだ偉大な民族である。愛国主義は中国人民を動員し鼓舞して団結奮闘する一つの旗印であり、我が国社会歴史の前進を推進する巨大な力であり、各民族人民の共同の精神支柱である。現在、我が国人民は中国の特色ある社会主義理論と党の基本路線の指導の下で、社会主義市場経済 の発展に大いに力をいれ、富強・民主・文明という社会主義現代化国家の建設に努力している。新たな歴史的条件のもとで、愛国主義の伝統を継承し発揚し、民族精神を奮い立たせ、全民族の力量を凝集し、全国各民族人民を団結し、自力更生し、苦難に満ちた事業を始めることは、中華民族の振興と奮闘のために、非常に重要な現実的意義をもつ。各級の党委と人民政府、関係の部門と人民団体はこの任務を必ず大変に重視し、また自らの任務の特徴と結びつけて積極的に愛国主義教育を繰り広げなければならない。

一、愛国主義教育の基本原則

  1. 愛国主義教育は小平 同志の築き上げた中国の特色ある社会主義理論と党 の基本路線を必ず指導としなければならず、社会主義現代化の建設を促進することに必ず利益とならなければならず、改革開放 を促進することに必ず利益とならなければならず、国家と民族の名声・尊厳・団結を守ることに必ず利益とならなければならず、祖国統一を促進する事業に利益とならなければならない。これは新たな時代の愛国主義教育の基本的な指導思想である。

  2. 愛国主義教育の目的を広げることは、民族精神を振興することであり、民族の凝集力を増強することであり、民族の自尊心と誇りを樹立することであり、最も広範な愛国統一戦線を強化発展することであり、人民群衆の愛国主義を中国の特色ある社会主義を建設するという偉大な事業に導くことであり、理想・道徳・文化・規律のある社会主義公民を生むことであり、4つの現代化を実現し、中華の共同の理想を振興して団結奮闘することである。

  3. 愛国主義教育は建設方針に重きを置くことを必ず堅持しなければならない。小平同志の愛国主義に関する一連の重要な論述に基づき、愛国主義教育の理論建設・教材建設・制度建設・基地建設を行わなければならない。愛国主義教育を各思想政治教育のなかで貫徹し、社会主義精神文明建設の基礎的な過程として、我が国社会の主旋律として、確固不動で長期間たゆまなく力を入れていく。

  4. 愛国主義教育は対外開放の原則を必ず堅持しなければならない。愛国主義は狭隘な民族主義では決してなく、我々は中華民族の優秀な成果を継承し発揚する上に、また高度資本主義国家を含め世界各国が創造したあらゆる文明成果を学習し吸収しなければならない。このようにしてこそ、中国の人民は各国の人民と一緒に、世界の平和と人類の進歩に貢献することができるのである。

  5. 愛国主義教育は必ず時代の特徴を際立たせなければならなない。愛国主義は一つの歴史的な範疇であり、社会の発展が等しくない段階や等しくない時代には等しくないものを内包する。現代中国において、愛国主義と社会主義は本質的に一致しており、中国の特色ある社会主義を建設することは新時代の愛国主義のテーマである。小平同志の指摘した「中国人民には自らの民族への自尊心があり、祖国を熱愛し全ての力を社会主義建設と祖国建設に貢献することを最も光栄とし、社会主義と祖国の利益・尊厳・栄誉に損害を与えることを最も恥辱とする」、これは我が国の現段階における愛国主義の特徴に対する最も鋭い快活である。愛国主義と集団主義と社会主義思想は三位一体であり、中国の特色ある社会主義を建設するという偉大な実践の中で機会あると統一する。

二、愛国主義教育の主要な内容

  1. 愛国主義教育の素材は非常に広範である。歴史から現実、物質文明から精神文明、自然風景から物産資源までおよび、社会生活の各領域のすべてには愛国主義教育を極めて豊富に実行する至宝が潜んでいる。国情資料を運用することにたけなければならず、また各種の貴重な教育資料を掘り起こすことに注意し、不断に愛国主義教育の内容を豊富にする。

  2. 中華民族の悠久な歴史の教育を行う。我が国人民の愛国主義精神は中華民族の長い歴史過程の中で発生し発展してきた。中国歴史、特に近代史と現代史の教育を通じて、人々に中華民族の自彊してやまず不撓不屈の発展の過程を理解させ、我が国の各民族と人民は人類文明に対して卓越した貢献をしたことを理解させ、我が国の歴史上の重大事件と著名な人物を理解させ、中国人民が外来からの侵略と圧迫に反対し、堕落した統治に反抗し民族独立と解放を勝ち取とり、勇敢に前進し、血を浴びて奮闘した精神と業績を理解させ、中国共産党が全国人民を指導して新中国を建設するために勇敢に戦った崇高な精神と栄光ある業績を特に理解される。

  3. 中華民族のすぐれた伝統文化教育を行わなければならない。中華民族は光り輝く中華文明を創造する過程で、大きな生命力のある伝統文化を形成し、その内容は広くて深く、哲学・社会科学・文学芸術・科学技術などの方面の業績を含むだけでなく、崇高な民族精神・民族気骨と優良な道徳をも潜んでいた。多くの傑出した政治家・思想家・文芸家・科学者・教育者・軍事者を育んだだけでなく、かつ豊富な文物史跡・経典著作などを残しており、この豊かな文化遺産は愛国主義教育を行う際貴重な資源となる。祖国の言語や文字を正確に使用しなければならず、強力に普通話を普及しなければならない。

  4. 党の基本路線と社会主義現代化建設の達成に関する教育を行う。党の基本路線と我が国社会主義建設の達成は、すなわち愛国主義教育の最も現実的で生き生きとした教材である。党十一期三中全会 以来の改革開放と現代化建設という巨大な業績と成功の経験に特に注意して教育を行い、人民大衆に一層社会主義への信念を堅くしと党の基本路線を堅持して動揺しないようにさせなければならない。

  5. 中国の国情教育を行わなければならない。国情教育は世界環境全体という大きな背景の下で行わなければならない。人々が系統的に我が国の経済・政治・軍事・外交および社会・文化・人口・資源などの方面に関する歴史と現状を理解するするのを助け、我が国の現代化建設の目標と段取りや壮大な見通しを理解させ、かつ中国と世界の他の種類を異にする国家との対比のなかで、我が国の優位と隔たり、優位な条件と不利や要素を見て、使命感と社会への責任感を増強し、刻苦奮闘し勤勉節約という建国の創業精神を更に発揚する。国情教育は省情・市情・県情教育と結びついて行われなければならない。

  6. 社会主義の民主と法制の教育を行わなければならない。我が国憲法と法律は広範な人民の意志と利益を体言するものであり、広範で深く掘り下げた民主と法制の教育を通じて、人々が我が国の政治制度・経済制度・その他各制度を理解するのを助けなければならない。国家観念と国家の主人公としての責任感を増強し、法を遵守する習慣を養い、憲法と法律が規定する公民の権利を正確な行使と同時に、憲法と法律が規定する公民の義務を忠実に履行し、国家の利益を断固として守る。

  7. 国防教育と国家安全教育を行わなければならない。新時代の特徴に基づいて、現代国防教育を重視し、全国人民の国防意識と国家安全意識を増強し、軍政と軍民の団結を強化し、全国人民に外敵の侵略に抵抗し、祖国の独立を防衛し、国家主権と領土保全を守る自覚を強化する。全国人民に祖国の利益を売り渡し祖国の尊厳を損害し国家の安全を危険にし祖国を分裂される言動一切に対して、断固とした闘争を行うよう教育する。

