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哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

東京芸術大学大学美術館『パリへ―』『新入生歓迎・春の名品選』

2007-06-06 | 展覧会
東京藝術大学大学美術館に『パリへ―洋画家たち百年の夢~黒田清輝、藤島武二、藤田嗣治から現代まで~』と『新入生歓迎・春の名品選』を見に行ってきた。ともに6月10日まで。

 『春の名品展』はあまり有名でない作者の作品が並べられているだけど、とくにどうと言うものでは。『パリへ』はまあまあ。ただ、会場の配置がよくなかったり、客層が悪かったり(Bunkamuraの有閑マダムたちは、まだだいぶマシということが分かった)で、落ち着いて鑑賞できるような美術展ではない。日本の洋画の歴史を紹介するという催しで、日本に独特の「洋画」というジャンルを根付かせる努力の大変さなどが紹介されて面白かった。なんでも、裸体画など描いたものなら警察がすっとんでくる時代で、政治家の息子の画家に裸体画を描かせて警察の文句を防ぎ、日本人の裸体画への抵抗感を減らしていったらしい。
 個人的には、黒田清輝の、草原で少女が裸で寝転がっているがごとき絵が好み。というか、僕は風景画とか静物画の方が好きで、人物がは苦手なのだが、黒田清輝はいいね。僕が日本人画家で一番好きな人だと認定。平均的な絵のクオリティは、それほど高くなかったように思うが、黒田清輝の絵を観ただけでも、言った甲斐があった。

 あとこの美術館の建物内に東京芸大のカフェテリアがあるのだが、そこでカレー300円なりを食べたら…まずかった。今度からはいかない。

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Bunkamura ザ・ミュージアム『モディリアーニと妻ジャンヌの物語展』

2007-05-30 | 展覧会
 有閑マダムの跋扈するBunkamura ザ・ミュージアムに『モディリアーニと妻ジャンヌの物語展~運命のアーティスト・カップル~』を見に行ってきた。どうでもいんだが、Bunkamuraザ・ミュージアムは客層が明らかに他の美術館と違う…。何人かと連れ立ってくるマダムたちが、会話をしながら楽しむ美術館なので、僕のような観て帰る、という者には鑑賞しづらい空間。

 アメデオ・モディリアーニと言えば、首が長くて眼が灰色に塗り潰された肖像画を描く、「エコール・ド・パリ」の代表画家の一人。三十うん歳で早死にしたことは知っていたのだが、病弱ながら恋多き人生だったようで、この展覧会はモディリアーニの最後の恋人であり内縁の妻であり、しかも才能あった画家であったジャンヌ・エビュテルヌとのかかわりを追ったものだった。モディリアーニはハンサムだし、ジャンヌは美人だし(二人の年の差は14歳くらい)、ジャンヌはモディリアーニの病死の二週間後に飛び降り自殺してしまうし、昼メロのように、めろめろなのであります。まさに、メインターゲットの客層となる、有閑マダムを狙い打ちにした展覧会なのである。

 私は、モディリアーニが眼を灰色に塗り潰した絵ばかり描くので、あまり好きではなかったのだが、ジャンヌの絵の何点かはちゃんと黒目のところも描いて、明るい絵も少なくなく、彼を見直した感を得た。しかし、それ以上に面白かったのは、若くして自殺し、美術史には名を残さなかった画家であるジャンヌ・エビュテルヌの作品である。モディリアーニに影響されながらも、彼女は彼女の画風を確立している。特にモディリアーニが全く手を出さなかった風景画や静物画で、なかなか良い絵を残しているのだ。もったいない人を失くしたんだなあとしみじみ思うのである。残念ながら、会場で売っていたポストカードにはジャンヌの風景画や静物画はなかったのだけど。

 二人の画家の絵と、彼らの手紙や写真だけが展示されている展覧会なので、見ごたえには多少劣るが、なかなか面白い美術展だった。しかし、Bunkamuraで行われる展覧会の2回に1回以上が僕の興味を引くものなので、私の感性は有閑マダムなみか…と思ってしまう(失礼)。展覧会は今週の日曜6月3日までなので、興味をもたれた方はお急ぎを。午前中に行けば、そこまで混まぬはず。

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東京国立近代美術館『靉光展』『リアルのためのフィクション』『近代日本の美術』

2007-05-18 | 展覧会
 東京国立近代美術館に『生誕100年 靉光展』『リアルのためのフィクション』『所蔵作品展 近代日本の美術』を観にいってきた。

 靉光(あいみつ)は戦前の画家で日本のシュールレアリズム画家(といってもそれ以外の作風の絵もたくさん書いているが)である。以前この美術館に来たときに、代表作の『眼のある風景』が展示されていて興味をもったのである。この絵は、赤い肉の塊のようなものから、ギョロリと眼が出ているという一見凄惨な感じのする絵だが、よく観るとそれほどグロい感じはしない。シュールレアリズム的と言われる作品の多くは、一見凄惨なのだが、どこかしらユーモラスで他に類を見ない独特の存在感を放っていると思う。それに、重ね塗りや一度塗った絵の具を剥がすことによって生じた、絵のモザイクじみた質感もかなり独特。受け入れられない人もいるかと思うが、なかなかよい感じなのである。
 他にも、いろいろな種類の絵を描いていて中にはほとんど日本画というものもある。そんな中で私が特に気に入ったのは、山茶花の絵。ほとんどの場合植物の静物画は艶っぽく描かれるのが常であるが、この山茶花の絵は艶がなく、かといって日本画のようでもなく、独特のしみじみとした風情を漂わせている。この絵を見つけただけでも今日の収穫はあったというもの。残念ながら、この絵は絵葉書になっていなかったのではあるが。

