車輪を再発見する人のブログ

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相関関係が理解できない人たち

2009年03月02日 | 論理

湯浅誠氏が『反貧困「すべり台社会」からの脱出』で自己責任論に反対していることは知っている人も結構いるかも知れない。湯浅氏がそのように主張しているのは、そのような立場を取っているということではなく、そもそも自己責任論が単なる論理的誤謬に過ぎないというのがある。

相関関係というものがある。二つの要因がどのような関係にあるのかを表すものだが、同時に起こりやすかったり、片方が増えるともう一方も増えると正の相関、逆に同時には発生しにくかったり、片方が増えるともう一方は減りやすいなら負の相関があるという。最大で1の正の相関から-1の負の相関まである。相関関係は確率的にそのような関係が起こりやすいかどうかを考えるので0,8くらいの結構強めの正の相関があったとしてもすべての場合で片方が増えるともう一方が増えるということが保障されるわけではない。ただ、その確率が高くなるというだけの話だ。

話を戻して、現在の日本においては正社員かどうかという身分が所得や雇用の安定に非常に大きな要因となっている。相関関係で言えば、大きな正の相関があるといえる。大きな正の相関があると言うことは、正社員は優遇されているということであり、それが逆に差別的で多くの人が排除されているということである。だから、これを解消しようというのが私もここでよく述べている主張だ。

そういうと、自己責任論を唱える人が非正社員にも責任がある、努力も問題だと言い出す。努力が所得や雇用に影響を与えるかといったらまさにその通りだ。しかし問題は、正社員が優遇されすぎており、その地位だけで多くの所得を得ているという強い相関関係は現実であるということだ。この反論は、相関関係が1ではないことを指摘して反論しているが、1ではなくても大きな相関関係があることは明らかなことなのだ。

さらに大きな問題は、自己責任論を唱える人たちは、非正規労働者が怠けているからこのような事態に陥ったのだというほとんどまったくの嘘を言い出すことである。努力も関係しているかもしれない、しかし正社員という地位と所得水準に大きな相関関係がある限り、非正社員は努力に対して少ない所得しか得られないことは自明のことである。それを、努力も関係しているというところから、論理飛躍して努力していないから所得が低く失業しているという事実とは逆の主張をするから話がややこしくなる。

これは、19世紀において欧米人がアジア人やアフリカ人は、浜辺で寝そべって遊んでばかりでちゃんと働こうとしないから経済が停滞しているんだという完全な嘘と同じように、事実に基づかない空想の世界である。このような現実があるために、湯浅氏はそのような主張に強く反対しているのではないだろうか。

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