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福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

あなたにとっての「後追い」で組織は強くなる

2019年04月17日 | 経営理念
新年度に入りましたが、まもなく"平成"が終わり、新しく"令和"の時代を迎えようとしています。
お客様との契約や提案書には和暦ではなく、西暦を使用することが全社的なルールになっています。
そのため、「令和元年〜」という記載は個人的にあまり見かけませんが、先日、とある施設で記録の書き方研修を行った際、ケアプランの見直し時期が「〜R2年○月○日」という記載をみて、「"R"eiwa(令和)が来る」と改めて感じました。
Blog(Macで)を書いていても、"れいわ"の変換はまだ一発では出てこないですが、万葉集の巻五、梅花の歌三十二首、序文の「初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす」のごとく、社会が温かい雰囲気に包まれ、木々が芽吹くよう活気溢れる時代を迎えられるよう、私自身、微力ながら福祉業界に貢献出来るように頑張りたい所存です。

平成最後(?)の投稿になるかもしれませんが、今日は理念研修をさせていただいているある法人様のお話です。
このBlogでもお馴染みの"コア・マネジメント"の概念に沿って、「経営理念」「事業計画書」「人事諸制度」に関する話を体系的にしてきた法人様があります。

理念研修のテーマが一巡したことを機に、法人主体でこの数年間の研修について職員アンケートを行いました。
法人全体と拠点ごとでの集計がされていました。
法人全体の結果はというと、「大変よく理解できた」「理解できた」で約6割という成果です。

正直言って、これまで「経営理念」の「り」の字も意識してこなかった法人様だったので、約6割が肯定的に評価されたこと自体驚きでした。
職層(等級)ごとでの集計がなされていなかったので、どの層に浸透が不十分かは分かりませんが、おそらく、1等級や2等級の若手職層の理解・浸透が課題になっているのではないかと察します。

自由記述欄にも肯定的な意見を多数いただきましたが、中には「現場業務で活用できる場が思い浮かばない」「研修の目的や目標が分からない」「事業や経営のことばかりなので難しい」と言った声が寄せられていました。
現場業務(現場職員)だからこそ、理念に沿ったケアや支援が必要だと思うのですが、現場職員=ケアや支援、経営層=経営理念といった誤った認識がされているのでしょうか。

と、とある法人様の理念研修の振り返りをみてきたわけですが、正直いって、年に1回、私の講義とグループワークを3時間足らず受けたところで、何かが激変するわけがありません。
大事なのは、組織や拠点ごとに学んだことをいかに意識して実践できるか、継続できるかが何よりも大事です。

もう少し踏み込んで結果を分析してみると、法人全体でいずれか「理解できた」と回答したのは全体の約6割でした。
しかし、事業所や施設の規模にもよりますが、かなり拠点ごとに理解度のばらつきがあったのです。
何が違うかというと、経営層が理念研修を受講する職員をどのように送り出している(いた)か、に違いがあったのです。

ある施設長は「法人理念の○○というテーマで研修があるから、施設でも実践できるようしっかり聞いてくるように。」と声をかけられて送り出された職員がいました。
一方、「法人必修の理念研修があるから、勤務を調整して必ず受講してきてください。」と送り出したある施設長とでは、受講する職員の研修に対するモチベーションは雲泥の差でしょう。

また、前者の施設長は会議や内部研修の際など、事あるごとに法人理念を取り上げ、私の研修で「こういっていたのを覚えていますか?」と投げかけたり、「あなたはグループワークの際にどう考えましたか?」と研修を良い形で現場で展開し、後追いをきちんとしてくれていたのです。
そうすると、たかだか3時間ばかりの研修が、何倍も効果的な"教材"となります。
それは外部研修を受けた職員が、会議の際に報告、共有し、一人の学びを組織の学びに昇華するプロセスに似ています。
全職員に同じ内容で研修を受講してもらう目的は、職員間で共通言語化することで直ちに現場に落とし込み、理解・浸透を促進させ、成果(結果)につなげることです。

残念ながら、この法人様では経営層による理念研修の後追いの差が、結果的に法人理念の理解・浸透と理念研修に対する酷評につながってしまった、といえます。
このような状況を生む原因として、合意形成(コンセンサス)が十分ではなかったり、当事者意識が欠落しているなど理由はありますが、一人ひとりがその必要性を認識することです。

自由記述欄の肯定的な意見には、「難しい内容でしたが、私なりに少しずつ理解できたと思います」「利用者のために出来ることをやっていきたい」「理念に対して、自分の仕事をどう生かしていけば良いか分かった」と言った声が寄せられています。
お分かりの通り、肯定的な意見は自分事として捉えられている意見です(否定的な意見は依存的で、他者批判なのです)。

今回のタイトルに「後追い」という言葉を入れていますが、意味は「ハイハイやつかまり立ちができるようになり行動範囲の広がった赤ちゃんが、保護者のかたが視界から消えたとき、後を追いかける行動」を指します。
ハイハイからいきなりシャキシャキ歩きはじめたらビックリするように、「後追い」は乳児から幼児、青年になるための必要な成長過程なのです。
「法人がやっている理念研修なんて大きなお世話」ではなく、「理念研修のきっかけをどう生かしていこうか(まずは真似てみるか)」という姿勢が大事なのです。

