社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

緊急事態宣言解除後の対策

2020-05-24 19:19:00 | ノンジャンル
緊急事態宣言解除後の対応
 最後まで残っていた1都3県に対する緊急事態宣言が、明日(25日)解除決定されるそうだ。この政府の意向を受け、東京都や神奈川県は、コロナ対策について解除後の在り方を発表した。

1 東京都のロードマップ
 東京都が発表したロードマップでは、次の4段階で休業要請等の解除が進行するという。

Step0
外出自粛について ●8割程度の接触機会の低減を目指した外出自粛、●クラスター発生歴のある施設(※)の利用自粛、●他県への移動の自粛
※接待を伴う飲食店等、カラオケ、ライブハウス、スポーツジム
事業者に対する休業要請等について ●遊興施設、運動・遊技施設、劇場、商業施設等を対象、●飲食店等は短縮営業(夜8時まで。酒類の提供は夜7時まで)
●イベント開催の自粛
学校について ●休校

外出自粛について
Step1 Step2 Step3
●5割程度の接触機会の低減を目指した外出自粛、●引き続き休業要請となる施設の利用自粛、●クラスター発生歴のある施設(※)の徹底した利用自粛、●他県への移動の自粛
事業者に対する休業要請等について
Step1
●都民の文化的・健康的な生活を維持する上で必要性が高い施設を緩和(例)・博物館、美術館、図書館→入場制限等を設けることを前提に施設の再開、●飲食店等→営業時間の一部緩和(夜10時まで)
●50人までのイベント開催を可能
Step2
●クラスター発生歴がなく、3つの密が重なりにくい施設を緩和(例)・劇場等→入場制限や座席間隔の留意を前提に施設の再開、●飲食店等→営業時間の一部緩和(夜10時まで)
●100人までのイベント開催を可能
Step3
●クラスター発生歴があるか、またはリスクの高い施設を除き、入場制限等を前提として全ての施設を再開、●飲食店等→営業時間の一部緩和(夜12時まで)
Step3
●1,000人までのイベント開催を可能

学校について
Step1 Step2 Step3
●再開
登校日の設定数を変更して対応(オンライン学習等の家庭学習との組み合わせ)

2 神奈川県の対策
 外出自粛については、「徹底的な外出自粛要請から『新しい生活様式』等の周知徹底へ」として、今までの特措法45条1項に基づく「徹底的な外出自粛要請」を「感染防止対策がされていない場所へ行くことを控える。当面の間、次の行動を控える」と変更した。次の行動とは、・クラスター歴があるような場所へ行く(繁華街の接待を伴う飲食店等)
・帰省や旅行など、都道府県域を越えた移動を例として挙げている。
 また、事業者への休業要請については、「休業の要請から感染防止対策を前提とした段階的な解除へ」として、「感染拡大のおそれのある施設への休業要請」を行うとしている。ここでの緊急事態宣言下における休業要請の法的根拠については特措法24条9項と45条2、3項をあげ、宣言解除後については特措法24条9項をあげている。
 段階的な解除のステップとしては、東京都とは異なり、2段階に分けている。
【ステップ1】
◆県は、事業者がガイドラインに基づく適切な感染防止対策を講じることを前提に、休業要請を解除
◆事業者は、自ら感染防止対策の創意工夫を図り、段階的に営業を再開(原則、夜10時までの時短営業を要請)
・遊興施設・大学、学習塾 ・運動、遊技施設・劇場等 ・集会・展示施設・商業施設
※ 飲食店は時短営業を緩和(朝5時から夜8時まで、酒類提供は夜7時まで➡    朝5時から夜10時まで)
◆小規模イベントの開催を可能とする
【ステップ2】
◆時短営業を解除
◆中規模イベントから順次開催を可能とする

