Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

本日はようこそ開いてくださいました!お芝居のことグルメを語ります!


          

侘助が咲きました

2009-12-03 | 本日の○○





その朝、いつもなら閉めきっていた障子を開ける。

はっとする。

昨年、一昨年と莟すら付けなかった侘助の花に出逢う。
こまやかな白い花の群れが、張り出した梢に咲いていた。
おだやかでやさしい花びら。花の色ではなんといっても純白の五弁の花が、いちばんきれいな気品をもっている。

まだ開ききらず釣鐘型のままにとどまっている風情も好ましい。
花弁は手漉きの和紙のような、そして可憐で初々しい。
自然の微妙は、どんなにきびしい季節にも、すぐれた美しさを備えているもの。

奈良の「お水取り」の二月堂に供えられる紙製の『一枚かわり』侘助は、一輪五弁のうちに紅白の花びらがある。
むかし実在した侘助なのだそうです。





「出がけに、庭に咲いていて美しかったものですから・・・・」

霞は何気なく家から持ってきたと告げたが、伊織は白い花びらから、、侘助のある庭を想像した。
茂みの手前に蹲踞(つくばい)があり、奥に燈籠が見える。その陰にでも咲いているのか、それとも竹林から洩れてくる陽射しの先に、静まりかえっていたのか。
いずれにしても、侘助が咲く庭なら、静かな趣きのある庭に違いない。
そこに夫と暮している霞に、伊織は軽い妬みを覚えた。

引用が長くなりましたが、不倫のなかの真実を描いた渡辺淳一さんの小説ひとひらの雪からの抜粋です。


この小説に魅せられて「侘助」を購って植えたのが、15年も前のこと。
とすれば『ひとひらの雪』が書かれたのも、ほぼ同じ年になります。



● ついでに紅葉もアップしました ●




今年11月は何かと外出することが多く、ほとんど家にいなかった。

あるじの留守中にも、時季がくれば、鮮烈に燃えあがるように紅葉していました。







          紅葉!!  それは血の色!!

と言ったのは随筆家の岡部伊都子さん。

   ウソ!!

それは三島由紀夫だろ!!  と思っていました。
血と三島とは、いつも同一視していましたから。

「その激しい紅が心に近くなったのは、人生の半ばを経て、人の世の不合理や、自己の魔性に、気づいてからのことだ」
岡部伊都子さんの精神的不安定な時代の発言であったことを、のちに知りました。

紅葉前線は北から下りてきます。
紅葉をたずねて・・今も人は動いているようです。


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