社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

日弁連会長の反対声明について

2021-01-24 10:10:00 | ノンジャンル
 1月22日の閣議で、政府は新型コロナ特措法改正法案と感染症改正法案を決定し、国会に上程しました。
 閣法6号です。まだ、衆議院のホームページには掲載されていません。

 ところで、日弁連が、「感染症法・特措法の改正法案に反対する会長声明」を出しました。
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2021/210122_2.html
 その重点として、感染症法改正を批判しています。入院拒否に懲役刑を課するなど、その内容は、強く批判されなければなりません。
 二つの法案を一つにしていることも問題だが、まず問題にすべきは、特措法改正ではないだろうか。
 コロナをめぐる現状は、11の都府県に緊急事態宣言が出され、他の地方自治体でも独自の緊急事態宣言が出されています。

 コロナのまん延は、留まるところを知らず、ますます広がっています。
 その対応として、特措法改正法案では、新たな予防的措置として「まん延防止等重点措置」が緊急事態宣言の前段階として設けられようとしている。その内容については、「新型コロナ特措法改正の問題点-「予防的措置」の位置づけ-」を参照してください。
 そこでは、時短要請、要請に従わない場合の命令、命令に従わない場合の30万円の過料等が内容とされています。
 懲役刑を導入するという感染症法改正法案と比較した場合、この新型コロナ特措法改正の方が市民生活に直結するものであり、批判や反対の重点はこちらに置くべきではないでしょうか。
 人権を守るべき立場の日弁連が、なぜこのような弱腰の声明を出したのか非常に疑問です。

 2月上旬には成立させ、中旬には施行する意向だといわれています。

 反対の声をあげましょう。


新型コロナ特措法改正法案の問題点

2021-01-24 09:55:00 | ノンジャンル
新型コロナ特措法改正法案の問題点

1 緊急事態宣言発出の前段階としての「まん延防止等重点措置」-その要件と効果-
 第一段階 該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき⇒必要な措置
 公私の団体又は個人に対する必要な協力の要請

 第二段階 まん延の防止に関する措置を講じなければ『新型インフルエンザ等緊急事態措置』を実施すべき区域となることを回避することが困難である事態として政令で定める事態が発生したと認めるとき⇒まん延防止等重点措置
 施設の営業時間の変更等の措置の要請
 正当な理由なく要請に応じない場合には、営業時間の変更等の命令
 命令に違反した場合には、30万円の過料
 要請又は命令を行った場合、感染を防止するため特に必要があると認めるとき、公表
 命令の発出についての立入検査・報告徴収の実施
 拒否した時には、20万円の過料

 第三段階 新型コロナの全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、またはそのおそれがあるとき⇒緊急事態宣言(43条)
 不要・不急な外出の自粛の要請(1項)
 多数の者が利用する施設の使用制限・停止又は催物の開催制限・停止の要請(2項)
 正当な理由なく要請に応じないとき、当該要請に係る措置の指示(3項)
 要請・指示をしたとき、遅滞なくその旨の公表(4項)

 正当な理由なく要請に応じないとき、当該要請に係る措置の命令(指示を代える)
 命令に違反した場合、50万円の過料
 要請又は命令を行った場合、感染を防止するため特に必要があると認めるとき、公表
 命令の発出についての立入検査・報告徴収の実施
 拒否した時には、50万円の過料

2 「まん延防止等重点措置」を設ける根拠はあるのか
 第一段階での必要な措置に含まれているのでは?
 まん延を防止するために採用すべき措置をこのような数段階に分ける必要性があるか
 要件があいまいである

3 命令の根拠は何か
 要請に従わないことが命令の根拠となるか
 ⇒要請に従うか従わないかは自由の問題である。
  自由の行使が命令の根拠にはならないと思われるが

 そのような立法例は?

4 罰則について
 理由としての実効性の担保

 これは、この特措法に内在する問題であり、特措法の精神には合わないのではないか
 ⇒特措法の構造は、それぞれの自発的意思を尊重し、それを前提として成り立っている。
  罰則の導入は、自発的意思を超え、強制法に転化させるものである。
  その表れとしての立入・徴収報告権の授与

5 なぜ、緊急事態宣言下の今、法改正なのか
 コロナが蔓延し、多くのものがコロナの終息を願っている現状は、それに反することが言いづらくなっている。
 その状態を利用し、実効性の確保を理由とした強制法への転化は認められない。
 まるで、火事場の泥棒である。

6 飲食店は、なぜ営業するのか。
 ⇒従業員の生活が懸かっているからである。
  時短や停止による逸失利益の全額を保障し、生活を保障すれば、要請に従ってくれるであろう。
  問題は、十分な補償をするかどうかであり、強制力の導入ではない。



密室での特措法改正論議を弾劾しよう!