 『リアルのためのフィクション』は、国内外の現代美術家の作品をいくつか集めた小さな展覧会だったが、ちょっと面白かった。情報化や冷戦の終結によって見えにくくなったリアルを、フィクションを通すことで逆説的に浮き彫りにする、とかいう解説があったが、東浩紀流に言えば、美術の解釈の可能性の過剰ゆえの解釈の不可能性みたいな話かもしれないと思いもした。

 『所蔵作品展 近代日本の美術』は、以前来たときに観た気のする絵も多かったが、それでもさすがに豪華なもので、クレーの作品が並んでいたり、藤田嗣治の『五人の女』(だっけ?』とかいう作品が並んでいてみごたえがった。また私のような素人では知らないような名前の人の作品にもいのが結構あった。中でも気に入ったのは、杉浦邦恵という写真家(?)の植物を何かの効果を使いながら白黒写真で撮ったもの。なかなか様式美に溢れた作品と感じた。

 というわけで、なかなか良い美術展だったと思う。しかも今日は『所蔵作品展』の観覧が無料だったのに、上野の美術館ほど混まなかったので、落ち着いて観られたという、なおさら充実した鑑賞時間だった。これらの展覧会は来週27日(日)までなので、興味のある方はお早めに。

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5月の美術展

2007-05-06 | 展覧会
<上野>
・東京国立博物館
『レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像』
 ~6月17日(日)
『拓本の世界 槐安居(かいあんきょ)中国碑帖コレクション』
 ~7月1日(日)

・国立西洋美術館
『平成14-18年度新収蔵版画作品展』
 ~6月3日(日)

・東京都美術館
『サンクトペテルブルク国立ロシア美術館展 ロシア絵画の神髄』
 ~7月8日(日)

・東京藝術大学大学美術館
『油画の具』
 ~5月20日(日)
『パリへ―洋画家たち百年の夢~黒田清輝、藤島武二、藤田嗣治から現代まで~』
 ~6月10日(日)
『新入生歓迎・春の名品選』
 ~6月10日(日)

・上野の森美術館
『アートで候 会田誠 山口晃 展』
 ~6月19日(火)

<東京>
・ブリヂストン美術館
『印象派から現代まで 第二期』
 ~7月16日(月)
 会期が延長。ピカソや藤田など新たに13点を追加展示

<竹橋・九段下>
・東京国立近代美術館
『所蔵作品展 近代日本の美術』
 ~5月27日(日)
『リアルのためのフィクション』
 ~5月27日(日)
『生誕100年 靉光展』
 ~5月27日(日)
『青磁を極める―岡部嶺男展』
 ~5月20日(日)
『人間国宝・巨匠コーナー』
 ~5月20日(日)

<六本木>
・国立新美術館
『大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産』
 ~7月2日(月)

・森美術館
『ル・コルビュジエ:建築とアート、その創造の軌跡』
 5月26日(土)~9月24日(月・祝)

・サントリー美術館
『日本を祝う』
 ~6月3日(日)


<渋谷・青山・恵比寿>
・Bunkamura ザ・ミュージアム
『モディリアーニと妻ジャンヌの物語展~運命のアーティスト・カップル~』
 ~6月3日(日)

・青山ユニマット美術館
『アンドリュー・ワイエス展』
 ~10月2日(火)

・東京都写真美術館
『天野尚写真展』
 ~5月20日(日)

<清澄白川>
・東京都現代美術館
『マルレーネ・デュマス―ブロークン・ホワイト』
 ~7月1日(日)
『タイ王国現代美術展 Show Me Thai』
 ~5月20日(日)
『明日の神話』
 4月27日(金)~

<世田谷・用賀>
『世田谷時代1946―1954の岡本太郎 戦後復興期の再出発と同時代人たちとの交流』
 ~5月27日(日)
『絵画が語る 1945±15』
 平成19年度第1期収蔵品展
 ~8月2日(木)

 5月の美術展のリストです。前回から、東京藝術大学大学美術館(長いよ)と世田谷美術館を追加。5月は4月にはじまった美術展が続いているのが多く、あまり目新しいのない。
 かくいう私は、忙しい、というわけではないのだが、就活など精神的なプレッシャーになることが多くて、あまり美術館にいけず。ブリジストン美術館とか国立新美術館とか観たい美術展が多いのだが、早くいかないと混むなあ。ちょっと有名な美術展なら会期終了間近はかなり混むので注意してください。

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東京都美術館『オルセー美術館 19世紀 芸術家たちの楽園』

2007-04-05 | 展覧会
 東京都美術館の『オルセー美術館展 19世紀 芸術家たちの楽園』(~4月8日(日))を見てきた。オルセー美術館とは、ルーヴル美術館と並ぶパリの代表的な美術館で、その所蔵作品も名品の多いところ。

 19世紀ということで、印象派の作品が多い。モネの作品も多いが、代表的な『睡蓮』シリーズではなく、モネにしては珍しい室内画や、ルーアン大聖堂を描いた作品などが置いてある。あとは、セザンヌやゴッホなど、そうそうたる画家たちの作品が並べられている。それ以上に、並べられた作品に「ハズレ」がないのが、すごい。個人的には、ミレーの『グレヴィルの教会』やバルトロメの『温室の中で』あたりの作品が気に入った。

