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福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

"令和"の時代を生き残る社会福祉法人・組織となるために、アップデートし続けることが必要!

2019年04月30日 | 経営戦略
前回の記事が平成最後の投稿にはなりませんでしたね(笑)
年度末までの繁忙期が終わり、ホッとした矢先、2019年度業務がどっと押し寄せ、10連休どころではない状況になってきました。
世間は新天皇即位にあやかって、海外旅行やレジャーを楽しむ方が多いと思いますが、福祉施設や医療機関、サービス業などにおいては、それどころじゃないことをお察しします。


さて平成最後の記事は、「アップデート」について取り上げます。
意味としては、「ソフトウェアやデータベースを最新の状態に更新すること」として用いられており、自己研鑽の意味合いとして用いることもあります。

iPhoneやスマホ、その中に入っている様々なアプリも、定期的なアップデートが行われ、サービス内容が充実したり、バグの解消といったアップデートもあります。
このようなデジタルに関するソフトウェアにはアップデートとう概念があることで、アジャイル的な迅速なサービス開発・提供とサービス内容の改善・高次化に常に取り組むことが出来ます(逆にここを怠ると、誰からも見向きもされないソフトウェアやアプリになってしまうでしょう)。
以前、介護ロボットのアップデートで出来ることが増えていくという話をしましたが、インターネットに接続されているIoT機器は常に進化を遂げることができる強みを持っています(先日の「名探偵コナン」の映画では、IoTテロという脅威も映像化されていましたが)。

組織の弱体化を打ち破るためには古い慣習を捨てる」でもお伝えしましたが、古い慣習は捨てましょう。
特に福祉業界では、これまで培ってきた歴史を重んじながら、「〜しなければならない」「〜あるべきだ」という思考回路に陥りがちですが、それでは時代遅れになってしまいます。
そういう習慣は平成に置いて、令和の時代には持ち越さないようにしましょう。

車の自動運転支援システムやスマホによる電子決済という新しいサービスが生まれ、痛ましい高齢者による交通事故ゼロやお財布を持たない社会が現実味を帯びつつあります。
そうした新しいサービスが生まれるというのは、「もっとこうなったらいいなぁ(向上力)」の賜物といえます。

では、皆さんの施設・事業所はこれからの社会や地域住民から求められる役割を全うできるような機能強化や役割を担う準備が出来ていますか?
社会福祉法人のあり方検討会の流れを受けた社会福祉法の改正に伴う、ガバナンス強化や情報開示による透明性の確保、地域公益的取組の推進など社会福祉法人に求められる責務が明確化されましたが、はっきり言って、こんなのは序の口です。
これから本格的な少子高齢社会を迎える中、制度の持続可能性を鑑みれば、介護保険制度は聖域なきさらなる変革が断行されるでしょう。

ケアプランの有料化や軽度要介護者の介護保険からの切り離し(総合事業:介護予防・日常生活支援総合事業への移行)は避けて通れません。
地域住民同士の支え合い(互助、共助)の促進、予防介護による医療・福祉サービスは本当に必要な利用者への重点化が進められ、我々国民の意識も「病院・介護事業所から地域(いわゆるサードプレイス)へ」に変わっていくでしょう(デイのプログラムも団塊の世代用にアップデートが必須です)。
また、現場におけるデジタル化や介護ロボット・福祉機器の導入は加速するので、パソコンが使えない職員でも、スマホやタブレットで記録を残したり、会議はペーパレス化が推進されるでしょう(国会でもタブレットを導入しているのですから)。

また、機能や役割という点については、救護施設では、一足早く、自らの施設の社会的役割強化を明確化し、全国的に救護施設の認知度アップや情報開示の強化に向けた福祉サービス第三者評価受審を進めています。
特養においても、看取り介護に注力した終の住処としての専門性を、地域住民向けの勉強会などを通して、発信している施設もあります。

小規模法人の大規模化・協働化については、国も推進する姿勢を示しており、地域公益的取組の推進を含め、協働購買や法人横断で本部機能をBPOするなど、社会福祉法人のあり方の多様化が現在進行形で進んでいます。
すでに、危機感を感じている法人では、これまでの「〜しなければならない」「〜あるべきだ」から脱却し、自分たちの生き残りをかけてアップデートするための「戦略」を描き始め、それを実行しています。

2000年以前の措置の時代(福祉1.0)、2000年以降の介護保険制度導入:市場原理の導入(福祉2.0)、2017年社会福祉法改正:社会福祉法人のあり方の再考(福祉3.0)、2025年団塊の世代が後期高齢者となる:少子高齢社会に突入(福祉4.0)という、段階を経てきています。
そして、2040年問題(福祉5.0)にどう対処していくか、どう適応していくかという脅威が目前まで来ています。
介護保険制度の持続可能性を担保する前に、社会福祉法人や施設、事業所の経営を担保しなければ、社会インフラとして福祉や介護サービスは途切れてしまう最悪なシナリオも容易に想像ができてしまうような時代が来ようとしています。

と、平成最後の記事がなんだか暗くなってしまうのもアレなので、だからこそ、アップデートし続ける必要性を最後に伝えたいと思います。
施設を長期的な視点でクローズすると決めている施設長もいらっしゃいます。
それはそれで一つの役割を果たしたと判断できれば、納得ができるのではないでしょうか。
しかし、経営理念を実現するという社会福祉法人の使命を果たし続けるために、その時代時代にあった機能や役割を担い続けていく必要性があると、生意気ですが私は思っています。

戦略を描く、職員を育てる(マネジメント感覚の醸成)、経営成果や組織変革といった結果を残す、そのために組織を作るということに取り組んでいます。
お客様から評価していただいたり、フィードバックをいただくことは、私自身のアップデートがお客様に貢献できた証です。

令和の時代も、さらに厳しい事業環境となることが予想されます。
皆さんの法人や施設もぜひ利用者、家族、地域住民、関係者の方から「あってよかった」「お願いしてよかった」と言ってもらえるよう、アップデートをし続けてください。
一緒に良い時代を迎えましょう。

管理人

特養の経営実態を読み解き、下期への対応策の検討を

2018年10月28日 | 経営戦略
私が携わっているいる平成29年度決算書(事業活動計算書)に基づく各地域の「特別養護老人ホーム実態調査」の数値がまとまりつつあります。
今日は特養の経営実態を読み解きながら、次年度の事業計画書策定の方向性について考えたいと思います。

平成29年度は介護報酬改定前というタイミングです。
しかし、4月から始まった「介護職員処遇改善加算(新Ⅰ)」の影響により、全体的にサービス活動収益(以下、収益)が押し上げられています。
ご承知の通り、「介護職員処遇改善加算」は介護職員に加算以上の賃金へ転化させて還元しなければなりませんので、"いってこい"な訳です。
そうすると収益は押し上げられますが、同様に人件費も上昇し、結果としてサービス活動費用(以下、費用)が押し上げられます。

調査対象地域では、介護人材の採用が思うようにいかず、「利用者10人あたり職員数」が昨年度より減少しています。
この指標は、各施設の「常勤換算職員数(正規・非正規の直接・間接人員含む)/1日あたり利用者数×10」で算出します。
例えば、100名定員で2:1で職員を配置していれば、職員は50名となります。
利用率100%で計算すると、「50/100×10=5.0」となります。
「利用者10人あたり職員数」なので、10倍してもらうと定員100名定員換算に置き換えることができます。
この「利用者10人あたり職員数」が減少しているということは、直接雇用職員が減少しているということがいえます(反対に派遣職員が増加)。
要するに人件費(職員の人数×賃金水準)を構成する、職員の人数が減少したことで、人件費の上昇は抑制されたといえます。

そして調査結果で最も深刻な要素が、"利用率"の低下です。
調査対象地域の「本入所+短期入所」の利用率はで1〜3ポイント低下しています。
定員100名の特養で、利用率1ポイント相当で365名ですので、3ポイントとなると約1,000名を越してきます。
1日あたりに換算すると、毎日3名分のベッドが常に空いている状況となります。

では、なぜ空床があっても、なかなか埋められないのかです。

1.利用者の重度化(入院予防)
特養の入居要件として、要介護度3以上になり、また日常生活継続支援加算を算定するため新規入所者の重度化(要介護度4・5、認知症重度者など)が進んでいます。
そのため、利用者の状態が安定せず、入所してもすぐに入院してしまう(逝去される)というケースが増えています。

また、利用者の重度化に伴い、誤嚥性肺炎などによる入院も増加傾向にあるという話を聞きます。
現場では口腔ケアや口腔体操、訪問歯科医や歯科衛生士による口腔内の清潔保持などに取り組んでいると思います。
しかし、口腔ケアの仕方が標準化されていなかったり、職員の入退職によりサービスの質の向上が図れず、利用者の重度化対応に追いついていない状況もあるようです。

"フレームワークを活用した経営戦略②"で「バランスト・スコア・カード(BSC)」についてご紹介しましたが、良い経営を行うためには、人材育成に注力することが出発点となります。
大変な時だからこそ、人材への投資を行い、皆さんが目指す利用者・家族満足につながるサービス提供に結びつけていただきたいものです。

入院者を予防するという取り組みとして、利用者をいかに入院させないかを検討するため、多職種が連携し「入院カンファレンス」というのを定期的に開催し、状態が安定しない利用者への対応の検討や現在入院している利用者の対処の目処などを共有し、空床期間の削減に取り組んでいる施設があります。
利用者をいかに多職種が連携して(同じ思いで)ケア出来るかが、利用者の生活を支える上では重要です(そのための思い込みをなくしたり組織の中の共通言語化に取り組めているでしょうか?)。

2.待機者・家族との関係性構築(空床管理)
生活相談員が待機者リストを管理し、空いたらすぐに声かけができるようにしていると思います。
利用者の重度化に伴い、これまで4〜5年ぐらい施設で生活してご逝去されるサイクルから、現在では1〜2年とそのサイクルも早くなってきています。
申し込まれてから、いかに利用者や家族との関係性を築き続けられるかが、空床管理においてはポイントになっています。

ある法人では、待機者リストの上位の方のご自宅へ毎月生活相談員が訪問し、生活の様子や状態などのヒアリングに訪れながら、顔のみえる関係性の構築に注力しています。
「理想的ではあるけれども、生活相談員が十分に時間を確保することが難しい」という反応が正論だと思いますが、結果的に高い利用率を維持することが出来ています。
生活相談員として何をしなければならないか(職務)やどういった能力が必要か(職能)を明確になっていますか。
何でも屋化してしまう生活相談員や介護職員の役割を明確にし、現場で役割を全う出来る多職種連携体制を構築することが、組織を作っていく上では必要です。
生活相談員に重点的に何に時間を割くか検討の余地が残されているのではないでしょうか。

3.地域で存在感のある法人となるために(待機者確保)
待機者リストを用いて、地域の家族介護者の方たち向けの特養を知ってもらう機会や認知症や看取りなどの勉強会を開催したり、自治会レベルでの地域住民同士が顔の見える関係性を構築できるよう地域公益的な取組に展開している法人があります。
その地域の新参者の法人(地方から進出してきた法人など)は特に、その地域での認知度はほぼ皆無でしょう。
地域住民にファンになってもらうための取り組みを行っていかなければ、結果的に貴法人・施設が選んでもらえません。

