今朝の朝日新聞は、「特殊犯罪対策に架空名義の口座ー犯罪グループに利用させ、被害金凍結ー」との記事を配信した。
その内容は、昨日開催された犯罪対策閣僚会議で、上記の新捜査手法導入が検討されることになったということである。
筆者は、「紙の爆弾」6月号で「際限なき権限拡大-警察が『架空名義口座』開設-」を取り上げています。既に校正は終了し、印刷に回っているので、その文章に追記することはできない。詳細については、5月7日発売の「紙の爆弾」6月号を参照のこと。
私は、その中で、次のように結論付けている。
「警察による架空名義口座は、警察が金融機関と結託し、金融機関の許可のもと架空名義で口座を開設する行為だ。たとえ金融機関の許可を得たとしても、その許可自体が違法・無効なものである以上、警察の行為の違法性は阻却されない。
取締り機関である警察が行なう犯罪を、取り締まる者が存在しないことになる。
社会に民主主義を根付かせるためにも、国民が警察を監視する警察オンブズマン制度をつくり、警察の違法行為を断固として許さない姿を見せることが非常に重要である。」
警察は、新捜査手法として、すでに「仮装身分捜査」を採用している。このような大きな問題を、国会での審議もいらない「仮装身分捜査実施要領」という名のガイドラインで導入した。これについては、「紙の爆弾」3月号を参照。
このような警察権限の拡大は、止まるところを知らない。国会での審議を省略し、抜け道での導入を図っている。このような拡大に対しては、断固、闘おうではないか。
以下に、朝日新聞の記事を掲載する。
特殊詐欺対策に、架空名義の口座 犯罪グループに利用させ、被害金凍結
特殊詐欺などの被害の深刻化を受け、政府が22日、緊急対策をまとめた。警察などの管理下においた「架空名義口座」を犯罪グループに利用させ、被害金を凍結する捜査手法の導入などが検討内容として盛り込まれた。この日開かれた犯罪対策閣僚会議で決まった。
会議に出席した石破茂首相は「国民の大切な財産を守り抜くためには、金融業界や通信業界の協力も得ながら社会全体で対策を進める必要がある」と述べた。
警察庁によると昨年は特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺とあわせて被害額が約2千億円(暫定値)に上り、過去最悪の状況。だまし取った金を口座から口座へ転々とさせる資金洗浄により捜査が困難になっている。
被害金の受け皿となる口座はSNSで募集した闇バイトを通じて犯罪グループ側に渡るケースが多い。そのため、警察が架空名義の口座を用意して暗証番号などとともに犯罪グループ側に提供する手法の導入を検討する。口座は金融機関と協力してモニタリングし、被害金が口座に入ったら凍結することを想定する。
また、被害金を追跡することで中枢メンバーを特定し、摘発にもつなげたい考えだ。政府は、口座売買を禁じている犯罪収益移転防止法の罰則の強化も検討する。
一方、捜査員が架空の身分証を使って闇バイトに応募する「仮装身分捜査」については、一部の都道府県警がすでに実施している。坂井学・国家公安委員長が22日の閣議後の会見で明らかにした。(板倉大地)
■通信履歴、保存義務化も検討
SNSを介したメッセージやマッチングアプリを入り口とした詐欺被害の深刻化を受け、通信分野での対策強化も打ち出した。
そのひとつが、スマートフォンのデータ通信専用のSIMカードを契約する際の本人確認の厳格化だ。本人確認が不要な仕組みを悪用して大量に契約したり、アプリのアカウントの不正取得に悪用したりする事例もあり、政府は事業者へ実効性のある本人確認の実施を働きかけ、法改正による義務づけも検討する。
捜査を見据えた対策として通信履歴の保存の義務化も掲げた。捜査機関が被害を把握した時点で履歴が残されていないケースがあるためだ。総務省は有識者による検討会で通信事業者による履歴保存のあり方を定めたガイドラインの改正の議論を進めている。(黒田健朗)
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