  8. 民族団結の教育を行わなければならない。中華民族は一つの多民族の大家庭であり、内地であろうが辺境であろうが、漢民族の地区であろうが少数民族の地区であろうが、マルクス主義の民族観と宗教、それに党の民族政策と宗教政策の教育を強化して、各民族人民に民族団結と祖国の統一を守るためにたゆまぬ努力と歴史的な貢献をするように宣伝する。各民族人民のなかで、漢民族は少数民族と離れならず、少数民族は漢民族と離れられないという思想を強固にし、民族の団結と祖国の統一を守ることを自覚する。

  9. 「和平統一、一国両制」方針の教育を行わなければならない。党と政府の祖国統一問題における基本的な立場と方針政策を全面的で正確に宣伝し、人々に祖国統一の作業の進展状況と重点を理解させる。ホンコン、マカオ、台湾の同胞による祖国統一のため貢献を宣伝することに注意し、国外の華僑や海外から帰国した人々の愛国・愛郷の業績を宣伝する。

三、愛国主義教育の重点は青少年

  1. 愛国主義教育は人民全体への教育であるが、その重点は広範な青少年である。学校・部隊・農村・街道・機関や企業の単位 、特に共青団 や少先隊(少年先鋒隊)などの組織は広範な青少年の愛国主義の感情を養成し、彼らの愛国主義の自覚を高め、彼らが正確な理想・信念・人生観・価値観を樹立するように導くことは思想政治教育の重要な内容である。当面と以後の時期において、党の基本路線の教育、中国近代史・現代史や国情の教育、中華民族の伝統美徳と優秀伝統文化教育に重点を置く。

  2. 学校は青少年に教育を行う重要な場所であり、幼稚園から大学に到教育、つまり教育の全過程で愛国主義教育を貫かねばならず、特に教室での教育に主な経路を発揮しなければならない。各省・自治区・直轄市の教育部門は国家教育委員会が公布した『小中学校で中国近現代史と国情教育を強化する綱要 』と『中学思想政治、小中学国語、歴史 、地理学科教育綱要』の要求に基づき、各学科(自然科学を含む)で愛国主義教育の学科ごとの計画を制定し、愛国主義教育の内容を分解して関係する学科の教科教育に貫徹させる。各種大学も積極的に条件をつくりだし、中国歴史や文学、美術、科学技術などの内容の伝統文化の選択科目を開設し、愛国主義教育を主要な内容とする特定テーマ講座を開設する。

  3. 機関・企業・農村など基層単位は社会主義「四有」新人を育成する責任を直接負い、青年幹部・職工・農民対する愛国主義教育を特に重視・強化し、この任務を文明単位・文明村鎮を建設する活動の重要な内容に取り入れる。広範な青年に国家の主人公としての責任感を堅固に樹立し、個人の利益と国家の前途・命運を結びつけ、国家・集団・個人の三者の利益関係を正確に解決し、祖国を愛し、故郷を愛し、集団を愛し、職場を愛し、自らの職務に立脚して、国家のために大きく貢献するように教育する。

  4. 青少年の特徴に焦点を合わせて、映画・図書・音楽・演劇・美術・物語会などを運用する形式に注意し、広範な青少年に豊富で生き生きとした愛国主義教材を提供する。各地区各部門は中央宣伝部・国家教育委員会・広播影視部・文化部「優秀な映画作品を運用して全国の小中学校で愛国主義教育を展開することに関する通知」(教基[1993]17号)を真剣に貫徹実行し、またこれら優秀な映画作品を教学や教育計画に取り入れ、着実に放映・観覧・宣伝・教育工作を行い、たゆまなく力を入れていく。企業などの単位や農村、部隊も優秀な映画作品を利用して、青年職工や農民、兵士に愛国主義教育を行わなければならない。

四、愛国主義教育教育基地の建設を立派にやる

  1. 各種博物館、記念館、烈士記念建造物、革命戦争の重要な戦役、戦闘記念施設、文物保護単位、歴史旧跡、風景景勝、我が国の二つ文明(精神文明と部室文明)建設成果の重要な建設事業に関する展示、都市と農村での先進単位は愛国主義教育を行う重要な場所である。各級の共産党党委宣伝部は当地の党委と人民政府が提出する要求に従い、教育行政部門や共青団組織および文化・文物・民政・園林などの部門と合同で、教育基地を確定する。都市・農村の基層単位と共青団組織は積極的に基地を利用し教育活動を展開する。学校はこれらの教育活動を徳育教育活動計画に取り入れなければならない。

  2. 各級の民政・文化・文物部門や各種専門博物館・記念館は1991年中央宣伝部などの部門が共同で発布した『存分に文物を運用して愛国主義と革命伝統教育を実行することに関する通知』を継続して貫徹実行し、青少年の参観・仰ぎ見る活動に組織して接待し、必要な支持と援助を提供する。教育基地を参観する際の料金を決め、学校が組織して教師と生徒が参観する際には費用を免除する。展示する単位は有効で高い素質のガイト班を形成し養成しなければならない。

  3. 教育基地の重大な建設事業都市や農村の先進単位は、青少年に対して行う愛国主義教育を単位の光栄ある任務として、自発的に熱烈に関連する単位と協力し、青少年が参観して学習活動するのを組織して受け入れなければないない。

  4. 各地の自然風景や文物旧跡・名勝景勝は人々が祖国の壮麗な山河や悠久な歴史文化に対する熱烈な愛情の念を高ぶらせるのに十分足りることができ、この方面での優位を発揮することに注意し、愛国主義教育は遊覧・観光の中に含まれる。旅行景勝、自然保護区でのガイドの説明・文字による説明・宣伝材料はみな全て愛国主義教育の内容を含まなければならない。各級の旅行景勝部門は特にガイドとなる人員に愛国主義宣伝の意識を樹立し、この方面での教育と訓練を強化し、ガイド人員と旅行景勝が愛国主義教育で十分な作用を発揮することに関して特に注意しなかればならない。

  5. 「万里辺境文化長廊」建設の中で文化事業建設と思想道徳建設と愛国主義教育を緊密に結び付けることに注意し、中華民族の優秀な伝統文化を発揚し、愛国主義教育の重要な拠点と成す。

  6. 愛国主義教育基地を運用して活動を展開し、丹念に構成し、綿密に組織する。各級の教育行政部門・共青団組織は教育基地と業務連絡制度を作り、共同で活動計画を研究設定する。異なる年齢層・心理上の特徴・知識水準・受け入れ能力に対する教育に基づいて、科学的に活動内容を配置し、思想性と芸術性に注意し、努めて吸収力と感染力に富むことを求める。重要な祝日・記念日と結びつけて、組織して参観・仰ぎ見み・墓参りなどの活動を組織することができる;特定の教育テーマと結びつけて、社会考察と社会実践活動を組織することができる;基地の環境を美化し設備を維持する義務労働活動を展開する;参観・仰ぎ見み・墓参りなどの活動を結びつけて、作文の募集や演説会、特定テーマの講座、知識競争など教育活動を組織する。各種学校は夏季・冬期休暇に基地を利用して冬季キャンプや夏季キャンプを設立することができ、また歴史事件や烈士の事績、建設などに関することを党課や団課、労働訓練の教材、学校の郷土教材などに組み入れることができ、思想政治教育と課程教育に貫徹する。

五、愛国主義教育教育の社会の空気を作り出す

     《省略》

六、礼儀の必要性を提唱し、愛国の意識を強化する

     《省略》

七、愛国の先進的な典型を宣伝に大いに力をいれる

     《省略》

八、愛国主義教育の指導を強化する

     《省略》

ジャカルタでの日中首脳会談

2005-04-23 21:59:01 | 国際
讀賣新聞
日中首脳会談で首相、反日デモ再発防止求める
(2005/4/23/21:32)