また、ユニット型はプライバシーを確保された個室である反面、その費用負担の高さから敬遠され、申し込み控えが現れてきています。
有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅と費用的にほぼ互角となってしまうユニット型においては、新規利用者確保が難しくなっていくことが想定されます(借入金返済を加味すると、経営状況の厳しさが増していくでしょう)。


すでに10月が終わろうとしていますが、事業計画書で立てられた上半期の成績評価はいかがだったでしょうか。
今年度の利用率や平均要介護度などの経営指標の目標は達成されたでしょうか。
上記の状況は平成29年度の状況ですから、4月の報酬改定を迎え、今年度はどういった状況を迎えていらっしゃるでしょうか。

お客様からは、特に利用者確保、職員確保は深刻化しているという話を聞かせていただきます。
経営状況が厳しさを増す中で、どうしてもネガティブになってしまうのは致し方ないと思います。
しかし、こういった状況だからこそ、「コア・マネジメント」に基づく、「ケアの標準化」「入院者予防」「職員定着・育成」「役割の明確化」「地域公益的な取組」といった組織づくりやサービスの質の向上といった視点を取り入れながら、下期への対応策や次年度の事業計画書策定の方向性について討議を進めていただきたいと思います。

管理人

介護ロボットとどう向き合うか

2018年09月02日 | 経営戦略
デザインあ展』で訪れた日本科学未来館に二足歩行ロボット"ASIMO"がいました。
"ASIMO"が「人間がテクノロジーやロボットとどう向き合うか、どう関係性を築けるか」といったことをいっていました。

"アイロボット"や"トランスフォーマー シリーズ"など、ロボットが出てくる映画はたくさんあります。
味方だったり敵だったりと、その映画の中で描かれるロボット達は善にも悪にもなります。

製造業には工業用ロボットが人に変わって製造ラインに設置され、日々作業工程の一部を担っています。
福祉業界、とりわけ高齢福祉では、人材不足や介助の大変さから、"介護ロボット"が注目されています。
ここでいう"介護ロボット"の定義は広義でいえば福祉用具やICT化を含めた概念と位置付けます。
狭義でいえば、ロボット技術の活用により高齢者等の自立支援を実現することを目的に、経済産業省と厚生労働省が「ロボット技術の介護利用における重点分野」として定めた⑴移動支援(屋内・外)、⑵移乗支援(装着・非装着)、⑶排泄支援、⑷見守り・コミュニケーション、⑸入浴支援、⑹介護業務支援の6分野13項目に位置付けられた介護ロボットを指すこととします。
"HCR(国際福祉機器展)"同様に、"CareTEX2019(ケアテック:国際介護用品展・介護施設産業展・介護施設ソリューション展の総称)"なども開催され、業界を牽引しています。

特養においては、夜勤職員配置加算で職員配置が0.9名に緩和(16時間夜勤の場合、16時間×30日=480時間×0.9名=432時間)されていますが、介護ロボットはまだまだ発展途上といった感じが正直なところで、平成30年4月の制度改正時には各関係団体間の感情論的な部分も含めた合意形成(コンセンサス)に十分な時間を費やせなかったものと推察されます。

前回のICT化同様、介護ロボットとどう向き合うかを経営戦略の一つとして考える必要があります。
例えば、"palro(パルロ)"という介護ロボットがあります。
パルロは「コミュニケーション」と「レクリエーション」ができるロボットです。
ですので、職員と利用者との雑談や世間話的なコミュニケーション、介護予防体操やレクリエーションをパルロが代替してくれます(随時、アップデートもされるようなので、出来ることも増えるのでしょう)。
業務が多忙すぎてなかなか利用者とのコミュニケーションの時間を取れない、レクリエーションもなかなか出来ないという現場の声は尽きませんが、リアルな金額の話をしますと、パルロを購入すると67万円(税別)、リースだと月3万円(購入に対する約22ヶ月分相当)となります(保守料的な費用も発生するのかは分かりません)。

これを高いとみるか、安いとみるかは人それぞれでしょう。
「コミュニケーション」と「レクリエーション」の業務を100%代替できるか、というと半人前程度でしょうが、介護職の2つの業務を削減できることの費用対効果をどう評価するかが重要です。
介護ロボットによって業務の一部を代替することで、介護職としてやるべき本来業務に割く時間を確保することができ、結果として、利用者と向き合える時間を増やすことが出来る、となると職員も利用者共に満足度は向上するでしょう。
冒頭の工業用ロボットも人が行うには難しいルーチン工程を代替し、他の業務に専念出来る時間を捻出しているわけです。

一方、福祉現場においては介護ロボットを導入したからといって、何かが劇的に変わるかというと、それは費用対効果を大きく見積もりすぎていると指摘せざるを得ません。
なぜならば、現時点の介護ロボットは、あくまでも介護職の"一部"を代替し、かつ"一時的"に代役を務めたり、アシスト(補助的)するものが中心となっています。
介護ロボットを導入することで隙間時間を作り出し、業務の手順や内容を見直し、効率化・合理化を進めることを目的と位置づけ、費用対効果を積算することが必要です。

パルロを月3万円でリースしたとすると、3万円÷30日=1,000円/日となり、時給1,000円で朝・昼・夕食事に20分ずつ機能訓練や口腔体操、ちょっとした世間話をしてくれるだけで、元が取れそうな金額設定となっています。
1日あたり倍の時間をパルロくんの活躍により職員が自由に使える時間を捻出できたとしたら、67万円の投資はあっという間に回収できてしまうのではないでしょうか。
現場の職員が自分たちの業務のために、利用者の安心・安全な生活を送れるようにするために、介護ロボットをいかに活用できるかが費用対効果を大きく左右することになります。
導入に際してはその目的や建設的な合意形成(コンセンサス)を図り、オペレーションや業務マニュアルの見直しも含め、日々の業務できちんと活用できるような運用方法と定期的な検証(必要・不要か、オペレーションの見直し等)をしていく必要があるでしょう。

また、発展途上である介護ロボットですが、AIやICTと組み合わせて研究が進められています。
しかし、「介護ロボット市場に関する調査(株式会社矢野経済研究所 調べ)」においても、今後の将来展望して、『介護ロボットに最も望まれるものはヒット作と言われる製品の誕生である。介護現場において、欠かすことのできない製品として認識され、日常生活で頻繁に見聞きするほど普及する製品が誕生すれば、それが起爆剤になり、介護ロボットへの関心が高まり普及にも加速がつくと考える。』と言及されています。

介護ロボット業界そのものがまだ若い業界であるのは事実ですが、例えば、DVDの普及を促進させた"PlayStation2"や電気自動車の前衛となったハイブリッド自動車"プリウス"など、業界を牽引する起爆剤としてのヒット作が未だないというのが現実です。
私見ですが、その理由はパルロの例でみたように、どの業務を介護ロボットに代替させるかということの精査が十分行えていないのではないかと考えています(ニーズはあるが、そもそもビジネスとして成り立つかも重要な要因と考えられます)。
現場で介護ロボットに何を期待しているかと実際に世の中に現れる介護ロボットがミスマッチを起こしていて、iPodやiPhone(いわゆるスマホ)のような経験価値を見出せていないのではないでしょうか。

"ルンバ"というロボット掃除機が流行っていますが、この"ルンバ"も日中、掃除機をかけている時間がない共働き家庭(共働きではない家庭にもあることでしょう)が、日中外出している間に掃除をしてくれるという優れものです。
"ルンバ"によって、掃除という家事を何割か削減できたのです(同様に、食洗機は洗い物から解放してくれます)。

このように、介護ロボットに業務内容の何を代替させるか(代替させられるか)、業務量をどの程度削減し、業務負担をどの程度軽減できるか、「引き算の思考」を持って検証することで、導入に向けた方向性や製品の選定が具体化し、経営戦略を見出しやすくなるでしょう。
食事時間中に、"ルンバ"で利用者の居室を清掃してもらうことが出来たら、皆さんの業務の効率化・合理化はどの程度図れるでしょうか。
闇雲に介護ロボットの流行りに乗るのではなく、皆さんの施設で必要な介護ロボットが何かを想像(イメージ)し、新たなオペレーションを創造(デザイン)することで、介護ロボットとの向き合い方が自ずと見えてくるでしょう。

介護ロボットが皆さんにとって、善となるか、悪となるか。

管理人

福祉業界のICT化の可能性について考えてみる

2018年08月26日 | 経営戦略
“働き方改革”のスローガンのもと、様々な業界で効率化・生産性の向上に向けた戦略的なICT化が進められています。
その一方で、ICT特需の影響もあり、IT専門職も不足していると聞きますから、日本人(私も日本人ですが)の性(さが)なのか、つくづく流行りモノが好きなんだなぁ、と思ってしまいます。
なので、多くの施策がモグラ叩き的な処方箋ばかりで、原因の根本は未解決が多くなってしまうのもうなずけます。

さて、他産業に比べて、福祉業界は“マンパワー”といわれるように、対人援助業務が中心で、属人的になりがちな業務(職人化)ゆえ、ICT化が遅れている状況は否めません。
RPA(Robotic Process Automation)”による作業の自動化により、業務効率を劇的に高めた大手民間企業も増えてきています(非営利企業との考え方は必ずしも一致しませんので、参考としてお読みください)。
記録類の電子化についてはすでに多くの施設でも進み、デイサービスでは送迎車のルート作成もデジタル化されつつあります。
最近ですと、介護ロボットDefreeAIを活用したケアプランの自動作成なんかが注目されつつあります(自治体の補助金などもありますから、積極的に検討していただきたいと思います)。
ただし、現場の声を聞くと、「この介護ソフトは使いにくいんです」「ケアプランの自動作成の本格導入までにはまだ時間を有する状況」といったように、ICT化そのものの内容(クオリティ)や使い勝手(UI:ユーザーインターフェース)が現場ニーズにマッチしていない、または、追いついていないのではないかと感じます。

記録ソフトを例にとってみると、高齢系であれば日々の利用者の様子やバイタル、水分・食事摂取量、排泄状況などは記録しやすいように選択肢が設定されていたり、チェックボックス化されるなど、短時間で記録できるような工夫がなされています(iPadなどのタブレット端末で記録を入力することも可能なものもありますよね)。

しかし、それらの記録とケアプラン(個別支援計画など)との結びつき(連動性)を意識しやすいUIかというと、別にバインダーを作って、一人ひとりのケアプランをわざわざファイリングし、Aさんのケアプランの内容を確認するために顔を右と左に行ったり来たりしないと書けない、なんて話はざらにあります。
福祉サービス第三者評価で実際に記録ソフトを動かしてもらいながら説明を受けることがありますが、説明を一回聞いただけでは、私は使いこなせる自信がありません(苦笑)。

ただし、そもそも論として、日々の記録とケアプランが連動していない理由として、記録に何を書かなければならないかの視点がズレてしまっているケースがあります。
その場合は、記録のデジタル化云々以前の問題ですので、ケアプランの個別化・具体化し、記録の視点をきちんと定め、記録内容の充実化を図ることが先決です(この状態で導入しても、費用対効果は望めません)。

