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福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

デジタル時代だからこそ、アナログ的な人間関係の構築を

2019年01月23日 | 人財育成
BlogやTwitter、そしてnoteといろいろなSNSを使用して、情報発信をしていますが、noteの使用用途をいまいち導き出せておらず、Blogとの線引きに悩んでいます。Blogの代わりに少し使ってみようと思います。

今日は、ある法人で考課者研修を行いました。

人事考課制度の基本(行動の選択・要素の選択・段階の選択)について解説すると共に、模擬面談を通して、職員の問いかけ方を「Why(なぜ)」から「What(なに)」に変えることで、コーチング要素を含んだ、納得性の高いフィードバックに変わるという体験を行っていただきました。

この研修の中で繰り返し伝えたのが、「考課者が常日頃から等級制度で定められている期待人材像や考課表の考課要素に照らし合わせて、日々部下の姿を観察し、指導・育成してください」、ということ。

日々の業務に追われがちにはなって当然ですが、要するに、「部下を育成することは立派な"仕事"と位置づけて取り組む必要がある」、ということです。

職員の採用戦略から、定着・育成戦略となった今、いかに職員一人ひとりの成長を組織の成長として共に喜び、組織的にアシスト出来るか(人材育成の仕組みがあるか、運用が出来ているか等)が問われています。

昨晩、ある特養の施設長と意見交換する機会があり、今後の職員採用や育成、定着支援について悩みや迷いをお話しいただきました。

特養の実態調査の中でも、ユニット型の施設では、従来型の施設と比べても、職員一人にかかる業務量が多く、責任の範疇が広くなるため、職員の離職は1年未満が特に多い傾向があります(マニュアルなどの業務の標準化とともに、独りにさせないOJTや同期とのつながりが思いとどまらせるための大きな存在になります)。

私は、他の特養の事例ではなく、あえて、ある保育園の職員のキャリア形成や研修受講などの自己研鑚の履歴や資料を一冊のファイルに綴じて管理している「人材育成ファイル」の取り組みを紹介しました。

たかがファイルに綴じているだけと思われるでしょうが、

①成長の軌跡が目に見えてわかり、今後の見通しを持てる
(キャリア形成や能力開発の成果物として個人の自信につながる)

②組織的に個人の成長をアシストする
(育てられている、大事にされているというエンゲージメントの芽生え)

③指導・育成についての話すきっかけとなる
(職員の強み・弱みが明確となり、指導・育成のエビデンスになる)

といった、そこは保育園らしく"ねらい"をきちんと持って取り組んでいるわけで、話を聞いた施設長の中の悩みや迷いを、自信と決断に変えることが出来ました。

人事考課や指導・育成にも共通して言えることは、あなたが部下や同僚に興味を持って接することが出来ているかどうか、これにすべてがかかっているといっても過言ではありません。

そもそも、部下や同僚に興味を持って接していなければ、相手の心に響くような言葉を見つけて、指導や助言することもないでしょうし、日常的なコミュニケーションすら煩わしくてしないかもしれません。

人事考課だって、絶対評価にはなりっこありません。

また、"仲良しクラブ"的な居心地の良い関係性が強い組織では、相手にとって耳の痛いように感じられる指導・育成といった話しはおざなりになってしまい、組織の硬直化を招くことになるでしょう。

この「人材育成ファイル」は、部下と指導・育成の話をする機会を増やすきっかけにもなっており、変な言い方ですが、「そんな話をするのはカッコ悪い」という反応がある職員でも、その職員の強みや弱みなどを踏まえて指導・育成の話をするための強力なツールになっています。

上司から感情的な話を一方的に聞かされることもなく、上司・部下の関係性もよくなるという一石二鳥の効果を発揮してくれます。

また、福祉現場では多職種連携が必須ですが、介護職や看護師、機能訓練指導員、管理栄養士、生活相談員といった"専門職"というだけで、変ないがみ合いをしている組織がいまだに存在しています。

お局様が牛耳っている旧態依然の組織変革の担当を現在進行形で行っているぐらいですから、もう少し健全な組織風土づくりが福祉には必要だなと感じるわけです。

なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』という書籍がありますが、いい意味で自分自身のあるがままの姿で皆に受け止めてもらう組織風土を作ることで、職員間の距離を縮め、結果的にお互い様精神で共に支え合い、共に成長できる組織を作っていくことの近道になります。

Lineのスタンプひとつでコミュニケーションがとれ、Amazonのダッシュボタン一つで商品が購入できる、デジタル化が我々の生活を便利で豊かなものにすると共に、人間の能力を拡張させたり、はたまた低下させていくことにもつながる可能性を秘めています(コミュニケーション不足による表現力の低下やデジタル入力による漢字が書けない、読めないなど)。

私自身、多くのお客様と関わらせていただく中で好事例等をインプットし、それを他のお客様に媒介しながら、そのお客様の経営成果や理念の実現に向けたコンサルティングを行っていますが、お客様とのそういった膝を詰めて話し合いを重ね、ビジネスパートナーとしての関係性を構築するプロセスは、アナログに勝るものはないのではないかと思います(エビデンスとして、デジタルの力を借りる必要性はあると思いますが、私が時代遅れなのかもしれません…)。

昔のように、部下育成が先輩の背中を見て覚えなさい、で済む時代ではなくなった今だからこそ、部下や同僚、上司との関わり方も含め、関係性づくりのあり方を考えてみてはいかがでしょうか。

管理人

それあなたの「思い込み」じゃないですか?

2018年10月20日 | 人財育成
酷暑の夏から一変、秋をすっ飛ばし、肌寒い日々が続き、もう冬支度を思わせる気候になってしまいました。
今年も残すところ2ヶ月半余りとなり、徐々に慌ただしい時期となって行くわけですが、私自身、今年はトップマネジメント層の会議へ参加させていただく機会が多く、月次の経営状況や事業計画書の目標管理・進捗管理などに携わらせていただきました。

皆さんの法人・施設においても幹部会議や主任会議、フロア(ユニット)会議などの各種会議を行っていると思いますが、会議と一口にいっても、情報共有を目的とする会議、職員から意見を出し合って検討する(ディスカッション)会議、委員会などテーマを絞って取り組みを深めるために検討する会議など多岐にわたっています。
職員からの意見が活発に取り交わされる活気溢れる会議は行われているでしょうか。

会議に参加をしていて気になるのは、「たぶん〜と思います」「〜すればいいんじゃなですか」「〜では出来ません」といった発言 なのですが、皆さんの職場にもこういった発言をする職員さんはいないでしょうか。

「たぶん〜と思います」というのは、推測(憶測)であって、発言したAさんが勝手に思っている可能性が高いです。
実際にBさんに確認すると、「別にそんなことありませんよ」なんて返事がきてしまうと、会議に参加している他のメンバーには、Aさんの発言そのものが「それ本当(事実)?」という印象を与えかねません。
狼少年ではないですが、「この人のいうことは過信してはいけないな」という印象を与えてしまうことにつながるわけです。
そうすると、ディスカッションする必要がある会議において、Aさんの個人的な推測(憶測)的な発言をされても、全く意味がありません。
事前に議事録などを配布し、考える猶予を与えて会議に臨めるようにしている法人・施設であれば、「たぶん〜と思います」という発言そのものがナンセンス(意味のないこと)なので、Aさんを会議に参加させる必要があるか再考する必要があるでしょう(事実確認を怠ったAさんの能力や資質に問題があるわけです)。

「〜すればいいんじゃないですか」といった発言もナンセンスです。
職員から意見を出し合って検討する会議に参加しているにもかかわらず、発言そのものが他人事になっており、検討する問題に対する当事者意識が欠如しています。
「〜ということを率先して取り組む必要があると思いますが、いかがでしょうか」ぐらいは会議に参加するメンバーとして、自覚と覚悟を持って会議に参加する必要があるでしょう。

「〜では出来ません」といったネガティブな意見を出す職員さんもまだまだいらっしゃいますが、「なぜ、実現可能な方法論を考えていないのか」ということを突っ込まずにはいられないのです。
「職員が不足していて出来ません」、「現状の職員の能力では出来ません」、「利用者が重度化してきているので出来ません」などなど、こういった言い訳は、発言した職員の能力がないということを裏付ける何物でもありません(営業職がお客様が商品を買ってくれないので売れませんと言い訳しているようなものです)。
それぞれの言い訳の前に「(私の指導・育成が十分に出来ていないために)〜」と追加してもらうと、そうした発言をしている職員の無能さが浮き立ってしまいますので、心当たりのある方はくれぐれも要注意です。

このように、法人・施設の意思決定機関でもあるトップマネジメント層の会議が十分に機能していない法人・施設は少なくありません。
忙しいスケジュールをやりくりして、1〜2時間のまとまった時間を確保して会議に臨んでいるにも関わらず、実のある会議でないとすれば、改善する必要があるでしょう。

では、どういった点を改善すればよいか、確認ポイントを3点ご紹介します。
1.会議に臨むための準備時間が十分確保できているか(資料作成を含む)
会議の議事録は事前に配布されますが、1時間の会議のために、どれだけ事前に準備する時間を確保できているでしょうか。
当日検討してもらえるよう資料を作成したり、どういった手順で問題提起するかなど、会議を円滑に進めていくためにも、事前の準備は最重要な要因(ファクター)です。
とりあえず会議に参加し、その場の雰囲気で発言内容を考えるなんていう強者(つわもの)がいれば、即刻退場してもらったほうがよいでしょう。

2.ファシリテーター役が場をきちんと仕切れる準備をしているか
当日ファシリテーター役となる司会を務める職員(輪番制で誰もが司会を務める機会を持たせているところもあります)も、当日の進行イメージを作っておく必要があります。
職員からの発表後、「何か意見がありますか?」という一方的な投げかけだけでは職員から意見が発せられることはないでしょう。
各自から意見を出してもらえるよう、「○○や△△の現状についてAさんどうですか?」と発言してもらうよう問いかけていくことが必要です(そのための準備をして臨んできているはずですから)。

3.合意形成(コンセンサス)を図るために、関係者への根回しを丁寧に行えているか
1にも通ずる内容ですが、討議するならば、結論(ゴール、落とし所)をきちんと設定しておき、事前に利害関係者(ステークホルダー)に丁寧に説明し、合意形成(コンセンサス)を図っておくことが重要です。
よくあるケースが、会議の場で施設長や事務長が初めて聞いた(事前に聞いていない(知らない))というケース。
施設長や事務長にとっても「寝耳に水」的な反応になってしまうので、「ここでは判断できません」や「そんなことは許可できない」といった回答になりかねません。
きちんと「報告・連絡・相談」の手順を踏んでいないがために、せっかくよい提案であっても、却下されてしまってはもともこもありません。
きちんと手順を踏んで、建設的な討議ができるような根回しを心がけましょう。