【ジャカルタ=吉山隆晴】 小泉首相は23日夜(日本時間同)、中国の胡錦濤国家主席とジャカルタ市内のホテルで会談した。

首相は中国の反日デモに伴う日本大使館などへの暴力・破壊行為に抗議し、再発防止を求めたとみられる。そのうえで「日中友好は国際社会全体の利益になる」などとし、日中両国の政府間対話や民間交流の強化を呼びかけた模様だ。今月3日に中国で大規模な反日デモが発生して以来、日中首脳が意見交換するのは初めて。

会談は、首相が中国側宿舎のホテルに胡主席を訪ねる形で行われた。

首相は、反日デモに関し、中国に在留している日本人や日系企業の安全確保を強く求めたとみられる。

これに対し、胡主席は「一部の国民による過激な活動には賛成しない」との中国政府の見解を改めて示したとみられる。

首相は、先の大戦について「痛切なる反省と心からのおわびの気持ち」を表明した1995年の村山首相談話を踏襲し、戦後60年間の日本の平和国家としての歩みを説明。「友好こそが日中両国にとって最も大事だ」などとし、長期的な視野で日中友好関係を再構築する必要性を強調した模様だ。

首相は、東シナ海の天然ガス田開発問題についても、話し合いによる解決を探る意向だ。日本政府は、5月に再開予定の日中実務者協議で、中国政府が提案している共同開発の可能性を含めて協議に応じる方針を固めている。

17日の日中外相会談では、日中の専門家による歴史共同研究の実施や、青年交流などを盛り込んだ「共同作業計画」の策定などで合意している。

首相と胡主席の会談は昨年11月のサンティアゴでの会談以来5か月ぶり、4回目。

讀賣新聞
日中関係改善、胡主席が強い意欲を表明
(2005/4/23/23:13)

【ジャカルタ=石井利尚】中国の胡錦濤国家主席は23日、小泉首相との会談終了後に記者会見し、歴史問題での日本側の対応を批判する一方、反日デモなどで悪化した日中関係の改善に向けた強い意欲を表明した。

胡主席は、歴史問題と台湾問題での日本側の対応について、「いくつかのやり方は従来の約束に背き、中国とアジアの人民の感情を傷つけた。中国とアジアの人民の強い反応は、日本側が深く考えるに値する」と述べた。

日中関係については、「中日友好を発展させるという方針は変わっていない。両国の善隣友好をさらに発展させることは、両国の大多数の国民の願いである」と述べた。

さらに、「中国と日本は、アジアと世界で大きな影響力を持つ国だ。中日間の深刻な問題をうまく処理しなければ、両国関係だけでなく、アジアの安定と発展にも影響する」との認識を示した。

讀賣新聞
日中関係改善、胡主席が強い意欲を表明(同文)
(2005/4/24/00:3)

【ジャカルタ=石井利尚】中国の胡錦濤国家主席は23日、小泉首相との会談終了後に記者会見し、歴史問題での日本側の対応を批判する一方、反日デモなどで悪化した日中関係の改善に向けた強い意欲を表明した。

胡主席は、歴史問題と台湾問題での日本側の対応について、「いくつかのやり方は従来の約束に背き、中国とアジアの人民の感情を傷つけた。中国とアジアの人民の強い反応は、日本側が深く考えるに値する」と述べた。

日中関係については、「中日友好を発展させるという方針は変わっていない。両国の善隣友好をさらに発展させることは、両国の大多数の国民の願いである」と述べた。

さらに、「中国と日本は、アジアと世界で大きな影響力を持つ国だ。中日間の深刻な問題をうまく処理しなければ、両国関係だけでなく、アジアの安定と発展にも影響する」との認識を示した。


朝日新聞
小泉首相、冷え込んだ関係修復に力点 日中首脳会談
2005年04月23日21時51分

アジア・アフリカ会議(バンドン会議)首脳会議出席のため、インドネシアを訪問中の小泉首相は23日夜(日本時間同)、ジャカルタ市内のホテルで中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と会談した。中国各地で相次いだ反日デモをめぐり、冷え込んだ日中関係の改善に道筋をつけられるかどうかが焦点だ。首相は暴力行為の再発防止と在留邦人や日系企業、在外公館の安全確保を求めるものの、デモ被害に対する「謝罪と補償」は要求せず、関係修復に力点を置く考えだ。一方、胡主席が首相の靖国神社参拝や歴史認識をめぐり、どのような対応を示すのかも注目される。

会談は同日午後6時47分(日本時間同8時47分)から、中国側が宿泊するホテル内で始まり、約50分間行われた。日中両国の首脳が会談するのは昨年11月、チリ・サンティアゴで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の時以来で、5カ月ぶり。

首相は会談の冒頭、この日、スマトラ沖大地震で被災したスマトラ島北部のバンダアチェを視察したことに触れ、「ひどい惨状でした。山々に津波がぶつかり、2階建ての屋根が津波で壊されていた」と語りかけた。これに対し、胡主席も「インドネシア政府のもと、国民の皆さんが必ず困難を克服すると確信している」と応じた。

首相は会談に先立ち記者団に対し、「(友好関係が)いかに両国の利益になるか、世界の利益になるか、(中国側も)分かっているはずだ。そういう観点から、これからも日中友好重視、共通の認識を持つ会談にしたいと思う」と語った。

首相同行筋によると、17日の日中外相会談で日本側は、反日デモ被害に対する謝罪と補償を求めたが、今回の首脳会談では直接的な要求はせず、関係改善のきっかけをつかむことに焦点を絞る方針だという。

具体的には、まず、日中両国の友好関係は2国間のみならず、東アジアや世界全体の平和にも重要だとの考えを表明する。そのうえで最近、両国間ではさまざまな障害が生じていることを改めて指摘。最後に問題解決に向けて議論を深め、前向きな話し合いを続けたいという姿勢を示し、中国の同意を取り付けたい考えだという。

反日デモによる被害についても触れるが、「謝罪と補償」についての直接的な表現は避ける。また、東シナ海の石油・ガス田開発をめぐる問題では、昨年11月の首脳会談で「協調の海とする」ことを確認している経緯を踏まえ、海洋権益や境界画定などの問題も含めて引き続き対話による解決をめざす姿勢を示す方針だ。

日本側は、胡主席が首相の靖国神社参拝や歴史教科書問題を取り上げる可能性もあると見ている。その場合、首相は22日のバンドン会議首脳会議の演説で、95年の村山首相談話に基づいた歴史認識に改めて触れたことを説明し、理解を求める考えだ。

今回の首脳会談は、17日の日中外相会談で、日本側が22日から24日までの予定で開かれるバンドン会議の期間中に実施するよう正式に提案したのを受けたもの。中国側は「前向きに進めたい」(李肇星(リー・チャオシン)外相)と応じ、両政府間で調整が続けられてきた。22日夜になって、最終的に開催が決まった。

朝日新聞
小泉首相、冷え込んだ関係修復に力点 日中首脳会談
2005年04月23日22時28分

アジア・アフリカ会議(バンドン会議)首脳会議出席のため、インドネシアを訪問中の小泉首相は23日夜(日本時間同)、ジャカルタ市内のホテルで中国の胡錦涛(フー・チン・タオ)国家主席と会談した。中国各地で相次いだ反日デモをめぐり、冷え込んだ日中関係の改善に道筋をつけられるかどうかが焦点だ。首相は暴力行為の再発防止と在留邦人や日系企業、在外公館の安全確保を求めるものの、デモ被害に対する「謝罪と補償」は要求せず、関係修復に力点を置く考えだ。一方、胡主席が首相の靖国神社参拝や歴史認識をめぐり、どのような対応を示すのかも注目される。

会談は同日午後6時47分(日本時間同8時47分)から、中国側が宿泊するホテル内で始まり、約50分間行われた。日中両国の首脳が会談するのは昨年11月、チリ・サンティアゴで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の時以来で、5カ月ぶり。