あくまでもある記録ソフトの例でしたが、世の中には、ケアプランと日々の記録が連動しやすいような工夫がされ、モニタリングやアセスメントしやすいソフトもあるのでしょう。

日々の業務の中でも、「もっとこうなったらいいなぁ」と思うことを、私は「向上力」と呼んでいます。
この「向上力」は日々の業務の中での“違和感”が起点となり、業務改善につながる重要な気づきと位置づけています。
組織の弱体化を打ち破るためには古い慣習を捨てる”の記事の中では組織の新陳代謝について取り上げ、““当たり前”をどう変えるか?”では、クルト・レヴィンという心理学者の残した「解凍=混乱=再凍結」というモデルをご紹介しました。
この「向上力」を自分達の出来る手段・方法の視点で発想(発案)するか、またはありたい姿(達成・ゴール)を創造(デザイン)し、その達成に向けてあらゆる手段・方法を練るかによっては、業務改善のプロセスも大きく変わります。
「記録のデジタル化」が目的になってしまっては「導入できる・できない」に対する手段・方法を練ることになりますが、「業務の効率化(最終ゴールは“職員の有給休暇取得率の向上”)」が目的であれば、「記録のデジタル化」は一手段・方法であり、そのほかにも様々な対策を講じる必要があるわけです。
初期段階で「記録のデジタル化」が上手く導入できなくても、結果的に「記録のデジタル化」に着手しなければならない時が来たら、改めて検討すべき議案として取り上げる必要性に迫られることになります。
なぜならば、それは“経営戦略“として実行するために不可欠な判断だからです。
これまで通りのやり方、“当たり前”をどう変えていくかは、福祉業界においては、大きな“経営戦略“となり得る経営課題といえます。

話は変わって、私は子どもと外出する際に気がかりなのが、“トイレ探し“です。
大人と違い、膀胱が小さい子どもは、1〜2時間ぐらいで「トイレ!トイレ!」となります。
男子トイレなら回転は早いのですが、どうしても女性トイレは時間がかかります。
その際、子どもの切迫状況によって、これから向かおうとしているトイレが空いているのか、混雑しているのかによって結末が大きく変わる、こともあります。
このように、これから向かおうとしているトイレの混雑状況がわかればなぁ〜と思っていたら、実はもうあったのです!

このように、「もっとこうなったらいいなぁ」と思うことの大半はすでに解決策がある(検討が進められている)か、またはアイディアとしてイノベーションを起こす引き金になる可能性があります。
では、どんなことがICT化されると現場における効率化・生産性の向上が図れるでしょうか?
もっといえば、どんな業務の時短を図りたいですか、どんなリスクマネジメントを軽減したいですか?
効率化・生産性が向上したことで出来た時間を、どんなことにもっと割きたいですか?
こんな視点で、皆さんも「もっとこうなったらいいなぁ」と思うことはないでしょうか?

大掛かりなICT化までいかなくても、例えば定例会議でホワイトボードに板書して、iPhoneのカメラで撮影して議事録として代用できないか(議事録作成時間の短縮)、またiPadなどのタブレット端末を導入しペーパレスを実現する(消耗品費の削減)、といったデジタルディバイスを活用した業務改善やコスト削減を思いつくだけでも起案する価値があると思います。
最初は試験的に導入し、半年、一年ぐらいしてアセスメントし、本格導入するかどうか、費用対効果(導入コストと時短効果など)を検証し、検討されてはどうでしょうか。

私はITエンジニアでもないので、「もっとこうなったらいいなぁ」とアイディアを出すだけですが、ブログを偶然にもご覧になられたIT系の方達のヒントになれば幸いです。

①ソーシャルワーク・プラットフォーム(SWPF)
医療機関のカルテを電子化し、クラウド化することで、どの医療機関を受診しても、患者の既往歴やこれまでの処置・処方箋の内容が閲覧することができ、医療費の抑制や医療処置の効率化を図ることが出来る仕組みを導入している地域があります。
それのソーシャルワーク版が、「ソーシャルワーク・プラットフォーム(SWPF)」です。
この構想を思いついたきっかけは、虐待により幼い命が失われる事件が後を絶たない状況が、縦割りとなっている関係機関同士の情報共有や多職種連携体制に大きな課題があるといわざるを得ません。
そこで、「SWPF」を通して、ケースをクラウド化し、高齢・児童・障害の垣根を超えた多職種が連携しながら、最善の支援を行う体制をとることを可能とすることを目的とします。
多くのケースは紙媒体で管理しており(またはスタンドアローンのデジタルデータ)が多く、ケースに対する良いアプローチ・悪いアプローチなど高い専門性を有するにも関わらず、ナレッジが社会的に共有化されていないため、切れ目のない社会福祉サービスを提供していくための土台が必要といえます。
しかし、非常にデリケートな情報を管理するPFになるため、万全なセキュリティなどを付す必要があるでしょう。
施設の中での多職種連携でも上手くいかないに、地域におけるソーシャルワークにおいても、ICTを活用しなければ、これまで以上に専門性やスピード感を持った対応・判断は出来ないのではないでしょうか。

フィンランドには“ネウボラ”という制度がありますが、切れ目のない福祉サービスを提供するためにも、SWPFのマネジメントを社会福祉士の業務独占化にするなど、ソーシャルワーカーとして求められる役割・機能をICTを活用して強化したいですね。

②QRコードを用いた情報共有システム
職員さんが出勤すると、事務所にある業務日誌やケース記録に目を通して、不在時の利用者の様子や業務連絡の情報共有を行います。
皆さんは出勤してから、この情報共有にどれくらいの時間を要していますか?
フロア全員分ですか?担当利用者分ですか?
記録に目を通すのも大事ですが、情報共有の一環として、利用者とコミュニケーションを取る時間と位置づけてはどうでしょうか。

利用者の居室にあるQRコードにタブレットのカメラをかざすと、利用者のケース記録と特変事項が列挙されます(日々の記録に紐付けられています)。
その記録内容に沿って、利用者から直接話をすることで、リアルタイムで様子や状況を確認することができるとともに、利用者と一対一で話をする貴重な時間にもなり、関係性を深めるきっかけにもなることでしょう。

QRコードはいろいろな分野でも活用されている優れものです。
さまざまな情報をコンパクトに管理し、カメラで読み取ることで必要な情報共有や情報管理ができるよう活用を検討してみてください。

現場で困っていること、効率化・生産性向上に向けた皆様からのアイディアがあれば、Twitterまたはブログにコメントをお寄せください。

管理人

“当たり前”をどう変えるか?

2018年08月16日 | 経営戦略
夏休み返上で現場業務に従事しておられる読者の皆様、大変お疲れ様です。
私も家族を妻の実家に送り込んで、夜行バスで1人上京し、仕事に明け暮れています。
世間では、夫と子どもだけが帰省して、妻は自宅でのんびり、なんていうのが流行っているようで。
私はその逆の状態で、仕事する環境を作ってもらっているといった状況でしょうか。

さて、今日は皆さんに「“当たり前”をどう変えるか?」と問いてみたいと思います。
「夜勤体制を16時間(2交代)から8時間(3交代)に変えます。」
「職員の配置人数をマイナス1名で行います。」
「60歳以上の高年齢者雇用を増やします。」
「介護福祉士候補者(EPA)などの外国人介護職を受け入れます。」
「記録を手書きからデジタル化します。」
なんて、経営層から突然の通達が来たら、皆さんの反応はどうでしょうか?

.。
..。
…。
….。
…..。
……。

「無理です。」
「どうしてですか?」
「私出来ませんので、辞めさせてもらいます。」
といった反応でしょうか?

福祉でよくあるパターンとして、まず拒否からはいるというケースが多くあります。
誤解を恐れずにいうならば、「福祉職」や「介護職」ゆえの“あるある”ではないと私は考えています。
伝える側にも問題があると思いますが、職員はそもそも組織マネジメントに関することに熟知しておらず、さらに少ない情報しか知らされない(伝えられない)ため、その多くは状況を十分に処理できず、反射的に拒否してしまうということが考えられます。

例えば、「16時間夜勤(2交代)から8時間夜勤(3交代)に変更 = 夜勤→明け→公休がなくなってしっかり休むことが出来ない(職員にとっては不利益)」という方程式がパーンっと職員の頭の中によぎって反射的に拒否へとつながります(職員の感情論的な話し合いの末、8時間夜勤(3交代)導入を断念してしまうといった話も聞きますが…)。
しかし、「16時間夜勤(2交代)から8時間夜勤(3交代)に変更 + 公休保証・有給取得○○%保証 ≠ 夜勤→明け→公休がなくなってしっかり休むことが出来ない」という情報をきちんと伝えられるかどうかによって、職員が冷静になって判断できるかどうかが大きく左右するでしょう。

介護施設の夜勤、2交代制がさらに増加 8割以上が1回16時間超“と取り上げられていますが、特養の現場職員にとっては16時間夜勤(2交代)は“当たり前”になっています。
私が携わっている特養実態調査では、従来型の80%が16時間夜勤(2交代)、ユニット型は16時間夜勤(2交代)と8時間夜勤(3交代)が半々という結果でした(開設年度の古い施設の方が16時間夜勤(2交代)が“当たり前”に定着しているといえます)。
また、ユニット型では職員の確保、配置もキツキツの中でやりくりしているので、8時間夜勤(3交代)の方が少人数でシフトを組みやすいといったメリットがあるものと思われます(ただし、16時間夜勤(2交代)に比べ、休みの確保が困難というデメリットもあると思われます)。

そもそも組織の意思決定の手順がきちんとしていれば、職員も不信感を抱くことはありません。
例えば、半年、一年前から8時間夜勤体制について職員にも意見を聞き、丁寧に合意形成を図りながら進めていれば、「どうやったら出来るだろうか」という検討のために時間を十分にさくことが出来ます。
職員に対して隠すことなく、きちんと経営状況や今後の事業展開なども共有し、一枚岩となるような組織は、結果的に風通しの良い組織風土を醸成しています。
正規・非正規問わず、職員を組織のコマの一つとして扱うのではなく、きちんと組織の一員であると認めながら、もちろん役割や責任も求めていきます。
それだけ組織の決定事項や方向性を常日頃から職員も肌感覚で感じているため、上記のような突拍子も無い決定事項が突然言い渡されるといったことは皆無といえます。

組織がこれまで長年にわたって培ってきたルールや習慣を見直すことは、大きな労力を要します。
今読み進めている”武器になる哲学“の中にクルト・レヴィンという心理学者の残した「解凍=混乱=再凍結」というモデルがありました。
詳細は書籍をお読みいただくとして、このモデルは個人的および組織的変化を実現する上での三段階を表しています。

「解凍」:今までの思考様式や行動様式を変えなければならないということを自覚し、変化のための準備を整える段階
「混乱」:以前のものの見方や考え方、あるいは制度やプロセスが不要になることで引き起こされる混乱や苦しみを伴う段階
「再凍結」:新しいものの見方や考え方が結晶化し、新しいシステムに適応するものとして、より快適なものと感じられるようになり、恒常性の感覚が再び蘇る段階