このように会議の進行ひとつとっても、参加する職員によっての意識の差というものが大きく、思うような成果をあげられないで悩んでいる法人・施設があるわけです。
その理由が、「あなたの思い込みで物事を進めている(考えている、判断している)」ということです。
会議の場で無責任な発言をする職員はその典型的な例で、状況の本質を全く理解できていないために、「あなたの思い込み」で発言しているに過ぎません(なので、信用ならないのです)。

また、「報告・連絡・相談」がきちんと出来ないケースも、「Aさんに報告したので、Bさんにも伝わっていると思っていました」といった「あなたの思い込み」が原因になっていませんか。
「Aさんは○○だから、たぶん△△だろう」と勝手に判断しがちですが、これもトラブルの元。
「○○と書いてあったので、△△だと思いました」もトラブルの元。
どうして相手に意見を求めたり、確認するというステップをすっ飛ばしてしまうのか、それは「自分自身が出来る(能力がある)」「正しい判断ができる」という自信過剰(自分自身への過度な「思い込み」)が原因になっていないでしょうか。

対人援助を行う上で、利用者がどう思っているか、どう考えているかきちんと意向や要望を確認する、個人の尊厳の尊重に人一倍気を配っているはずの専門職の皆さんなのですが、「思い込み」はそれ故の弊害なのかもしれません。
皆さん一人ひとり「思い込み」で物事を進めるのではなく、コミュニケーションを活発化させ、相手を理解した上で仕事をすることが出来る関係性を構築することを目指してください。
そうすれば自ずと会議は活性化されますし、無責任な発言をする職員も減ってきます。
離職理由の一番は「人間関係」といいますから、「思い込み」の人間関係ではなく、いろんなことを話し合ってみたらどうでしょうか。

一緒に働いている仲間の志望動機や福祉観、どんなケアに挑戦してみたいかといったことを知って仕事をするのとそう出ないのとでは、相手に対する信頼度も変わってきます。
経営理念についての研修では理念の解釈について、リーダーシップについての研修ではリーダー像についてグループワークを通して、共通認識を持てるようにしています。
仕事をともにする仲間のことをもっと知ることで、きっとその「思い込み」は、あなたの勝手な「思い込み」だったと後悔することでしょう。

管理人

人事諸制度を生かした人材育成のススメ

2018年10月08日 | 人財育成
以前、“人事考課制度を機能させ、組織・サービスの活性化を”という記事を書きましたが、今回はいかに職員レベルに落とし込み、人材育成を推し進めるかについて考えてみましょう。

皆さんの法人にも等級制度や考課制度、給与制度、育成制度といった人事諸制度が整備され、法人理念を実現するための人材育成に取り組まれていることでしょう。
しかし職員の多くが、それぞれの制度がどのように関係しているか、等級制度で示される期待人材像や考課制度で求められている考課要素をきちんと理解しているでしょうか。
また、組織的に人事諸制度の理解を促すような機会や時間を十分に確保しているでしょうか。

「人事考課制度を導入するタイミングで職員に説明した」「新入職員にはオリエンテーション時に説明している」といった声は聞こえそうですが、大事なのは”既存職員に対してどこまで浸透できているか“、です。
新入職員たちは先輩にあたる既存職員に尋ねますよ、「人事考課はどのようにすればよいですか?」と。
誤った理解をしている職員から誤った解釈で、誤った説明が新入職員に伝播してしまっては、せっかくの人材育成の仕組みである人事諸制度が、「給与の査定でしょ」といった誤った制度の認識となってしまいます。
そうならないためにも、既存職員へ人事諸制度を正しく理解させる時間や機会を確保することは制度運用上、最も重要な取り組みとなり得るのです。

では、どのように人事諸制度を職員へ説明し、理解、浸透させていけばよいでしょうか。
等級制度と考課制度の活用の仕方を例に取り上げてみましょう。

【等級制度】
等級や階層といわれるように、組織における縦方向の層(レイヤー)を指し、主従の関係性を表しています。
ですので、等級制度がきちんと機能している組織では階層(ヒエラルキー)に基づく意思伝達系統が機能しますが、そうでない組織では、いわゆる“鍋ぶた組織”となり、施設長とナンバー2の職員とそれ以外の横並び組織となってしまいます。
また、等級制度を基にキャリアパスが構築され、皆さんの組織の中でのキャリア形成の方向性が記されています。

等級制度やキャリアパスはあくまでも所属しているその組織の中で定められているキャリア形成の道しるべですから、その組織に属している以上、等級制度やキャリアパスに求められる職能や職務を全うする責務を負っています(他法人に移れば、求められる職能や職務の内容は異なるでしょう)。

だからこそ、職員に対して等級制度やキャリアパスに求める姿になるよう指導育成する権利を組織は有していますから、感情的に指導育成するのではなく、これらの制度をうまく個別面談などの中にも取り入れて説明することが重要です(そのためには等級制度やキャリアパスそのものをあなた自身が理解しておく必要があるのです)。

また、等級制度やキャリアパスは上位の内容も知ることが出来ます。
要するに、2等級の職員が3等級になりたい、そのために求められる職能や職務、昇格基準などの成す術の“答え”が記されているのです。
「3等級になりたい職員は、職能や職務をこの水準(期待人材像)まで求めますよ。そのために自己研鑽や能力開発してくださいね。」というメッセージを含んでいるのです。
だからキャリアパスは「キャリアの道筋」ともいわれるのです。

福祉施設の多くでは、等級制度やキャリアパスの内容を組織内部に十分浸透させられておらず、職員一人ひとりの人材育成と切り離されている感が否めません。
人材育成の重点ポイントが、テクニカル(技術)スキル重視の上位資格取得ありきとなっており、マネジメントスキルなどの階層ごとに求められる職能が軽視されていると言わざる負えません。

等級制度は「組織における縦方向の層(レイヤー)を指し、主従の関係性を表しています」と書きました。
上位等級になるにつれて、テクニカルスキルだけではなく、コンセプチュアル(概念化)スキルを高めることが求められていますので、キャリア形成や能力開発のマイルストーンとしても、等級制度やキャリアパスを活用できるよう働きかけていくことがポイントです。

【考課制度】
人事考課制度は等級制度に求められる階層ごとに求められる職能や職務を全う出来ているか判断する指標です。
要するに、法人が求める期待人材像に近づけられるよう定められた人材育成の“ものさし”となります。
等級制度同様、2等級に求められる内容が人事考課シートには記載されていますから、この内容通りに自己研鑽や能力開発すれば、「オールA」を取ることも可能なのです(実際はそうはいきませんが…)。

人事考課も年1回または2回と定期的に実施している法人が多いと思いますが、職員が求められる考課要素を日々の業務の中でどれだけ意識できているかが大切な視点となります。
人事考課を行う上で、「要素の選択」「行動の選択」「段階の選択」の3つの選択を行います。
日々の業務をなんとなく行っているのと、法人理念を実現するために2等級の自分にはこういったことが求められていると意識して業務に向き合うのとでは、成長スピードは雲泥の差です。
さらに、そのように日々業務を行うことで、自身の“自信”にもつながるでしょう。

また、考課者となる職員も人事考課を行う上で職員の行動を観察しておく必要があります。
その行動と考課要素を結びつけて「段階の選択」を行う必要がありますから、考課者自身も考課要素の理解を深めておく必要があります(結果的に個人面談でフィードバックする際、納得度の高い評価につながります)。

考課要素は等級制度に基づいて複数設定されていることが多いです。
「規律性」「積極性」「責任性」「協調性」といった情意考課の要素をはじめ、「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」「人材育成」といった独自の考課要素を設定している法人もあるでしょう。
職員に日々の業務の中で意識させて行くためには、これらの要素がどのように関係しているか図示したり、優先順位をつけて段階的にキャリア形成や能力開発を推し進められるようにしてはどうでしょう。

ある法人では「動機付け」という考課要素を達成させるためには、「動機付け」するために必要な「コミュニケーション能力」による傾聴やコーチングのような「質問力」を磨いて行く必要性を図示して伝えています。
私はドラクエ世代なので、よく“職業システム”に例えているのですが、読者の皆さんにどこまで伝わるか自信がありません…。
要するに、能力開発は段階を経て成し遂げていきます。
いきなり難しい問題を解けないのと同じで、繰り返しの練習や経験を積む必要があります。
だからこそ、等級制度で職能や職務を全う出来て初めて上位等級になるのです。


以上、等級制度と考課制度の理解・浸透を促すためにどのように活用してもらいたいか説明してきましたが、これらの制度の目的は“人材育成”です。
だからこそ、職員の採用・定着がままならず、人材不足が深刻化すると、等級制度や考課制度の運用そのものが成り立たなくなります。
卵が先か鶏が先かは分かりませんが、人事諸制度を活用することで人材採用・定着・育成を進め、一人ひとりのキャリア形成や能力開発を通して、組織力やサービスの質の向上につながり、職員一人ひとりの成長が組織の成長につながる好循環を生み出す主軸(メインシャフト)です。

人事諸制度だけではなく、経営理念や事業計画書などの組織の仕組みを改めて職員に浸透・理解させることが、法人や施設・事業所に対する「愛着」や「思い入れ」といったエンゲージメントを高め、組織や施設・事業所に対する帰属意識を高めることにつながります。
「コア・マネジメント」の概念に人事諸制度が位置付けられているには、そういった理由があるのです。
なぜならば、魅力ある組織やサービスを提供している法人や施設・事業所には、魅力ある職員が揃っていますから。

管理人

“インスピレーション”を養う自分磨きが組織力やサービスの質の向上を促進させる

2018年09月24日 | 人財育成
三連休、いかがお過ごしでしょうか。
休日返上で業務に向き合っている職員さん、お疲れ様です。
かくゆう私も昨日、一昨日と自宅で作業を行い、今日は出勤して雑務をこなしてきました(今週もお客様先に出ずっぱなので)。
ここ最近、仕事ばかりになっているので、家族と向き合う時間や自分の趣味に時間を避けるよう、タイムマネジメントしっかりしないといけませんね。

日々業務に追われている皆様も、休日ぐらいは趣味や自分の時間を持つことが出来ていますか?
私個人としては、疲れた身体を休めるだけで1日が終わってしまう、ではもったいないので、気分転換できる時間を必ず取るように心掛けています。
皆さんは、どんな気分転換をなさっているでしょうか。

私は大好きなウイスキーを奥さんと飲みながらこの一週間にあった出来事などを話すことが一つの気分転換になっています。
その他にも、趣味のロードバイクに乗って都心や郊外にサイクリングに出かけたり、息子とカードゲームをしてバトルしたり、料理を作ったりして休日は過ごしています。
また、写真を撮ることも好きなので、出かける際には必ずといっていいほど一眼レフカメラを携帯しています。
多趣味のように感じられるかもしれませんが、私にとって様々な"インスピレーション"を養う大事なひと時なのです。
この"インスピレーション"という言葉は、「直感的なひらめき」「瞬間的な思いつき」などという意味で使われています。