3 宣言解除後の要請の根拠
今まで、宣言解除後の二つの事例を取り上げてきたが、そこで浮かび上がってくるのは、要請の法的根拠をどうとらえているかということである。
神奈川県が示しているように、宣言下での自粛要請は、特措法45条1項を根拠としていたが、宣言が解除された以降は、宣言下での豊作を定めている45条は使うことができない。したがって、今後は、一般的な24条9項を根拠とした要請しかできないことになる。
このことについて、東京都のロードマップは一言も触れず、法的根拠なしに外出自粛等の要請をしている。これは法治国家のすべきことではない。市民の権利を規制する方策を立案する場合には、必ずその法的根拠を示さなければならない。こんな杜撰なロードマップに、都民は従うのであろうか。疑念を抱く人々はたくさんいるはずである。
小池都知事は、都合の良い時だけ記者会見を行い、露出している。しかし、保健所の件数漏れがあった場合には、知事は何も記者会見をしない。都合の悪いことには顔を出さず、良いことには喜んで出てくる。その厚顔さは、何と言ったらよいのだろうか。まさに、知事選目当てだといっても言い過ぎではない。
前回にも触れたが、特措法24条9項でもできないことが存在している。それについては、どのように説明するのであろうか。
コロナ対策をしっかりとしなければならないことについては、その通りである。しかし、上(行政)からの要請を根拠にした「自粛警察」は、今後とも行われるであろう。そんな行動は、絶対に許してはならない。
今必要なのは、市民の側が自律し、自営する気持ちで、このコロナに対処することである。行政はしなければならないことは必ず存在する。それが強く前面に出てしまえば、市民の自由を抑制することになる。私たちは、そんな社会の到来を望んではいない。コロナ対策においても、市民を主人公とした対策が講じられるべきである。



緊急事態宣言解除下の要請

2020-05-22 15:07:00 | ノンジャンル
緊急事態宣言が解除されたときの「要請」とは何か

1 大阪府の事例
 5月21日、政府の対策本部が開催され、大阪、京都、兵庫の2府1県における緊急事態宣言の解除が決定された。それに伴い、大阪府は、対策本部で、次のような内容を決定し、発表された。
① 飲食店はこれまで営業時間が午前5時から午後10時まで、酒類の提供は午後9時までとなっていたが、これら制限が解除となり全面的に営業可能となる。
② 全国でクラスターが発生したカラオケ店やライブハウスなどの施設に関しては休業要請が継続。しかし、クラスター発生の施設区分のうち大規模施設、集会・展示施設、文教施設とクラスター発生施設の類似施設は休業解除になる。
③ イベントは全国の緊急事態宣言終了日まで規模を縮小した開催が可能に。ただし、屋内イベントは100人以下かつ定員の半分以下の参加人数に、屋外イベントは200人以下かつ人との距離を十分に確保することが協力要請される。
④ 全国的な大規模イベントは、29日以降に要請が見直される方針。これに対し吉村洋文知事は、「政府は25日に宣言を解除するか判断するとのこと。それを踏まえて29日までにこの要請を見直したい」と方針を語った。
⑤ 府民に対する外出について、「これからは外出をしていただいて結構です。ただ、外出の仕方をぜひ気を付けていただきたい。マスクを着ける、距離をとる、3密を避けるなど、ウイルスの特徴を捉えながら感染症対策をとりつつ外出してほしい」と訴えた吉村知事。

2 「要請」の法的根拠
 ここで注目したいのは、それまで出されていた自粛要請とは何だったのかということである。すでに述べたことであるが、新型コロナ特措法に基づく「要請」には、二種類のものがある。その一つは、法24条9項に基づくもので、「当該都道府県の区域に係る新型コロナ対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき」に行われる「その区域に係る新型コロナ対策の実施に関し必要な協力の要請」であり、もう一つは、法45条1項を根拠にしたもので、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」には、「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型コロナの感染の防止に必要な協力の要請」である。
 今までは、緊急事態宣言下での要請なので、基本的には、後者の要請と理解するのが通常であろう。しかし、これらの要請に際して、その法的根拠が示されてはいない。したがって、どちらを根拠にしているかは不明である。
 ところが、今回、緊急事態宣言が解除されたので、もはや法45条に基づく緊急事態措置をとることはできない。したがって、今回大阪府の対策本部で決定された事項は、法24条9項に基づくものと理解することができる。
 しかし、大阪府民にそのことが理解されているのであろうか。文書の中に、小さく括弧の中で、特措法24条9項と書かれているだけである。これでは、府民に対する十分な説明とはなっていない。
 大阪府は、今回の要請は、法24条9項に基づくものであり、緩やかなものである旨を徹底すべきである。事情を知らない府民は、従来からの延長と映っているのであろう。そのためには、24条9項を説明する必要がある。それをしなければ、基本的には変化がないと思うであろう。
 しかし、緊急事態宣言下か否かにより、事態は変わったのである。そこでの要請は、「新型コロナ対策の実施に関し必要な協力の要請」であることを明らかにしなければならない。誤解している府民の立場を利用し、「従来と同等の要請を行っている」と誤信させてはならない。