会談終了後、首相は記者団に対し、英語で「非常に良い会談だった」と語った。一方、胡主席も終了後、記者団に「現在の中日関係に出現した困難は目にしたくないものであり、妥当に処理しないと中日両国だけでなく、アジアの安定と発展に影響する」と指摘。さらに「最近の日本の歴史、台湾問題に対するいくつかのやり方は、自らの約束に背き中国人民とアジア関係国の国民感情を傷つけた。日本の反省に値する」と日本を批判した。

首相は会談の冒頭、この日、スマトラ沖大地震で被災したスマトラ島北部のバンダアチェを視察したことに触れ、「ひどい惨状でした。山々に津波がぶつかり、2階建ての屋根が津波で壊されていた」と語りかけた。これに対し、胡主席も「インドネシア政府のもと、国民の皆さんが必ず困難を克服すると確信している」と応じた。

首相は会談に先立ち記者団に対し、「(友好関係が)いかに両国の利益になるか、世界の利益になるか、(中国側も)分かっているはずだ。そういう観点から、これからも日中友好重視、共通の認識を持つ会談にしたいと思う」と語った。

首相同行筋によると、17日の日中外相会談で日本側は、反日デモ被害に対する謝罪と補償を求めたが、今回の首脳会談では直接的な要求はせず、関係改善のきっかけをつかむことに焦点を絞る方針だという。

具体的には、まず、日中両国の友好関係は2国間のみならず、東アジアや世界全体の平和にも重要だとの考えを表明する。そのうえで最近、両国間ではさまざまな障害が生じていることを改めて指摘。最後に問題解決に向けて議論を深め、前向きな話し合いを続けたいという姿勢を示し、中国の同意を取り付けたい考えだという。


反日デモによる被害についても触れるが、「謝罪と補償」についての直接的な表現は避ける。また、東シナ海の石油・ガス田開発をめぐる問題では、昨年11月の首脳会談で「協調の海とする」ことを確認している経緯を踏まえ、海洋権益や境界画定などの問題も含めて引き続き対話による解決をめざす姿勢を示す方針だ。

日本側は、胡主席が首相の靖国神社参拝や歴史教科書問題を取り上げる可能性もあると見ている。その場合、首相は22日のアジア・アフリカ会議の演説で、95年の村山首相談話に基づいた歴史認識に改めて触れたことを説明し、理解を求める考えだ。

今回の首脳会談は、17日の日中外相会談で、日本側が22日から24日までの予定で開かれるアジア・アフリカ会議の期間中に実施するよう正式に提案したのを受けたもの。中国側は「前向きに進めたい」(李肇星(リー・チャオ・シン)外相)と応じ、両政府間で調整が続けられてきた。22日夜になって、最終的に開催が決まった。

朝日新聞
日中首脳会談、関係改善で一致 中国側「歴史」反省促す
2005年04月24日00時12分

アジア・アフリカ会議(バンドン会議)首脳会議出席のため、インドネシアを訪問中の小泉首相は23日夜(日本時間同)、ジャカルタ市内のホテルで中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と約50分間会談した。両首脳は両国の友好関係がアジアの安定や発展にとって不可欠との認識で一致。中国で相次いだ反日デモをめぐって冷え込んだ両国の関係改善に向けて、両国の交流を拡大することなどで合意した。首相は反日デモについて、中国側が適切な対応をとるよう要請したが、謝罪と補償は求めなかった。一方で、胡主席は会談後、歴史認識や台湾問題をめぐる日本側の最近の対応について「反省に値する」と改めて批判した。

会談は同日午後6時47分(日本時間同8時47分)から、中国側が宿泊するホテル内で行われた。会談終了後、首相は記者団に対し、英語で「非常に良い会談だった」と語った。

引き続き首相は記者会見を開いて、会談の内容などを説明した。それによると、首相は会談の中で中国国内での反日デモについて触れ、暴力行為の再発防止や在留邦人や日系企業、在外公館の安全確保を胡主席に要請したという。これに対し、胡主席は(1)侵略戦争を反省し中国やアジア人民の感情を傷つけるべきではない(2)台湾独立を支持しないことを希望する(3)両国の交流を拡大し、民間にも広げ、中日関係を健全に安定的に発展させたい――などと主張した。

会談の席上、胡主席からは靖国問題も持ち出されたという。ただし首相によると、胡主席は「この問題についていちいち討論する気はない」と話し、首相からは「具体的に話はしなかった」という。首相はさらに記者会見で靖国参拝について「適切に判断することに変わりはない」と語った。

首相は今回の会談について、「一時的な対立や反日デモ、日本の嫌中感情に惑わされず、日中の友好を発展していくことがいかに重要かを共有できる会談にしようと臨んだ。胡主席も同じだった。極めて有意義な実りある会談だった」と語った。

首相同行筋によると、17日の日中外相会談で日本側は、反日デモによる被害に対する謝罪と補償を求めたが、今回の首脳会談では直接的な要求はせず、関係改善のきっかけをつかむことに焦点を絞る方針で臨んだ。

このため、首相は安全確保は要請したものの「謝罪と補償」についての直接的な言及は避けた。

鳥居民著『「反日」で生きのびる中国』

2005-04-23 06:27:25 | 国際
昨日(2005年4月22日)、近くの書店で鳥居民著『「反日」で生きのびる中国-江沢民の戦争』(草思社、2004年2月27日発行、ISBN 4-7942-1288-7、税込定価 1,470円)を見つけたので購入した。

「中国で反日デモが起ることを鳥居民が正確に予想していた」とあちこち雑誌などに書かれているのを目にしていたので、私もぜひ読んでみたいものと思っていた。けれども、連日の新聞報道に目を通すのが忙しくて、アマゾンに注文することさえしないままになっていた。

帰宅後、すぐ読み始めたが、就寝までに全10章構成のうちの第7章まで、それこそあっというまに読み進んでしまった。まあ、推理小説でもなければ、こんなスピードで読み進むことは珍しいだろう。「鳥居民が中国で反日デモが起ると予想していた」というのは当らないと思う。予測というとえてして感じられるような際物じみた読物ではない。中国現代史そのものがある特定局面から記述されているといったほうが適切ではなかろうか。中国民衆の間に日本憎悪感情がどうして沸き起こってきたのか、彼の説明は極めて説得力があるのである。

鳥居民が詳細な例証を重ねて説明していく内容の大筋は、私が2005年4月22日のブログに「中国の偏向教育」と題して書いたこととほぼ同じ流れになっているといえる。もちろん、鳥居民は数多くの例証を原典を示しつつ駆使して構成していくので、私の書いた単なる感想に過ぎないものと比較しては失礼だろうと思う。私は中国事情に通じているわけではないが、あれだけ激烈な反日デモを目の当たりにすれば、原因が江沢民の推進してきた偏向教育にあることぐらい、すぐ気がつくことだ。鳥居民のこの著書は、一年以上前の2004年2月に出版されているのだから凄い。だから、「予測した」、「的中させた」などといわれる由縁でもあるのだ。

鳥居民によれば、中国共産党は1994年に「愛国主義教育実施綱要」を公布しているという。これは厳密には法律ではないようだが、共産党一党独裁の中国のことだから、法律以上の力を発揮しているらしい。鳥居民の本には文言が逐条的に紹介されていないので、ぜひ読んでみたいと思ってインターネットで調べてみたが見つからなかった。

詳しい読後感は全部読み終わってから改めて書くが、中国の反日デモの原因について理解を深めたい人にはこの本は必見の価値があろう。

読書生活(2005年4月22日)

2005-04-22 14:44:24 | 読書
2005年4月22日購入 単行本;