例えば、私がサイクリングに出かけた際は、目的地の風景やお店を見て回ったり、往来する人々がその土地で何を楽しんでいるのかなど興味を持って観察しています(ご当地グルメなどは、必ず実食することが楽しみの一つです)。
また、ペダルを漕ぎながら、仕事での考え事や判断に迷っていること、私生活における悩み・不安など、自分自身と向き合う時間としても有意義な時間となっています。

さらに、カードゲームは反抗期の息子とのコミュニケーションの機会であるとともに、60枚のカードを用いてどんな戦略で戦うか、相手の心理の裏の裏を読んでいくスリリングさがあります(コンサルタントの端くれですが、息子に戦略を読まれて負けることもしばしばです…)。

こんな休日の体験を通して、私は頭の中を整理し、クライアントが思いもしないような提案書の作成につながったり、職員研修でよりフィットした表現で受講者に伝えることが出来たりするわけです。

“インスピレーション”とは「直感的なひらめき」や「瞬間的な思いつき」という意味と書きましたが、これは一種のアウトプットの瞬間なのです。
仕事中でもハッとひらめくことがありますが、その多くは趣味や仕事以外の場面での出来事がパズルのピースが上手くハマったときの気持ち良さに似た感覚に近いといえます。
いろいろ試してみたり、悩んだりしながら、何かのタイミングで「‼️」となるのです。
だからこそ、趣味や仕事以外の気分転換の時間を有効活用し、“インスピレーション”のきっかけとなるインプットをどれだけ出来るかが大事だと思っています(よく「引き出しを増やす」なんていう例えを耳にしませんか?)。

学生時代、私はお惣菜店でアルバイトをしていたこともあり、ファミレスに行くと、モタモタしているウエイトレスさんが気になってしょうがありません。
「もっと動線考えて動かないと」「もっと接客対応を丁寧にすればいいのに」なんて、私と一緒で気になってしまう読者の方がいらっしゃるかもしれません。
それは、あなたが日々の業務を効率的・合理的に行っているからこそ、「もっと○○すれば△△なるのに」と気づくわけです。
ウエイトレスさん自身もなんとかならないかと悩んでいたところ、あなたが「介護現場では□□しているんだよ」とアドバイスすることが出来れば、ウエイトレスさんにとって“インスピレーション”が降って湧いてくるかもしれません。

私が講師を務める研修の際なんかにも、「介護技術の研修(認知症ケアや感染症予防など)も大事ですが、業務に直接関係ない研修に参加することも、自分の視野を広げたり、価値観を養うためには大切ですよ」とよく伝えています。
私のマネジメント研修の「経営理念」や「事業計画書」「キャリア形成」なんてテーマは正に今日受けて、明日から何か劇的に変わるといった研修ではありません。
研修の中に含まれる様々なキーワードを受講者自身で咀嚼してもらい、日々の業務や上司・部下との関わりの中でハッとする場面で気づいてもらうことをねらいとしているわけです。
私も研修の際には分かってもらえるよう他法人・施設の事例や比喩表現を用いて説明するように心掛けていますが、趣味や仕事以外の気分転換の時間を有効活用している方の方が、飲み込みが早いというか、伝えていることを理解してもらいやすいように感じます。

それは、一種の“概念化スキル(≒直観力)”が働き、自身の中でイメージを創造することが出来ているのだと思います。
概念化スキルとは、施設長などの管理職層に求められるマネジメントスキルですが、“インスピレーション”がよく湧きやすい職員はそうした素質を持っているともいえるでしょう。

ある法人では、この“インスピレーション”を養うため、脚本家を講師に招いて研修を行っています。
脚本家もよい物語(ストーリー)を生み出すためには、趣味や仕事以外の気分転換の時間でインプットを行い、ある時、突然”インスピレーション“が降って湧いてくるそうです(アーティストやミュージシャンも同じようなことを仰いますよね)。
この視点を介護職員にも学んでもらうことで、利用者に寄り添ったサービスの質の向上を図ったり、業務改善につなげるなど、日々の業務に”インスピレーション“をもって臨んでもらうことを目指しているそうです。
確かに、目の前の業務に没頭するあまり、「直感的なひらめき」「瞬間的な思いつき」をなかなか生み出せていない現状はないでしょうか。
職員一人ひとりがの“インスピレーション”を持ってサービスをデザインしたり、新たに創造することが出来れば、もっと福祉や介護の仕事が楽しくなるのではないでしょうか。

当ブログでも”向上力“というキーワードで何回か説明してきましたが、職員一人ひとりが「もっとこうなったらいいなぁ」と思いながら仕事をすることが、組織力やサービスの質の向上を図るための推進力になります。
100人の職員一人ひとりが「もっとこうなったらいいなぁ」と思えば、100通りの業務改善につながる可能性を秘めているのです。
そのためにも、“インスピレーション”を養うことは介護職としてのみならず、人としての魅力や厚みを養うことにも比例するのです。

休日に身体を休めることも大事ですが、街に飛び出したり、趣味などの好きなことをして”インスピレーション“を養う自分磨きも忘れずに!

管理人

手段・方法を含めた“表現力”を磨き、伝え続ける勇気を持ちましょう

2018年09月16日 | 人財育成
お客様からお声をかけていただくのは、本当にありがたいのですが、チーム内での業務の偏りもあり、業務量が増大しています。
部下に業務を委譲したり、さらに段取りよく進めていかなければこなすことが目的のような仕事っぷりになってしまうのだけは避けなければなりません。
大きなプレッシャーを感じつつ、着実に仕事をこなしていきたいところです。

さて先日、ある法人で階層別研修を行ったのですが、リーダー層向けの研修の最後に感想を言ってもらった際に、「ワークを通して、改めて文字化(表現)することの難しさを感じました」といった声が上がりました。

以前、“表現力や語彙力を高めて、気持ちや意見を言葉で表現しよう”という記事でも、「「言葉で表現する(書く、話す、伝える)」ということが苦手なため、それを隠したり、繕ったりするために抽象的で、当たり障りのない表現となり、自身の思う意見を言わない(言えない)という状況を生み出してしまうのではないかと思います(よって、自分自身から発言する職員が少なくなっているように感じます)。」と書きました。
また、「表現力や語彙力を高めるためには、本や新聞などの活字を読んで(インプットして)、「言葉で表現する(アウトプットする)」を繰り返していくことしか方法はありません。」「是非とも絵文字やスタンプで簡単に意思疎通ができてしまうような単純なコミュニケーションではなく、じっくり言葉を交わしながら、自身の考えや気持ちを伝えるコミュニケーション上手になりたいものです。」と綴っています。

上司と部下をつなぐリーダー層においても、思っていることをを十分に伝えられない(苦手だ)と感じていることに、その組織の現状を踏まえると、妙に納得してしまいました。
現場におけるリーダー層は組織における上意下達を担うパイプ役です。
そのリーダー層が上司からの意向を咀嚼して、部下にきちんと伝達できていないとすると、組織の意思統一どころか、最低限の情報共有すらままならなくなるのです。
この法人の抱えている課題は、経営層からの方針をリーダー層が現場職に伝え、実践させるという流れがどこかで目詰まりを起こし、組織力やサービスの質の向上が滞っているという内容でしたので、提案書で立てた仮説が
見事に的中したのでした。

また、ある法人では、各フロアからの参加者のフィルターにかけられることで議事録の内容が統一されず、情報のばらつきが生じていました(その後、議事録を作成する書記を決め、書記の責任でまとめるという管理体制に見直しました)。
職員の自己判断による情報の取捨選択が起きないよう、情報の重要度(何を優先的に伝達しなければならないか)をきちんと見極めるスキルは身につけさせておく必要があるでしょう。
また、上司の意図を汲んで、伝えるべき情報を咀嚼する(部下に分かりやすい表現に噛み砕く)スキルもリーダー層には必須です。

少し話が逸れましたが、「文字化(表現)する」ことの難しさには表現力や語彙力の壁もあると思いますが、相手に伝える手段・方法の視野が狭いという点も挙げられます。
研修中のワークでは、ワークシートに文字にして表現してもらいました。
その後、グループワークで言葉(声)や身振り手振り(非言語コミュニケーション)で伝え合ってもらいました。
中には、図示したほうが伝わりやすかった方もいたのかもしれません。
実は、“NLP(神経言語プログラミング)”にVAK(視覚(Visual)聴覚(Auditory)触覚 (Kinesthetic)の3つの感覚の頭文字)分析というのがあります。
興味のある方はリンク先を試してみてください(ちなみに私は「体感覚」が強いタイプです)。
もしも、あなたが言葉(声)にして伝えるのが苦手であれば、文字にして伝えてみてはどうでしょう、またパワーポイントなどで図示して、身振り手振りを交えながら説明してはどうでしょうか。
私も練習中なのですが、効率的な議論の拡散と収束が可能となり、新しいアイデア発想、合意形成、課題解決など、得たい成果が得られる技術として、”グラフィカル ファシリテーション“という手法も注目されています。
相手に伝える際にあなたがイメージした通り伝えられる手段・方法を選び、表現力を磨けば、きっと相手にも真意が伝わるはずです。

冒頭のリーダー層の発言は、手段・方法も含めた“表現力が乏しい”の一言に尽きるわけですから、訓練を重ねてもらう他ありません。
高学歴の方とコミュニケーションすると、“表現力”の幅の広さに驚かされます(知識量が豊富というのは羨ましい限りです)。

ちなみに、私がコミュニケーションを行う上で大事にしていることは、“相手の伝えたいと思っていることを、いかに自分の言葉に置き換えられるか(変換)”ということです。
「要するに、○○ってことですか?」「○○っていう感じ?」というように、大事なポイントで相手と齟齬がないよう、自分が納得できる表現に辿り着くまで、しつこく擦り合わせていきます。
コミュニケーションはよくキャッチボールに例えられますが、相手から投げられる言葉をなんとしてでもキャッチし、相手に投げ返さないとコミュニケーションは続きません。
ですから、相手の言葉が抽象的であったり、比喩的であっても、自分の言葉の引き出しから一番フィットする表現に変換して伝え返すことが必要となります。
ある法人の理事長は、こうしたプロセスを“言葉を重ね合わす”という表現で表されていました。

このプロセスに注力しなかったり、省略してしまうと、相手との関係性も構築できませんし、コミュニケーションの真意も伝わってきません。
相手もあなたとのコミュニケーションに興味を示さず、結果として、あなたは「(相手が心を開いてくれなかったから)私の気持ちが伝わらなかった」という結末を迎えるのです。
日本の風潮なのでしょうが、相手の気持ちを推し量る(気を払う、思い計る、思いを汲み取る)なんて一方的に相手に押し付けても、夫婦間においてすら、以心伝心なんてなかなか実現しないわけです(実証済)。
「分かっていると思って(伝えなかった)」「(○○と思っていると思って)相談しなかった」「あの時伝えたので(もう分かっていると思って確認しなかった)」なんてことは、現場における報告・連絡・相談(“ほうれんそう”)が上手くいかない常套句です。
あなた自身がどんな言葉のボールもキャッチできていたか、また投げ返せていたかと振り返ってみたときに、思い込みによって“ほうれんそう”していなかったなんてことはないでしょうか。

日々の“ほうれんそう”を行う職員にとっては「重要な情報」かもしれませんが、皆さんの役割に照らし合わせると、「重要ではない情報」かもしれません(その逆も然り)。
新人職員や“ほうれんそう”が根付いていない組織では、情報の重要度で選別せず、とりあえずなんでも“ほうれんそう”するように指示を出します(リーダー層などの特定の職層に一元的に集約する)。
ある程度根付いた組織では口頭で伝えるべきことと、書面にて確認を仰ぐこと等、情報伝達のメリハリをつけるようにしましょう。
これは仕事だけではなく、ネット社会の中で生きる世代にとって、いかに情報リテラシーを養えるかが重要になるでしょう。

自分自身の言わんとしたことが伝わった時の一種の達成感を味わえるまで諦めないで、伝え続ける勇気を持ちましょう。
相手は宇宙人でもなければ、言葉の通じない外国人でもありません。
考え方が少し違う、同じ日本人同士ですから、話せばきっと分かり合えますよ。

管理人

役割理解を通した、リーダー層の育成が急務!