3 法的根拠なき協力要請
 さて、大阪府といえば、パチンコ店。今回は、どのように扱われているのであろうか。
 そこでは、「特措法によらず感染防止対策の協力を要請する施設」が取り上げられ、パチンコ店やカラオケ店が入っている。
 今まであれほどまでに騒いでいたパチンコ店について、特措法の根拠もなしに協力要請するというのだ。これが法律家の行う仕事なのか。こんな要請なら、協力する人はどれくらいいるのであろうか。特に、今までの協力で不況になっている事業主や学習塾等は、即座にも開校したいところであろう。こんな要請なら、しない方が良いのではないか。


施設使用停止の指示は違法だ

2020-05-18 10:44:00 | ノンジャンル
吉村大阪府知事が行ったパチンコ店に対する施設停止の指示は、特措法違反だ

知人との間で、次のよぇな質疑を行った。

質問:吉村知事の行ったパチンコ店舗名公表については、パチンコ店は、3密になるし、難しいと感じていました。しかし、法律を読み直してみて、45条の2項は、特定都道府県知事の権限となっていることに気づき、これをしらべると、38条に定義していますが、そもそも、そのような権限を行使すること自体が法律にもとづいていないのではと感じました。
 38条1項は、「新型インフルエンザ等のまん延により特定市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったと認めるときは、当該特定市町村の属する都道府県(以下「特定都道府県」という。)の知事(以下「特定都道府県知事」という。)に対し、当該特定市町村長が実施すべき当該特定市町村の区域に係る新型インフルエンザ等緊急事態措置の全部又は一部の実施を要請することができる。」としています。
 つまり、緊急事態宣言が公示された地域であり、かつ、「特定市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったと認めるとき」が要件になっています。大阪の情報がよく分かりませんが、大阪の市町で、このような事態が発生しているのでしょうか?

回答:新型コロナ特措法45条3項は、次のように規定しています。

3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

 ここでは、施設の使用停止を指示するときの要件が定められています。つまり、第一の要件として、「施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないとき」であり、第二の要件として「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」ということです。
 第一の要件である「要請に応じない正当な理由」について、十分な判断を行ったか否かが問題だと思います。知事の説明やブログには、その点について書かれていません。また、大阪府の対策本部にもそれについての記載はありません。したがって、第一の要件は満たされていないものと思われます。
 第二の要件である「特に必要があるときに限り」についても、ただ「3密」が存在することを主張するだけで、その要件である「特に必要があるときに限り」については、言及されていません。ということは、この要件も満たしていないのではないでしょうか。
 ついでにもう一つ言えば、果たして、パチンコ店は3密なのでしょうか。店内に入り、それを確認したのでしょうか。他人に感染させるに足りるダリの「密」が存在しているのでしょうか。3密を根拠にするならば、それを立証する責任は、主張した側にあると思います。

再度の質問:私が疑問に思ったのは、45条3項の要件の検討の前に、そもそも、45条2項、3項、4項で権限を行使できる、「特定都道府県知事」になっているのかという点です。
 今のところ、大阪府の市町村で、「新型インフルエンザ等のまん延により特定市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったと認めるとき」という事態にはなっていないのではないかということです。
 そうすると、吉村知事には、特定都道府県知事の権限はそもそもなかったということになるのでは?という疑問です。