 東京都美術館は立て替えだか改装の予定があるほど古い美術館で、内装も割りと無骨なのだが、私は結構好きなのですね。というのは、各部屋の作りが展示しやすく出来ていて、人が多くても割りとダマになりにくく歩きやすい。それに展示室全体が暗いなかで抑え目のスポットライトを作品に当てる具合が絶妙。若い美術館だと額のガラスの反射が露骨に見えてしまうことがよくあるけれど、この美術館にはそういうことがない。まあ、狭い階段を上がったりという複雑な造りの会場ではあるが、ご愛想だろう。改装するにしても、最近はやりのやたらと明るい美術館にするのではなくて、こういった渋い良さを残して欲しいところだ。

 あと、今日は会期の最終週ということで、かなり混んでいた。入場前に入場制限があったりしたし。こんな展覧会のレビューを書くならもっと早く行って書くべきなのだが、結構上野まで行くのって構えがいるので延ばし延ばしになってしまう。会期の早いうちの方が人が少なくゆっくりと見られるので、改善したいところである。

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東京国立博物館『レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像』

2007-04-03 | 展覧会
 東京国立博物館『レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像』を観てきた。今日は雨で、午後10時過ぎに行ってきたのだが、人の入りはなかなか。

 会場は第一セクションと第二セクションの二つに分かれていて、第一セクションは『受胎告知』という絵だけが飾られている。入り口には、金属探知機があり、しかも自分で鞄の口を開けての荷物チェックがあり、展覧会としての警備体制は格別。『受胎告知』は大きな部屋に一つだけ飾られており、蛇腹状に区切られ、段差のついた通路を、ゆっくり止まらず歩きながら絵を見ることになる。僕は下手の横好きを無理やり広げた感じの美術好きだが、この絵には特に感銘を受けることはなかった。服のひだの描写が肉感的だったりと、見るべきところはあるのだが、聖母マリアと天使ガブリエルが向かい合っている姿を、真横のパースから見る感じなので、平板な印象を受ける。また、構図が整い過ぎて、画面全体から冷た印象も受ける。後の解説では、この絵はダ・ヴィンチがだいたい20歳くらいで描いた、事実上の処女作らしい。勝手な推測だが、ダ・ヴィンチはこの絵の平板さを払拭するために、『最後の晩餐』など、徹底的に遠近法にこだわった技法を求めたのではないかと思った。まあ、もちろん名画としてのオーラはあるのだけど。
 第二セクションは、ダ・ヴィンチの経歴から始め、「万能の天才」と呼ばれるダ・ヴィンチの研究を様々な分野から紹介している。ダ・ヴィンチの絵のデジタル・コピーや、発明品の復元(人力飛行機やライオンのカラクリなど)、手稿などが展示されている。また特徴的なのは、やたらと説明文が多かったり、会場の方々に液晶テレビが置かれ、そこにダ・ヴィンチの研究についての説明が移されている点。これによって、難しいところもあるダ・ヴィンチの研究を効果的に説明することができていたが、一方で鑑賞者の足がそこで止まり、列をせき止めてしまうという弊害もあった。けれど、境界横断的な作品の多い現代美術の展示方法として、こういった方法は応用して参考に出来るのではないかと思う。美術展というよりは、科学展に近い装いだったが、個人的には好奇心をくすぐられ、勉強になっておもしろかった。しかし、人が多いし、展示の仕方が洗練されていないため、ところどころで列がだまになってしまい鑑賞しづらく、私はちゃんと鑑賞するのを早々に諦め、あとで図録(\2000)を買い求め、そちらを見ることにした。ダ・ヴィンチの書いたオリジナルのものは、『受胎告知』と手稿ぐらいなので、他はコピーが見られれば十分なのである。

 とまあ、面白い展覧会であったと思う。残念なのは、あわせて開かれていた『春の庭園開放』が雨のせいで中止になっていた点。また、春休みのせいで子供が多く、展示を集中して鑑賞できる環境になかったことである。たぶん、4月中旬の平日開館直後くらいに行くのがベスト・タイミングだろう。それでも結構大変な展覧会なので、構えて観にいっていただきたい。

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4月の美術展

2007-04-02 | 展覧会
<上野>
・東京国立博物館
『春の庭園開放』
 ~4月15日(日)
『レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像』
 ~6月17日(日)
『拓本の世界 槐安居(かいあんきょ)中国碑帖コレクション』
 ~7月1日(日)

・国立西洋美術館
『イタリア・ルネサンスの版画~ルネサンス美術を広めたニュー・メディア~』
 ~5月6日(日)
『平成14-18年度新収蔵版画作品展』
 ~6月3日(日)

・東京都美術館
『オルセー美術館展』
 ~4月8日(日)
『サンクトペテルブルク国立ロシア美術館展 ロシア絵画の神髄』
 4月28(日)~7月8日(日)

・上野の森美術館
『第35回 写実画壇展』
 4月1日(日)~4月7日(日)
『國井誠海賞 10周年記念』
 4月3日(火)~4月9日(日)
『第25回 上野の森美術館大賞展』
 4月17日(火)~4月26日(木)

<東京>
・ブリヂストン美術館
『印象派から現代まで 第二期』
 4月10日(火)~7月16日(月)
 会期が延長された。ただし、ピカソや藤田など新たに13点を追加展示

<竹橋・九段下>
・東京国立近代美術館
『所蔵作品展 近代日本の美術』
 ~5月27日(日)
『リアルのためのフィクション』
 ~5月27日(日)
『生誕100年 靉光展』
 ~5月27日(日)
『青磁を極める―岡部嶺男展』
 ~5月20日(日)
『人間国宝・巨匠コーナー』
 ~5月20日(日)

<六本木>
・国立新美術館(今年1月開館)
『異邦人たちのパリ1900―2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』
 ~5月7日(月)
『大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産』
 4月7日(土)~7月2日(月)

・森美術館
『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』
 ~5月6日(日)
『日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで』
 ~5月6日(日)

