購入 単行本;(定価はいずれも税抜)
■ オマル・カイヤーム著、矢野峰人訳 『ルバイヤート集成』(国書刊行会、2005年1月23日発行、ISBN 4-336-04659-X、定価5,000円)
朝日新聞
ルバイヤート集成
[著]オマル・カイヤーム
[掲載]2005年03月20日
[評者]中条省平
十一世紀ペルシアの天文学者にして哲人、オマル・カイヤーム。彼のルバイヤート(四行詩集)が世界的名声を獲得したのは十九世紀後半のことだ。英国人フィッツジェラルドの名訳がその名を不朽にした。
現世の無常を嘆じ、だが来世の救いを疑い、しかしてこの世でひたすら美酒にひと時の悦(よろこ)びを見出(いだ)す。この思想は日本人の人生観によく合致して、全訳に限っても二十種近くにおよぶ。
本書は、一九八八年に九十五歳で物故した英文学者・矢野峰人がフィッツジェラルド訳から重訳した三種類の版を集成したもの。同じ詩を三度訳し直し、そのたびにまったく異なった調子の翻訳に仕上げる驚嘆すべき離れわざなのだ。
稀覯本に属する三冊の矢野訳を一つに集めるという発想がなんともうれしく、装丁・体裁に細かい配慮が行き届いて、読み巧者二人による解説も申し分ない。手にしているだけで心おどる昨今稀な書痴、文学マニアのための逸品である。
■ 吉田満著 『戦艦大和ノ最後』(講談社、文芸文庫、1994年8月10日発行、ISBN 4-06-196287-6 定価940円)
■ 粕谷一希著 『鎮魂 吉田満とその時代』(文芸春秋、文春新書、2005年4月20日発行、ISBN 4-16-660436-8、定価790x円)
【文藝春秋のサイトから】
古今未曾有のレクイエムを書いた海軍少尉は、中央銀行の有能な行員として戦後を過ごす一方、敬虔な信仰と真摯な思索に日々を送った。
わが国の文学史上未曾有のレクイエムというべき『戦艦大和ノ最期』を著した吉田満は、日本銀行の幹部行員として戦後を送った。そして、多くのエリートビジネスマンたちが高度経済成長の中で過去をやすやすと忘れていくのをよそに、戦火に散った多くの同胞の生と死にあくまでこだわり、かれらとの無言の対話を続けた。それこそが生き残ったものの務めだと信じたからである。その志を吉田と親交の篤かった名編集者が愛惜をこめて綴った好著。(AM)
■ 千早耿一郎著 『大和の最後、それから』(講談社、2004年12月10日発行、ISBN 4-06-212683-4、定価1,900円)
【講談社のサイトから】
戦艦大和いまだ眠らず。
終戦直後ほとんど一日を以って書かれた『戦艦大和ノ最期』。
戦争を記すことを使命としつつ、日本銀行員として、キリスト者として真摯に生きた吉田満の心情をたどる。
後年、吉田満がしばしば口ずさむ短歌があった。
「そんな!それはないでしょう」と吉田直哉が言うと、吉田満は「これは生き残りが必ずいちどは思う気もちです」と応えた。― 本書より
■ 佐藤勝彦編著 『宇宙はこうして誕生した』(ウェッジ、2004年9月29日発行 ISBN 4-900594-75-X、定価1,400円)
■ オマル・カイヤーム著、矢野峰人訳 『ルバイヤート集成』(国書刊行会、2005年1月23日発行、ISBN 4-336-04659-X、定価5,000円)
朝日新聞
ルバイヤート集成
[著]オマル・カイヤーム
[掲載]2005年03月20日
[評者]中条省平
十一世紀ペルシアの天文学者にして哲人、オマル・カイヤーム。彼のルバイヤート(四行詩集)が世界的名声を獲得したのは十九世紀後半のことだ。英国人フィッツジェラルドの名訳がその名を不朽にした。
現世の無常を嘆じ、だが来世の救いを疑い、しかしてこの世でひたすら美酒にひと時の悦(よろこ)びを見出(いだ)す。この思想は日本人の人生観によく合致して、全訳に限っても二十種近くにおよぶ。
本書は、一九八八年に九十五歳で物故した英文学者・矢野峰人がフィッツジェラルド訳から重訳した三種類の版を集成したもの。同じ詩を三度訳し直し、そのたびにまったく異なった調子の翻訳に仕上げる驚嘆すべき離れわざなのだ。
稀覯本に属する三冊の矢野訳を一つに集めるという発想がなんともうれしく、装丁・体裁に細かい配慮が行き届いて、読み巧者二人による解説も申し分ない。手にしているだけで心おどる昨今稀な書痴、文学マニアのための逸品である。
■ 吉田満著 『戦艦大和ノ最後』(講談社、文芸文庫、1994年8月10日発行、ISBN 4-06-196287-6 定価940円)
■ 粕谷一希著 『鎮魂 吉田満とその時代』(文芸春秋、文春新書、2005年4月20日発行、ISBN 4-16-660436-8、定価790x円)
【文藝春秋のサイトから】
古今未曾有のレクイエムを書いた海軍少尉は、中央銀行の有能な行員として戦後を過ごす一方、敬虔な信仰と真摯な思索に日々を送った。
わが国の文学史上未曾有のレクイエムというべき『戦艦大和ノ最期』を著した吉田満は、日本銀行の幹部行員として戦後を送った。そして、多くのエリートビジネスマンたちが高度経済成長の中で過去をやすやすと忘れていくのをよそに、戦火に散った多くの同胞の生と死にあくまでこだわり、かれらとの無言の対話を続けた。それこそが生き残ったものの務めだと信じたからである。その志を吉田と親交の篤かった名編集者が愛惜をこめて綴った好著。(AM)
■ 千早耿一郎著 『大和の最後、それから』(講談社、2004年12月10日発行、ISBN 4-06-212683-4、定価1,900円)
【講談社のサイトから】
戦艦大和いまだ眠らず。
終戦直後ほとんど一日を以って書かれた『戦艦大和ノ最期』。
戦争を記すことを使命としつつ、日本銀行員として、キリスト者として真摯に生きた吉田満の心情をたどる。
後年、吉田満がしばしば口ずさむ短歌があった。
辛くして我が生き得しはNHKのディレクター吉田直哉も、ある酒の席でこれを聞いた。
彼等より
狡猾なりし故にあらじか 岡野弘彦
「そんな!それはないでしょう」と吉田直哉が言うと、吉田満は「これは生き残りが必ずいちどは思う気もちです」と応えた。― 本書より
■ 佐藤勝彦編著 『宇宙はこうして誕生した』(ウェッジ、2004年9月29日発行 ISBN 4-900594-75-X、定価1,400円)