それに対する回答:38条と45条の関係は、おっしゃる通り、微妙ですね。
 38条は、特定市町村長の事務の一部を特定都道府県知事に委任することを認める規定だと思います。ただ、特定市町村長と特定都道府県知事の名称はここで初めて定義づけられています。
 ここでの特定市町村長は緊急事態宣言の対象とされた区域の市町村の長を指すと定め、特定都道府県は、特定市町村が属する都道府県と定義づけています。
 このことを前提に、45条を理解すれば、45条の特定市町村長や特定都道府県知事は、38条の定義に従ったものにすぎないと理解するものではないでしょうか。
 つまり、45条の規定は、「まん延防止に関する措置」を特定都道府県知事に与える規定であり、そこで認められている措置を行う権限は、特定都道府県知事にのみ与えられているに過ぎない。
 したがって、45条の規定は、38条の特定市町村長が特定都道府県知事に「緊急事態措置の全部又は一部の実施を要請」をしたかどうかとは無関係なものだと思います。

 ここからも明らかなように、吉村知事が行ったパチンコ店に対する施設の使用停止の指示は、新型コロナ特措法に違反している。
 業者は泣き寝入りをする必要はない。法的手段を用い、吉村知事を相手に損害賠償請求を提起したらどうだろうか。
 パチンコ業者の皆さん。必要なら、コメントを書いてください。いつでも、相談になりますよ。


コロナ対策としての知事の権限は不十分か

2020-05-05 15:37:00 | ノンジャンル
新型コロナ特措法で知事に与えられた権限は不十分か?

 5月3日、共同通信は、「全国22知事、権限は「不十分」 コロナ特措法、8人が罰則に言及」と題した、次のような記事を配信した。

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言発令時の知事の権限について、全国47都道府県知事のうち22人が「不十分だ」などとして見直しを求めていることが2日、共同通信のアンケートで分かった。このうち茨城や京都など8人は、休業指示に従わない業者への罰則規定の必要性に言及した。一方で群馬や福岡など7人は、過度な私権制限につながりかねない権限強化や罰則に慎重な姿勢を示した。
 安倍晋三首相は6日が期限の緊急事態宣言を、全都道府県で延長する意向で、詳細は4日に決定したいとしている。特措法を巡っては、西村康稔経済再生担当相も権限強化や罰則整備に言及している。

 同日の新潟日報は、より詳しく、次のように報じた。

 花角英世新潟県知事はアンケートに対し、緊急事態宣言発令時の知事の権限について「不十分」と答えた。
 理由として新潟日報社の取材に対し、「例えば、休業要請に応じないパチンコ店の名前を公表した措置を取っても、必ずしも効果があるわけではない。もう少し踏み込んで実効性を持たせるべきだ。罰則規定を設けるかどうかについて議論すべきだ」と話した。
 安倍晋三首相は6日が期限の緊急事態宣言を、全都道府県で延長する意向で、詳細は4日に決定したいとしている。特措法を巡っては、西村康稔経済再生担当相も権限強化や罰則整備に言及。今回、半数近くの知事が現状の権限を不十分と考えていることが明らかになり、法改正に向けた議論が高まる可能性がある。
 都道府県が事業者に休業の要請や指示をする際、政府の基本的対処方針が国との協議を求めている点に関しては、26人が「妥当だ」と回答。感染拡大を防ぐには各自治体が足並みをそろえる必要があり、国との調整には意味があるとの意見が多かった。14人は「各知事に任せるべきで、妥当ではない」とした。
 休業要請に応じた事業者への補償については、ほぼ全ての知事が「財源の確保を含め、国が統一的に対応すべきだ」と答えた。緊急事態宣言の対象を7都府県から全国に拡大した政府の対応に関しては、大半が「妥当だった」と答える一方、愛媛など4人は、事前に説明や調整がなかったことを問題視した。
 アンケートは4月下旬に実施し、主に文書で回答を得た。一部の知事は対面取材に応じた。
 富山県の石井隆一知事は「要請を実効性のあるものとするためには、罰則を伴う法整備の検討が必要」と記述。一方、秋田県の佐竹敬久知事は「移動、営業の自由は国民に認められた権利で、現行の法体系では罰則規定を設けるのは困難だ」と記した。
 国との協議に関し、三重県の鈴木英敬知事は「長い時間を費やせば、有効な措置も急速に陳腐化する」と懸念を示した。「字句修正にまで及ぶなど弊害が大きい」(山梨県の長崎幸太郎知事)との批判もあった。 