・サントリー美術館
『日本を祝う』
 ~6月3日(日)


<渋谷・青山・恵比寿>
・Bunkamura ザ・ミュージアム
『モディリアーニと妻ジャンヌの物語展~運命のアーティスト・カップル~』
 4月7日(土)~6月3日(日)

・青山ユニマット美術館
『アンドリュー・ワイエス展』
 ~10月2日(火)

・東京都写真美術館
『APAアワード2007』
 ~4月15日(日)
『”TOKYO”マグナムが撮った東京』
 ~5月6日(日)
『夜明け前 知られざる日本写真開拓史Ⅰ 関東編』
 ~5月6日(日)
『パラダイス・ナウ』
 ~4月27日(日)


<清澄白川>
・東京都現代美術館
『マルレーネ・デュマス―ブロークン・ホワイト』
 4月14日(土)~7月1日(日)
『タイ王国現代美術展 Show Me Thai』
 4月18日(水)~5月20日(日)
『明日の神話』
 4月27日(金)~

 懸案だったリストの見やすさをどうにかするため、地域別に美術館を分けて表示。リストの並びを、美術館ごとから地域ごとに変換しただけだが、それでもかなり改善。地域は上野から始まり、だいたい都心から周辺へと並べている。
 やはり印象派バカとしては、期待するのは国立新美術館の『大回顧展 モネ』。至福の時が過ごせるのではないかと思う。けどま、人は多いだろうが。
 明日は国立博物館にダ・ヴィンチの『受胎告知』を見に行く予定。雨でかつ開館前に行くが、果たして人の混みようは…。

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国立新美術館『異邦人(エトランジュ)たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』

2007-03-19 | 展覧会
 国立新美術館の『異邦人(エトランジュ)たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』を観てきた。前回は乃木坂駅から行ったのだが、今回は六本木駅から行った…ところ迷いに迷い、一時間も六本木ヒルズの周りをぐるりと回ってしまったのである。

 僕はあまり国立新美術館は好きではない(というのは、これまでの国立新美術館関係の記事を読んで欲しい)のだが、これはなかなか良い展覧会だった。とりあえず、作品が観て回りやすいよう配置されているのだが、地味にありがたい。作品をうまく配置しないことには、人の流れが滞り、あまり快適な鑑賞時間を過ごせないがゆえ。客層は、結構物見遊山な感じで観にきている感じでもあるが。

 並んでいる絵は結構ゴージャス。タイトルの通りというべきか、いわゆる「エコール・ド・パリ」の作家が揃っており、ピカソやレオナール・フジタなんかも普通にある。僕が特に気に入ったのは、マルク・シャガールの『エッフェル塔の新郎新婦』とヴァシリー・カンディンスキーの『相互和音』、ジョアン・ミロの『絵画』あたりである。この辺の名の通っているがはさすがに、の一言であるが、比較的最近の作品である心理学的な錯視を利用した絵や、キャンバスの上に立体を乗せたような絵(?)も面白かった。ほかにもグロテスクなのも含めて、インパクトのある絵画が多数。僕の中では国立新美術館の株をあげるほどの良い展覧会だったと思う。

 ついでといっては何であるが、黒川紀章展をまだやっていたので、都知事選もあることだし、さらっともう一度見てきた。けど。うーん微妙。国立新美術館のデザインはすごいと思うし、他に展示されている黒川氏の作品もやはりすごいのだが、あいさつのところで哲学者たちの名前を羅列し「フーコーのうんたらはおそらくニーチェの思想に影響を受けているのだろう」とか言われると、内心で「知ったか!」って突っ込んでしまう。そんなのは、ポストモダン哲学をかじったことのある人にとってはあたりまえもいいとこだが。他にも、デリダやアルチュセールなどの名前を列挙しているが、どうも身についていない知識をひけらかしているようなくささがある。まあ、僕が言えることでもないけれど。あと黒川氏の建築の写真が大きく展示されているのと一緒に、黒川氏のコメントが縦書きで大きく書かれているのだが、自分の作った建築を壊して他の建築家が新しくその場所に建築し直そうという計画に対して「本気か!」とコメントを書くあたり、ユーモアのセンスに恵まれているような気がなきにしもあらず。なぜか「!」の多いコメントなのである。出口には、はかま姿で刀をもった黒川氏の写真が飾られているあたり、やはりユーモアなのだろう。よくわからないところもあるけど、結構面白い人なのか!

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ブリヂストン美術館『じっと見る 印象派から現代まで』

2007-03-15 | 展覧会
 ブリヂストン美術館の『じっと見る 印象派から現代まで』(~4/8)を見てきた。…ここは天国ですか?

 ブリヂストン美術館にははじめていったのだが、すばらしいところだった。東京駅から7分くらいビル街の中にある。美術館の作りはNYの美術館などに似ていて、小さな部屋が並んでいて、その四方に飾られた絵を観ていく感じ。ちなみに、美術館自体はこの間開館したばかりの国立新美術館を除いて一番綺麗だし、豪華。絵を見張っているのも学芸員ではなくて警備員。そして、入館料大学(院)生500円。
 しかも飾っている絵も豪華なのですね。最近ハマっているモーリス・ユトリロとか、モネの睡蓮、ルノワールの少女、ラウル・デュフィの『オーケストラ』とか良い感じの絵が並んでいる。ピカソとかゴーガン(ゴーギャンはあったっけ?)とかマティスとかミレーとかシスレーとか、まあとにかく印象派以降の有名な画家の絵は一枚くらいはある。あとなぜかエジプトとかメソポタミアとかの彫刻もある。いやあ、美術好きならいってみるべき。

