自分にとって旅とは異国を感じる事。
そしてこのボリビア・ラパスは自分にとって思い出深い異国となった。
ウユニからラパスへ向かうバスは22時発。
明日の朝、日が昇るまで夜通し走り続ける。
このウユニ~ラパス間はその過酷さで旅人の中では有名だった。
富士山の山頂とほぼ同じ標高のため高山病にかかる、眠れない、未舗装の悪路、そして寒さ。
水とクッキーを買い、近くの食堂に入る。
鍋を指差し注文する。
しばらくするとおばちゃんがこっちを見て何か話しかけてくる。
「ケチュア語分からないんだ。」
そう日本語で返すと満足したように笑顔で頷きラジオに耳を傾けた。
バスに乗り込むと隣には頭にシルクハットを乗せたインディへナのおばちゃん。彼女が風呂敷を広げると出てきたのは何枚もの毛布。
1枚、2枚、3枚…
一体何枚出てくるんだろう。
それらを座席、膝の上、肩、お腹、背中、さらに重ねて…何枚もの毛布にくるまれ彼女はあっという間に大きな塊になってしまった。
その様子をあっけに取られながら見ていると
「ほら、使いな」
とぶっきらぼうに毛布を貸してくれた。
決して愛想はよくない。
でもこれだけで十分。大丈夫だって思える。
明らかに調子の悪いンジン音を響かせバスは走る。
未舗装の道は常に車体を揺らし、時々大きく沈む。カーブが続き左右に揺れる。
毛布でふくれたおばちゃんは寝息をたてている。
少し狭くなっだ座席。
揺れる星空。
それは自分にとって紛れもなく「旅」だった。
明け方に乗り換えがあり、おばちゃんに連れられバスターミナルを歩く。
座ったのは2階建てバスの一番前。
見晴らしの良い特等席。
他に乗客はいない。
彼女は満足そうに笑い再び眠りについた。
そして周囲の様子が分かる頃遠くに赤茶色の街並みが見える。
ラパスだ。
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