続きがあって、
「解凍」とは「終わらせる」という意味を含んでおり、何か新しいことを始めるために最初にすべきことは、「今までのやり方を忘れる」ということである

と書き記されています。
要するに、これまでの“当たり前”を変えるためには、今のやり方にテコ入れして“バージョン2”にする程度の話ではなく、今までの“当たり前”を捨てて、ゼロから作り上げるぐらいの覚悟を持って行うことが必要となります。
多くの組織変革が中途半端で終わってしまう理由が、「何かを終える(終焉) → 何かが始まる(開始)」の後者
ばかりに注視してしまい、何を終わらせるのかが共有されていないことを指摘しています(その結果、なぜ終わらせる必要があったのかが不明確なまま、変革をスタートさせてしまうのです)。

冒頭の5つの問いは、今後、福祉施設が直面するであろう大きな変革の問いです。
働き方改革、人材不足、高年齢者雇用、外国人介護職、デジタル化。
これまでの“当たり前”が通用しなくなってきている現代において、新しい“当たり前”をリデザイン(再構築)する時です。

管理人

自治体の各福祉計画から自施設の方向性を検討する

2018年03月29日 | 経営戦略
昨日は介護福祉士国家資格の合格発表がありました。
合格した方は資格を取って初めてスタートラインに立ったと言えます(私も同じ立場です)。
ぜひ、介護福祉士という資格を取得するために積み上げてきた経験や知識を介護現場で思う存分発揮して欲しいと思います。
また、今回は受からなかった方も諦めずに、来年度も挑戦してください。
恥ずかしながら、私は現場実習の1年半を含めて、資格取得まで5年かかりました。
「忙しくて勉強できない」という状況は分かりますが、合格した後の姿をイメージして、時間を作る努力をして挑戦を続けてください。

さて、4月を目前に控えた3月23日に「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」が、本日「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)」が示されました。
すでに関係する箇所については確認されていることと思います。
医師や多職種との連携に関わる解釈などが明確になるなど、新たな加算取得に向けた方向性の可否判断の参考にしましょう。

高齢福祉業界では4月以降の介護報酬改定が直近トレンドですが、皆さんの施設や事業所が属している自治体の各福祉計画はチェックされていますか?
第7期介護保険事業計画について、東京都では、パブリックコメントが寄せられ、最終案がアップされています。

例えば、特養では、平成29年度の定員数(平成30年2月1日時点の定員数)が、区部で25,027名、多摩部で20,815名、島しょで322名、計46,164名となっています。
それが第7期の計画では、平成29年度比で、平成30年度49,038名(1.57%)、平成31年度51,340名(1.64%)、平成32年度53,152名(1.68%)となっており、3年間で6,988名分定員を増やす計画となっています。
単純に定員100名の施設が70施設も整備される計算になります。
また、平成37年末までに3万人分確保することを目標に打ち出していますから、32年度以降はさらに加速度的に施設整備が行われるということです。

しかし、建物が出来ても、そこで働く職員を採用することが困難な状況が顕在化してきています。
先日、Twitterでも、埼玉県において、介護職員不足により特養開設がストップ?という記事をリツートしました。

特養実態調査に携わっている身として、なんとか職員を採用し、利用率を維持したいと考えている施設が多く、そのために給与水準を引き上げ、収益に見合う人件費とのバランスを失い、結果的に厳しい収支状況に陥ってしまう、という悪循環を生んでいます。

埼玉県ではそれも通用せず、開設してもユニットを開けられないといった状況が、多くの施設で発生し、ついに行政が歯止めをかけたと考えられます(慣例に流されず、賢明な判断だと評価できます)。
福祉医療機構(WAM)が3月23日付で公表した「特別養護老人ホーム開設時実態調査」では、開設して1年6ヶ月で利用率が28.9%から88.5%になり、新設法人にも比べ、既存法人の方がこれまでのネットワークや資源を投入することができ優位である結果となりました。
福祉計画通りに施設整備を進めるため、1法人1施設のような小さい組織や地方法人が進出してきても、事業を安定させるまでにどのくらいの時間を有するのでしょうか。
サ高住や有料老人ホームの乱立により、職員の奪い合いが激化したことが大きな要因の一つにもなっているといえます。

福祉医療機構(WAM)が3月29日付で公表した「特別養護老人ホームの入所状況に関する調査」では、1年間で利用率が低下した施設は約2割で、待機者が減少したと回答した施設は約半数にのぼっているとのことです。

各自治体がシンクタンクやコンサルティングファームなどに依頼し、各福祉計画の策定を行っています(自力で作成している自治体もあるのでしょうか)。
果たして皆さんが住んでいる、働いている地域の実態をきちんと反映した計画、内容となっているでしょうか。

既存事業の大規模修繕や建て替え、新規事業展開などを検討している法人・事業所においても、闇雲に地域ニーズだけに耳を傾けるのではなく、自治体が今後どういった福祉施策を進めていくかを吟味した上で、中長期的な事業計画や事業構想を練る必要があります。
ネットリテラシーという言葉もありますが、情報社会の中でより実態を表している情報をキャッチし、事業経営の方向性やビジョンを定めていきましょう。

管理人

法人職員から地域福祉を支える職員へ、"ケアワーカー シェアリング"というシステム

2018年03月01日 | 経営戦略
これを書き終えるころには、24時を過ぎ、3月に入っていることでしょう。
「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」とはよく言ったもので、2月があっという間に終わり、別れの季節でもある3月を迎えました。
当ブログの読者の多くは、4月以降の報酬改定への対応を控え、Q&Aが今か今かと待ちわびていることとお察しします。

先日、特養の施設長の集まりに参加した際に、近隣の特養同士の関係性がぎくしゃくし始めてきているといった話を聞きました。
その理由は「人材確保」による、奪い合いが加熱しているというもの。
今ではホームページでどこの施設の求人内容も把握することが出来るため、求人票の基本給や各種手当などの水準(金額)をみて、そっちの施設に人材を取られてなるものかという感じで、どんどん引上げ合戦のようになっていきます。
このような競争原理が働くと、収益以上に賃金水準を引き上げなければ人材が集まらないという経営判断が麻痺しはじめ、結果的に収支を悪化させる原因になりかねません(現に取り返しのつかない状況に陥っている施設も少なくありません…)。

「運営」から「経営」に大きなかじ取りがなされたため、人材確保以外にも利用者確保など、社会福祉法人たりとて競合同士となってしまうというのも分からなくもないですが、介護人材不足が増々深刻化していく中で、地域の社会福祉法人が良い意味で連携し、広域的に地域福祉を支えるセーフティーネットとしての本来の役割を果たすために"ケアワーカー シェアリング(介護人材の共有)"という新たなシェアリングシステムが今後の少子化に伴う高齢社会を支える切り札になるのではないかと考えています。
すでに、コンビニ業界では、店員(アルバイトだったかな?)を地域でシェアし始めた、なんてニュースもありましたね。

すでに「シェアビジネス」というキーワードが一般化して久しいですが、Uber(ウーバー)はカーシェアに着目し、車移動の効率化を図ったビジネスモデルとなりました。
1人で10のガソリンを消費するより、2人、3人でコストをシェアしたほうが地球にも優しいですし、週末に少し乗らない車が平日にも活用する機会が増えれば、車の総販売台数は減るかもしれませんが、一台当たりの走行距離が積み増しされ、買い替え需要を促進させることにつながると考えられます。

また、凄惨な事件が起こってしまった民泊の先駆けでもあるAirbnbも空き家同然の不動産をシェアすることで、新築などの件数は減少するかもしれませんが、リフォームによる新たな価値の創造や観光需要、地域資源の再生にもつながるでしょう。

このように、人口が減少していく上で、経営資源(人、物・サービス、金、情報など)を最適化し、経営のパフォーマンスを最大限に高めるために必要なダウンサイジングが起こる可能性は非常に高いといえます(過疎地の廃校などは象徴的でしょう)。

例えば、先ほど触れた"ケアワーカー シェアリング(介護人材の共有)"。
平成27年6月24日に報告された「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」では、介護需要と供給の受給ギャップが全国で37.7万人という推計値が示されています。

ようするに37.7万人分の介護人材(または介護を必要とする国民を支えられる人材)を賄う必要があるわけです。
東京都3.5万人、神奈川県2.4万人、大阪府3.3万人と大都市部は人口も多く、軒並み賄う人数も大きくなります。

そこで"ケアワーカー シェアリング(介護人材の共有)"というシェアリングシステムを一緒に考えていきましょう。
ネットを検索すると、「介護シェアリング」という取り組みをしているサイトがヒットしましたが、私が考えている内容とは少し異なるようですが参考までに。

私は、これまでは特定の「社会福祉法人○○会に勤めている介護職Aさん」という法人施設のために働くという役割(立場)から、「社会福祉法人○○会に所属し、△△地域を支えている介護職Aさん」のように、地域の高齢福祉や障害福祉、子育て・保育など、面展開を意識したソーシャルワークの視点を強め、より地域福祉を支える役割(立場)を担う段階に移行していくことが重要だと考えています。

なぜならば、地域包括ケアシステムや地域共生社会という社会システムへのトランスフォーメーションを現実的なものにしていくためには、一法人一施設のような小規模法人が単独で取り組んでも大きな成果(結果)を出すことは非常に困難だからです。
以前、「スケールメリットを生かした事業戦略を描くために」でも取り上げたように、ある程度のスケールメリットを確保した法人であれば、利用者の目的に応じて、施設・事業所を提案することができ、住み慣れた地域で暮らし続けられるようなストーリーを描きやすいですが、小規模法人では自施設の経営で精一杯という声も聞きます。
小規模法人でも地域における存在感を高め、地域包括ケアシステムの推進に貢献するためには、「法人」という枠組みから、「地域」という枠組みへ帰属意識を広げ、法人職員として地域に何が出来るかを問ていくことが、地域公益的な取り組みを含め、重要となるでしょう。
ただし、従来から述べているように、法人固有の経営理念やビジョンは"ケアワーカー シェア(介護人材の共有)"を取り組むうえでも土台であることには変わりありません(他法人の理念を共有していくというプロセスは必要になるかもしれません)。

この"ケアワーカー シェアリング(介護人材の共有)"という考え方は、法人同士のM&Aでもありませんし、グループ法人化でもありません。
あくまでも経営資源をシェアするというスタンスであり、お隣さんに醤油を借りるようなイメージで、「お互い様」というビジネス関係を構築し、地域福祉の維持(供給量、種類、品質)が目的です。
個人的に「一億総活躍社会」という表現は好きではありませんが、2025年以降の社会を支えていくかを考えた場合、地域の中の介護人材をいかに総動員させることが出来るかをしくみとして考えて、具現化していく必要があると思います。
Twitterで、「そのうち中学や高校で「介護」が必修科目になる日も来るんじゃなかろうかと。」とつぶやきましたが、介護人材を総動員させる種まきは早いに越したことはありませんから、現実味を帯びてくるのではないでしょうか。

