goo blog サービス終了のお知らせ 

 ~ それでも世界は希望の糸を紡ぐ ~

早川太海、人と自然から様々な教えを頂きながら
つまずきつつ・・迷いつつ・・
作曲の道を歩いております。

心の音域

2023-12-17 15:55:22 | 音楽関係
昨日《12月16日》は、
L.V.ベートーヴェン(1770~1827)の誕生日とされています。
「・・・とされています」と書きましたが、
“ 12月17日に洗礼を受けた ” という記録しかなく、
当時のドイツにおける出生と洗礼の慣習に照らして、
おそらく前日に生まれたのではないか?
という説が 有力なのだそうです。

ベートーヴェンが活躍していた時代、

未だ “ 88鍵 ” のピアノは存在していませんでした。

大師匠が30代前半の頃、
パリのピアノ製作者S.エラール(1752~1831)から、
“ 68鍵 ” のピアノを贈られ、このピアノを使って、
「ワルドシュタイン」「熱情」等の中期傑作群を生み、
40代後半の頃、ブロードウッド社から、
“ 73鍵 ” のピアノを贈られ、このピアノで、
「ハンマークラヴィーア」他の後期ソナタ群を創作。
(参考書籍:笠原潔「西洋音楽の歴史」/放送大学教材)

その時々に開発される新しい楽器から刺激を受け、
新しい楽器により拡がる音域を駆使して、
作曲に取り組んでいた大師匠の姿が浮かんできます。

晩年、
ウィーンのピアノ製作者C.グラーフ(1782~1851)から、
“ 78鍵 ” のピアノを贈られましたが、
既に病状が進んでいたものか、
ほとんど使われなかったようです。

“ 88鍵 ” のピアノが制作されたのは、
大師匠が旅立ってから約70年を経た、
1890年頃と謂われています。

もしも “ 88鍵 ” のピアノを使っていたら、
時の彼方の大師匠・・・、
どんな作品を生み出していたのだろうか?
などと思わぬでもありませんが、
それにしても、わずか “ 20鍵 ” 、
音域にして約 1オクターヴ半を拡張するのに、
およそ百年の歳月がかかったということで、
長きに亘る工夫や試行錯誤が必要だったんですねぇ。

                 

毎日、色々な方とお会いしておりますと、
人間の内界にも、
ある種の “ 霊的ピアノ ” が宿っていると、
そのような思いを抱くことがあります。

器量や度量が大きい方、懐の深い方、
押しなべて寛容寛大な方というのは、
その方の内界に在る “ 霊的ピアノ ” が司る音域、
言うなれば「心の音域」とでも申しましょうか、
その音域がとても広いように感じます。

職場でお世話になる或る方などは、
その鍵盤数 “12000鍵 ” なのではと思わせるほど。
“12000鍵 ” とは “1000オクターヴ ” 、
時に高く、時に低く奏でられる、
その音域の広いこと広いこと。

顧みて我が「心の音域」はどうか?
いや狭いこと狭いこと・・・。


“ Smiling Dragon Ⅰ ”
~ 笑龍 其の一 ~

皆様、良き日々でありますように!


               







ひたむき

2023-11-05 15:03:01 | 音楽関係
先日、奉職する学び舎では文化祭が開催されました。
文化祭は午前・午後の二部構成で、
午前中は “ 合唱コンクール ” と銘打たれ、
各クラスごとに異なる楽曲を歌う “ クラス合唱 ” 、
学年全体で一つの楽曲を歌う “ 学年合唱 ” が、
次々に演奏されました。

体育祭が終わってから息つく間も無く、
およそ1ヶ月に亘り猛練習を重ねた “ 若い命たち ” 。
特に、本番前の1週間は早朝、昼放課、授業後等々、
学び舎は歌声に染まり、
学び舎に集う人々の鼓膜、網膜、横隔膜、
ありとあらゆる細胞膜はもとよりのこと、
壁という壁、窓という窓、教材から備品までもが、
“ 若い命 ” たちの響きに呼応して、
微細な振動を続けていたのでありました。

                 

“ 若い命 ” たちの演奏は、
それが合唱であっても、吹奏楽であっても、
何が最大の特色かと申し上げるならば、

「ひたむき」

これであります。

「ひたむき」は、
漢字で書くならば「直向き」であり、
「まっ直ぐに向く」
「まっすぐ前へ向かう」、
「心を真っ直ぐに対象へ向ける」等の意。

「うまい / へた」とか、
「成功する / 失敗する」とか、
「勝つ / 負ける」といった対立概念が、
いまだ曖昧にして希薄、もしくは入り込む余地が無い、
それほどに純度の高い「ひたむき」。