鳥居民著 「反日」で生きのびる中国-江沢民の戦争
(草思社、2004年2月27日発行、ISBN 4-7942-1288-7、税込定価 1,470円)
目次
1 ニコラス・クリストフと伊藤光彦が語ったこと
2 学生デモが政府に民主化を求めたとき
3 「階級苦」と「民族苦」を教え込んで、失政の党を救う
4 「真の権力」を握って
5 日本人にたいする憎悪を育てる
6 毛の戦争、の戦争、江沢民のための手本
7 「轟々烈々」江沢民の戦争
8 江沢民の十三年
9 われわれの希望、胡耀邦の存在があったこと
10 われわれはどうしたらよいのか
日本と中国との関係、ひとつの例、福建省―ウナギ、墓石、ウーロン茶、そして福清人
あとがき
Amazon.co.jp 書評
中国共産党の反日教育の異常さを最初に指摘したのは、天安門事件の報道でピュリツァー賞を受賞したニューヨーク・タイムズのニコラス・クリストフ記者である。彼は江沢民が国家主席になった早い段階から「(中国は)日本に対する憎しみをかき立てることをやめなければならない」と警告してきた。しかし、江沢民の反日教育に「日本の政府主脳、外務省、マスメディアまでが沈黙を守るのをしきたりとしてきた」と本書はいう。

中国の反日歴史教育を問題にした書物は少なくない。本書の著者自身が「彼以前に北京特派員はいなかった」と評価する古森義久も彼の著書『日中再考』の中で、国民に日本人を憎悪させるのは中国共産党が正統性を堅持し続けるための基本政策であると言っている。しかし、本書の特徴は、1950年代後半の「三面紅旗」路線の大失敗から説き起こし、失政の責任を他に転嫁する中国共産党特有の「政治思想工作」を際立たせている点だろう。

1958年に毛沢東が始めた「社会主義建設の総路線」「大躍進」「人民公社建設」は、わずか2年間で2000万人以上の農民を餓死させるという惨澹たる結果に終わった。しかし、党指導部は自らの失政から農民・兵士の目をそらすために「政治思想工作」を展開していく。「貧乏人が貧乏である所以は、地主と資本家の搾取があったからだ」「経済的搾取は国民党、蒋介石の反動政権がやったことである。この反動軍隊を支えてきたのはアメリカ帝国主義である」といういわゆる「両憶三査」で、20年前の「階級苦」と「民族苦」に責任を負わせた。

天安門事件後に国家主席となった江沢民が、1994年に制定した「愛国主義教育実施要項」はまさしく毛沢東以来の伝統なのである。ソ連・東欧圏の崩壊で、中国の青少年は共産主義に疑問を抱き始めている。中国が資本主義への移行を進めていけば、共産党の統制力は弱まっていくことを江沢民はよく知っている。中国は今ふたたび「政治思想工作」を必要としている。しかし、自由主義経済を志向する党指導部が「階級苦」を教えるわけにはいかない。そこで「民族苦」を教え込もうというのが「愛国主義教育」であり、その唯一最大の標的こそ日本なのだ、と本書は主張するのである。(伊藤延司)

新しいローマ法王

2005-04-22 10:30:52 | 国際

Cardinal Ratzinger entered the seminary as a teenager, but World War II intervened. He was drafted into an antiaircraft unit of the German Army and was temporarily a prisoner of war.


Click here

POPE BENEDICT XVI



ドイツ出身のラッツィンガー枢機卿が新しいローマ法王に決まった。ポーランド出身の法王の次はドイツ出身の法王となった。

ベルリンの壁崩壊(1989)から15年余、中東欧諸国に対する法王庁(Curia Romana、「教王庁」とも訳す)の政治的影響力が今後も継続していくかもしれない。


ローマ法王の選出手順

中国政府、反日デモ規制に方針転換

2005-04-22 00:36:54 | 国際
中国政府は、反日デモを規制する方針にしたらしい。これまでのやり方を続けていたら、「五四運動記念日」にはもっと大規模な反日デモが起り、収拾不能に陥る恐れがあると考えているのかもしれない。

また、中国政府は、明日(2005年4月22日)ジャカルタで日中首脳会談にも応ずることを決め、日本政府に通告してきた。小泉首相と胡錦涛国家主席の会談が実現する運びとなったわけだ。

ただし、日中首脳会談に応ずる条件として、靖国神社で明日予定されている例祭に閣僚級の政治家の参拝がなければとしているようで、まだかなり細かいことにこだわっているらしい。これはデモの再発を恐れているのか。それとも、外交的駆け引きのつもりだろうか。

それにしても、双方はいったいどういう譲歩を考えているのだろう? 今回の損害についての中国側からの明確な謝罪はあるだろうか。一方、日本側が突きつけられているのは、「歴史認識」「靖国参拝」、「教科書歪曲」、「安保理常任理事国入り」、「尖閣諸島領有権」などの諸問題だから、今回の首脳会談などで早々と譲歩できるようなわけがない。「ごめんなさい」で済むような単純な問題ではないのだ。


朝日新聞
デモ破壊行為、初めて中国で報道 公安省報道官が談話
2005年04月21日22時52分

 中国政府で国内治安を担当する公安省の報道官は21日、これまでの反日デモで破壊行為があったことを認める談話を発表し、それが初めて中国国内のメディアで国民に伝えられた。非合法デモに参加しないように改めて要請しており、当局は事態の沈静化を図る姿勢を強めている。

 談話は反日デモについて、「仕事にあぶれたごく少数の人間が、機会に乗じて公共物や私有物を破壊し、社会秩序を乱すなど、違法行為をして我が国のイメージを傷つけた」とした。日本大使館への投石など、破壊行為の具体的内容については触れなかった。デモ自体は「日本が歴史などの問題について誤った態度をとり、中華民族の感情を傷つけた」ために発生し、「大部分の群衆と学生は理性的だった」「関係部門が社会秩序を守るため、正しい措置をとった」とした。

 談話は夕方のテレビ、ラジオで全国に報道された。これまで国内メディアは破壊行為を報じていなかった。デモの参加者に対しては「長期的で根本的な利益を踏まえた党と政府が、中日関係を正確に処理できると信じてほしい」と呼びかけ、群衆や学生に本来の仕事や勉強に専念するよう求めた。

 また、「デモは必ず公安機関に申請し、許可をとって行わなければならない。公安機関の許可を受けずにインターネットや携帯電話のメールによって組織されたデモは違法行為である」と、非合法なデモへの不参加を要請し、インターネットや携帯電話のメールを使ってデモ情報を流すことを禁じた。

私の写真美術館(6)

2005-04-21 10:18:36 | 美術・音楽
画像は友人Kが描いた絵から、アニメGIFにしたものだ。使っている音楽は、「戦争は終った(War is over)」というタイトル。でも、ブログでは音は聴こえない。下の画像をクリックして、別の画面で聴いて欲しい。

この作品は、アフガン作戦が終盤を迎え、オサマ・ビンラディンの姿が、あの荒涼たる岩山から消えたころ作った。そういえば、そのころ、ディジーカッターという新型爆弾が使われていた。

オサマは、その新型爆弾で殺されたと思った。でも、まだ生きているという情報もある。ときどき、アル・ジャジーラで声を聴いたりする。

確かに、あのときは、これでもう「戦争は終った」と思った。だが、それからもずっと、戦争は続いてきた。ブッシュの戦争。そして、911 なんて、もう昔の話になってしまった。アメリカ兵とイラク市民たち。大勢の人々が死んでいった。いまでも、何人かずつ死んでいく。

まったく、反戦気分だけでは、とても生きていけない。音楽だけが空しく響く。まるで機銃のように聴こえる。



画像上をクリック


War is over
Mar.13,2002

五・四運動記念日近づく

2005-04-21 06:13:03 | 国際
「不戦の誓い」「戦没者に対する哀悼」など、小泉首相の一連の発言はすべて国内向けである。しかも、小泉首相一流の舌足らずな表現で、私たち日本人の耳にはすっかり記号化されており、もはやいかなる新鮮味も感じられなくなっている。