職員を共有することになりますので、労務的な就業規則や人事的な賃金水準(賃金制度)、等級制度、考課制度なども広域で整備する必要がある反面、冒頭に触れたように、互いの経営を悪化させるような競争原理を抑制することにも効果を発揮するでしょう。
例え、外部のコンサルタントを入れて制度を見直すということになったとしても、費用を複数法人でシェアすることが出来るため、法人ごとの負担も軽減できます。
共同で研修会を開催してお互いのノウハウを共有したり、共同購入などで費用の適正化を図れるなど一石二鳥です。
と、いいこと尽くめの内容を書いてきましたが、A法人とB法人の労務管理や人事制度を一本化したり、ケアを共同でしていくためには、いくつものハードルを飛び越えていく必要があります。

"ケアワーカー シェア(介護人材の共有)"は互いにWin-Winの関係を構築して初めて機能するしくみといえます。
是非、理事長同士が直面している経営課題に目をそむけず、地域福祉を支える同志として、2025年問題を見据えて、協働できる道筋を見出して欲しいと願っています。

管理人

介護保険制度における特養の役割としての「看取り」の重要性

2018年02月19日 | 経営戦略
社会福祉士の国家試験を受験し、自己採点をする限り、合格圏内(?)という状況で多少浮かれ気味になっておりました。
一昨年の結果(28回目)は合格点には達していたものの、ゼロ点科目が1つあり、涙を飲みました。
昨年度(29回目)はインフルエンザで受験を断念し、今回やっと合格(?)といった状況です。
いまさら騒いでも何も変わりませんので、3月15日の結果発表を大人しく待つのみです。

さて先日、「介護施設における「看取り」を重視した体制構築講座」というセミナーに参加してきました。
講師はエイジング・サポートの小山様、小林様のお二人が務められました。
皆様の施設でも「看取り」を行っているかと思いますが、このセミナーでキーワードになっていたのが、「家族」です。
「看取り」を行う上では家族との連携は必須ですが、「看取り」を行うためだけに家族と連携するのではなく、入所当初から家族と良好な関係性が構築され、連携が取れているでしょうか?
セミナーの中でも家族と連携を取るための苦労話的な逸話も紹介され、「施設に入所できたら家族はノータッチ」では「看取り」を行うことは難しいでしょう。

福祉サービス第三者評価で関わった特養では、家族に対して、「施設に入所出来たことはゴールではありません。職員は家族の仲間だと思ってください。」というスタンスで契約時に説明し、家族との関係性構築に取り組んでいます。
その甲斐もあり、施設での看取り件数も多く、職員も看取りに前向きに取り組めているという話を聞きました。

看取りのセミナーでは、家族が看取ったあとに、「職員さんのおかげで(家族が)看取ることが出来ました」という挨拶をされた家族の動画が流されました。
看取った主体が家族であり、職員のサポートによって看取ったという実感をきちんと感じられる「看取り」が実践されている現実を目の当たりにしました。

私は「福祉をタブー視しないで」ということを方々で述べており(ブログでも書いたかもしれませんが)、手助けが必要な状況やアウトリーチして必要な福祉サービスを受けて欲しいと思っています(私はソーシャルワークには携わっていませんが、手を差し伸べれていれば守れたかもしれない命が犠牲になるニュースがあまりにも後を絶たないことが残念で仕方がありません…)。
セミナーの中でも死をタブ視ー死せず、皆がいつか迎える死をもっと前向きに受け止めていくことが今後の高齢社会における「看取り」のあるべき姿のような気がしました。

そんなセミナー報告はこれぐらいにして、4月から看取り介護加算の評価が手厚くなるのは、もうご承知だと思います。
看取り介護加算Ⅱが新設され、新たに設けられた配置医師緊急時対応加算の算定要件を満たした上で、施設で看取った場合、前々日、前日が100単位、死亡日は300単位増えます。

施設以外で看取った場合は、看取り介護加算Ⅰとなるわけですが、最終的に医療機関に救急搬送されて病院で亡くなっても「看取り」といえてしまうあたりに違和感を感じるのは私だけでしょうか。
生活の場である特養で亡くなるからこそ、従来、家族に見守られて住み慣れた自宅で最期を迎えていた看取りと同じといえるのではないかなと思います。
医療費削減においても、病院から特養での看取りへ移行を促す自治体が増えてくるのではないでしょうか。

さて、看取り介護加算とともに、機能訓練指導員の要件緩和や褥瘡予防、栄養関係、排泄介助の評価などについても、手厚い評価がされるようになります。
これまで特養入所者が要介護度3以上、日常生活継続支援加算の算定要件にある新規入所者のうち要介護度4、5の方の割合が70%以上というように、重度の方を受け入れる方向性が示されていましたが、ここにきてちょっと風向きが変わったように感じます。

現場ではこれまで利用者の在籍年数4〜5年という「生活の場」から、特養の入所者像が一変し、入所して半年、1年もしないうちに終末期を迎えるほどの重度者が増え、まさに「看取りの場」という状況が強まっていました。
日常生活継続支援加算の要件は変わりませんでしたので、要介護度4、5の方を中心に受け入れるものの、機能訓練や褥瘡予防などに取り組みながら(取れる加算はしっかり算定し)、日常生活が送れる状態まで利用者を一旦回復させ、特養で安定した生活を数年過ごした後に、終末期を迎え、きちんと施設で看取る、ということが特養のあるべき姿として再定義され、評価するという方向性が示された改定であった、と私は認識しています。

冒頭から看取りについて取り上げてきましたが、特養で提供できる最後のケアが看取りであり、そこに行き着くまでの機能訓練や褥瘡予防、栄養などさまざまな取り組みを行い、終末期を迎えることになります。
今回の特養における改定内容は、経営状況を大きく左右するような大きな変更はありませんでしたが、施設経営の今後の方向性を定めるポイントを押さえていただきたいと思います。

管理人


平成30年度 介護報酬改定からみえること

2018年01月30日 | 経営戦略
1月26日の介護給付費分科会において、“平成30年度 介護報酬改定の主な事項”と“報酬改定におけるサービス毎の改定事項”が示され、基本報酬と加算の単位数や算定要件が示されました。

細かいところはリンク先の資料を見ていただくとして、今回の改定では、①医療・介護連携、②自立支援・重度化防止、③多様な人材の確保、④制度の安定性・持続可能性が4つの柱として示され、それに基づいた改定となりました。



先の介護事業経営実態調査の結果から、全体では+0.54%のプラス改定となりました。
しかし、当日の給付費分科会においても、施設系・在宅系それぞれの改定率はいくらかという委員の質問がありました。
担当者からは今回はそういった計算はしておらず、全体最適を図っているという趣旨の回答がありました。

今回の基本報酬の改定では、①特養は従来型・ユニット型共にプラス改定(ただし、従来型小規模特養はマイナス改定)、②通所リハ、通所介護は大幅マイナス改定、③訪問介護の身体・生活援助はほぼ現状維持、④介護医療院の一人勝ち、という結果になりました。

①は介護事業経営実態調査の1級地、2級地の経営の厳しさを反映したものと考えられ、また都市部の介護人材確保のための処遇改善の一環、とも考えられます。

実態調査に携わっている者としては良かったと思いますが、東社協が中心となって行っていた”人材確保に関する請願“で求めていた級地区分の人件費率の見直しが、「特別集計した結果、45%が妥当だという結果になったので、見直す必要がなかった」という担当者の発言は腑に落ちないところです。

②については、通所リハ、通所介護ともに機能を明確にし、それに基づく加算をしっかり算定しないと、経営が厳しいという状況が色濃く示されました。

通所リハについては、医師の指示に基づくリハビリテーションの提供を行った場合に算定できる「リハビリテーションマネジメント加算」がこれまで以上に評価されるようになります。
また、介護予防にも「生活行為向上リハビリテーション実施加算」が適用されるようになり、いわゆる利用者の卒業をいかに計画的に実践できるかが、経営にも大きく影響してくることになります(諸刃の剣的な加算なので、実際どれくらいの事業所で算定しているのでしょうか?)。

通所介護においても、1時間単位で基本報酬が設定され、特に大規模は狙い撃ちといった感じです(定員200名など大型デイサービスは利用率(量)と利用者一人当たり単価(質)を上手くコントロールする必要が強まりました)。
現在、「7-9時間」でサービス提供している事業所では、「7-8時間」または「8-9時間」へのいずれかへの変更を検討されていると思います。
前者であれば、これまで通りの職員体制(シフト)で対応可能ですが、後者になれば体制(シフト)の見直しを余儀なくされます。
利用者のニーズと収益性、職員体制(シフト)の三位のバランスをいかに取っていくかが重要です(お客様の多くは、職員確保や人件費との兼ね合いから「7-8時間」を検討しているところが多い印象があります)。

通所介護はアウトカム評価も導入されましたが、思った以上に加算が小さいことに本会後の厚労省担当者とのやり取りの中で意見がありました(ADL維持等加算Ⅰは体制加算、Ⅱは個別加算となります)。
対象利用者の要件を満たしているか、またBarthel Indexを定期的に実施するということが求められます。
小さい加算ではありますが、通所介護の大きな流れとしては、日々の活動や趣味活動を通した機能維持・向上に向けた指標として取り組む必要があるといえます。

③については、身体介護に重点を置くような方向性が示されましたが、現場の実態を勘案した結果といえるでしょう。
ただし、身体介護としての「自立生活支援のための見守り的援助」を明確化していくということが伝えられています。
特に生活援助に特化した新たな研修の枠組みについては、まだ具体的に確定していないという状況の中で、いかに担い手を増やすと共に、自立支援に向けた訪問介護を確立するかが重要です。
その中には、外部のリハビリ職員と連携することで算定できる「生活機能向上連携加算」の見直しもされましたので、小多機なども算定に向けた準備をされてはいかがでしょうか。

④については、規制を緩和し、療養病床からの転換を促進させていく狙いがあるのはわかりますが、通所リハや通所介護のマイナス改定分がそっくり当てられた感が否めません。

そして何より今回の改定で感じたのは、介護の中に医療色が一層強まったという点です。
例えば、特養の配置医による「配置医師緊急時対応加算」やその体制を整備し、施設で看取った場合の加算が手厚くなるなど、今後、特養に医師を配置することが大きな流れになるのではないかと感じました。
私が存じ上げている特養の配置医として、世田谷区社会福祉事業団石飛先生は、看取り介護に力を入れておられ、多方面でご活躍されています。
常勤医師配置加算(25単位/日)を取れば、100名定員で年間900万円以上の収益になりますから、医師の年収として若干見劣りするかもしれませんが、現実的に配置医が可能な水準といえます。

医師の偏在が社会問題としてクローズアップしています。
今回の医療・介護連携の一連の内容を鑑みると、新たに医療機関(拠点)を地域に確立するのではなく、特養を医療・介護拠点化し、地域における包括ケアを推進するのではないか、医師を必置にしていくことで、否応なく偏在を解消する糸口としていくのではないかと感じました。

介護保険制度がスタートしてから今回で6回目の改定になります。
継ぎ接ぎだらけで、加算要件なども年々複雑化してきています。
4月まで残り2ヶ月となりましたので、いかに4月以降に適応していけるか、準備を怠らないようにしましょう。