2018年08月18日 | 人財育成
昨日、今日と比較的涼しい一日でしたが、また週明けから残暑に見舞われるそうです。
体調管理をしっかりを行いながら、夏を乗り切りましょう。

さて、人事戦略の一環として、「組織づくり」の重要性について取り上げましたが、今日は具体的にどのようにして「組織を作っていくか」について取り上げたいと思います。

ちょっと前までは「採用」「確保」が福祉現場のトレンドキーワードになっており、求職者が魅力的に感じる人事制度や就業規則の見直しなどのコンサルニーズが高かったように思います。
しかし、ここにきて(この半年ぐらいで)、一気に「育成」「定着」に大きくシフトした感があり、半年で4法人で次世代人材育成を通した組織づくりに関するコンサルティング&研修をさせていただく機会をいただきました。

察するに、人材の「採用」「確保」のために派遣会社に高額な費用を払ってまでなんとかするという状況から、既存職員を「育成」し、パフォーマンスを高めながら「定着」させ、次世代の管理職層になってもらったほうが、投資効果が高いのではないか、判断した法人が増えたのだと思います。
私個人の見解ですが、その判断は"正しい"と思います。
国も人材不足に対する明確な方針や施策も打ち出せていませんし、法人の有する資金も無尽蔵ではありませんから、投資効果が最大限になるよう経営判断・経営方針を定める必要があります。
派遣会社に投資したところで、目先の体制が整ったり、利用率を維持できるかもしれませんが、中長期的にみればそれだけ職員が定着しない理由があるわけです。
経営資源を削って何年もつか、職員が定着する方が早いか、資金が枯渇し、法人が破たんする方が早いか、淘汰の時代が到来しつつあります。

では、具体的に「育成」「定着」を進めてプロセスをみていきたいと思いますが、まず初めに組織の一員であるという"帰属意識の醸成"が必要となります。
福祉職は皆、専門職です。
イメージしてみてください。
カウンターしかない寿司屋さんにあなたが訪れると、板前さんが10人並んでいます。
「私はマグロしか握りません」「私はたまごしか握りません」「私は穴子しか握りません」といった具合で、10人が一貫ずつ握って、一人前の握り寿司が出てきたら、あなたはどう思うでしょうか?
一人前の握り寿司を提供するために10人も必要かと、客側が圧倒されてしまうでしょう。
また、1人当たり月給40万円×10名=400万円/月の人件費と仮定すると、一人前の握り寿司2,500円を1,600人前提供しなければ賄えません(それ以外にも食材費や家賃などの諸経費を含めるとそれ以上の集客が必要となります)。
そんな高級寿司屋にそんなに人が来るか?ということです。
この寿司屋の板前のように自己満足のために特定のネタで寿司を握られてしまっては、経営という概念はなりたたないのです。

話を戻しますが、専門職の皆さんは自己満足のために仕事をしていませんか?
私が提唱している"コア・マネジメント"の中でも、「個人的・マネジメント」で仕事をしていないか問いました。
まず皆さんは社会福祉法人○○会や株式会社▲▲、NPO法人◆◆といった組織に所属している一員である自覚を持つことがスタートです。

この帰属意識を持つことが出来て初めて、自身が組織の中(組織図)でどの職層に位置しているか確認してみましょう。
主任や係長、フロアリーダー、ユニットリーダー等、役職の名称は法人それぞれだと思いますが、あなたの下にどれほどの職員(部下)が位置づけられているでしょうか。
もう一介護職という位置付けではないことを自覚しましょう。

しかし、「育成」「定着」を加速させるためには、主任や係長、フロアリーダー、ユニットリーダーという役職が、組織の中でどういった職層(等級)で、職能(職層に求められる知識や技術などの能力)を有する必要があり、職責(職層に求められる責任)を担うことが求められているか、きちんと定められているでしょうか?
多くの組織では、①仕組みとしてはあるけれども、運用が伴っていない、②仕組みそのものが形骸化している、③仕組みすらない、の3つのパターンに大分することが出来ます(皆さんの組織はどの状況でしょうか?)。
組織の中でその役割(役職)が不明確であれば、その役職を担う職員も何となくしか役割を全うすることが出来ないでしょう。
職務分掌(職層ごとに求められる業務内容を整理したもの)や等級制度(職層ごとに求められる組織の中での職能や職責について整理されたもの)、キャリアパス(職層ごとに求められる期待人材像や経験年数や資格などが明確化され、職員のキャリア形成の道筋を定めたもの)などを確認して、自信に求められる役割や職能、職責を認識する必要があります。
上記の③仕組みらすらない場合、まずはこの辺りを作成・整理するところから始めなければ、指標が明確ではないため役割理解はなあなあで終わってしまうでしょう。

ある法人では毎年リーダーを交替制で運用している法人があります。
そこの組織はまだ若く、交替でリーダーを経験させることで、職員全体のボトムアップを図りながら、組織の成熟度を高めていくということを狙いにしています(なので、リーダー手当も毎年支給される職員が変わる仕組みとなっています)。
経験年数の浅い職員が多い職場であると、職員に自信がないにも関わらず、"ずっとリーダー"というプレッシャーに負けないための工夫といえます。

その一方で、経験年数が長い職員を抱える法人では、役職(ポスト)がなく、優秀な人材が他法人に流出してしまうという危険性もはらんでします。
新規事業展開をしたり、新たな役割(地域公益的な取り組みや人材育成に特化した部署など)を担わせるなど、適材適所の人事マネジメントを講じていきましょう。

自分たちの組織における役割が明確になったところで、職員自身の現状と組織が求める期待人材像とのギャップ(乖離)があるかどうか確認することが重要です。
人事考課制度は、まさに等級ごとに求めらる期待人材像に即して、責任性や積極性・規律性・協調性といった要素を定めています(要素はこの限りではありません)。
人事考課シートには、その等級で求められる期待人材像の要素が明文化されています、裏を返すと4等級ではこういった人材を法人では求めているということが記載されているわけです。
役割を十分に担えていないと思う方は、人事考課シートの要素ごとに充足している・不足しているを整理し、自身のキャリア形成を通して、補完していく必要があります。
人事考課制度は給与や賞与を査定する仕組みではありません。
あくまでもその結果が給与や賞与と紐づいているだけですので、捉え方に注意してください。

このように組織における人事諸制度と結び付けながら、皆さんの組織のリーダー層が十分に機能しない原因究明に取り組んでください。
リーダー層の「育成」「定着」を通した組織づくりは、人材不足のあおりを受けて、福祉施設における喫緊の課題といえます。
福祉施設の最大の課題は、「組織」を構成する人材が「組織」を意識して、立ち振る舞えていないことが、結果的に「組織」を脆弱な集合体にしてしまうと考えています(社会福祉法人に求められている"ガバナンスの強化"は最たる例といえます)。
組織における指揮命令系統を明確にし、一人ひとりがなぜこの役職を担い、どういった機能・役割を発揮することが組織の中で求められているか明確にすることは、結果的に法人の魅力を向上させ、「採用」「確保」が充足されることにつながるといえます。

管理人

「働き方改革」を通じて、高年齢者が「生きがい」を感じられる社会へ

2018年06月09日 | 人財育成
65歳以上の人口が生産労働人口を上回り、少子高齢社会がますます現実のものとして近づいてきています。
6月3日の日経新聞にも"出生数 初の100万人割れ 16年、出生率も低下1.44"という記事が掲載されていました。

各業界でも人材不足がますます深刻化し、国を挙げて「働き方改革」として、「同一労働同一賃金」や「高年齢者雇用安定法」などが進められています。
正規雇用と非正規雇用の格差をなくし、女性や高年齢者の社会参加により国民総動員といった様相を呈しています。

「高年齢者雇用安定法」では、年金の支給開始年齢の引き上げに伴う無年金状態を解消するため、60歳以降の雇用について定めています。
平成25年4月から60歳を定年とする企業では、希望者全員を60歳以降も雇用することが義務付けられており、以下の3つの方法から、原則65歳定年に対応する必要があります。

①定年年齢の引き上げ(60歳→65歳に一気にあげる、または段階的に引き上げる)
②継続雇用制度の導入
③定年制の廃止(年齢による定年の定めをなくす)

皆さんの法人では定年年齢を何歳に設定されているでしょうか。

①では60歳以降の雇用が確保され、職員は年金支給まで安心して働くことが出来ます。
職員のモチベーションを維持でき、人材確保が有利な反面、組織の新陳代謝が遅れ、人件費を圧迫させるといったデメリットも考えられます。
しかし、入退職が激しい福祉業界(特に高齢)では、60歳以上の職員が少なく、場合によっては専門職(看護師やケアマネジャーなど)しかおらず、人件費の上昇が現在の収支状況で吸収できるのであれば、段階的にあげるより事務的な手間が省け、求職者にとっても法人を選ぶうえでのアドバンテージとなるでしょう。

また、新卒や若年層の採用は難しい反面、子育てがひと段落したような40代や50代の求職者は活発という話も聞きます。
高年齢者が安心して、長く働けるような職場環境をアピールすることにも繋がるでしょう。

②では、先日最高裁で判決が言い渡された同一労働同一賃金に適合する賃金制度や諸規定の整備が必要になります。
特に、これまでは同じ業務なのに、再雇用時に現役時の70%水準の賃金という社会通念上の慣例が通用しなくなります。
きちんと労働条件で正規職員と差をつける(例えば、再雇用者は夜勤をしない、年間休日日数を増やす、異動はなし等)ことで、合理的に定めることが求められます。
「理事長の判断による」といった曖昧な表現がある場合は、諸規定で明文化し、丁寧な説明が求められます。