 共同通信の配信ではわからない部分を地方紙が補っていることになる。残念ながら、そのような地方紙は少数派である。
 権限が不十分と答えた22自治体の詳細は不明で、それらの知事がどのような意見で「不十分」と主張したのかはわからないが、新潟日報が報じている花岡新潟県知事の意見がその理由なのであろう。彼は言う。「休業要請に応じないパチンコ店の名前を公表した措置を取っても、必ずしも効果があるわけではない。もう少し踏み込んで実効性を持たせるべきだ。罰則規定を設けるかどうかについて議論すべきだ」と。
 この主張は、休業要請を行い、さらに店舗名の公表を行っても、休業しない店舗があるので、休業させるに足りるだけの権限を付与せよと言っているのであろう。
 この論理には、一理あるように見られるが、それは、この法律の根本にかかわる問題である。新型コロナ特措法は、市民や業者の自主性を尊重し、自粛の要請や休業の要請を基本としている。それは、あくまでも要請であり、それに従うかどうかは、個々の判断にゆだねられている。これが、新型コロナ特措法の特徴なのだ。したがって、たとえ店舗名の公表をしたとしても、そのダメージは店舗側が受けることを前提に、公表すれば、多分自発的に休業するであろうことを前提としている。
 これに対し、公表したけど、なお休業しない場合には、休業を指示することになるが、それについても罰則はない。その指示に従うかどうかは、各事業者の判断に任せられているのだ。
ここから明らかになることは、この新型コロナ特措法は、すべての処分に従うかどうかが各自の自主的判断にゆだねられているのである。

 ところで、5月3日の朝日新聞は、「コロナ禍 市民をどう制限」と題した特集を組んでいる。
 「米国 外出禁止 権限は国ではなく州に」「ドイツ ナチスの記憶 軍派遣する法の発動見送り」としてアメリカやヨーロッパの国口の現状を報告している。それに対して、「日本では 罰則なき特措法 人権に配慮」として、新型コロナ特措法の特色を報じている。
ここで考えなければならないのは、「自粛」の持つ意味である。
 日本語の「自粛」の当たる言葉は、ヨーロッパ言語には存在しないということを聞いたことがある。今辞書で調べても、ぴったりとした訳語は出てこない。
 個人の自由が社会の原点となっている欧米の国々では、権力の力で一定の方向性を指示しない限り、権力に従うことはないであろう。だから、より強い「禁止」という措置を取らざるを得ない。
 それに対して、日本では、まだ「お上思想」が蔓延し、当局の言うことには従うものであることを前提としている社会ではないだろうか。だから「外出の自粛」を要請すれば足りているのだ。
 そのことから、「自粛警察」という言葉が誕生した。
 「自粛」に従っているものは、「自粛」に従わないものを白い目で見、自分たちとは異質のものであるという前提で、それらの人たちを当局に通報し、何らかの取り締まりを要求するようになる。これは、日本社会の悲劇である。


パチンコ店に対する営業停止の指示

2020-05-03 16:30:00 | ノンジャンル
休業指示を出した4県は、新型コロナ特措法の要件を守っているのか

1 パチンコ店に対し「使用停止の指示」を行った4県の理由
 5月3日現在、新型コロナ特措法45条3項に基づき、営業継続しているパチンコ店に対し、「施設の使用停止の指示」を行った県は、兵庫県、神奈川県、新潟県、千葉県の4県である。それらの県のホームページから、「使用停止の指示」に関する部分を取り上げると次のとおりである。

兵庫県
 兵庫県では新型コロナウイルス感染症の防止対策のため、兵庫県緊急事態措置により、令和2年4月15日から感染の拡大につながるおそれのある県内の施設に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条第9項に基づく施設の使用制限等の協力要請、また、令和2年4月27日から同法第45条第2項に基づく施設の使用停止(休業)の要請を行ってきました。
 令和2年5月1日現在において、施設の使用制限等の要請に応じていないことが確認されたので、同日付で、同法第45条第3項に基づく施設の使用停止(休業)の指示を行うこととしました。この旨、公表します。