「中国情報局」の4月20日付記事「小泉首相の靖国参拝無関係説、「火に油」か」によれば、小泉首相のこれらの発言は、中国人たちには日本人の歴史観の違いとして捉えられているという。「不戦の誓い」「戦没者に対する哀悼」などのどこに日本人特有の歴史観が込められているというのか。私にはどうも理解できない。

一方、このとき小泉首相は同時に、「反日デモは私の靖国参拝とは無関係」とも発言していた。だが、この発言が中国人の反日感情を強く刺激しているというのだ。

中国のポータルサイトが運営する掲示板には、小泉首相のこの無関係発言に対して書き込みが殺到しているそうだ。だが、それらの書き込みは「A級戦犯の靖国神社への合祀」という事実をちゃんと理解した上で非難しているのだろうか。それとも、中国人にはもはや「靖国参拝」=「反日の理由」といった記号化がなされているのだろうか。

ともあれ、ネット上のこのような動きを見ていくと、反日デモがこれでもう終息するとは到底思えない。

一方、中国情報局は、4月19日における李肇星外交部長の動きと、秦剛外交報道官の記者会見の模様を伝えている。いずれも反日デモの再発防止にやっきとなっていることがよく読み取れる。だが、中国政府は、日本側の蒙った物的損害に対する謝罪と補償の要求には決して応じようとせず、逆に反日デモ勃発の責任が日本側にあるとの主張を相もあわらず続けている。

秦剛外交報道官は、「いま中国国民が強烈な不満を表しているのは、日本が歴史問題、台湾問題などで間違った態度をとっているからだ」としており、ここで突然「台湾問題」を持ち出してきたことが注目される。また、「反日感情は愛国主義教育が生み出したものではないか」という記者団からの質問に対し、彼は「そのような指摘は事実の歪曲である」と述べた。

さて、5月4日は「五・四愛国運動」の記念日である。もし反日デモが再発するようなことがあれば、次は五・四運動記念日の5月4日だろうと予測する向きが多い。

「五・四愛国運動」とは、1919年5月4日に北京で始まり、翌月末まで中国全土(東北三省以外)で繰り広げられた大規模な民衆行動(街頭デモ、焼き討ち、日本品ボイコット、抗議閉店、工場閉鎖、ゼネストなど)で、第一次大戦に破れたドイツの山東権益を引き継ぐ戦勝国の日本に向けられたものであった。

特に、6月3日、北京の学生たちが始めた大規模な街頭デモ(「六・三運動」)に、親日派の北京政府が強烈な大弾圧で報いたので、この報道が伝わると全国の運動は一挙に反政府的色彩を強めて高揚していった。結局、政府はやむなく曹汝霖ら親日派を罷免して世論に譲歩し、6月28日、ヴェルサイユ講和会議の中国代表は講和条約調印を拒否して収拾したのであった。次のリンク「五・四愛国運動要図」は五・四運動がおこなわれた全国の都市を示したものである。

五・四愛国運動要図


「五・四愛国運動」の詳細を見てくると、もしこれをモデルとした反日運動がおこなわれたとしたら、これまでのデモとはくらべものにならない状況となるのではなかろうかとそら恐ろしくなるのである。


中国情報局

反日:小泉首相の靖国参拝無関係説、「火に油」か
発信:2005/04/20(水) 20:26:59

中国の各メディアが、小泉首相が靖国神社の参拝が反日感情を引き起こしたわけではないと述べたことを、特集の形で取り上げている。このことが、中国人の反日感情の「火に油」を注ぎかねない結果になっている。

多くのメディアは「不戦の誓い」「戦没者に対する哀悼」といった、小泉首相の説明も紹介。また「国によって、歴史観も伝統も考え方も違う」といった発言も紹介している。その上で、靖国神社が奉っている対象としては第二次世界大戦の「日本軍の戦犯」も多く含まれ、小泉首相の参拝は、中国を含むアジアの多くの国の強い不満と抗議を何回もまきおこしていると結論づけている。

小泉首相が、靖国神社参拝が反日感情の原因ではないとしたことに関して、中国の三大ポータルサイトである「新浪網」等では、特集記事に掲示板をリンクさせており、書き込みが殺到している。

書き込みには過激な内容が目立ち、「中国と日本が友好だった時期は無かった。今も無い。将来もあり得ない」「中国が日本に友好を求めるのは、鶏がイタチに新年の挨拶をするようなものだ」などとしたものが多い。

しかし、破壊活動を扇動するような投稿は見当たらない。中国当局は、今回の反日運動がインターネットによって拡大した側面が強いことから、インターネット上の発言を厳しく取り締まっているともみられており、望ましくないと判断された投稿が削除されている可能性が高い。(編集担当:齋藤浩一)

中国情報局

「日本は重要な隣国」、近代中国は日本から勉強
発信:2005/04/20(水) 13:10:34

中国共産党中央宣伝部などは19日、北京の人民大会堂で、党、政府、軍の幹部らを集めた日中関係に関する情勢報告会を開催。この報告会で、中国外交部の李肇星・部長が国際情勢及び当面の日中関係に関する報告を行った。新華社などが伝え、中国でもトップ記事として、各メディアに報じられている。

李・部長は、「2000年の長きにわたって、日中両民族は友好交流を行ってきており、古代の中華文明は日本の文化の形成と進歩を推進。近代の中国も日本から多くの重要な文明発展に関する成果を学習してきた」とした。

その後、李・部長の発言は、日清戦争以降の中国侵略に対する日本の軍国主義批判が繰り広げられたものの、中国の首脳が、近代の中国が日本から学習してきたことを公的に明言するのは極めて異例。

李・部長は、「日本はわが国の重要な隣国であり、お互いの利益は密接不可分のものであって、両国人民の往来は頻繁で、交流は密接であり、グローバル化が進む中で、この傾向はさらに発展していくだろう」と指摘。

「歴史を鑑(かがみ)として、未来に向かう」精神という中国の一貫した主張を繰り返し、「日本は承諾した言葉を忠実に履行し、中国の主権を損なうことなく、日本が国際的に人心を得ないようことはするべきではない」と語った。

「中国人民は日本人民に対して友好の感情を抱いている」とし、胡錦涛・総書記を中心とした現政権の対日友好政策を強調。「党と国は国の根本的な利益から、妥当に対日関係が直面している各種問題を処理しなければならない」とした。

「現在の世界情勢を正確に認識し、基本的な国情を正確に把握し、中央の一連の重大な政策や配置を断固として貫徹」すべきとした上で、「冷静に理知的に、合法的に自己の感情を表現すべきで、不認可のデモなどの活動に参加すべきではなく、社会的な安定に影響するようなことを行うべきではない」と語った。

「得がたい歴史的チャンスを大事なものとし、大局から、堅実に、愛国的情熱を仕事や学習の実際行動へと転化、中華民族の偉大な復興に貢献しなければならない」とした。(編集担当:鈴木義純)

中国情報局

外交部:今の日本人に侵略の罪は背負わせず
発信:2005/04/20(水) 09:58:58

中国外交部の秦剛・報道官は19日の定例記者会見で、記者からの「日本政府は、中国人の中に存在する反日教育は愛国主義教育によって作り上げられたものだとみているが、どう考えるか」との質問に対し、「どの国においても、国民に対して愛国主義教育を行うのは正常なことだ」と回答。その上で「中国の愛国教育は決して反日教育ではない」と強調した。

秦・報道官は「中国政府は国民、特に若者世代に反日・排日の感情を植え付けたことはない。逆に歴史教育では日中両国民の友好が両国関係の発展につながることを強調している」と述べた。