 でまあ、僕はオタク関係のサブカルチャーと文学とか美術とかのハイカルチャーのどちらも好きなのだが、どうしてそれらが両立できるのかということを、帰りながら考えてみたのである。そうしたらこんな考えが。オタクは娯楽で文学・美術は至福なのですね。つまり前者が生活に活気を与えるものなら、後者は生活に安らぎを与えるもの。両者は別の役割であり楽しみ。また、映画や音楽などはその間の領域にある。とまあ、こんな具合なのである。思いついてみてこれはありかなと思った。まあ人間、適度に賢く、適度にバカに生きていたいもんである。

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3月の美術館

2007-03-09 | 展覧会
・東京国立近代美術館
『横山大観《生々流転》』後期
 ~3月4日(日)
『柳宗理―生活のなかのデザイン』
 ~3月4日(日)
『都路華香展』
 ~3月4日(日)
『所蔵作品展 近代日本の美術』
 3月10日(土)~5月27日(日)
『リアルのためのフィクション』
 3月10日(日)~5月27日(日)
『生誕100年 靉光展』

・国立西洋美術館
『イタリア・ルネサンスの版画~ルネサンス美術を広めたニュー・メディア~』
 3月6日(火)~5月6日(日)

・東京都美術館
『オルセー美術館展』
 ~4月8日(日)

・東京都現代美術館
『中村宏 図画事件1953-2007』
 ~4月1日(日)
『闇の中で in the darkness』
 ~4月1日(日)
『等身大の約束』
 ~4月1日(日)
『中国現代美術界の新世代 チウ・アンション展)
 ~4月1日(日)

・国立新美術館(今年1月開館)
『20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語―』
 ~3月19日(月)
『黒川紀章展―機械の時代から生命の時代へ』
 ~3月19日(月)
『異邦人たちのパリ1900―2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』
 ~5月7日(月)

・森美術館
『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』
 ~5月6日(日)
『日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで』
 ~5月6日(日)

・上野の森美術館
『'07奎星俊英作家展』
 ~3月12日(月)
『上野の森アートスクール講師展「SINCE 2007」』
 ~3月11日(日)

・Bunkamura ザ・ミュージアム
『プリンセスの輝き ティアラ展』
 ~3月18日(日)

・ブリジストン美術館
『印象派から現代まで』
 ~4月8日(日)

・サントリー美術館
『日本を祝う』
 3月30日(金)~6月3日(日)

・青山ユニマット美術館
『ミレー、コローとクールベ展』
 ~3月18日(日)
『アンドリュー・ワイエス展』
 3月20日(火)~10月2日(火)

・東京都写真美術館
『”TOKYO”マグナムが撮った東京』
 3月10日~5月6日(日)
『夜明け前 知られざる日本写真開拓史Ⅰ 関東編』
 3月10日(土)~5月6日(日)
『上野彦馬展』
 3月10日(土)~3月18日(日)
『パラダイス・ナウ』
 3月10日(土)~4月27日(日)

 ちょっと遅れましたが(本当は月の第一土日くらい予定)、3月の美術展です。かくいう私は、バイトと就活とその他いろいろで、最近1ヶ月に行った美術展が青山ユニマット美術館の『ミレー、コロー、クールベ展』だけ(涙)。雰囲気の良い展覧会だったけど、パンチが足りない。私的には常設展示のユトリロの風景画がかなりツボ。
 しかし3月は現代作家の作品が多いですな。私は美術については、かなり保守的なオーソドックス志向/嗜好なので、難しいところ。もうちょっと見る目を鍛えないとなあ。
 あとこのエントリーは、メモ書き的なものなのに、順番が結構バラバラなので見にくい。一応メジャーな美術館→マイナーな美術館、公立美術館→私立美術館というくらいの並べ方をしているけれどイマイチ。こちらは次回のエントリーまでにどうにかしたい。

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青山ユニマット美術館『ミレー、コローとクールベ展』

2007-02-27 | 展覧会
 青山ユニマット美術館に『ミレー、コローとクールベ展』を見に行ってきた。というのも、朝から日本で二番手の広告代理店の筆記試験があって、その帰りに渋谷のビックコンタクトでコンタクトレンズを買い、その後に青山まで歩いていって見たという次第なのである。

 『ミレー…展』と言っても、青山ユニマット美術館自体割と小さな美術館であることもあって、小さな美術展だった。青山ユニマット美術観の展覧スペースはビルの2、3、4階にあって、一度4階まで上がってから下りながら絵を見ていくことになるが、『ミレー…展』は2階のみ。20点くらいの展示だろうか。3、4回は常設展示らしいシャガールなどの絵が展示されている。どちらかといえば、『ミレー展』よりもピカソや藤田のある常設展示のほうが豪華な感じもするが、『ミレー展』もなかなか。静かで適度に写実的な絵が並び、私なぞはギュスターヴ・クールベの『シヨン城』が気に入り、絵葉書を買った。常設展ではユトリロという画家の絵が気に入ったが、残念ながらこちらの絵葉書はなかった。

 大通りからちょっとわき道に入ったところにある、大きな画商屋のようなたたずまい(それでも外装内装ともに、新しいだけあってとても綺麗だ)の美術館だが、人もそれほど多くないし、シャガールの幻想的な雰囲気に浸るには良い美術館である。規模が大きくない変わりに、展示されている絵にもつまらないものはなく、解説が充実していて良い美術館。大美術館の広々したスペースはもちろんいいが、こういう美術館はもっとあって良いと思う。
 しかしまあ、今でこそ平日の昼間に美術館を見に行っていられるけど、就職したらなあ、という憂鬱はぬぐえない。まあ、有給でもとって見に行くかなあ。