③では、「体力の続く限り、我が社で働いて(貢献して)下さい」ということです。
年齢でその方の働ける・働けないを区切るのではなく、人生100年時代を迎える中で、「生涯現役」といった方も増えてくるのではないでしょうか。
長い目で見れば、ADLの低下や社会や地域のコミュニティーからも隔離されず、ひいては介護や医療ニーズを低減させる効果も期待されると思います(長年頑張っていたお店をたたんだらポックリ逝ってしまった、なんて話もよく聞きます)。
介護予防や未病を促す機能を会社やコミュニティー(=社会資源)が担っていく時代もすぐだと思います。

工事現場で交通整理をしている高年齢者の方をよくお見受けします。
しかし、誇りを持って、生き生きした目で仕事をしている方は、残念ながらほとんどお見受けしません。
仕事を通じた「生きがい」を一人でも多くの方が感じられる社会を作っていくことが真の「働き方改革」の目指すべきビジョンではないでしょうか。

管理人

意思決定能力は自立型組織における最低要件

2018年05月24日 | 人財育成
10年後の仕事図鑑”を読み終えました。
AIにより自動化されたり、人間が行っていた仕事の内容や役割が再定義される。
その中に「介護」も含まれていましたが、「介護」そのものがなくなるのではなく、より専門性が求められるようなロボットや効率化が図られるのではないかという視点でした。
初めて堀江さん、落合さんの書籍を拝読させていただきましたが、もやもやしていた自分自身の背中を押してもらった感じです。
詳細はどうぞ書籍を購入して、実際に読んでみてください。

そんな書籍の中に、「意思決定能力」というキーワードが出ていました。
ネットで検索すると、こんなことが書かれていますので、参考にみてみてください。
言葉からしても、自身の意思を決定する能力な訳で、介護の現場では、利用者の自己選択・自己決定に基づく個別ケアの実践が行われています。

リンク先のサイトから引用させていただくと、
「①意思決定能力は向上させることができる」
「②すべては目標からはじまる」
「③合理的なプロセス6つの手順を使う」
1.問題を特定し定義する。
2.意思決定の基準を特定する。
3.基準に重みづけをする。
4.選択肢を考え出す。
5.それぞれの選択肢を評価する。
6.もっとも得点の高い選択肢を選ぶ。
「④何もしないことにもリスクがあることを知る」
「⑤自己を知り、パーソナリティの傾向を知る」
「⑥自分の考えと矛盾する情報を探す」
「⑦中立の第三者は状況をどういう目で見るだろうかと考える」
「⑧偶然の出来事に意味をこじつけない」
「⑨創造力を駆使して選択肢を探す」
「⑩失敗を恐れずチャンスを逃さない」
という10項目が「意思決定能力」を磨くための要素としてあげられています。

AIは指示を与えれば枠組みの中で処理を行うことができますが、目的(動機)を持ってゼロから何かするということは苦手な分野であるということが取り上げられています。
ディープラーニングというプロセスを経て、画像認識や音声認識といった機能における「合っている・合っていない」という決定能力は高い水準になってきていますが、それの結果を踏まえて、「こうやっていこう、どうやっていこうか」という目的(動機)を持った決定能力には発展しないということです。
要するに、「検温の結果、利用者の体温が38.5℃で、この基準では熱があります。医療的処置をした方が良いです」とAIは教えてくれますが、その方の状況を踏まえた対応をどう行うかは職員さんにかかっているということです。
AIとどのように向き合い、活用するか、「AIリテラシー」が求められてくるのでしょうか。

そんな意思決定能力が試される最たる例が、会議です。
皆さんの施設でも職員会議、ユニット会議(フロア会議)、カンファレンスなど、目的を持った多様な会議が設定されていることでしょう。
しかし、時間をとって参加した会議が、経営層からの一方的な報告の場であったり、誰も発言しない活気のない意見交換の場であったり、課題が少なくありません。
特に、一方的な報告の場になっていれば、意思決定機関としての役割を会議が有していない典型的な例といえますし、職員一人ひとりの意思決定能力を養うこともできないでしょう。

先日、経営会議を通したリーダー層の育成支援を行っているある法人の会議も、本来検討すべき議題(経営状況や待機者状況、採用状況など)が取り上げられておらず、職員の発言も少なく、とりあえず1時間みんなで顔を合わせる場と化していたのです。

上記の意思決定能力を磨く10の項目のうち、「③合理的なプロセス6つの手順を使う」が会議の中に盛り込まれていて、きちんと機能しているか皆さんの施設の会議についても点検してみてはいかがでしょうか。

ご支援している経営会議の議題を取り上げて、6つのプロセスに落とし込んでみましょう。
内容は、「会議内容の申し送りがフロアごとに異なっていて、情報共有が十分にできていない」です。

1.問題を特定し定義する。
会議内容をフロアリーダー各自がメモをとり、フロアごとに職員へ伝えている。
メモを取るフロアリーダーによって、伝えるべき内容を取捨選択しているため、情報にばらつきが生じている。
議事録を作成するのに、1か月以上かかるケースもある。
→タイムリーに会議内容を共有できる手段・方法の検討が必要

2.意思決定の基準を特定する。
事前に議事次第に目を通し、意思決定に向けた十分な準備を行う(その場で考えない)。
皆の意見を踏まえ、方向性を確認した上で意思決定を進める。

3.基準に重みづけをする。
法人理念やありたい姿を実現するために合致しているかどうか、皆で確認する。

4.選択肢を考え出す。
ブレインストーミングやフロア会議などの小会議の場で選択肢出来る限り持ち寄れるようにする(声の大きな職員に流されない)。
→書記を決めて、決定事項だけを確実に翌日には申し送れるようにすると決まりましたが、以前もこの方法を行なったが定着しなかった。私が、ホワイトボードに書き出し、スマホで写真を撮って共有してはどうか、と提案しました。

5.それぞれの選択肢を評価する。
メリット、デメリットを客観的に評価し合う(ダメ出しを行うことが目的ではない)。
→場内が「あー」という空気に包まれました。

6.もっとも得点の高い選択肢を選ぶ。
一度決定した方法を、随時評価し、ブラッシュアップしていく習慣を組織文化に根付かせる。
PDCAサイクルのC(Check)、A(Action)の重要性を認識する。
→来月の会議から導入し、評価していくことになりました。

会議一つとっても、意思決定を行うためにはそれなりの確認根拠(エビデンス)や準備が必要です。
ご支援している施設では、意思決定するためのエビデンスや準備を職員一人ひとりが不十分に行っていなかったため(=職員自身が意思決定する意識が弱い)、会議の場で判断が出来ない状況に陥っていた、というわけです。
エビデンスやデータ収集の強化も必要ですが、経営層からのビジョンや方向性の発信も弱いため、職員の意思決定のための方向性を見失っている状況だったのです。

職員が主体的に組織経営やサービス提供の高次化に働きかける“自立型組織”を目指すには、目の前の利用者ケアにおいても、ケアプランやアセスメント、モニタリングなどのエビデンスやそれを踏まえた入念な準備が必要です。
判断の連続ですから、なんとな〜くケアをしていては、組織の自立化は促進されません。

皆さんの会議の状況はどうでしょうか。
“自立型組織”を目指せるような職員の意思決定に向けた発言や行動は見受けられますか?

管理人

「組織づくり」が人材不足を救う新たな人事戦略の要となる

2018年04月19日 | 人財育成
福祉業界のみならず、小売業や運送業においても人材不足が深刻化し、賃金水準が高騰しているといった新聞記事がありました。

福祉業界においても、他産業や他法人に人材を取られぬよう、介護報酬以上に賃金水準を上げている地域もありますし、首都圏では最低賃金が毎年約25円ずつ上がり、時給1,000円目前といった状況です。

今日ご訪問させていただいた施設長曰く、職員の介護福祉士の資格保持者が増えるのは良いことだけど、加算要件以上に資格保持者が出ても、施設としては、資格手当を出す方が多くなり、メリットが少なくなるのも困りものだ、といった趣旨のことをおっしゃられていました。
確かに、施設経営を考えた場合、加算取得による増益と資格手当による費用のバランスを保つことは大切ですが、人材育成もこのような捉え方になってしまったのか、と少し残念な気持ちになりました。

どの仕事もそうだと思いますが、経験値を積んでいけば、自ずと知識や技術は身に付いてくるでしょう。
しかし、経験年数が長くなれば長くなるほど、仕事を始めた頃の志が薄れ、マンネリ化し、ひいては経験年数と業務パフォーマンスが釣り合わず、高給取りのお局となってしまう、”福祉あるある“となってしまいます。
施設長からお話をお聞きすると、大抵の場合、現場は把握しているものの、改善するための手立てを見出せず(例えば、人事考課制度・FB面談等で正していくなど)、放置してしまうという状況が往々にしてあります。

今後の福祉経営を3年、5年の中長期的な視点で考えるならば、最優先課題といえるのが、「組織づくり」ではないでしょうか。
「組織づくり」といっても、組織体型のことか、職能要件に基づく適材適所の職員配置など幅広い意味を有しています。
今回は、ある程度経験年数を積み重ねてきた中堅層をいかに次期リーダー層(幹部職のスタートライン)として育て上げ、施設長の分身(No.2、3)として、組織の推進力を高めていけるかという定義で、「組織づくり」と表記します。
特に、職員の入退職の回転も早く、中堅職層がいなくなってしまう福祉業界においては、いかにその層をグリップし、次期リーダー層・幹部職層の育成に取り組めるかが、法人・組織の存続にも関わってくる要因(ファクター)の一つといえます。

皆様の施設では、「リーダー層・幹部職層」というとどの範囲までの職層を指すことになるでしょうか。
施設長、副施設長、事務長、介護課長、看護課長、フロア・ユニットリーダーなどなど、組織によって呼び名や範囲が異なると思います。
では、その「リーダー層・幹部職層」と位置付けている職層の方々と、施設経営に関してどのような内容まで話したり、相談できているでしょうか(特に現場経験のない経営層の方は意思決定までのプロセスをどのように進めておられるでしょうか)?