また日本による侵略の歴史について「中国人に大きな苦痛を与えただけでなく、日本人にとっても災難だった。中国政府は日本国民と、一部少数の軍国主義者を分けて考えている」と説明。「現在の日本人が、侵略戦争当時の罪を背負うべきだとは考えていない」と、従来からの政府見解を繰り返して表明した。

さらに「今、中国国民が強烈な不満を表しているのは、日本が歴史問題、台湾問題などで間違った態度をとっているからであり、日本国民に向けた不満ではない」と強調。「愛国主義教育が反日感情を生み出したという指摘は事実の歪曲である」と非難した。

その上で「中国政府は、日本側が両国国民の相互理解と友好を推進するなど、日中関係の発展に有利になることを多く行うよう望むとともに、正確な判断によって国民を正しい方向に導くよう希望する」と述べた。(編集担当:恩田有紀)

中国情報局

上海:人気BBSサイトで反日関連投稿を全削除
発信:2005/04/19(火) 19:59:03

上海市内に関連する話題が多く寄せられていることで人気のBBSサイト「滬娯論壇」は19日、反日運動に関連する投稿をすべて削除した。同サイトではこれまで、写真を含めて反日運動に関する投稿が数多く掲載されていた。

「滬娯論壇」は19日の正午ごろ、反日活動に関する投稿を削除した。また、管理人の名義で「本日かぎりで、日本の常任理事国入りに関係する内容の発表、(デモなどの)呼びかけや情報、さらにその結果報告などを無条件ですべて削除します。皆様のご理解とご協力をお願いします」といった声明を掲載した。

これまで、「滬娯論壇」には反日デモにともなう破壊活動を示す写真を含めた投稿が殺到していた。なお、同サイトの管理人は「日本」を故意に「日笨」と書いており、日本に対して強い反感を抱く姿勢は崩していない。

このことから判断して、反日関連の投稿を削除したのがサイト側の本意でないことは、ほぼ明らか。警察当局等から指示されたか、その意をくんでやむをえず自粛したと考えられる。なお、「笨」は「おろかもの」「のろま」の意。(編集担当:如月隼人)

中国の偏向教育

2005-04-20 14:07:47 | 国際
日本側はこれまで中国側から一方的に、「歴史認識を改めよ」、「教科書の歪曲はけしからん」、「小泉首相の靖国参拝は取りやめろ」などと、実にさまざまな抗議を突きつけられ続けてきた。

しかしながら、一衣帯水ともいえる隣国日本に対して中国の若者たちがこれほどまでも激しく憎悪するようになったのは、別に日本側に責任があったわけではなかった。むしろ、中国政府が過去20年間近くにわたり続けてきた恐るべき偏向教育にその最大原因があったことが、今回、反日デモが激化した事態を契機として、図らずも明らかになったのである。中国政府のこの偏向教育はまさに国家がみずから手を染めた国家犯罪とでもいうべきではなかろうか。

従来、中国政府はこれまで、「日本は歪曲された歴史教育をおこなっている」、「日本の歴史教科書は歪曲された記述に満ちている」などと繰り返し主張してきた。けれども、実は話は逆だったのではないか。中国政府のほうが長年にわたり、甚だしく事実を曲げた、いわば「日本憎悪教育」とでも呼ぶべき偏向教育を続けてきていたのである。その事実が、今回の激しい反日デモを契機として白日の下に曝された。そのようなことをやってきた彼らに、「現在の日本」を非難する資格などあろうはずはない。

いやしくも自国が近代国家であると自称するならば、自国民を隣国憎悪へとマインドコントロールするような、まがまがしい偏向教育など許されるべきではないであろう。「愛国教育」という名において自国民を隣国憎悪に駆り立てるなど、それこそまさに21世紀の国際社会に生きる近代国家としての適格性を欠いている。そんなことを長年平気で続けてきた中国には、「非近代国家」の烙印が捺されてもやむを得まい。中国が近代国家としての適格性を欠くなら、彼らがこれからやろうとしているオリンピックや万博などは、果たして無事に開催できるか、極めて心配なことである。

中国政府がなぜこれほどまで禍々しい「愛国教育」をしなければならなかったか、改めて検討してみる価値がある。そもそも、小平が考えついた社会主義市場経済とはいったい何だったのか。改革開放政策を推進していくための単なる方便に過ぎなかったではないか。現実には、そんな都合のよい経済システムなどあるはずがない。その証拠に、どんなに優れた社会学者や経済学者といえども、明確かつ具体的な形で社会主義市場経済の理論的説明などできた試しはなかった。経済に市場原理が導入された途端、その経済は社会主義から離れていかざるを得ない。文化大革命終息後の中国現代史は、まさにそのことを如実に物語っているではないか。

ソ連と東欧諸国の社会主義体制の解体が始まり、社会主義が放棄されようとしていたとき、中国もまた大きく体制を揺るがせ、重大な危機に直面していた。このとき、小平はおそらく、「国民生活水準をもっと高めなければ、中国も同じようにに行き詰まるだろう。国民生活水準を高めるには、市場経済に移行するしかない。そのためには、社会主義は放棄しなければならない。けれども、共産党一党独裁は堅持持しなければならない。なぜなら、もし共産党が政権を喪えば、中国は極度の混乱に陥る。もしそうなったら、他国の侵略を受ける危険性が大きい。例えば、台湾がアメリカを引き入れ、混乱に乗じて大陸侵攻を企てるようなことが起るかもしれない」などと、さまざまなことを考えたであろう。

そこで、中国政府は、一方では市場経済の導入しながら、もう一方で共産党一党独裁体制を揺るがせることのないよう、自国民をマインドコントロールしなければならなかった。自国民をマインドコントロールするのが「愛国教育(愛国主義教育)」 ― 日本を仮想敵国とした「日本憎悪教育」 ― を続けることにした。これにより中国政府は、あたかも曲芸のような、ぎりぎりのところで辻褄を合わせた。その結果として、曲がりなりにも今日に至るまで、共産党一党独裁体制を堅持することができたのである。

こういうように見てくると、小平の当時の戦略がいかなるものであったか、今更ながらその先見性の深さに思いを致す。1989年の天安門事件直後、江沢民は小平に呼ばれ、政治局常務委員、総書記、党中央軍事委員会主席などの要職に就いた。次いで1993年になると、彼はトップの座(国家主席、国家軍事委員会主席)に登りつめた。けれども、彼は上海市長(1985-1989)を経験しただけの地方官僚でしかなかったので、国家指導を為し得るほどの経綸の持主ではなかった。彼はみずから独創性を発揮するというより、むしろ小平路線の忠実な実行者の道を選んだ。いわゆる「愛国教育」にしても小平の考え方をそのまま踏襲し、ただひたすら、過激な日本憎悪へと煽る「愛国教育」を推進したのであった。

江沢民政権は予想外に長く続いた。ということは、政治経済環境がこれほど激変したにもかかわらず、小平路線は見直されることなく、ずっと継続されてきたということである。一昨年(2003年)、江沢民はようやく胡錦濤にその地位(共産党総書記、2004年には共産党中央軍事委員会主席)を譲り渡した。けれども、はっきりいえば、反日問題は胡錦濤の責任ではなく、江沢民の遺産そのものである。小平路線の忠実な継承者であった江沢民が指導してきた歳月の長さこそが、日中不協和音をもたらした最大原因というべきであろう。

中国という国家はできるだけ早く、共産党一党独裁などというような負の遺産を捨て去るべきであろう。共産党一党独裁は20年以上も前の亡霊のようなものである。国家運営には、いまやすっかり役立たなくなった、古色蒼然たる代物だ。改革開放政策の成功により経済離陸を果たしたかに見える中国としては、過去の亡霊にとり憑かれた体制に留まっていることなど、もはや許されないのだ。経済的な成功で得られた果実を無駄に喪わないためにも、一刻も早く共産党一党独裁という遅れた政治体制からの離脱を図らなければならないのではないか。

