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筒井康隆原作、今敏監督『パプリカ』を見た。今敏監督と言えば、現実と虚構の入り交じった映画を作り続けている人だから、夢が現実を浸食する『パプリカ』はまさにうってつけの題材である。まあ僕も初監督作の『パーフェクトブルー』からファンなので、映画公開当時には劇場に観に行こうかと思っていたのだが、当時映画観に行くのもめんどくさくなって、しかも林原めぐみが怖くて観に行かなかったのである。
ちなみに『パプリカ』は1時間半の映画のために、小説の設定をかなり簡略化して話を作っている。そのことによる話の分かりにくさは特にない。実は小説版もだいぶ前に読んでいるのだが、僕は夢がインフレして現実を浸食していくシーンで、実際にはあり得ないことが起こっているのが納得できなかった。
精神医療の研究の進展の中で、時田という天才エンジニアにより、カウンセラーがクライアントの夢を見ることの出来る装置が開発された。千葉敦子はまだ開発中のこの装置を使い、パプリカというもう一つの人格で独自に精神療法を行っていた。しかし、ある日時田の油断で三つの装置が盗まれ、悪用されてしまう。アクセス制限をつけられず暴走する装置により、夢はやがて現実を浸食していく。
まあ、まずは声優がすごい。林原めぐみ、大塚明夫、山寺宏一、古谷徹、なぜか江守徹(『東京ゴッドファーザー』にも出ていた)とすごいメンバーがそろっている。古谷さんなんか、オタク的キャラクターを演じていることもあり、ほとんどアムロ。それで、「ヒムロヒムロ」と同僚の名を言うのだから、笑える。林原めぐみの一人二役は、さすがと言ったところか。ただ、林原さんはもはや声優の演技を評価される側ではなく、評価する側に回ってしまっていることから、出てきてもあんまり嬉しくないんだよなあ。
話は分かたれた人格の統合や、恋愛話、権力話、妄想話といろいろ魅力がある。でもシナリオで特に良かったのは、精神病のナンセンスな言語を再現した言葉使い。作中で、夢に感染した人々が、ナンセンスな言葉を連呼し、異様さを際だたせるのだが、そのセンスが最高。原作にも同様のシーンがあったが、それをそのまま持ってきたのだろうか。
映像もさすが今敏監督でこっており、原作で納得しにくかったところも、映像の力でうまく通していたと思う。
総合的に見れば実に良くできているのだが、これまで今敏監督の映画を観てきた人からすると、期待したほどのサプライズはないかもしれない。さて、次回作で今敏監督は何をやってくれるだろうか。