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2月の美術展

2007-02-04 | 展覧会
・国立近代美術館
『横山大観《生々流転》』後期
 ~3月4日(日)
『柳宗理―生活のなかのデザイン』
 ~3月4日(日)
『都路華香展』
 ~3月4日(日)

・東京都美術館
『オルセー美術館展』
 ~4月8日(日)

・東京都現代美術館
『中村宏 図画事件1953-2007』
 ~4月1日(日)
『闇の中で in the darkness』
 ~4月1日(日)
『等身大の約束』
 ~4月1日(日)
『中国現代美術界の新世代 チウ・アンション展)
 ~4月1日(日)

・国立新美術館(今年1月開館)
『20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語―』
 ~3月19日(月)
『黒川紀章展―機械の時代から生命の時代へ』
 ~3月19日(月)
『異邦人たちのパリ1900―2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』
 2月7日(水)~5月7日(月)

・森美術館
『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』
 ~5月6日(日)
『日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで』
 ~5月6日(日)

・ブリジストン美術館
『印象派から現代まで』
 ~4月8日(日)

・青山ユニマット美術館
『ミレー、コローとクールベ展』
 ~3月18日(日)

 筆者は、別に美術関係専門のブログを書いているわけではないので、美術展の詳細、見所などなどの解説は割愛しています。ご了承ください。美術展の全体の傾向は、まあ例によってというか印象派を中心に据えたフランスとその周辺のものが多くなっています。個人的には、初めて行った時の印象の悪かった国立新美術館(このブログに以前書いた1月24日のコメントを参照)が、『異邦人たちのパリ』展でどれだけ持ち直すかが、気になるところ。

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国立新美術館をあえて、斬る。『文化庁メディア芸術祭10周年企画展「日本の表現力」』

2007-01-24 | 展覧会
 前に一つ国立新美術館についてコメントを書いたが、こちらはテーマが多少変わってくるので、また別に項をしつらえたい。前のを見てもらえばわかるとおり、私は国立新美術館について、ある程度評価しながらも批判的な態度をとることになった。もともと期待していたのだが、ある意味で期待を上回り、ある意味でそれゆえに方向が間違っていると感じるのである。まあ、新設ほやほやの美術館だし、そこまで言うほどじゃないんじゃないの、と思われる方もいるかもしれないが、どうか、これだけは言わせてほしい。