管理人

予測困難な時代だからこそ、"問いかけ"による未来の想像と創造を

2018年01月20日 | 経営戦略
2000年に介護保険制度がスタートして、早18年を数え、6回目の改定を迎えようとしています。
措置から契約に一夜で変わり、福祉サービスにも経営という概念が導入されて久しいですが、2000年当初に比べても、施設系・在宅系ともに役割や機能が徐々に変化してきました。
改正内容も決まり、いよいよ報酬単価と加算のみといった状況です。
福祉施設の経営者の方々は、時代時代に合わせた方針に則りながら、これまで経営してこられてのではないかと思います。

しかし、昨年末にかけて一流大手企業による不祥事が立て続けに報道されたり、AppleやGoogle、AmazonといったIT企業がさまざまな業界に破壊的イノベーションを巻き起こしました。
大手一流企業の不祥事については、過信に伴う競争力の低下による苦肉の策だったとしても、組織におけるガバナンス機能不全と指摘せざるを得ません。

また、AppleによるガラケーからiPhone(スマホ)へ、Googleによるビッグデータを活用したマーケティング戦略の確立や自動運転技術の革新、Amazonによる実店舗からネットショップへ、Airbnbによる民泊の浸透(追うようにして規制の整備)といった、業界(企業)にとっては革命に近い激変が起こっています。
今年は医療・高齢・障害の制度変更があるため「トリプル改定」とも呼ばれていますが、上記の破壊的イノベーションに直面している業界(企業)からすれば、まだ生ぬるく映るかもしれません。

そんな予測困難な時代だからこそ、いかに未来の姿を想像し、組織やサービスを創造していくか、が問われています。
Twitterでも触れましたが、今月の"ハーバード・ビジネス・レビュー"のIDEO TOKYOのインタビュー記事で「問いかける力」について取り上げられていました。

私なりの解釈を加えて述べるならば、こんな経営課題を抱えている時に、皆さんはどのような問いかけが思い浮かぶでしょうか。

利用率が目標に達成しなかったとき:「なぜ利用率が上がらないのか?」
職員がなかなか定着しない時:「なぜ職員が辞めてしまうのか?」

この問いかけは「Why?」で構成されいますので、その答えは「Because~」となるでしょう。
しかし、「Because」から出てくる答えは、未来の姿と目の前の乖離(ギャップ)を生んでいる理由(Reason)でしかありません。
「なぜ利用率が上がらないのか?⇒入院者が多いからです」「なぜ職員が辞めてしまうのか?⇒育成体制が十分ではないからです」といったような理由がいくつか出てくるにすぎませんから、ここから未来の姿を想像していくことにはつながりにくいといえます(出てきても、この課題を改善するための手段程度にすぎないでしょう)。

では、より望ましい問いかけとはどういったものでしょうか。

利用率が目標に達成しなかったとき:「どうすれば地域の方に選ばれる施設となるか?」
職員がなかなか定着しない時:「どうすれば職員にとって働き甲斐・魅力的な組織となるか?」

例えば、このように問いかけてみたらいかがでしょうか。
どういう答えが出てくるでしょうか?
この問いかけは「How?」で構成されていますので、そのための手段やアプローチ方法を創造するきっかけとなるでしょう。
一見、利用率を上げるために地域住民に選ばれるというロジック(論理)は誤っているかのように映りますが、地域の方に施設の認知度を上げ、馴染みある存在となることが、結果、将来の利用者候補につながることは容易に想像できるでしょう。

では、地域住民に選ばれる施設づくりのためにはどんな手段やアプローチ方法があげられるでしょうか。
夏祭りなどのイベントに地域の方へも声をかけてみたらどうか、地域の趣味活動の名人を募って(有償ボランティアとしてでも)レクリエーションの充実を図ったらどうか、専門職を地域に派遣して介護予防や熱中症・感染症予防などの出張講座を始めてみたらどうか、などなど。
このほかにも、必要な組織やサービスを新たに創造するためのワクワクするような提案があがってくるのではないでしょうか。

ただし、ここで大事なのはこういったワクワクするような提案が職員一人ひとりの自発性から導き出され、かつ自分事として実践できる組織風土であることが結果を大きく左右することはいうまでもありません。
「人がいない」「建物が古い」といった出来ない理由が真っ先に出がちですが、そのような状況でも「How?」で問いかけてみましょう。
そのような状況だからこそのひらめきが思い浮かぶかもしれません。
冒頭に触れた不祥事を起こした一流大手企業では、AppleやGoogleのようにワクワク感を有する組織風土ではなかったと想像するに難しくないでしょう。
皆さんの法人・施設ではこういった組織風土を有しているでしょうか?

未来を予測するためには、法人・施設が抱える経営課題や目の前の事象について、まずは「How?」で問いかけてみましょう。
モノゴトを捉える視野の広がりを感じるのではないかと思います。
予測困難な時代だからこそ、想定の範囲内に収まる知見を持って未来を想像し、創造していきましょう。

管理人

コア・マネジメント経営のすすめ

2017年12月13日 | 経営戦略
Twitterでつぶやいたり、引用リツートが手軽すぎて、ブログの更新が滞ってしまい、楽しみにしていただいている読者の方々に対して、大変申し訳ありません。

今週、月、火、水曜日と、仕事終わりの職員を対象とした夜間研修を行ってきました。
職員のモチベーションを高めるために、経営理念と自身の仕事がどのように結びついており、向上力を持て仕事に向き合いましょう、といった内容です。
今年は「組織づくり」をテーマに、様々な場面で講師をさせていただく機会を大変多く頂きました。
利用率をあげるためには、業務の効率をはかるためには、といったいわゆるノウハウもお伝えしてきましたが、どんなに優れたノウハウを伝えても、実践する組織の成熟度が低ければ継続することができませんし、合意形成を図りながら組織全体での取り組みに発展することが出来ません。
まずは、組織の成熟度が低い法人、事業所は、組織づくりに取り組む必要性を説いてきました。

そのなかで、「コア・マネジメント」という考え方をご紹介してきました。
当ブログでは取り上げていなかったので、改めて紹介したいと思います。

「コア・マネジメント」とは、「経営管理(=マネジメント)」の「核(=コア)」という意味です。
要するに、経営管理をして行く上で重要な要素と定義することができます。
この「コア・マネジメント」とは、①経営理念、②事業計画書、③人事諸制度の3つが有機的に機能してはじめて、「利用者・家族満足につながるサービス提供」を行うことができる、という概念です。

①経営理念は、いわずもがな社会福祉法人や組織のあるべき姿を表現しているもので、あらゆるものの土台となっている概念です。

②事業計画書とは、経営理念を実現するために、「何をしなければならないか」を具体的な行動計画として示しているものです。

③人事諸制度とは、経営理念を実点するための人財育成の指針として、等級制度や賃金制度、目標管理制度、人事考課制度などの人財育成に関わる諸制度全体を指しています。

これらがきちんと職員一人ひとりに周知され、浸透され、理解され、納得されてはじめて、それに基づく行動を引き起こすことにつながります。
この3つが職員に周知、浸透されていなければ、組織人としての自覚や意識が欠如した、「個人的・マネジメント」で仕事をする人財と化してしまいます(仕事が個人レベルで管理され、人に仕事が付いてしまいます)。

そうなると、組織として財務(収支差額率、人件費率などの経営指標)・非財務(利用率や利用者一人当たりサービス活動収益など)に基づく経営成果を目指しても、組織が意図した結果を残すことが困難になります。
なぜならば、組織目標が共有化されず、個人個人が好き勝手に仕事(サービス提供)してしまうため、組織が意図した結果(事業計画書の定量・定性目標)を残すことができない組織を作ってしまうのです。
A職員が退職してしまって、これまで通りの業務ができなくなってしまった、というのが典型的な「個人的・マネジメント」に依存した組織であるといえます。

「コア・マネジメント(①経営理念、②事業計画書、③人事諸制度)」に基づくサービス提供をして行くことで、経営理念の実現のため、具体的な行動計画を事業計画書に落とし、組織として取り組めるよう人材育成にも取り組む、といった好循環を生むきっかけとなります。

この「コア・マネジメント」の概念は、経営品質賞をベースに作られた東京都福祉サービス第三者評価にも通じています。
職員の自己評価の結果をみれば、組織が若い・成熟しているといった状況はつぶさに把握できますし、職員の平均年齢や勤続年数なども参考になります。

次期介護報酬改定に向けて、具体的な内容が示され始めました。
いかに適応できる柔軟な組織づくりに取り組めるかが、法人・施設の生き残りに直結しています。

Twitterでも以前つぶやきましたが、進化論を唱えたダーウィンが、「生き残る種というのは、最も強いものでもなければ、最も知能の高いものでもない。変わりゆく環境に最も適応できる種が生き残るのである。」という言葉を残しています。
皆さんの法人・施設の永続発展(理念の実現)に向けて、ぜひ、「コア・マネジメント」に基づく組織づくりに取り組むとともに、組織力の強化やサービスの質の向上に向けた実践に取り組んでいただきたいと思います。

管理人

誰得の働き方改革を目指すか

2017年11月26日 | 経営戦略
過去に外資系企業にお勤め経験のある特養施設長とのフリートークの中で興味深いフレーズがあったのでご紹介します。

「日本企業は仕事に対してかけた“時間”によって評価されるが、外資系企業は仕事の“成果”で評価される。」
「ライフサイクルによって、(結婚して家を建てたいので)仕事量を増やしたり(給料を多く稼いだり)、(子育てや家族介護のため)減らしたりして仕事をすることが出来る。ライフサイクルによって、さぼっているのではなく、仕事ができない状況を考慮してくれる」といったことをおっしゃられていました。

施設長がそういった外資系企業の意識を持っておられるので、職員はお互い様精神で有給取得を推進し、産休・育休も取りやすい環境を整えており、ユニット型の施設にもかかわらず離職率は1ケタ台という定着の良さは驚きです。

さらに職員の有志同士でクラブ活動を立ち上げ、休日を合わせて定期的に楽しむ時間を作ったり、休日にも施設にやってきて、空きスペースで活動することが出来るなど、職員にとっても居心地の良い職場(憩いの場)となっているようです。

この法人では、国主導で進めている「働き方改革」を先取りして組織的に取組んできた結果、このご時世で職員不足にも悩まされず、また職員自身も働き甲斐・やりがいを感じながら仕事に向き合うことが出来ており、看取りの充実やユニット環境の整備にも力を入れて取組まれています。
「働き方改革」と言われて久しいですが、皆様の職場はこのようにうまく機能しているでしょうか?