2021-01-14 18:46:00 | ノンジャンル
新型コロナ特措法改正の問題点-「予防的措置」の位置づけ-

 昨日(1月13日)、坂井学官房副長官は政府・与野党連絡協議会に出席し、「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正の方向性」を提示し、説明した。
 それによれば、政府対策本部長は、緊急事態宣言の前に、「予防的措置」の発出できるようにし、さらに、知事の要請に従わない場合には、知事は命令に返ることができ、その命令に違反した場合には、過料を科することを内容としている。

まず、現行特措法の枠組みを見ておこう。
特措法は第一ステップとして、新型コロナを含む感染症が発生した場合に、内閣に政府対策本部を設置する(15条)。政府対策本部が設置された場合には、都道府県においても知事を本部長とする都道府県対策本部を立ち上げる(22条、23条)。この段階において、知事(都道府県対策本部長)は感染対策のために、個人・法人に対して必要な協力を要請することができる(24条9項)。
 第二ステップとして、新型コロナの全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、またはそのおそれがある場合に、政府対策本部は緊急事態宣言を発出する。緊急事態宣言は期間・地域・概要を定めて発出される(32条1項)。
 緊急事態宣言の対象となった地域の都道府県知事は、外出自粛、施設の使用制限や催事の停止を要請することができ(45条1項、2項)、施設管理者等が要請に従わない場合は、使用制限または停止を指示することができる(同条3項)。

 これに対して、「改正の方向性」では、第一ステップと第二ステップのあいだに「予防的措置」を設けようとするものである。
 その「予防的措置」については、「まん延の防止に関する措置を講じなければ『新型インフルエンザ等緊急事態措置』を実施すべき区域となることを回避することが困難である事態として政令で定める事態が発生したと認めるときは、『予防的措置』(仮称)として、措置を実施すべき機関、区域等を公示する。」としている。
 対象となった都道府県の知事は、「感染の状況について政令で定める事項を勘案して措置を行うことが必要と認められる業態に限り、施設の営業時間の変更等の措置を要請できる、正当な理由なく要請に応じない場合には命令、命令に違反した場合には過料、要請又は命令を行った場合に感染を防止するため特に必要があると認めるときは公表することができる。」とし、命令を出す場合には「立入検査・報告徴収」ができ、これを拒んだ場合の過料も設けるという。
 一方、予防的措置に応じない知事に対し、政府対策本部長は、必要な指示をすることができるとした。

 現行法では、緊急事態宣言を出す以前の段階において、知事が取りうる措置は、「当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。」(24条9項)と規定され、「必要な協力の要請」に限られている。
 今回の「改正の方向性」は、その間隙により強固な措置をとることができるようにしようというものである。
 それを段階的に見ると、次のようになる。
 第一段階 該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき必要な措置
 第二段階 まん延の防止に関する措置を講じなければ『新型インフルエンザ等緊急事態措置』を実施すべき区域となることを回避することが困難である事態として政令で定める事態が発生したと認めるとき予防的措置
 第三段階 新型コロナの全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、またはそのおそれがあるとき緊急事態宣言
 このように見ると、現行法の「必要な措置」から「緊急事態宣言」へ飛ぶのは少し隔たりがある。その間隙に何らかの措置を認めることは妥当かもしれない。
 しかし、「まん延の防止に関する措置を講じなければ」という要件は、わかりづらい。第一段階の「必要な措置」と比較し、「まん延の防止に関する措置」とは何を意味するのであろうか。「必要な措置」に「まん延の防止に関する措置」も含まれているのではないか。まん延を防止しない必要な措置など存在しない。そう考えると、それは、「予防的措置」を導入するために規定した要件にすぎなくなるであろう。つまり、「予防的措置」としての知事の権限、すなわち施設の営業時間の変更等の措置の要請、正当な理由なく要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料、特に必要があると認めるときの公表を正当化するための手段とされているのではないか。
 このような「予防的措置」の導入は、ただ知事権限を強化するためだけのものであり、反対せざるを得ない。
 また、緊急事態宣言下における、同様な知事権限の強化についても同様である。
 緊急事態宣言にしろ、予防的措置にしろ、必要なことは、事業者への十分な補償である。営業時間の短縮を要請しながら、それに見合った保証をしなければ、事業者は事業継続のため営業を継続しなければならず、その営業により生計を立てている従業員の生活も保障しなければならない。それらの補償を十分に行うことが先決であり、まずそれをすべきである。
 
 今回の改正提案を自民党と立憲民主党との「ボス交」で済ませようとしているが、このような人々の生活に直結し、罰則を伴う私権の制限を導入しようというものは、広く公開の場での議論が保証されなければならない。秘密裡での交渉は絶対に許してはならない。