上位会議(経営者会議など)では、課長クラスやフロア・ユニットリーダーとも報告・連絡・相談・周知を行っているが、施設経営を左右する重要な内容は副施設長や事務長だけとしかやり取りしていないといったケースも少なくないのではないでしょうか。
察するに、リーダー層・幹部職層はあくまでも介護現場のリーダー的な位置付けで、施設経営に関する知識やノウハウを持っていないから(正しくは、持たせられていないから)、相談相手にならないといった理由ではないでしょうか。

では、いつまでも施設長と副施設長や事務長とだけが相談して決めていて、正しい経営の舵取りが今後もし続けられるのか、甚だ疑問といわざるを得ません。
社会福祉法人にガバナンスが求められている最大の理由は、この舵取りの透明性を確保することが求められているのです。
そのためにも、次期リーダー層・幹部職層という立場で経営層の右腕・左腕として組織の中で機能させられるような人材育成に取り組むことが急務となっています(人材不足が深刻化しているからこそです)。

では、どのような人材育成に取り組む必要があるでしょうか。
多くの施設では、リーダーや幹部職員になりたがらないという状況はないでしょうか。
その理由は、役割や責務が曖昧で、リーダーや幹部職員は「忙しそう」という目の前の姿を目の当たりにしているためです。
それを解決するためには、業務内容を洗い出し職務分掌を整理したり、職層ごとの役割をきちんと明文化するなど、指名する経営層、指名されるリーダー層・幹部職層、指示命令に従う現場職員の3者がきちんと組織だった役割分担を意識できる環境を作ることが先決です。
これを怠ると、現場意識が抜けきらないリーダー層・幹部職層が中途半端な役割しか担えず、経営層と現場との板挟みになる負担に耐えきれず、バーンアウトしてしまうことになりかねません。
きちんと組織全体でリーダー層・幹部職層をフォローできる体制を作りましょう。

その上で、リーダー層・幹部職層に求められる「リーダーシップ」や「コミュニケーション能力」、「課題発見・問題解決能力」、「財務の知識(経営指標の理解)」といったマネジメント感覚を醸成していく研修を実施するなど、知識や技術、ノウハウを身に付ける必要があります。
現場上がりのリーダー層・幹部職層の中にはこういったマネジメント研修を受けないで役職に就いている職員もいるため、現場を十分にグリップできず、経営層と現場職員とがギクシャクしてしまうといった状況を生み、やらされている感たっぷりの現場では、取り組みが継続しない、成果を上げられないといった負のスパイラルに陥ってしまいます。
「本当は利用者と関わっていたいのですが、上がなれというので幹部職員になった」といった自覚のないリーダー層・幹部職層も「組織づくり」を進めていく上では役割や責務、権限を全うできるかどうか要注意です。

経営層から発信されるメッセージをリーダー層・幹部職層がきちんと咀嚼し、現場職員にわかりやすい言葉で伝えていき、組織全体で同じ方向性を向いた経営を実現する、といった当たり前と思うような「組織づくり」の重要性が今後ますます高まると考えています(なぜならば、「組織づくり」に注力している法人・施設が少ないのです)。

15ー65歳までの労働生産人口が減少することで、少数精鋭にならざるを得ず、今まで以上に現場職員にも役割や責務、権限が委譲されていくことが想像するに難しくありません。
団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年を控え、職員一人ひとりのパフォーマンスを高めることで、結果的に組織全体のボトムアップにつながります。

収益性改善のために人事制度(賃金制度)を見直すといったケースをよく聞きますが、私としてはその前に「組織づくり」に取り組まなければ、制度の運用もままならない、収益性改善の効果も即効性がないといったオチになってしまいます。
目に見えた成果としてなかなか評価しにくい「組織づくり」に対するコンサルティングニーズが増えてきていることを鑑みると、人事制度構築・運用支援→人材育成支援→採用・定着支援に続き、人材不足の現状を打破するための原点回帰的な人事戦略の新たな要となるのではないでしょうか。

管理人

「アクティブ・マネジメント」に基づく芯のある組織づくりへ

2018年04月13日 | 人財育成
新卒・中途採用の方々もオリエンテーションが終わり、現場実習(OJT)真っ只中でしょうか。
Twitterをみていると、「初日に辞めた」といったようなつぶやきもあり、その職員の資質に原因があるのか、採用面接できちんと意思確認をしたり、オリエンテーションが十分だったか、といった施設の受け入れ体制を振り返ることが重要ではないでしょうか。
後者に問題がある場合、退職ありきの採用を繰り返していては、採用経費の無駄にすぎません。
人材不足が深刻化する中、縁あって採用した職員とのミスマッチは出来るだけなくせるような工夫が必要です。

4月に入り、今年も研修講師の依頼を方々から頂いています。
これまでは個人・グループワークを取り入れた90〜120分程度のコマでマネジメント研修を行っていましたが、今年度は、「アクティブ・ラーニング」という概念を導入した研修を検討しています。

「アクティブ・ラーニング」とは、”主体的・対話的で深い学び“と称さられ、学校教育のトレンドといえる概念です。
今読み進めている『「アクティブ・ラーニング」を考える(教育課程研究会 編著)東洋館出版社』を参考にすると、座学中心で、教師からの一方的な詰め込み型の教育から、子ども自身が学びに向かう力を養い、知識や技能を生かしながら思考力、判断力、表現力を育む教育へ大きく転換してきています。
大学のゼミのように、課題に対して、個人やグループで本を読んで調べたり、フィールドワークを通して、生きた学びを重ね、自身の言葉で資料にまとめ(PowerPointなど)、プレゼンテーションを行うといった手法を取り入れた「カリキュラム・マネジメント」が小学校で進んでいます。

4月に保育所保育指針も改定され、この「カリキュラム・マネジメント」や「アクティブ・ラーニング」といった概念も取り入れられました。
保幼少中学校の連携が自治体ごとに進んでいますが、高校や大学への接続を見据えた学習指導要綱の改定なども影響しています。

話がそれましたが、要するに、講師の私からの一方通行の講義から、事前課題やグループワーク中心でこれまで話してきた研修内容を生かしながら職員主体のアウトプットを出せるように変更してみようと考えています。
著書のなかにも、「ただグループワークを取り入れるだけで「アクティブ・ラーニング」だ」とはいかない、ということが書かれており、教師(ここでは講師となる私)の力量も試される概念であります。
ぜひ皆様の施設の内部研修などでも「アクティブ・ラーニング」の概念をうまく取り入れながら、職員の主体的な成長を後押しし、定着、育成、成果を出せる人材育成につげて欲しいと思います。

そんな「アクティブ・ラーニング」の概念を組織作りにも生かせないかというのが、今回の本題です。
タイトルにある「アクティブ・マネジメント」というキーワードは、「主体的・対話的な組織管理(組織づくり)」という意味を込めています。

ある法人の組織改変のご支援を行うことになったのですが、その最大の原因は経営層を含めた職員の主体性がない、組織内に対話がないということでした。
経営層がビジョンや方針を示さない(職員に発信しない)→中間層が不安を抱く、現場職員の意識が抜けきれない曖昧な役割・責務→上に対する不平・不満・反発を引き起こす、といった悪循環を生んでいました。

まずは経営層の合意形成を図りながら、同じビジョン・方針を共有し、組織としての推進力を高めるための会議支援とマネジメント研修を提案し、経営層をバックアップする体制づくりを行うことにしました。
組織は生き物です。
会社に“法人”という人格が与えられている以上、意思疎通を行うためには対話(=コミュニケーション)が必要です。
伝えている”つもり“、話している“つもり“、行っている”つもり“では、相手の立場に立った時、どう映っているでしょうか。
きちんと伝わっているのか、話し合えているのか、行っているのか、相手にきちんと評価されているか、「話しているけど、行動が伴わない」という状況がある場合、早急に伝え方や関わり方を見直す必要があるでしょう。

そのためにも「アクティブ・マネジメント」の概念を用いて、自ら主体的に働きかけ、組織を管理していく、組織を作っていくというアプローチが重要になります。
組織のことは無関心といった職員も少なくないと思いますが、組織人の一人という意識をしっかり持ち、経営層と現場との相互作用を働かせながら、一人ひとりの「アクティブ・マネジメント」の意識を高めた組織づくりを実践することが、法人・事業所の永続発展には欠かせません。

上段で書いたように、内部研修などにグループワークを取り入れてコミュニケーションの機会をただ増やせば「アクティブ・マネジメント」が発揮されるというわけではありません。
講師役となる経営層の緻密な“カリキュラム・マネジメント”、要するに組織のありたい姿に向けた“しかけ”を継続して職員へ働きかけていく根気強さが求められます(学校の教師が年度途中で諦めませんよね)。

頭に浮かんだ感情的な言葉をやみ雲に口から発するのではなく、この職員には何を、どのように伝える必要があるか、どのように引き出せば伸びるか、といった個人の潜在能力を引き出すコミュニケーションを行うことが、主体的・対話的な深い学びを引き出す「アクティブ・ラーニング」においても、「アクティブ・マネジメント」の概念においても重要といえます。

保育では、保護者と一緒に子育て(保育)に取り組む「共育て」という言葉があります。
人材育成も職員との「共育て」が必要です。
一方的に期待だけを伝える人材育成では、職員が負担感に感じてしまうでしょう。
職員との「主体的・対話的な組織管理(組織づくり)」を通した「アクティブ・マネジメント」に基づいて、芯のある組織づくり、人材育成を進め、自律型組織の確立を進めましょう。

管理人

キャリアの方向性を整理したり、新たな目標を可視化しよう

2018年04月03日 | 人財育成
4月に入りました。真新しいスーツが眩しい新社会人たちを街中や電車で見かける時期ですね。
私は社会人になって13年ほど経ち、すでに酸いも甘いも噛み分けてきた感が否めません…。

さて、新年度ということで、福祉関係の施設や事業所の皆様においては、制度が新しく改正し、心機一転といったところでしょうか。
保育園などは子どもが新しい環境に慣れるまでは、園舎に泣き声が響き渡っていることでしょう。

そんな私自身も新年度を迎え、どのような1年にしていくか、自分自身のこれまでの経験や資格などを改めて棚卸してみました。

整理の手法として、“マインドマップ”というのを聞いたことないでしょうか。
“マインドマップ”とは、トニー・ブザン(Tony Buzan)が提唱した思考・発想法の一つで、頭の中で起こっていることを目に見えるようにした思考ツールのことです。
Googleで検索してもらうと、いろんな形の“マインドマップ”が出てきますが、そもそもトニー・ブザン視覚的に勉強する手法として発案されたため、中心にイメージ図やカラフルな色使いを用いています。
ただし、私は字が下手、絵も下手なので(コンプレックスです)、検索で出てくるような“マインドマップ”は作れません。
以前、“ふだん使いのマインドマップ”という本を買いましたが、真似してきれいに作ろうとすると作ることが目的になってしまい、結果的に頭の中が整理されずに終わってしまいそうです。

個人的にヒットしたのが、“仕事に活かす!マインドマップ”という本です。
形にこだわらず、あくまでもビジネスで活用する手段的な視点で“マインドマップ”の活用方法がまとめられています。
iPadのアプリを活用し、キーワードごとにカテゴライズし、最後にグルーピングする程度ですが、私自身の頭の中が納得できるレベルで整理されれば良いのです。
以前、組織の課題を整理・分類する視点として、“フレームワーク”の考え方を取り上げましたが、“マインドマップ”もある種フレームワークの一つと捉えて間違いはないでしょう。



真ん中にある「福祉系コンサルタント」という立場から、右側上部が前職の介護現場での経験や資格をまとめ、右側下部が現職の経営コンサルタントとしての業務内容をまとめています。
そして左側に“社会福祉士”の資格取得を機に、今後ソーシャルワーカーやソーシャルアクションに携わってみたい、という将来像をまとめました(間接的に福祉業界に携わっているので、すぐには現場へは戻れなさそうです)。
また左側下部には、大学で学んだ“社会学”や“ユニバーサルデザイン(UD)”、“ソーシャルデザイン”という私の思考回路の土台になっているキーワードを書き出してみました。
全体像がつかめたので、今年はこの中で何をより深める必要があるか、もう少し時間をかけて掘り下げていこうと思います。

読者の皆様の今年度の目標は何ですか?
資格取得や知識・技術の研鑽など、何か目標を持って日々の業務に向き合うことは自己成長のために重要です(私自身、社会福祉士の資格取得を達成したので、次なる目標を検討中です)。
今朝すれ違った多くの新社会人のようにキラキラした眼差しを持って、社会貢献に励みたいと思います。
そのためには自身の立ち位置や方向性をマインドマップなどのフレームワークを用いて、再確認してみてはどうでしょう。

管理人

福祉職の皆さんの専門性とは?

