社会の鑑

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パチンコ店に対する営業停止の指示

2020-05-03 16:30:00 | ノンジャンル
休業指示を出した4県は、新型コロナ特措法の要件を守っているのか

1 パチンコ店に対し「使用停止の指示」を行った4県の理由
 5月3日現在、新型コロナ特措法45条3項に基づき、営業継続しているパチンコ店に対し、「施設の使用停止の指示」を行った県は、兵庫県、神奈川県、新潟県、千葉県の4県である。それらの県のホームページから、「使用停止の指示」に関する部分を取り上げると次のとおりである。

兵庫県
 兵庫県では新型コロナウイルス感染症の防止対策のため、兵庫県緊急事態措置により、令和2年4月15日から感染の拡大につながるおそれのある県内の施設に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条第9項に基づく施設の使用制限等の協力要請、また、令和2年4月27日から同法第45条第2項に基づく施設の使用停止(休業)の要請を行ってきました。
 令和2年5月1日現在において、施設の使用制限等の要請に応じていないことが確認されたので、同日付で、同法第45条第3項に基づく施設の使用停止(休業)の指示を行うこととしました。この旨、公表します。

神奈川県 
 県では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、令和2年4月10日から、感染拡大につながるおそれのある県内の施設に対して、特措法第24条第9項に基づく施設の使用制限等の協力要請を行っており、当該協力要請に応じず営業を継続している施設については、令和2年4月28日に特措法第45条第2項に基づく施設の使用停止(休業)の要請を行いました。
 当該要請に応じず営業を継続している次の施設について、特措法第45条第3項に基づく施設の使用停止(休業)の指示を行いましたので、同条第4項に基づき県ホームページに掲載し公表します。

新潟県
 新潟県では、令和2年4月30日に新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条第2項に基づき施設の使用停止(休業)の要請を行いましたが、令和2年5月2日現在も、一部施設の営業が確認されたため、同法第45条第3項に基づき別表の施設に対し、施設の使用停止(休業)の指示を行いましたので、公表します。

千葉県
 千葉県では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき「施設の使用停止(休業)」の協力要請の対象となっているものの、営業中である施設に対し、5月1日付けで同法45条第2項の規定に基づく休業の要請及び千葉県ホームページ上で施設名等の公表を実施したところです。
 このたび、いまだに要請に応じない下記2施設に対し、5月3日付けで同法第45条第3項に基づき、「施設の使用停止(休業)」の「指示」を行いました。
 また、同法第45条第4項の規定に基づき、施設名、所在地について県ホームページにおいて公表します。

 これらの文章の書き方は、非常に似ている。どこかにモデルが存在するのかもしれない。まあ、それはどうでもよいことだが。
 それらに共通することは、事実の記載のみで、その理由が書かれていない。ネット上で、記者会見等を見たが、知事から理由は話されてはいない。

2 新型コロナ特措法45条3項の定める「使用停止の指示」の要件
 ところで、新型コロナ特措法45条3項は、次のように規定している。
 
 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

 ここには、要件が二つ書かれている。一つは、「正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないとき」であり、二つ目は「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」という要件である。
 各県で公表された文書を見る限り、事業者側が「要請」に応じない「正当な理由」があったのかどうかについての記載はない。そこに書かれているのは、極論すれば、「要請したが拒否された」ということだけである。事業者には、事業者なりの営業継続の理由があるはずであり、それが「正当な理由」に該当するかもしれない。「使用停止の指示」を行おうとする自治体は、少なくとも、事業者に弁明の機会を与えるべきである。その機会も与えられていない「使用停止の指示」は、権限を逸脱したものであり、正当性を失うであろう。
 要件の二つ目は、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」である。果たして、今回の4県で行われた「指示」は、この要件を満たしているのであろうか。例えば、そのパチンコ店がクラスターの発生根拠となる可能性を検討したのであろうか。単なる「三密」だけの問題ではない。当該パチンコ店を利用した客のうち、どの程度の割合で感染者が発生したのか、それからどの程度の広がりがあったのか等新型コロナのまん延防止と国民の生命・健康の保護に必要なのかどうかを検討しなければならない。各県の文書には、それらについての記載はなく、この二つ目の要件も満たしていない。

 ここで、内閣府ガイドラインの説明を取り上げよう。次のように述べている。

 特措法第45条第2項の規定に基づく要請に応じず、同条第3項の規定に基づく指示を行うときには、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するために特に必要があると認めるとき」となっており、必ずしも現に対象となる個別の施設においてクラスターが発生している必要はないが、例えば、専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されている上に、当該施設において、いわゆる「3つの密」に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる場合などが考えられる。

 ここにも、「専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されている上に、当該施設において、いわゆる「3つの密」に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる場合」と例示されているように、市民の健康に対するそれなりのリスクが存在するか、存在する可能性がなければならない。
 4県の「使用停止の指示」は、このガイドラインにも抵触するものであり、当該の県は、速やかな処分の撤回を図るべきである。