ある新聞に載っていた69才の女性のお話
一度限りの外食に思いを馳せる
幼くして母を亡くした私は、父と2人で暮らしていた。
朝食はご飯とみそ汁に卵1個を分け合う貧しい生活だった。
外食など経験がなかったが、
一度だけ父が食堂に連れて行ってくれたことがある。
私がオムライスを食べている横で、お酒を飲みながら
「強い人間になれよ」と私に何度も言いながら泣いていた。
それから5年後に父は亡くなった。
同じく貧しい幼少期を過ごした夫と結婚し、45年がたった。
「外食はぜいたくなもの」いう考えに変わりがないが、
「父の日」が近づき、60年前の父との食堂での思い出が懐かしくなって、
夫とレストランに行った。 席上、お互いに父親の思い出は尽きなかった。
「強い人間になれよ」という約束を守って生きてきた私を、
父は天国から見ていてくれるだろうか。