2018年03月15日 | 人財育成
社会福祉士の合格発表が3月14日だと思い込んで、誤ツイートをしてしまいました。
大変失礼いたしました。
手帳を見たら、ちゃんと15日の14時発表と書いており、思い込みの怖さをあらためて痛感しました。

さて、社会福祉士の合格発表の後、3月28日は介護福祉士の合格発表でもあります。
私も現場経験4年半ほどあるので、受験資格は有していますが、現在の仕事に就いてしまって結局介護福祉士の資格は持たずじまいです。
初任者研修課程修了後、実務経験3年で受験できる介護福祉士は、介護の現場職であれば登龍門であり、高い専門性の証といえる国家資格です。

でも、高い“専門性”って何でしょうか?
弁護士であれば、リーガルマインドが求められますし、医師であれば、言わずもがな医療的な莫大な知識や手術などの技術が専門性といえるでしょう。

では、高齢者介護の担い手である介護職(介護福祉士)の方の専門性とは?
児童・保育の担い手である保育士の方の専門性とは?
障害福祉の担い手である介護職(介護福祉士)の方の専門性とは?
社会福祉士、ケアマネジャー、看護師、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)、保健師などなど、福祉に携わる専門職の皆様の“専門性”とは?
皆さん、一言で伝えることができますか?

以前、堀江 貴文さん(ホリエモン)が「保育士は誰でもできる仕事」という発言をして、賛否両論を巻き起こしたというニュースがありましたね。
リンク先の方の考えとしては、「賛成」のようです。

福祉サービス第三者評価で認可・認証保育所に行って、園長先生からヒアリングさせていただくことが多いですが、子どもの発達に応じた保育(養護・教育)や保護者支援、地域の子育て家庭向けの地域交流事業、保幼小学校との連携など多岐に渡っています。

共働き世帯が増え、オートロック付きのマンションに住み、近所との関係性が希薄となり、助けてもらえる親戚なども近くにおらず、保育園の地域交流事業などで知り合ったママ友との広く浅い関係性がかろうじて保護者の孤立を防いでいる、なんてこともざらで、子どもより、保護者支援の方が大変という実態もお話としてよく聞きます。

そんな大変なことをしている保育士の皆さんの仕事が誰でもできると言われてしまうのは、その専門性をきちんと“発信”していないからだ、と私は思います。
はたから見れば、クラスで膝の上に子どもを乗せて本を読み聞かせている、だけではなくて、実は他の子どもの様子が見えるように本を構え、周囲に意識を巡らせておく、そんなことを保育士は実践しているわけです。

これはデイサービスや特養の介護職も同様で、広いフロアや食堂で利用者の動きを察知し、さっと側によって声をかけながら歩行介助したり、トイレ誘導していくわけです。
介護職の皆さんにとっては当たり前かもしれませんが、実はそれが専門性の一つと言えるのです。
事例発表会や公開保育などを行うと、客観的に自分たちの取り組みが良い・悪いを把握することができるので、積極的にそのような機会を持ってもらいたいと思います。
東京都福祉サービス第三者評価などを参考に、他施設・事業所の取り組みを参考に、自施設・事業所の立ち位置(先進的・独自性の高い取り組みか、時代遅れなのか)を客観的に比べてみてはいかがでしょうか。

ただし、気をつけてもらいたいことは、その“専門性”が誰得の“専門性”なのかという点です。
先日、Twitterで「オムツをつける技術を完璧にしたい。絶対に漏らさない。」みたいなツイートがありました。
このツイートをみて、私は違和感を感じました。
要するに、「オムツをつける技術を完璧にしたい」のは、ツイートした介護職自身であって、「絶対に漏らさない=漏らしてしまった場合の処理の手間がかかるから」という趣旨のツイートではないかと思ったからです(現に私はそう捉えました)。

たしかに介護職の専門性として、排泄介助は重要ですが、その目的に利用者が衛生的で、快適に過ごしてもらいたいという思いがなければ、自己満足の専門性になりかねません。
利用者本位の福祉を実現していくために、職員一人ひとりが原体験(その人の思想が固まる前の経験で、以後の思想形成に大きな影響を与えたもの)を踏まえたキャリア形成を意識し、自己研鑽に励み、専門性を高めていく必要があります。

誤った専門性の高さは、結果的に本質が見透かされてしまい、利用者や家族(保護者)との信頼関係を壊すことにつながりかねません。
相手にとって苦言になるようなことも、専門職(専門性の高い職種)という立場であれば、きちんと伝えなければならない場面も出てくることでしょう。
私もコンサルタントの端くれですから、経営層が誤った経営判断をしそうな時は、「◯◯すべきです。」と言わせていただきます。
こういったことが言える信頼関係が構築されているからこそ、皆さんが専門性を持っている証と言えるのではないでしょうか。

皆さんの専門性、一言で伝えるとなんでしょうか?
読者の方はさまざまな福祉職の方だと思いますので、ぜひコメント欄に記述していただき、共有できれば幸いです。

管理人


着眼大局 着手小局の一年にしていきましょう

2018年01月04日 | 人財育成
明けまして、おめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

本日から仕事始めの方も多いと思います。
私はもうしばらくお正月休みを堪能させていただきます。

昨年度の最初の記事ではタイムマネジメントについてご紹介しました。
個人的には2月に社会福祉士の受験を控えていることもあり、タイムマネジメントを続けながら、今年こそは(もう何回めでしょうか…)合格できるように頑張りたいと思います。

しかし、仕事との両立はなかなか難しいもの。
しなければならない仕事(作業)がある、まとまった勉強時間が確保できない等々、言い訳を挙げだしたらきりがありません。
だからといって「合格できませんでした」とも言いたくない。

今の状況を受け入れながら、合格するためには、どういったことが出来るかを前向きに(建設的に)考えることが大切です。
例えば、「忙しいけど、今日は30分の勉強時間を確保できた」「苦手な人物と取り組みを表に整理できた」というように小さいことでもコツコツ積みあげて成果をあげる、「着眼大局 着手小局」という言葉があります。

皆さんの現場でもビジョンやありたい姿の実現に向けた着眼大局(物事の、部分的な有利・不利などの有様は別として、全体を見渡した場合の情況)を見定めた上で、着手小局(具体的に何をしなければならないか実際に取り組む)という意味をなす言葉です。
大局ばかりにとらわれていては、小局を見失いますし、その逆も然りです。

「人がいないから出来ない」「職員の能力がバラバラだから出来ない」「建物が古いから出来ない」とはよく現場で耳にする言い訳ベスト3ですが、このような状態では、たとえ着眼大局であっても、何も着手することは出来ないでしょう。
こういった状況ではあるものの、どんなことなら出来るだろう(着手小局)の姿勢で組織づくりやサービスの質の向上に取り組み、着眼大局の実現を目指してもらいたいと思います。
今年はトリプル改定があり、また人材不足をはじめとする外部環境の大きな変化が引き続き起こることが想定されます。
着手小局でもよいので、前進していく組織を作っていかなければ、「コア・マネジメント」が機能せず、種を滅ぼしかねない状況を作り出してしまいます。
昨今、リニア中央新幹線の入札に伴う大手ゼネコンの談合やT芝、N産、K戸製鋼などのデータ改ざんなど大手企業の不祥事も立て続けに起こっており、利益を追求し過ぎたばっかりに組織的なガバナンスが機能しなかったために引き起こされ、社会的な信頼を失墜させました。

皆様の組織がこのようにならないためにも、今年一年が「着眼大局 着手小局」で「実現大局」となるよう、お祈りしております。
当ブログも陰ながら「実現大局」のお手伝いが出来るよう、業界動向の最新情報や福祉に経営とデザインの視点を取り入れられるようなストラテジー(戦略的視点)も取り上げてきたいと思っておりますので、引き続き、ご愛好頂ければ幸いです。

管理人

人事考課制度を機能させ、組織・サービスの活性化を

2017年11月18日 | 人財育成
年末に向けて、日々の忙しさにかまけて、ブログの更新が滞っておりました。
日々のTwitterのつぶやきだけではなく、きちんと発信していきたいと思います。

介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件で方向性が示されているように、介護人材の育成をさらに強化する流れが、次年度の介護報酬改定にも組み込まれる可能性が高まっています。
保育業界においても、技能・経験に応じた処遇改善に向けた動きが議論されています。

先日、ある施設長と、「最近、燃え尽き症候群(バーンアウト)的な人材が少なくなったように思う」という話になりました。
おそらく、介護職員処遇改善加算の導入により、人事考課制度やキャリアパスが組織に浸透し、昔のように一人で頑張って、いつしか燃え尽きてしまうようなことが個別面談などを通して未然に防げるようになってきたからではないですか、と私は返答しました。
しかし、その反面、着火すらしない湿気た人材(淡々と目の前の業務だけこなすタイプ)やメンタル的に弱く組織に馴染めない人材が増えてきている印象があります。

今後、介護人材不足がますます深刻化する中で、既存職員の成長を後押しし、いかに全員経営を実践していける組織を作り、サービスの質の向上に取り組んでいけるか、活性化させる仕組みとして、今日は人事考課制度の運用の適正化について取り上げます(書籍はナレッジ・マネジメントの視点で全員経営について論じてあります)。

皆様の法人・施設では人事考課制度が整備されていますか。
整備されていても、きちんと運用されていない法人・施設はありませんか。

私のようなコンサルタントに寄せられる人事考課制度に関する相談内容の多くが、
1.職員に人事考課制度が浸透していない(賞与・昇給のための査定と思っている)
2.等級制度(期待人材像)と考課表の要素・内容にズレが生じている
3.自己評価と他者(上長)評価が大きく乖離し、職員の納得感が得られない
4.日々の業務に追われ、考課結果をきちんとフィードバックできていない
といった点で運用が適切に行われていないことがままあります。
皆様の法人・施設でもこのような状況に陥っていないでしょうか。

では、それぞれの対応策を考えていきましょう。
「1.職員に人事考課制度が浸透していない」という法人・施設では、大前提として、きちんと職員に向けの説明を行う必要があります。
ある法人では、「人事考課制度ガイドブック」を作成し、全職員に配布して、人事考課制度に関する目的や方法、スケジュールなどを説明して、浸透させることに取り組んでいます。