ただし、血みどろの権力闘争に陥ることは避けなければならない。自由で民主的な、開かれた国家へと、平和裡に変貌していって欲しい。経済の繋がりが強い日本としては、中国が一刻も早く、「普通の国家」となってくれることを心から願わずにはおれない。

もちろん、日本政府としては中国の政治体制についてあれこれ悪しざまにいうことはできない。けれども、日本のみならず、アメリカやEC諸国、あるいは東南アジア諸国などを含め、ほとんどすべての国々が、「中国よ、普通の国家となれ!」と思っているのではないか。そう思っていないのは、北朝鮮、キューバなど...ごく小数の特殊な国だけだろう。

さて、今回の反日デモに関連して、日本政府が中国政府に対し当面要求すべきことは、次のふたつに絞られるのではなかろうか。

まず、要求の第一は、中国政府がこれまでやってきた愛国教育とは実際にどんな内容のものであったか、日本を始めとした国際社会に対し、具体的に提示して欲しい。そして、問題箇所は中国政府の手で速やかに改善して欲しいのだ。また、それがどのように改善されたのか、国連などの場を通じて国際的なコンセンサスを得る必要もあるであろう。

要求の第二は、過去、日中間にどのような経緯があったにせよ、それはあくまでも「過去の日本」に関することであるから、中国政府としては「現在の日本」を「悪」と糾弾するような教育は爾後決しておこなわないと、国連などの場を通してみずから宣言して欲しい。

これらの要求は大量殺戮兵器の国連査察などと同一の考え方に立っている。もちろん、中国政府の「愛国教育」は大量殺戮兵器ではない。けれども、あたかも日本に照準を合わせた核弾頭ミサイルのように、それは絶大な破壊力を秘めている。であるからこそ、核兵器と同じような予防措置を講じる必要がある。敵対的要因の排除、つまり、精神面での一種の「軍縮」というわけである。フセイン大統領時代のイラクが密かに温存していた(と思われた)大量殺戮兵器が国連査察の対象となるなら、中国の愛国教育を国連査察の対象としても、決しておかしいことではなかろう。

もちろん、中国には中国独自の考え方がある。日本政府がいくら要求を出しても、中国政府が素直に受け止めると期待することは難しい。けれども、二国間紛争を国際社会のコンセンサスと関係づけることには重要な意味がある。二国間論争といえども、国際社会のコンセンサスの下でおこなわなければ、実りのある解決には結びつかない。二国間でだけで論争すれば、いつまでも平行線を辿り、結局のところ、水掛論に終るのではあるまいか。

自国民を他国への憎悪感情へと誘導していく「愛国教育」という名の偏向教育は、近代国家としては決して手を染めてはいけない、いわば「禁じ手」なのである。かつてユダヤ人を憎悪対象としたことが、やがてナチスによるユダヤ人大量殺戮となった。過去の苦い経験が今日貴重な教訓となっている。このような教訓を、中国政府ももっと切実なものとして受け止めて欲しい。

歌仙 焔星の巻

2005-04-19 19:59:10 | 文学
「歌仙 焔星の巻」は岩波書店の『図書』2005年3月号に掲載されたもので、歌人の岡野弘彦、作家の丸谷才一、詩人の大岡信の3人によって試みられた「現代連歌」である。

「焔星」とは火星のことをを意味するらしい。この「焔星」という語を発句に用いた乙三(岡野弘彦)は、「広辞苑には「焔星」の解説が出ているが、他の辞書には見つからない」といっている。どうも彼の創作した言葉らしく、いわば新語に近いものと思われる。

次に続く玩亭(丸谷才一)の句、「偉人は犬を月の友とす」の「偉人」とは、もちろん西郷南洲(隆盛)のことである。「焔星」→「火星」→「西郷星」という連想からきているわけだ。

平凡社の「世界大百科事典」CD-ROM版によれば、「西郷星とは、1877年、西南の役で全国の人心が動揺していたとき、火星が地球に近づいてきて、大接近の9月3日には距離5630万km、光度 2.5等あまりとなった。世間ではこれを西郷星と呼び、その赤い光の中に陸軍大将の正装の西郷隆盛が見えるといって騒いだ。同時に、火星の近くに位置した土星を、隆盛の参謀、桐野利秋の名により「桐野星」と呼んだ。そして、西郷星を描いた錦絵が幾種も売り出されて人気を博したことは、大森貝塚の発見で有名な生物学者 E. S. モースの当時の日記にも書かれている」とある。

連歌をやるには、こういう雑学も必要らしい。そもそも雑学が役立つから、連歌はインターネットに向いているともいえるのだ。わからないことにぶつかれば、すかさずインターネット検索をすればよい。

この他、「母をこがるる」→「蛍」→「生臭き匂ひ」→「海鼠」というような連想の連なりも見られて、とても興趣がそそられる。複数の人々がこういう偶発的な意味の脈絡の連鎖を作って、偶然性がなければ到底到達できないであろう「思いもかけない美しいイメージ」に達する ― それが連歌の醍醐味だ。そういう中でインターネットを活用すれば、それなりに面白い歌仙が巻けそうに思われる。インターネットで遠隔のふたりが囲碁将棋をやるのと一脈通ずるところもある。

インターネットによって現代連歌の創作がどこまでやれるか、その可能性を論ずる上で宗祇の「水無瀬三吟何人百韻」と比較しつつ、現代連歌のこの「歌仙 焔星の巻」を読み進めていくのもなかなか興趣溢れるものがあるのではなかろうか。

歌仙 焔星の巻


乙三; 岡野弘彦(歌人)
玩亭; 丸谷才一(作家)
信 ; 大岡 信(詩人)

《初折の表》
秋暑し寝間よりあふぐほむら乙三
秋月 偉人は犬を月の友とす玩亭
枝豆の歯ごたへよきをほめあつて
 今年の米のできはまづまづ乙三
家族みな真白のままの保険證玩亭
 けふもけはしい山肌よぢる
《初折の裏》
のつそりと熊が顔だす九十九折ツヅラヲリ乙三
 死んだまねする還暦の知恵玩亭
居眠りの達人といはれ出世して
 夢の中にも母をこがるる乙三
胸に火を燃やすはほたる恋の虫玩亭
 幼きころはなまぐさきにほひ
冬月なまこ食ひて腹ゆるみたる月の夜乙三
 酔ひ深まれば機嫌よくなる玩亭<
商談が進むや顔は折り畳み
 突いてほころぶ紙の風船乙三
春花どかと解く花見もどりの袋帯玩亭
 投げ出す足にじゃれる猫の子
《名残の表》
山寺の鐘ものどかに暮れかかり乙三
 牢人の読む書は太平記玩亭
暗唱ソラんじる声もおのづと講釈師
 引く手あまたの村まはりする乙三
水鳥のわきを菜の葉の流れゆく玩亭
 蝦あさるらんかいつぶり二羽
妻のゐぬ湖畔の宿に寝そびれて乙三
 クイーンの札はどれも悪相玩亭
あれ見よや夜空を焦がす揚花火
 棚田をかざる彼岸花濃き乙三
秋月江戸のことおどけて語る月の客玩亭
 聞けば浪速の飛脚屋主人
《名残の裏》
朝宮に願かけてゐる孫のすゑ乙三
 三面記事に名をぞとどむる玩亭
強盗を素手で仕とめて語り草
 里よりとどく菜飯、田楽乙三
春花花冷えを口実にして燗をつけ玩亭
 節の揃ひし蛙にぎやか