まっすぐに「うまい」、
まっすぐに「へた」、それで良し。

まっすぐに「成功する」、
まっすぐに「失敗する」、それで良し。

まっすぐに「勝つ」、
まっすぐに「負ける」、それで良し。

これは、言うほど易しいことではないはず。
“ 若い命 ” の季節にしか発露し得ない、
かけがえのない能力と言えるかも知れません。

確かに大人になろうとも、
「ひたむきさ」は保つことが出来ます。
しかしそれは、往々にして、
「意識されたひたむきさ」、
「心掛けられたひたむきさ」、
「装われたひたむきさ」とでも言うべきもの。

例えば私が、
「ひたむきに頑張ろう」と意識した場合、
その意識された「ひたむきさ」は、
“ 若い命 ” たちの、
意識されない「ひたむきさ」とは、
異質なものでありましょう。

“ 若い命 ” たちは、
唯々「ひたむき」に「ひたむき」を生きているだけで、
自らが「ひたむき」であることを知りません。
私を含めた大人たちが、
そうした “ 若い命 ” たちの姿を見て、
「あぁ、ひたむきだなぁ・・・」と、
そこに「ひたむきさ」を感じるだけのこと。

何事においてもそうであるように、
「意識」のもとに発揮される力は、
「無意識」のもとに発揮される力に、
到底およぶものではありません。

“ 若い命 ” たちの、
ひたむきな姿勢、ひたむきな声、
ひたむきな合唱を浴びるているうち、
その「ひたむきさ」が大気を振るわせ、
大気を媒質として伝わってゆくことが、
肌身を通して実感されました。

地球が大気圏を持つ星であること、
地球に音楽が存在すること、
二つは一つ、一つは二つ・・・。

何を大袈裟なと笑われもしましょうが、
この自明にして大いなる素晴らしさに、
改めて打たれた文化祭でありました。


“ Waterfall Ⅱ ” ~ 瀧 弐

皆様、良き日々でありますように!


               









音楽と “ お金 ”

2023-07-30 13:40:13 | 音楽関係
いやいや、お暑うございます!

本日のインド・ニューデリーの気温 : 28度
本日のアフリカ・モロッコの気温 : 22度
本日の日本・名古屋の気温 : 36度


日本は、
もはや熱帯・亜熱帯諸国を超える災害級高温多湿警戒国。
にも拘らず、

屋外での仕事なり部活なりが平気で行われてしまう国。


“ Young little Dragon holds the MANI ” ~ 童龍抱珠

龍は活動的で勇ましいものと思われがですが、
龍が好む人というのは、
よく眠る人、よく休む人、よくボーッとする人とも伝わります。
龍の国 “ 琉球(りゅうきゅう)” とは「龍休(りゅうきゅう)」。
「龍休」とは、つまり「龍宮(りゅうきゅう)」であり、
ひいては「龍宮(りゅうぐう)」であるという説もあり、
だいたいボーッとしている早川は、この説を支持します。

                 

古今東西を問わず、
作曲家の経済事情というものは安穏逸楽なものではないようで、
ベートーヴェン(1770~1827)のような音楽史上の英雄でさえ、
ある時は経済不安を抱え、ある時は金策に奔走しています。
交響曲第5番、通称「運命」を作曲して、
パトロン(支援者)の貴族から受け取った金額は、
一説に “ 500フローリン ” とも謂われ、
当時の為替相場を勘案すると、
日本円の130万円程度だったとか(諸説あります)。
これが多いのか少ないのかは一概に判断できませんが、
もしも師匠本人がオーケストラの演奏料を始め、写譜代・
楽譜印刷代・ホール使用料ほか諸々の経費を支払っていたならば、
手元には僅かしか残らなかったのではないでしょうか。
もしかしたら「赤字」だったかも。

ワーグナー(1813~1883)は、
何度も破産寸前まで追い込まれた上で、
バイエルン国王からの経済援助を獲得し、
チャイコフスキー(1840~1893)は、
借金等々の理由で自殺未遂にまで及んだところを、
資産家(フォン・メック夫人)からの年金で救われ、
ドビュッシー(1884~1916)は、
金銭感覚が麻痺していたものの、
2番目の配偶者(エンマ・バルダック)が支えたことに加え、
理解ある音楽出版社が作品を購入し続け・・・と、
各人各様に御苦労されたと伝わります。

尤も、作品が売れに売れ、
30代後半という若さで巨万の富を築いた為か、
後半生を半ば “ 料理研究家 ” として送られた、
ロッシーニ(1792~1868)のような方もおられますが、
果たして御本人の胸中はどうであったのか?

