緊急事態宣言が解除されたときの「要請」とは何か
1 大阪府の事例
5月21日、政府の対策本部が開催され、大阪、京都、兵庫の2府1県における緊急事態宣言の解除が決定された。それに伴い、大阪府は、対策本部で、次のような内容を決定し、発表された。
① 飲食店はこれまで営業時間が午前5時から午後10時まで、酒類の提供は午後9時までとなっていたが、これら制限が解除となり全面的に営業可能となる。
② 全国でクラスターが発生したカラオケ店やライブハウスなどの施設に関しては休業要請が継続。しかし、クラスター発生の施設区分のうち大規模施設、集会・展示施設、文教施設とクラスター発生施設の類似施設は休業解除になる。
③ イベントは全国の緊急事態宣言終了日まで規模を縮小した開催が可能に。ただし、屋内イベントは100人以下かつ定員の半分以下の参加人数に、屋外イベントは200人以下かつ人との距離を十分に確保することが協力要請される。
④ 全国的な大規模イベントは、29日以降に要請が見直される方針。これに対し吉村洋文知事は、「政府は25日に宣言を解除するか判断するとのこと。それを踏まえて29日までにこの要請を見直したい」と方針を語った。
⑤ 府民に対する外出について、「これからは外出をしていただいて結構です。ただ、外出の仕方をぜひ気を付けていただきたい。マスクを着ける、距離をとる、3密を避けるなど、ウイルスの特徴を捉えながら感染症対策をとりつつ外出してほしい」と訴えた吉村知事。
2 「要請」の法的根拠
ここで注目したいのは、それまで出されていた自粛要請とは何だったのかということである。すでに述べたことであるが、新型コロナ特措法に基づく「要請」には、二種類のものがある。その一つは、法24条9項に基づくもので、「当該都道府県の区域に係る新型コロナ対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき」に行われる「その区域に係る新型コロナ対策の実施に関し必要な協力の要請」であり、もう一つは、法45条1項を根拠にしたもので、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」には、「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型コロナの感染の防止に必要な協力の要請」である。
今までは、緊急事態宣言下での要請なので、基本的には、後者の要請と理解するのが通常であろう。しかし、これらの要請に際して、その法的根拠が示されてはいない。したがって、どちらを根拠にしているかは不明である。
ところが、今回、緊急事態宣言が解除されたので、もはや法45条に基づく緊急事態措置をとることはできない。したがって、今回大阪府の対策本部で決定された事項は、法24条9項に基づくものと理解することができる。
しかし、大阪府民にそのことが理解されているのであろうか。文書の中に、小さく括弧の中で、特措法24条9項と書かれているだけである。これでは、府民に対する十分な説明とはなっていない。
大阪府は、今回の要請は、法24条9項に基づくものであり、緩やかなものである旨を徹底すべきである。事情を知らない府民は、従来からの延長と映っているのであろう。そのためには、24条9項を説明する必要がある。それをしなければ、基本的には変化がないと思うであろう。
しかし、緊急事態宣言下か否かにより、事態は変わったのである。そこでの要請は、「新型コロナ対策の実施に関し必要な協力の要請」であることを明らかにしなければならない。誤解している府民の立場を利用し、「従来と同等の要請を行っている」と誤信させてはならない。
3 法的根拠なき協力要請
さて、大阪府といえば、パチンコ店。今回は、どのように扱われているのであろうか。
そこでは、「特措法によらず感染防止対策の協力を要請する施設」が取り上げられ、パチンコ店やカラオケ店が入っている。
今まであれほどまでに騒いでいたパチンコ店について、特措法の根拠もなしに協力要請するというのだ。これが法律家の行う仕事なのか。こんな要請なら、協力する人はどれくらいいるのであろうか。特に、今までの協力で不況になっている事業主や学習塾等は、即座にも開校したいところであろう。こんな要請なら、しない方が良いのではないか。
1 大阪府の事例
5月21日、政府の対策本部が開催され、大阪、京都、兵庫の2府1県における緊急事態宣言の解除が決定された。それに伴い、大阪府は、対策本部で、次のような内容を決定し、発表された。
① 飲食店はこれまで営業時間が午前5時から午後10時まで、酒類の提供は午後9時までとなっていたが、これら制限が解除となり全面的に営業可能となる。
② 全国でクラスターが発生したカラオケ店やライブハウスなどの施設に関しては休業要請が継続。しかし、クラスター発生の施設区分のうち大規模施設、集会・展示施設、文教施設とクラスター発生施設の類似施設は休業解除になる。
③ イベントは全国の緊急事態宣言終了日まで規模を縮小した開催が可能に。ただし、屋内イベントは100人以下かつ定員の半分以下の参加人数に、屋外イベントは200人以下かつ人との距離を十分に確保することが協力要請される。
④ 全国的な大規模イベントは、29日以降に要請が見直される方針。これに対し吉村洋文知事は、「政府は25日に宣言を解除するか判断するとのこと。それを踏まえて29日までにこの要請を見直したい」と方針を語った。
⑤ 府民に対する外出について、「これからは外出をしていただいて結構です。ただ、外出の仕方をぜひ気を付けていただきたい。マスクを着ける、距離をとる、3密を避けるなど、ウイルスの特徴を捉えながら感染症対策をとりつつ外出してほしい」と訴えた吉村知事。
2 「要請」の法的根拠
ここで注目したいのは、それまで出されていた自粛要請とは何だったのかということである。すでに述べたことであるが、新型コロナ特措法に基づく「要請」には、二種類のものがある。その一つは、法24条9項に基づくもので、「当該都道府県の区域に係る新型コロナ対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき」に行われる「その区域に係る新型コロナ対策の実施に関し必要な協力の要請」であり、もう一つは、法45条1項を根拠にしたもので、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」には、「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型コロナの感染の防止に必要な協力の要請」である。
今までは、緊急事態宣言下での要請なので、基本的には、後者の要請と理解するのが通常であろう。しかし、これらの要請に際して、その法的根拠が示されてはいない。したがって、どちらを根拠にしているかは不明である。
ところが、今回、緊急事態宣言が解除されたので、もはや法45条に基づく緊急事態措置をとることはできない。したがって、今回大阪府の対策本部で決定された事項は、法24条9項に基づくものと理解することができる。
しかし、大阪府民にそのことが理解されているのであろうか。文書の中に、小さく括弧の中で、特措法24条9項と書かれているだけである。これでは、府民に対する十分な説明とはなっていない。
大阪府は、今回の要請は、法24条9項に基づくものであり、緩やかなものである旨を徹底すべきである。事情を知らない府民は、従来からの延長と映っているのであろう。そのためには、24条9項を説明する必要がある。それをしなければ、基本的には変化がないと思うであろう。
しかし、緊急事態宣言下か否かにより、事態は変わったのである。そこでの要請は、「新型コロナ対策の実施に関し必要な協力の要請」であることを明らかにしなければならない。誤解している府民の立場を利用し、「従来と同等の要請を行っている」と誤信させてはならない。
3 法的根拠なき協力要請
さて、大阪府といえば、パチンコ店。今回は、どのように扱われているのであろうか。
そこでは、「特措法によらず感染防止対策の協力を要請する施設」が取り上げられ、パチンコ店やカラオケ店が入っている。
今まであれほどまでに騒いでいたパチンコ店について、特措法の根拠もなしに協力要請するというのだ。これが法律家の行う仕事なのか。こんな要請なら、協力する人はどれくらいいるのであろうか。特に、今までの協力で不況になっている事業主や学習塾等は、即座にも開校したいところであろう。こんな要請なら、しない方が良いのではないか。