 国立新美術館の開館三本企画展の最後の一つ、『文化庁メディア芸術祭10周年企画展「日本の表現力」』であるが、これは平成9年から文化庁がアニメやマンガをメディア芸術と位置づけそれを奨励していくというプログラムの10周年企画展、てまあそのまんまである。
 ただこの『日本の表現力』展の凄いところは、土偶や鳥獣戯画やカラクリ人形から展示が始まるのである。なんでも鳥獣戯画がマンガのの先祖、カラクリ人形がロボットアニメに出てくるロボットの先祖、ということらしい。さすがにこれはない。東浩紀氏が『動物化するポストモダン』の中で、『セイバーマリオネットJ』を例にとり、太平洋戦争の敗戦で、日本の文化(特にサブカルチャー)は断絶しており、オタクカルチャーに引用されるとしても、それは断絶ゆえの歪んだ反復でしかないとかなんとか書いていたと思うが、この論を持ち出さないまでも、鳥獣戯画とかにオタクカルチャーのルーツを見出すのは難しいだろう。大体だれが、鳥獣戯画的なものを綿々と引き継いでオタクカルチャーまでもってきたというのだろうか。これならまだ、ディズニーの初期のアニメからもってきたほうが説得力があるというものである(現に、手塚治虫はウォルト・ディズニーをマンガの神様と呼んでいたらしい。この辺りの論については、このブログでも以前取り上げた森川嘉一郎氏の『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』を参照のこと)。どうもこの企画展には、日本の経済や文化の潜勢力として見直されている(のか?)オタクカルチャーをお上が領有しようという欲望が見える。オタクのカルチャーを「みんなの」ものにするために「日本の」表現という呼称が使われているというわけだ。けれど、アニメやマンガというオタクカルチャーには、岡田斗司夫氏などの数々のオタク関係の論者がそろって指摘するように(某幼児殺傷事件による、オタクが犯罪予備軍という社会的認知や、オウム真理教がオタク集団だったような)、数々の屈折が存在しているはずなのである。あるいは、押井守が「(学生運動という祭りに)遅れてきた世代」と自らの世代を語るように、なんらかの政治的挫折(押井氏は、その挫折も経験できなかったと語っているのかもしれないが)を経験した人々がサブカルチャーに流入してきたという背景も重要である。それを、世界に認められる日本のオタクカルチャーは、鳥獣戯画の時代から日本独自の文化的風土を継承した豊穣な文化だ、みたいに展示されてはどう見てもおかしい。
 で肝心の展示であるが、1960年代からの著名なマンガが10年代ごとに紹介され、その脇に『ファイナルファンタジーⅠ・Ⅶ.Ⅹ』とかのゲームやメディア芸術賞を受賞したアニメ作品などなどが展示されているわけである。しかしこの展示のラインナップにも問題が。現在に到ってもアニメにおけるCG表現の最高峰の一つの『マクロスプラス』(岡田斗司夫氏も著書に項を割いていたし、海外にもある程度有名な作品だし、重要なアニメだろう)や『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』などの渡辺信一郎関連の作品がないのは手落ちだと思う。さらに、『セイバーマリオネットJ to X』という、(確か)連続アニメとしてははじめてデジタルアニメですべて作った作品がないのも残念。デジタルアニメの普及により、これだけテレビアニメが増えたことを考えれば、セルアニメからデジタルアニメとう技術的変遷についても説明が必要なのではないか。さらに、『HELLSING』が90年代の有名なマンガ(海外での人気がすごいらしい)として展示されているおだが、他の作品はシーンを展示しているのに、『HELLSING』だけはカラー絵だけ。たぶん内容がヤバイからだろう。あと、オタクカルチャーとしてはもはや無視できないエロゲーおよびギャルゲーについて、まったく取り上げられていない。『Air』のアニメ版などは、メディア芸術賞を受賞していいはずなのに、まったく触れられていない。この辺りにオタクカルチャーを「日本の表現・文化」として、清潔なものとして提示しようという「配慮」が露骨に透けて見える。うがってみれば、去年の『かみちゅ!』の受賞などは(オーディオコメンタリーで、監督の落合氏と脚本家の倉田氏が受賞に驚いていた)、社会的に認知された「萌え」(『かみちゅ!』の放映と「萌え」の流行語大賞が両方とも2005年)を文化庁が射程内に入れるための、安全な布石(というのも、萌えはギャルゲー・エロゲーとそのアニメあたりに顕著だから)と思えてくる(もっとも『かみちゅ!』は確かに良質な傑作アニメで、80年代、尾道の雰囲気をある程度再現し、八百万の神を設定に取り入れたあたりなどは、評価しやすいと思う)と思えてくる。
 というわけで、総評すると文化庁は10年もメディア芸術祭をやっていて、オタクカルチャーのことが何にもわかっていないか、わかっているが万人向けの安全な文化に見せるために割りと綺麗な部分だけ見せているかのどちらかだということだ。だが、サブカルチャーというのは、言葉の通りメインのカルチャーに対する逸脱のはずであったし、実際に迫害されてきたようなものである。しかし今では、『エヴァンゲリオン』でオタクが社会的な勢力として認知され、海外で『GHOST in the SHELL』など日本のアニメが評価されるようになり、オタク関係の市場規模がバカにならないなどの既成事実の積み重ねによって、無視したり排斥できなくなってきた。そこで、お上がオタクカルチャーを「メディア芸術」として領有・指導しようとしているわけである。しかし一方で、青少年の風紀がどうのということで、自民党がエロゲーやエロ同人誌を規制の対象にしようとしているのでもあるが。というわけで、私のような意地悪い人から見れば、政府や官庁、経済界などがオタクカルチャーを都合の良いように利用するため、「メディア芸術」という地位と賞を与え、いい顔をしつつ、一方でエロなどの毒を抜き、万人向けの「サーカス」としてうまく使っていこうという風に見えるのだ。手塚治虫のエロチシズムや宮崎駿のロリコン趣味、富野由悠季のちょっと変態ぽい趣味など、アニメの歴史は如何ながら「エロ」なくしてありえなかったはずなのに…。正直、賞などを作って、社会的な権威を授けるよりも、低賃金で働くアニメーターの労働環境とかをどうにかしてやったほうがよっぽど重要だと思うのだが(アニメーターの労働環境は、手塚治虫が当時新しかったアニメをなんとか作るために、制作費を安くし過ぎたため、割を食って低賃金になってしまったのが今まで続いている。しかも、作品が商業的に成功しても、その分の「ボーナス」が支払われるということもないらしい)。また、『機動戦士ガンダム』の本放送の打ち切りは、通説では視聴率の低迷と考えられているが、実際には視聴率は打ち切りになるほど悪くはなく、経営の傾いたスポンサーのおもちゃ会社の都合というところが大きかったようだ。こういうあたりでも、オタクカルチャーというのは、割を食ってきたと思うのである。
 というわけで、アニメやゲームなどは、一部の商業的でないもの(たとえば、今敏氏監督の作品。実に良い作品を作り続けているが、ペイするかとはまた別である)を除いて「メディア芸術」などは気にせず、今までどおり、経済的なペイと作りたい作品という趣味のシーソーを乗りこなしていくことがまっとうな道だと思う。「メディア芸術」などは、鼻で笑ってやればいい!

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国立新美術館『20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語―』『黒川紀章展』