「働き方改革」は意識改革だとも言われますが、せっかく「働き方改革」で残業せずに早く帰れるのに、“フラリーマン”化し、帰宅前にどこかで時間を費やし、結局帰宅が遅くなる方が増えているといいます。

「働き方改革=残業減」という誤ったロジックが世間的に先行してしまい、給料が減少してしまった、なんて話も聞きます。
これまで所定動労時間160時間(1日8時間×20日)+残業40時間=200(対価200)の仕事をしていたとします。
「働き方改革」によって、残業時間がゼロとなり、160時間=160(対価160)に減ってしまっては、冒頭の“時間”で評価され、生産性や効率化という“成果”の視点が全く評価されていません(結局、いっぱい働いた方が給与が多くもらえるという構図から抜け出せないのです)。

しかし、160時間=200(対価200)で仕事(成果)を上げるには、1.25倍の生産性や効率化に取組まなければなりません。
残業で40時間相当の機会損失となっていた分、自己投資を行わなければ、自身で働き方を改革し、生産性や効率化を図るための自己研鑚に取組まなければ、成果には結びつきません。
それは、勤めている組織(企業・会社)に求めるのではなく、自身で選択して取組む必要があります。
資格取得の勉強に取組んだり、子育てや家事を分担したり、ボランティアなどの地域貢献活動に取組むなど、内容は様々です。
ぼさーっと帰宅してテレビ見て、寝るだけでは、自己で働き方を改革するということは成し遂げられないでしょう。

先日、ある法人の職員が内部講師となり、経営理念と事業計画書の結びつきから仕事のやりがいにどうつなげているか、というテーマで研修で話をしてもらう機会がありました。
研修のなかで、「1日24時間の内、8時間は仕事に費やしている。仕事も人生の一部だ。」ということをおっしゃられていました。
人生の中で多くの時間を費やす仕事だからこそ、自身にとって納得のいく仕事の内容や進め方、分量などにしたいものです。
昔のように“長時間労働が美徳だ”という時代は終わったといっても過言ではないのです。

今年度は“育児・介護休業法”が改正され、介護離職ゼロや有期契約労働者も取得しやすくなりましたが、「働き方改革」を現場で推進していく上で大事なのが、「誰得の働き方改革なのか」ということです。
近江商人の“三方よし”という考え方は有名ですが、『売り手によし、買い手によし、世間によし』という視点で考えてみましょう。
残業時間を短縮し、給与も少なくなってしまっては売り手(事業主)だけが得をするだけ、買い手(=働き手として職員)、世間(社会)は得をしません。
冒頭に紹介した特養では、買い手も売り手も、そして特養という社会資源が地域で活用されている(利用率が高い)ことで世間も得をする、“三方よし”の状態と言えます。

特に「働き方改革」や「ワーク・ライフ・バランス(ワーク・ライフ・マネジメント)」などのキーワードが多く出ており、何から手を付ければよいか分からない法人・施設も少なくないと思います。
制度ありきの「働き方改革」ではなく、法人や施設等の現場に即した「働き方改革」とは何かを吟味した上で、制度設計や試行を繰り返しながら、職員の働き甲斐ややりがいの創造に結び付けられるよう運用されることをおすすめします。

管理人

平成29年度 介護事業経営実態調査結果を読む(特別養護老人ホーム)

2017年10月29日 | 経営戦略
10月26日(木)に発表が延期されていた"平成29年度 介護事業経営実態調査の概要(案)"が介護給付費分科会審議会 介護事業経営調査委員会で報告され、速報値をTwitterでお伝えさせていただきました。
27日(金)には第148回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、私も聴講してまいりました。

当日は座長を勤めていらっしゃる田中滋慶應義塾大学名誉教授も驚かれるぐらい審議が順調に進むという異例の事態(?)となった給付費分科会でした。
その原因は、報告された"介護事業経営実態調査"の各介護サービスにおける収支差率(サービス活動増減差額率、収支差額率)が全サービス平均3.3%、前回に比べマイナス0.5ポイントに悪化しています。
サービスごとの収支差額率をみても、ほとんど下がっており、現場の経営状況の実態を表していると誰もが共感できる数値だったからだと推察されます。

前回の報酬改定では特養の収支差額率8.7%とアドバルーンが上がり、結果5.5〜5.6%のマイナス改定を食らった特別養護老人ホームで0.9ポイント減の1.6%、通所介護でも2.2ポイント減の4.9%となっています(通所介護、訪問介護はまだ高水準だから、マイナス改定が望ましいといった意見がすでに出始めています)。

今回は、私が関与している調査・分析業務で培った視点をもとに、今回の特養における"介護事業経営実態調査"の結果を深掘りしたいと思います。

【全体結果】


上記資料は今回の特養における全体平均の結果です。
一番右側に"(参考)平成26年介護調査(平成26年3月収支)"と記載があります。
左側の「③=①-②」の段に8.7%と記載があると思いますが、これが前掲した特養は儲けすぎの根源(収支差額率)です。

しかし、"平成28年度 概況調査"に平成26年度決算と平成27年度決算と記載がある同じ段の収支差額率をみてください。
平成26年度決算は3.0%、平成27年度決算は2.5%となっています。
何か違和感を感じましたか。

"平成26年度介護調査(平成26年3月収支)"では8.7%であったにも関わらず、平成26年度決算に基づく"平成28年度概況調査"の平成26年度決算の数値は3.0%と、5.7ポイントも差異があるのです。
前者は3月単月の収支の数値(いわゆる瞬間風速)から、後者は1年間の活動成果の数値(経営の凸凹を踏まえた)から導き出されていますが、これほど大きな差異がそもそも出るのでしょうか?
「8.7%は嘘だったのか?」といった憶測が飛びかっても良さそうですが…。
より施設経営の実態を明るみにするため、3月単月の収支状況ではなく、1年間の決算書の数値に基づく調査に今回から変更になりました。

ただし、当時は関係者がこの結果を覆すほどのエビデンスを示すことが出来ませんでした。
要するに、団体単位で会員施設全体の経営状況(実態調査的なエビデンス)を把握しているところが多くはありませんでした。
よって、前回は全体で2.27ポイントのマイナス改定に至ってしまったのです。

と、この1枚だけでもツッコミどころ満載なデータなのです。

では、今回の"平成29年度実態調査"の結果ですが、全体の収支差額率は1.6%でした。
正直ここまで低くなるとは思っていませんでしたので、金曜日の会議に参加した方々も前回のように反論することもなく、納得感の高い結果と言えます。

収支差額率が低下した原因としては、「(1)給与費(人件費率)」の上昇が挙げられます。
概況調査の人件費率をみると、平成26年度決算62.6%、平成27年度決算63.8%(1.2ポイント増)、平成28年度決算64.6%(0.8ポイント増)と年々上昇傾向にあります。
定期昇給や介護職員処遇改善加算の影響と考えられます。
ただし、Twitterでもつぶやきましたが、人件費率を構成する「職員人数×賃金水準」の内、前者は業界的に人材不足の状況にあります。
「常勤換算職員1人当たり利用者数」の変動がないということは、「常勤換算職員数一人当たり給与費」が上がっているため、賃金水準が上がったといえます。

しかし、人件費を構成する科目の中の「派遣職員費(人手不足を補う)」の実態がこの結果からは知ることが出来ません。
人件費率上昇の原因が、介護人材不足を「賃金水準を上昇」させて補おうとしているというロジックだけでは、あまりにもお粗末だと指摘せざるを得ません(そんなに職員確保は簡単なものではありません)。


【居室形態別】


続いて、「ユニット型」と「ユニット以外(従来型)」の居室形態別に経営状況をみていきます。
収支差額率はユニット型が3.2%、従来型が0.4%です。
ユニット型の施設が高いのは、基本報酬が従来型に比べて高く設定してあるためです(利用者の居室のプライバシー確保を政策的に推し進めることを意図しています)。
その一方で、ユニット型の自己負担額が有料老人ホーム並みに高額なため、従来型のニーズも一定数あるため、ユニット型への転換を躊躇している法人様もいらっしゃいます(この辺のバランスは国が意図したようには進みませんね)。

また、従来型に比べ、ユニット型は開設したのが比較的新しい施設が多く、若年層の職員や賃金水準が低めに押させられていることが要因として挙げられます。
ユニット型は設備資金借入金の返済負担が従来型に比べ重く、借金返済のためにある程度の収支差額を出さなければなりません。
資料の「19 設備資金借入金元金償還金支出」、「20 長期運営資金借入金元金償還金支出」の項目をみてもらうと、従来型に比べ4倍ほど異なります。
従来型の施設は開設年度の古い施設が多く、借入金がほぼ完済されつつあり、また昔は施設整備補助金が手厚かったため、現在のユニット型ほど借入金返済負担は重くありませんでした。

ただし、従来型の多くの施設が大規模修繕や建て替えを控えていることでしょう。
昔のような補助金はなく、自己資金と福祉医療機構からの借入金で事業計画を策定して、返済していくことになります。
従来型の基本報酬はマイナス改定が続いていますから、「準ユニットケア」を視野に入れた計画の検討が必要と言えるでしょう。

【級地区分別結果】


最後に級地区分別の結果です。
実はこの資料が一番衝撃を受けました。

どこかと申しますと、マーカーをつけている、①1級地と2級地の収支差額率が1%を下回っている、②前掲の「19 設備資金借入金元金償還金支出」、「20 長期運営資金借入金元金償還金支出」を引くと、収支がマイナスになる、の2点です。
特に②については、国も想定以上に悪化している実態を目の当たりにしてしたのではないかと感じました。

1級地である東京都は、都独自の補助金(サービス推進費)が収支の2〜3%を占める大きな収益源となっています。
これがなくなると、大都市・首都圏特有の物価の高さや設備整備費用の高騰などのあおりをそのまま食らってしまいます。
また2級地では、東京都の狛江市や多摩市、神奈川県の横浜市や川崎市、大阪市が該当します。
横浜市や川崎市は東京都と隣接し、電車で30分もあれば行き来できてしまうこともあり、利用者や職員の確保もままならない状況であると推察できます。

27日(金)の会議でも級地区分の見直しに関する案が示され、特例(完全囲まれルール)の適用や経過措置の変更・終了などにより、48自治体の級地区分が引き上げとなります。
配布された資料にも「財政的な増減を生じさせない財政中立の原則の下…」と記載があるように、引き上げる分、どこかの級地区分が下げられるということが示されています。
憶測ですが、3級地(収支差額率2.2%)と5級地(収支差額率2.6%)が若干下げられるのではないかと思われますが、現時点ではなんとも言えません。

来週以降、個別サービスごとの二巡目の審議に入ります。
これからが本当の「正念場」です。

管理人

使いこなすか?使われるか?「介護テック」が目の前まできています

2017年10月15日 | 経営戦略
Twitterと連携し始めたことで、より多くの方と結びつき、様々な意見交換や考え方を知る機会を持つことができました。
いわゆるSNSが広まったことで、人との繋がり方やコミュニケーションの取り方も大きく変わりましたね。

さて、来年度の報酬改定に向けた議論が深まっていく中、9月末に国際福祉機器展(HCR)が開催されました。
足を運ばれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
前職では福祉住環境コーディネーターや福祉用具相談員の資格を生かした仕事をしていたこともあり、毎年最新の福祉用具のリサーチに出かけていました。
残念ながら今年は先約があり、行くことが出来ませんでしたが、行った同僚からは「「IoTやロボットなどのデジタル化が進んでいる」「ハイテクになった」などの感想を口にしていたのが印象的でした。

ちょうど昨日のつぶやきでも取り上げた、"D Free"という排泄予知ウェアラブルをご存知でしょうか。
超音波で膀胱にたまる尿量を検知し、排泄介助を促すというもの。
開発者の中西さんという方は、自身が排泄が間に合わなかったというつらい体験を踏まえ、「自宅を出る前にわかっていれば、漏らすことはなかった。」という気持ちから現在のプロジェクトをスタートさせました。
賛否両論あると思いますが、私は介護職員の業務量を軽減するためには革新的なディバイスだと思います。
ただし、つぶやいた通り、利用者の意思表示や尊厳を軽視するような対応を生じさせてしまうことについて、如何なものかと思います。