神奈川県 
 県では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、令和2年4月10日から、感染拡大につながるおそれのある県内の施設に対して、特措法第24条第9項に基づく施設の使用制限等の協力要請を行っており、当該協力要請に応じず営業を継続している施設については、令和2年4月28日に特措法第45条第2項に基づく施設の使用停止(休業)の要請を行いました。
 当該要請に応じず営業を継続している次の施設について、特措法第45条第3項に基づく施設の使用停止(休業)の指示を行いましたので、同条第4項に基づき県ホームページに掲載し公表します。

新潟県
 新潟県では、令和2年4月30日に新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条第2項に基づき施設の使用停止(休業)の要請を行いましたが、令和2年5月2日現在も、一部施設の営業が確認されたため、同法第45条第3項に基づき別表の施設に対し、施設の使用停止(休業)の指示を行いましたので、公表します。

千葉県
 千葉県では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき「施設の使用停止(休業)」の協力要請の対象となっているものの、営業中である施設に対し、5月1日付けで同法45条第2項の規定に基づく休業の要請及び千葉県ホームページ上で施設名等の公表を実施したところです。
 このたび、いまだに要請に応じない下記2施設に対し、5月3日付けで同法第45条第3項に基づき、「施設の使用停止(休業)」の「指示」を行いました。
 また、同法第45条第4項の規定に基づき、施設名、所在地について県ホームページにおいて公表します。

 これらの文章の書き方は、非常に似ている。どこかにモデルが存在するのかもしれない。まあ、それはどうでもよいことだが。
 それらに共通することは、事実の記載のみで、その理由が書かれていない。ネット上で、記者会見等を見たが、知事から理由は話されてはいない。

2 新型コロナ特措法45条3項の定める「使用停止の指示」の要件
 ところで、新型コロナ特措法45条3項は、次のように規定している。
 
 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

 ここには、要件が二つ書かれている。一つは、「正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないとき」であり、二つ目は「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」という要件である。
 各県で公表された文書を見る限り、事業者側が「要請」に応じない「正当な理由」があったのかどうかについての記載はない。そこに書かれているのは、極論すれば、「要請したが拒否された」ということだけである。事業者には、事業者なりの営業継続の理由があるはずであり、それが「正当な理由」に該当するかもしれない。「使用停止の指示」を行おうとする自治体は、少なくとも、事業者に弁明の機会を与えるべきである。その機会も与えられていない「使用停止の指示」は、権限を逸脱したものであり、正当性を失うであろう。
 要件の二つ目は、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」である。果たして、今回の4県で行われた「指示」は、この要件を満たしているのであろうか。例えば、そのパチンコ店がクラスターの発生根拠となる可能性を検討したのであろうか。単なる「三密」だけの問題ではない。当該パチンコ店を利用した客のうち、どの程度の割合で感染者が発生したのか、それからどの程度の広がりがあったのか等新型コロナのまん延防止と国民の生命・健康の保護に必要なのかどうかを検討しなければならない。各県の文書には、それらについての記載はなく、この二つ目の要件も満たしていない。

 ここで、内閣府ガイドラインの説明を取り上げよう。次のように述べている。

 特措法第45条第2項の規定に基づく要請に応じず、同条第3項の規定に基づく指示を行うときには、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するために特に必要があると認めるとき」となっており、必ずしも現に対象となる個別の施設においてクラスターが発生している必要はないが、例えば、専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されている上に、当該施設において、いわゆる「3つの密」に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる場合などが考えられる。

 ここにも、「専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されている上に、当該施設において、いわゆる「3つの密」に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる場合」と例示されているように、市民の健康に対するそれなりのリスクが存在するか、存在する可能性がなければならない。
 4県の「使用停止の指示」は、このガイドラインにも抵触するものであり、当該の県は、速やかな処分の撤回を図るべきである。