ある青年海外協力隊の話
ベトナムとカンボジアの戦争にまきこまれて、
タイの難民収容所に送られてきた子どもたち。
家族と離ればなれになった子どもたちですが、
その悲しみを心の奥におしこんで、元気いっぱいに遊んでいました。
その側で、みんなの遊びをじーっと見ている少年がいます。
仲間はずれになったのかなと側へ寄ってみると、
彼の右足は付け根の所からまったくありません。
逃げてくる途中、地雷の破片を受け、赤十字隊の手によって切断され、
やっと生き残ったのでした。
同じ年齢の仲間が、跳びはねて遊んでいる姿を
じーっとみつめている彼にとって、どれほどくやしいことか、
どれほどうらやましいことか、手にとるように分かります。
幾日か難民キャンプを訪れる内に、彼とも話すようになりました。
彼は英語を少し話すことができるので通訳も楽でした。
いろいろの話の間に、彼がこんなことを言うのでした。
「私は片足で助かった。とても幸福です。両足やられた友達もいる。
目をやられた人もいるはずだ。私の父も母もどこにいるか分かりません。
三人兄弟だったけど、いつ会えるか・・・
両親がいつも言ってた。今の自分を幸福と思え。まわりの人と比べるな。
ここに生きている自分自身を幸福と思いなさい、と」
なんと力強い言葉でしょう。
ともすると、他人と比べてグチばかりこぼす私たちに、
彼の一言は深く考えさせられるものがあります。