“ 二足のわらじ ” ということでは、
例えばホルスト(1874~1934)は、
教職で生計を立てながら作曲活動を続け、
フィリップ・グラス(1937~現在)は、
一時期タクシー運転手として生計を立てながら、
自らの音楽を深化させています。

ボロディン(1833~1887)は、
化学者・病理学者として名実共に高く、こちらが本業。
この本業と社会活動とに忙しく従事されながら、
多忙の合間を縫って、あれだけの名曲を書かれたわけで、
50代前半での旅立ちは「早逝」とは言えないまでも、
「忙殺」に等しいものだったのかも知れません。

・・・などと、
取り止めも無いことを書き連ねてしまいましたが、
何に致しましても、
音楽と “ お金 ” ・・・色々と大変ですよね。


協奏組曲「宇宙の本懐」より《螺旋》

皆様、良き日々でありますように!


               











宝塚記念 2023

2023-06-25 18:50:02 | 音楽関係
言わずもがなのことながら、
管弦楽には管弦楽ならではの魅力があり、
吹奏楽には吹奏楽ならではの魅力があります。

奉職しております学び舎には、吹奏楽部があり、
放課後には、教室から、廊下から、時によっては校庭から、
金管・木管・ティンパニ・パーカッション等の響きが聴かれます。

至らぬ早川は、若い命たちの練習風景に出くわすと、
つい我を忘れて聴き入ってしまい、
名状しがたい想いのままに立ち尽くすのですが、
彼ら彼女たちにしてみれば、その振る舞いは不審者そのもの。

怪訝そうな視線を浴びて我に返る私は、
「ありがとうございます。頑張って下さい」とだけ告げて、
その場をソソクサと去るのであります。

“ Sounds of Green ” ~ 緑龍、音を養い蓄える


                 

さて本日は、宝塚記念。
宝塚記念?・・・なんのこっちゃ、
と思われる向きも在ろうかとは存じますが、
阪神競馬場において「宝塚記念」なるレースが行われ、
その出走ファンファーレを作曲したという経緯があり、
毎年、ブログの御題として触れさせて頂いております。

で、先程テレビ視聴ではありますが、
阪神の空に鳴り渡るファンファーレを聴かせて頂きました。
競馬を始めとする勝負事には、全く縁の無い早川ですが、
本命馬 “ イクイノックス ” とルメール騎手との人馬一体、
後方に控えたまま溜めに溜め、
最後の直線で一気に全馬を抜き去る姿には圧倒されました。

                 

ファンファーレと申しますと、
吹奏楽編成で演奏される場合が多いものですが、
こちらは、
フレデリック・ショパン(1810~1849)へのオマージュ楽曲、
“ フレデリック・ファンファーレ ” 、その管弦楽版。

皆様、良き日々でありますように!


               










巨龍昇天

2023-04-09 14:41:41 | 音楽関係
音楽界の巨龍が旅立たれました。
早川が “ YMO ” を浴びたのは、10代後半。

多感な頃にあの音楽を浴びて、
“ 正常 ” でいられるわけがありません。

それからというもの、多くの方々がそうであるように私もまた、
巨龍の生み出す音楽から計り知れない “ 影響 ” を受けました。
“ 影響 ” を、文字通り「影で鳴り続ける響き」と思えば、
その “ 影響 ” は、今なお自身の内的宇宙に鳴り続けていますし、
その音楽から受けた衝撃の “ 残響 ” も消えることはありません。

宇宙論によれば138億年前の宇宙開闢時、
所謂 “ ビッグバン ” で発生した大爆音は、億年の経過に従い、
「マイクロ波背景放射」という振動状態に置き換わり、
現在も宇宙全体に鳴り響いているのだとか。
それゆえ「マイクロ波背景放射」のことを、
「宇宙が上げた産声の残響」と喩える物理学者もおられます。

止むことなき “ 影響 ” 、終わりなき “ 残響 ” 、
どこまでも続く心的振動を生んだという意味では、
巨龍は紛れもなく音楽宇宙の “ ビッグバン ” 。

同じ時代に生き、その音楽に浴し得たことに感謝し、
御冥福をお祈り申し上げます。


巨龍昇天