2007-01-24 | 展覧会
 先週土曜に開館した国立新美術館に行ってきた。この美術館は、もともと公募(美術団体が美術館のスペースを借りて会員の作品の一斉展示をしたりする)のための美術館として計画されたらしいが、その後多少方向性が変わり、ある程度の企画展もするようになった…らしい。日本最大級というだけあって、やたらとデカい美術館である。今日は三つの企画展がなされていて、その一つ『20世紀美術探検』などは、観て回るのに2時間もかかるほどだったが、それでも建物の容量にだいぶ余裕を残している。中は、床が素朴な木製だったり、それほどゴージャスな感じでもなく、形としてはロビーが細長くて東京都立現代美術館と、「1-A」とか「
2-B」とか部屋が割り振られてる幕張メッセとを足して2で割ったような感じみ見える。建物は地下1階を含む3階建てで、各階にコーヒーショップやシェフを置いたレストランがあるなど一息できるスペースがあるのだが、多少やりすぎの感もあり、バブル的な「箱物」美術館のようである。まあ、場所が六本木だから、デートスポットとかの延長で考えているのかもしれない。Wikipediaの「国立新美術館」について批判点なども挙げられているが、この建物を見ると、その批判も故のないものではないなと思う。
 さて、肝心の企画展だが『20世紀美術探検』は先ほど書いたとおり、やたら長くて疲れた。しかも、コンセプチュアルアートとか、観るのに時間がかかるのもちらほら。セザンヌとかピカソの作品もおいてあり、とにかく「モノ」というキーワードでもってこられるものを節操なくとにかくもってきたという感じである。まあ、面白いのもそれなりにあればつっまんねーなものも多い。まあ、目玉作品があるわけでもなく取り立ててお勧めするほどでもない。いろいろあるので、気が向けば行ってみるのも一興、というところか。というか、これだけ大きな展覧会をやって埋めきれない美術館て、こんなに大きな必要あるんかいな。
 一方の『黒川紀章展』であるが、この人はこの美術館の設計をした建築士。正直体力が尽きていてろくに見る気にならなかった。ただこの方、挨拶で2000年もの間綿々と続く(?)西洋哲学の歴史を引いてきて、デカルトを始めとする精神と物質の二元論を基礎とする近代思想が、フーコーやデリダを経て批判されてきて、これは私が40だか50年前からやってきた「機械の時代から生命の時代へという、共生の思想と軌を一にする」とか言っているのだが、ほんとうにあんたわかってるんかいな?と心中でツッコんでしまった。まあ、こういう自分が考えていたことは、実はもっと有名な偉い人たちが考えていたことと同じだった、というのは論文を書くときとかの常套手段ではあるが、いかにもこなれていない。また「機械から生命へ」と言っても、精神/物質の二元論から機械/生命という二元論に移し変えただけで、大したことは言っていないのである。だいたい、生命が機械的だったり、機械が生命的だったりすることもありえるので、そもそもまったくパラダイムシフトをちゃんと宣言しえていないように思える(たとえば、生命を生体機械と捉えていることをうかがえる手塚治虫の『鉄腕アトム』や『ブラックジャック』を見よ。『ブラックジャック』のピノコなどは、人間の不完全なパーツを形から整えて、人工皮膚とかをはりつけて作った人である。ただし、アトムが人間でないことに悩んだり、ブラックジャックが人工心臓を使って手術した患者がすでにブラックジャックの用意したものより精巧な人工心臓を使っていて、結局ブラックジャックは治療できなかったという、生体機械というテーゼを逸脱するエピソードも多分にあるのだが)。
 まあ、美術好きとしては立派な美術館が出来たことを喜びもするのだが、イマイチ中身の詰まっていない「ハコモノ」美術館の感が強い。というか、あの広大な展示スペースを所蔵作品の常設展もなく消化しきるだけの公募展や企画展ができるのだろうか。移動壁などで、レイアウトをかなり自由に取れるみたいだし、下手をしたらそのうち新美術館はコミケみたいな同人誌即売会に使われかねない。ま、それでもいいのだけど。

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東京国立博物館、長谷川等伯『松竹図』「最高の日本画!」

2007-01-23 | 展覧会
 東京国立博物館に行ってきた。というのも大きな目的があったのである。今、東京国立博物館では、「新春企画 博物館に初もうで」や「悠久の美―中国国家博物館名品展」「マーオリ―楽園の神々―」をやっていて、これらもそれなりに面白かったのだが、もっと重要なものがあったのである。ちなみに、「博物館に初もうで」では今年の干支の猪を描いた絵や正月に関係したものが、「悠久の美」では中国古代の青銅器製の品など、「マーオリ」ではニュージーランドの先住民の工芸品、また実際に期間限定で現地の人がマーオリの踊りをおどって、展示していた。あとは、常設展もいろいろあって良かった。けれどもっと重要なものがあったのである。

 その重要なものの元はといえば、何ヶ月か前、東京芸術大学美術館の展覧会を観にいった際の帰り、ミュージアムショップで、屏風絵の縮小複製(とはいっても、現在かなり重要な水墨画家が描いたもので、限定300セット、30万円×2とかだったが)が目に入り、へぇーと目が止まったのだが、そこの売り子(というのか知らんが)のおじいさんが声をかけてきて、その絵のオリジナルのことを教えてくれたのである。その屏風に描かれた水墨画は安土桃山時代の長谷川等伯という画家の『松林図』というもので、国宝で日本最高の画だということだった。私は、あまり日本画は得意ではないのだが、さすがに日本最高と聞いたら観たくなり、どこにあるのでしょうと聞いたら、1月の始め頃に東京国立博物館に展示されるとのこと。これは大々的に企画展としてやったら大変なことになるので、常設展の一つとして期間限定で公開しているとのことである。そのおじいさんとは、30分ほどか、現代の美術の複製技術のことだかを聞いて別れたのであるが、メモは忘れなかった。
 そんなわけで、おじいさんの言うとおり、今日『松林図』を観にいったらあったのである(おじいさん、ありがとう!)。この水墨画は、屏風二つに描かれ1セット。画の片割れはWikipediaの「長谷川等伯」の項に載せられているので、そちらを参照。画の脇に解説文があるのだが、国宝とは言え、「近世水墨画の最高傑作」とか「究極」とか「超絶技巧(ピアノか!)」とかいう、普通はあり得ないほどの評価が書かれていて驚いた。普通、美術の解説文など、無難に褒めつつ褒めすぎない、というものであるが、この画はとにかく「究極」なのである。画は白地に黒墨一色で松林を描いたものであるが、薄く墨がひかれ霧にけぶる様子を絶妙に表している。この画も、下書きかもしれないとか、本来の並べ方と違うかもしれないとか、諸説あるのだが、そんなところもミステリアスである。洋画の印象派好きの私の対極にある絵だが、それでも伝わってくる画であった。
 というわけで、私は今ご満悦である(自己満足くさい物言いだが)。普通に美術館に企画展を観にいくのとは、また違った経験ができたのである。この「松竹図」は1月28日(日)までしか展示されず、次の展示は下手をすると数年後とかになってしまうので、気になる方は是非行ってほしい。

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