なぜならば、人事考課制度は賞与・昇給のための査定ではなく、"人材育成"が大きな目的だからです。
法人が求める等級制度(期待人材像)で定められた役割や責務を全うできているかどうか、法人職員として適当かどうかを測るものです。
満たしていれば評価されますし、満たしていなければ(組織で働く以上)改善する必要があります。
それを客観的に評価するのが人事考課制度であり、その結果に対する承認が、たまたま賞与や昇給に紐づいている、ということです。
よって、職員においては、オール「B」ではなく、ぜひ、自身の成長の振り返りと思い、自己評価に取り組んでいただきたいと思います。

「2.等級制度(期待人材像)と考課表の要素・内容にズレが生じている」では、確かに職員像が大きく様変わりしている部分もあります。
特に人材不足が深刻化するなか、知識や技術がなくても上の等級に移ってしまう職員も少なくないでしょう(補充的昇格)。
そうした時に、力量以上の考課表で評価することになります。
状況に応じて、考課表の要素や内容に乖離が生じているのであれば、実態に合わせた内容に見直すことをお勧めします。

「3.自己評価と他者(上長)評価が大きく乖離し、職員の納得感が得られない」が特に人事考課制度を運用していく上でつまずくポイントです。
人が人を評価する制度ですから、公正性や平等性が求められます。
しかし、その多くが、職員の納得感が低いという点につきます。

なぜならば、日々の職員の行動を他者(上長)評価に携わる職員が目にしていない中で、考課するためです。
よって、一次考課の自己評価の内容に引っ張られてしまうということがまま起こります。

なので、私が人事考課制度の構築をする際には、他者評価の合議制を提案しています。
特養であれば、複数名のリーダークラスが相談して、職員一人ひとりの考課を行うというものです。
そうすると、考課者①は「自己評価通り「B」が妥当ではないか」といった場面においても、考課者②が「〇〇の場面を見ました。他職員の見本となるような行動と思うので「A」ではないですか」といったように、職員の頑張っている姿を組織全体で評価する仕組みとなります。

影ながら頑張っている職員にとっては、「きちんと見てくれていて評価された」という納得感が得られ、やりがいの向上や帰属意識の醸成にも繋がります。
職員数が多い法人・施設では大変だと思いますが、人事考課制度を運用する上で、何を一番大事にするかを検討した上で、参考にしてみてください。

また、考課者の視点の標準化を図る必要もあります。
いわゆる考課者研修などを通して、要素の選択、行動の選択、段階の選択の標準化を図らなければ、納得感が半減します。
一回ではなく毎年、しかも新しく考課者になる職員には、きちんと考課者としての視点の標準化を図らなければ、制度そのものの運用に支障をきたします。
制度はあるけど、運用できていないといった法人・施設はこの点を見直してみてください。

「4.日々の業務に追われ、考課結果をきちんとフィードバックできていない」も上記に次いで重要です。
きちんとフィードバックされないと、賞与や昇給が結果と思われてしまうので、"人材育成"という目的意識を持つことには繋がりません。
職員一人に対する面接時間が10分という施設がありましたが、最低でも30分は職員と一対一で向きう時間として確保する必要があります。
考課結果のフィードバック以外に、職員の強み・弱み、プライベートのことなども含め、話をする機会を設けてください。
なぜならば、職員の燃え尽きを未然に防ぐためには、経営層が職員を知ることが第一歩です。

スケジュールを組めないというのであれば、面談表を作成し、30分ごとに面接時間を区切り、職員に都合の良い時間を入れてもらうなどの工夫が必要です。
前掲しましたが、フィードバックを行う上で、何を一番大事にするかを検討した上で、参考にしてみてください。

福祉施設では定量的な目標というよりかは、定性的な目標が多く、職員一人ひとりの成長や成果を測りにくいものです。
だからこそ、"人材育成"を目的にすることで、一人ひとりの向上力(組織やサービスをよくするために、職員がもっとこうなったらいいなと思う意識)を高めることにつなげることで、活性化を図ることができます。
ぜひ、人材育成の仕組みを活用しながら、適応力のある柔軟な組織・サービスづくりの実現に取り組みましょう。

以上

管理人

自我欲求に飢えた介護職たち

2017年10月21日 | 人財育成
経営層からの相談内容やTwitterのつぶやきを見ていて感じるのが、「なぜ介護職はこうも協調性や主体性がないのか」ということです。
誤解のないように言えば、「協調性」「主体性」のない介護職は組織の中のひと握りの存在だと思うのですが、そうした職員が組織の中で増殖したり、Twitterでは職場や特定の職員に対する愚痴をこぼしたり…などなど。
私も前職ではそうでしたが、今日は「介護職」について考察したいと思います。

先にお断りしますが、世の介護職全員が「協調性や主体性がない」とはいいません。
読者の大半の方が、「うんうん、うちの組織にもいる」と変な納得感を抱くのではないかと思います。
ただし、納得するだけで終わるのではなく、そういった職員をどう対処するかも一緒に考えていきましょう。

とある特養施設長が「介護職員は職人だ」とおっしゃられていました。
まさにその通りで、介護職だけではなく、福祉サービス従事者の多くは、「自身は職人だ」と思っていると思います。
私もそうでした。
自身の福祉観(介護観)を持ち、自分でやっているサービス(ケア)は、「利用者にとって最善で、こんなに喜んでもらっている」と思っています。

しかし、誰が「利用者にとって最善」だと評価しているのでしょうか?
それはサービスを提供している自分自身の場合がほとんどです。
なぜならば、対利用者とマンツーマンになったり、「ケアをする人・される人」という関係であるため、利用者から「ありがとう」と感謝の言葉をかけられるからです。
それが積み重なると自分自身のサービスを過信するきっかけとなります。

これは私のようなコンサルタントも同様です。
その理由は知識やノウハウ、経験がすべて人についてしまうからです。
自分を過信しはじめると(天狗になるに近い状態かもしれません)、知らず知らず言葉や態度の節々に表れはじめ、お客様から総スカンをくらい、結果的に自滅していきます。
そうならないためにも、知識やノウハウはきちんと組織レベルで共有するために“ナレッジ・マネジメント”のSECIモデルの実践の必要性を述べました。

しかし、大抵の場合、このような職員は自身の知識やノウハウを組織レベルで共有したいとは思っていません。
それは自身が商品だからです。
「自分は利用者から好かれている、貢献している」という自負がありますから、ちょっとやそっとでは自身の手の内は見せません。
なぜならば、手の内を明かせば、自身の強みや役割がなくなるかもしれないという不安を抱くからです。
だから組織の一員という自覚もありませんし、多職種連携(協働)も苦手です。
自分は職人ですから、誰かにとやかく言われる筋合いはないと突っぱねるでしょう。

こういった職員は、大概「勤続年数の長さ=ベテラン職員(という幻想)>知識・技術が高い」という勘違いの方程式を作っています。
勤続年数が長いからといって、知識・技術の高さは比例するとは限りません。
組織の中で勤続年数ばかり長く、お局化している大半の職員はこの方程式が成り立ち、過信度合いがエスカレートし、組織の癌となり、組織を崩壊させる存在となってしまうのです。

では、こうした人材の対処法はどうすればよいでしょうか。
まず大事なのは、個人の限界を自覚させることです。
要するに組織人であることを自覚させ、多職種連携の相乗効果で、本当の意味で「利用者にとっての最善」を皆で考え、サービスを提供していくことです。
一つのものでは限界がありますが、それらが有機的に結びついて、新たなサービスを提供することにつながる(発展する)わけです。
IoTなどはまさにそれで、スマホと冷蔵庫、スピーカーなど、様々なものと繋がり新たな価値創造を果たしています。

介護職も自身に出来ることの限界を悟り、多職種連携(協働)の強さに気づく必要があります(最終的に自覚するのは、自身次第です)。
そのための意識改革は根気が必要です。
長年蓄積された過信や変な自信はそう簡単には融解しません。
そして、決して特定の個人を対象とするのではなく、組織の中の一員として扱い、皆で考える機会や互いの意見尊重し合う場づくりが必要です。
安心して発言できる環境を作らなければ、心を開くことはないでしょう。

また、過信してしまうもう一つの理由は、組織から「承認」される機会が少ないことが挙げられます。
「承認」とは褒められたり、認められたりすることです。
利用者からは「ありがとう」の労いの言葉はかけてもらえますが、上司(経営層)や仲間から「ありがとう」って声をかけてもらっていますか。
上司や仲間から認められていないのに、他者を認めなさいといわれても出来ませんよね。



マズローの「欲求段階説」でいえば、第一階層の「生理的欲求」、第二階層の「安全的欲求」、第三階層の「親和欲求(社会的欲求・帰属欲求)」までは、外的に満たされたいという思いから出てくる欲求(低次の欲求)で、これ以降は内的な心を満たしたいという欲求(高次の欲求)に変わります。

第四階層の「自我欲求(承認欲求)」(他者から認められたい、尊敬されたい)が、まさに介護職に不足している欲求であるといえます。

そしてその「自我欲求(承認欲求)」が満たされると、最後に「自己実現欲求」が生まれますが、「自我欲求(承認欲求)」が満たされていないので、「自己実現欲求」を引き出されることはありません。
いかに「自我欲求(承認欲求)」を満たし、「自己実現欲求」を引き出すかが重要になります。
この際、職員の個人的な欲求ではなく、経営理念や期待人材像をきちんと浸透させ、考えさせる機会を設けていれば、「自己実現=経営理念の実践者」という自覚が芽生え、「主体性」を発揮することに繋がります。

理念研修を10年以上取り組んでいる法人に携わらせていただいていますが、職員一人ひとりの「主体性」の高さが圧倒的に他法人と違います。
さらに、人事考課制度で承認する機会をきちんと設けているため、組織的に職員の「自我欲求(承認欲求)」と「自己実現欲求」の両方がきちんと満たされた状態を作り出しています。

このように、「なぜ介護職はこうも協調性や主体性がないのか」と冒頭述べましたが、実は怠惰なマネジメントによって生み出された存在だということがお分りいただけたでしょうか。
当たり前のことをきちんと行っていれば、こういった職員を生み出すことはなかったかもしれません。
「強く指導したら辞めてしまうかもしれない」「辞められたいつ新しい職員が入ってくるか分からないから、強くいえない」ということを口にする経営層もおられますが、何のために指導したり、叱る必要があるか改めて考え直してください。
いうべきところで言わないことの方が、あとあと取り返すのに、倍以上の労力を費やすことになりかねません。

また、こういう言い方をして介護職は図に乗らないようにしましょう。
経営層と一緒に、二人三脚で組織やサービスを良くしていこうという自覚を持ちましょう。
それが皆さんの「自己実現欲求」を満たすことが出来る最短ルートとなるでしょう。

管理人