"表現力や語彙力を高めて、気持ちや意見を言葉で表現しよう"で取り上げた通り、SNSやLineによって表現が簡便になった一方で、直接的コミュニケーションの機会が少なくなり、表現力や語彙力が低下していると論じました。
誤解がないように言えば、基礎がきちんと出来ており、効率化を図るためにはSNSやLineを活用することは賛成です。
しかし、算数の基本的な考え方が出来ていないのに、いきなり電卓を使わせて学ばせても、電卓の使い方を知っているだけで、算数の原理原則や規則性を知ることには繋がりません。
基本的なコミュニケーションが出来ないのに、SNSやLineを使うことは非常に危険なのです。

"D Free"の話に戻すと、利用者主体のケアができ、コミュニケーション能力の基礎がきちんとしていれば、"D Free"を用いて、排泄誘導や業務を見立てることにつながるでしょう。
しかし、利用者の「トイレに行きたい」と訴えに対して、「(まだ尿量が50%なんだから今連れて行くよりも、もう少し後の方が二度手間にならないからいいか)さっき行ったじゃないですか。もう少し後にしましょう。」と職員が返答するようなことはあってはならないと、私は思います(人は給油メーターを取り付けた"車(モノ)"ではないのです)。
今まで排泄表などを用いて個別に排泄リズムを把握していた取り組みが、排泄予知というディバイスを用いて可視化されました。
「トイレに行きたい」という訴えをきちんと受け止めたうえで、個別ケアに生かして欲しいと思います。

また、株式会社シーディーアイはAIによるケアプラン作成支援にセントケアHDなどと連携し、取り組んでいます。
ケアマネジャーの業務を代替することが目的ではなく、属人的なケアプラン作成の効率化や標準化、相談業務やケアマネジメントの重点化を目指しています。

私としては、これらの社会福祉に関するケースデータを用いて、福祉サービスを必要としない状況作り(高齢者介護、子どもの虐待・貧困など)に生かせないものか、という考えを持っています。
持続可能な社会保障制度とするためには、社会保障いわば福祉サービスを必要とするケースそのものを削減して行く視点が必要だと考えています。
現在は福祉サービスを利用している方(既存)を対象とした施策が中心ですが、入り口に目を向けた施策も遅かれ早かれ必要になるでしょう(人口現象社会に入れば、社会保障費そのものが縮小するからです)。

現場では、質の高い介護を提供しようと思う反面、職員配置や定着率が高くなり、結果的に経営状況が厳しくなります。
しかし、"D Free"やAIを用いたケアプランをはじめとするIoTディバイスやデジタル化、「介護(ケア)テック(介護×テクノロジー)」を推し進めることにより、長期的にみて業務の効率化や生産性の向上を図り、経営状況を維持させていかなければなりません。

しかし、直接利用者に触れる介護や福祉サービスが全てロボットに置き換わることはない、と考えられています。
なぜならば、介護や福祉サービスという"行為"そのものがデジタル化できないものだからです。
暗記系(データベースで代用できる)、反復系(プログラムで代用できる)などの業務はAIやロボットに置き替わられることが予測されています。
昔、パイプを滑り落ちると食事、排泄、入浴(いわゆる3大介護)が全てロボットが全自動でやってくれるといったモノがアニメでありましたが、現実ではそうならないのです。

福祉現場で働く皆さまの仕事はこれからも永続的に残る仕事だからこそ、経営理念や職員一人ひとりの福祉観を大事にしながら、業務負荷を軽減するにはどうすれば良いか、効率化を図るためにはどうすれば良いか、「向上力(=もっと高次化したい・良くなったらいいなと思う問題意識と実行力)」を持って客観的に仕事内容・量の棚卸が必要です。
その解決手法の一つとして「介護テック」という視点を持ち、来たる将来、自身が順応できる準備をしておく必要があります。
「介護テック」を使いこなせるか、「介護テック」に使われるかはあなた次第です。

管理人

社会から特養が消えたなら

2017年10月01日 | 経営戦略
以前の投稿で”介護福祉士が消えたなら”ということを考えましたが、もし特別養護老人ホーム(特養)が社会資源として消えたなら…、について考えてみたいと思います。

仕事柄、特養の経営に関するデータを取り扱っています。
経年推移で各種経営指標をみていると、収支差額率や利用率は年々下がり、人件費率は上がる。

そう聞いて、なぜだか分かる方は特養を経営している方でしょう。
そう聞いて、ふ〜んと思った方は特養を運営している方、または一般職員でしょう。

前者の方は2000年からの介護保険制度導入に伴い、一夜にして運営から経営に変化し、外部環境(制度や人材問題)にも柔軟に適応してきている施設ではないでしょうか。
後者の方のなかに経営層は含まれていないと思いますが、一般職員の方も目の前の利用者のケアだけではなく、自身が務めている組織(法人や会社)の経営がどうなっているかは最低限知っておく必要があります。
なぜならば、皆さん一人ひとりが経営感覚を持って仕事に当たらないと、組織、要するに特養を潰す可能性があるからです。

先日、事業計画書に関する研修を行った際、見たことがないという受講者が大半を占めていました。
「経営層が渡してくれていない」といった他人任せな発言があったので、「自身で見に行く努力をしてください」「事業計画書を見ずに業務に当たるということは、ケアプランを見ずにケアを行うのと同じです」と伝えました。
いかに自主性・自発性を持って、組織の一員として役割を全うするかという意識を持つことが大事なのです(決して、組織の歯車になれという意味ではありません)。

施設の経営は施設長や経営層だけが考えるのではなくて、目の前で開いているベッドがあれば、「何とかして埋めないと」という意識を持って生活相談員のお尻を叩く必要があります。
だって、ベットが空いているということは、ビジネスホテルに例えると、お客さんが宿泊していないということであって、空気を泊めてても1円にもならないのと同じだからです。
特養とビジネスホテルでは機能そのものが異なりますが、経営するという点においては同じです。

もし、特養という社会資源が経営状況が悪化して、次々に姿を消していったらどうなるでしょうか。
低所得者で、かつ一人で日常生活を過ごせない方の行き場所はどうなってしまうのでしょうか。
病院は言わずもがな受け入れてはくれないでしょう。
養護老人ホームや軽費老人ホーム、グループホーム、老健、有料老人ホーム(特定入所)などの他の入所施設がありますが、今の高齢者の状態(重度要介護者、高齢化)の方の生活を支える機能は特養にしかないのではないでしょうか。
療養病床は介護医療院へ転換されますが、特養より低い報酬(になると思います)で特養に入るような重度要介護者を受け入れてくれるところがあるでしょうか。
だからこそ、社会資源として特養は消せないのです(消してはいけないのです)。

しかし、特養の経営状況は年々厳しさを増しているのが実態です。
介護報酬のマイナス改定や利用者の待機者問題、量的整備が進む中、利用率がなかなか上げられず、結果的に収益性が低下します。
そのため、人件費率が上昇(介護職員処遇改善加算などによる人件費が増えています)、結果的に収支差額率を圧迫する構図がますます深刻化しています(介護職員処遇改善加算で収益は見かけ上増えますが、人件費としてそれ以上支出しているということです)。
特に従来型の開設年度の古い施設では、職員の定着に伴う人件費と突発的な修繕費の上昇が経営に大きな影響を及ぼしています。
単年度の儲けがマイナスで、これまで蓄えてきた貯金(内部留保)を少しずつ食いつぶし始めた施設も出てきています。

このような厳しい状況ですが、前掲した通り、特養は消せないのです(消してはいけないのです)。
ではどうするか、です。
来年度の報酬改定や今後特養に求められている役割や機能を皆さんの法人が全うするためには、どういった戦略(ストラテジー)を練る必要があるでしょうか。
例えば、従来型施設に対するプライバシーの強化という論点が挙がっています。
プライバシー強化のために、従来型(多床室)から準ユニット型への転換を検討している施設がどのくらいあるでしょうか。
準ユニット型へ転換すると、居室はカーテンから据え付け型のパーテーション(壁)を造設しなければなりません。
「準ユニットケア加算」を算定することが出来れば、5単位/日ですので、100名×365日×5単位×地域係数10=1,825,000円 の増益となります。
改築するのに1,000万円かかったとしても、5.4年で返済することが理論上可能です。

しかし、準ユニットに転換すると通路が狭くなり、車いすの動線が確保できず、また既存の居室数を確保できないため、採算が合わず、断念してしまったといった話も聞きます。
車の話ではありませんが、今後の人口減少などを鑑み、そろそろ大規模修繕や建替えを計画するのであれば、定員規模の”ダウンサウジング”も視野に入れて戦略(ストラテジー)を練ってはいかがでしょうか。

また、特養の利用率の低下には待機者がいないという原因もありますが、職員が集まらず利用者を受け入れられない施設も徐々にですが増えてきています。
そういった施設の利用率は軒並み70〜80%台です(1日あたり10名前後が空床状態です)。
しかも、100名定員のところ、受け入れができず、80名に入所制限をかけているにも関わらず、職員数は100名を見据えた配置となると、収益より費用(人件費)が多くなるので、赤字になって当然です。
しかし、同じような状況下でも、派遣職員を雇い入れ、なんとか配置人数を満たし、なんとか利用率を維持している法人もあります。

何がこれほどまでに施設経営を左右する要因となっているのでしょうか。
特養を社会資源として消すか・消さないかは、最終的にはその施設の経営判断に委ねられるということです。
誤解を恐れずにいえば、判断を下すのは施設長や経営層ですが、その判断に至る原因を作り出しているのは、実は一般職員の一人ひとりの意識ということに他ならないのです。
要するに、大変な時期を一緒に乗り越えられる仲間かどうか(組織の一体感が醸成されているかどうか)という一点に尽きます。
組織の一体感が醸成されている組織では、一緒に困難を乗り越えて、より組織としての結束力が強くなるでしょう(みんなで一つのことを成し遂げた時の達成感はなんとも言えないですね)。
そうでない施設は、職員が徐々に退職していき、どこかの法人に吸収されるか、名実ともに消えるでしょう。

郊外では、存亡の機に瀕している特養も現に存在します。
社会福祉法人として、また特養として、今後社会においてどんな役割や機能を担わなければならないか。
3年に一度の報酬改定では、まさにそんな問いが特養や介護事業所に突きつけられる機会となっています。
当ブログ、「福祉マネジメント&デザイン ストラテジー」は「福祉サービスに経営と創造の戦略を」を副題としています。
戦略(ストラテジー)というと、大企業が一大プロジェクトを打ち出したり、M&Aで規模を拡大するなどのイメージがあります。
戦略(ストラテジー)とは「戦いを省く」と書きます。
そのためには福祉サービスにおいても、理念を実現するため、永続発展するためには、誰もが思い浮かばない発想や苦渋の選択を迫られる場面が出てくるでしょう。
ぜひ、福祉サービスの将来を見据えた創造ある戦略を描いていきましょう。

管理人