今日は理念研修を継続してきた法人様の事例をご紹介しました。
現場に法人理念を理解・浸透させることは、一夜にして成し遂げられることではありません。
だからこそ受講した研修やいいなと思った書籍・映像などをあなたなりに繰り返し繰り返し「後追い」してみください。
それが組織力を高めるために必要なあなたにとっての成長過程です。

管理人

ほうれんそうのしゅうかくさい

2018年10月25日 | 経営理念
ある法人様で階層別研修をさせていただいているのですが、その法人の職員による内部講師による講義の中で、「“ほうれんそうしゅうかく”が大事」という聞き慣れないフレーズがありました。

よくよく聞くと、
ほう:「報告」
れん:「連絡」
そう:「相談」
しゅう:「周知」
かく:「確認」
と、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」に「周知」「確認」が追加されていました。

思わず、「なるほど!」と膝を叩いてしまったのですが、私自身、上司によく言われている「再確認(進捗状況の確認)」も加えた方が、情報共有や共通認識をより促進できるのではないかと思い、「ほうれんそうのしゅうかくさい(ほうれん草の収穫祭)」とハロウィンっぽく名付けてみました。

それあなたの「思い込み」じゃないですか?“でも、「ほうれんそう」についての現場で陥りやすい「思い込み」について取り上げましたが、私も昔は「ほうれんそう」が苦手で、誰に、何を、どのように伝えたら良いか悩んだ時期がありました。

しかし、「ほうれんそう」を徹底していくと、結果的に自分自身が楽になる、組織の中に味方を増やすことにつながる、という感覚を覚えました。
業務の進捗はどうで、どういったことで壁にぶつかっていて、どういったプロセスで進めようと思っているなど、上司や周囲の仲間に自分自身で発信しないと、上司や周囲の仲間も気づいてくれないのです。
手段・方法を含めた“表現力”を磨き、伝え続ける勇気を持ちましょう”でも、夫婦間ですら赤の他人同士ですから気持ちを100%推し量るとか以心伝心なんて出来ません、ましてや会社組織の中でたまたま上司・部下の関係になったあなたの気持ちなんて、あなたが思っている以上に上司には伝わっていないわけです。

だからこそ、あなた(情報発信者)からの「ほうれんそう」が起点となり、情報という電気信号が組織内の職員というシナプスに伝播していくのです。
ただし、これで「ほうれんそう」したあなた(情報発信者)の役割が終わったわけではありません。
「ほうれんそう」した情報がきちんと職員(情報受信者)に「しゅうかくさい(周知・確認・再確認)」してもらう必要があります。

先日、ある特養での会議を終えて帰ろうとした際に、職員2名が会議室に現れ、「あれっ、会議は16:30からではなかったですか?」との質問に、担当者が「15:00からで、今終わりました。」と伝えました。
顔を見合わせた二人は、申し訳なさそうな表情を浮かべながら会議室を後にしました。
担当者は「施設の規模も大きくて、なかなか情報がきちんと行き渡らないんです」と弁明されましたが、施設の規模が大きいのであれば、それに見合う「周知」の仕方や「確認」方法を検討しなければ、「ほうれんそう」が不十分なため、結果的に重大事故や経営リスクを引き起こしかねません。

STEP1.「ほうれんそう」した情報を「周知」させるために
「周知」の方法として、事務所や職員休憩室などに紙面による掲示や回覧やグループウェアなどがあります。
回覧して確認した職員が印鑑を押して「周知」を進める方法がありますが、ろくに目を通さずに印鑑を押していないでしょうか(形骸化していないですか)。
「周知」させるためには、情報受信者に伝えたい情報を「周知」させたい意図や目的を明確に伝し、簡潔に表記されていなければ、目を通そうかなという気にはなりません。
記載している情報にタグ(見出しやキーワード)をつけたり(法人からの事務連絡、施設からの事務連絡、利用者情報、その他など)、赤ペンやマーカで強調するなど、視覚的な工夫を行うと、短時間でポイントを押さえた情報の「周知」が可能です。

STEP2.「周知」が図れたか「確認」を
朝礼や定期的な会議の場などで、「○月○日に回覧した△△についてですが〜」というように、情報発信者が責任を持って「確認」する機会を持ちましょう(意見を求める内容であれば、誰かを指名して発言してもらうぐらい仕掛けましょう)。
情報発信者からの一方的な「いったつもり」「伝えたつもり」にならないよう、ここが重要です。
この「確認」を重ねていると、「まだ目を通していなかった」「さらっとしかみてないからもう一度確認しよう」と職員の情報共有や共通認識に対する意識を変えていくことになります(前回の記事の会議の在り方でも取り上げましたね)。

STEP3.最後の仕上げは「再確認」
私がよく抜けるのがこの「再確認」。
上司から「伝えたの?」→「伝えました」、「確認したの?」→「確認しました」、でいってみると思ってたんと違うということがあるのです。
部下に業務を依頼し、「○○やっといてくれる」→「はい、○○ですね」、「そうそう○○、よろしくね」→「○○、承知しました」、で確認すると○`○`になっていたり、△△になっているのです。

「再確認」の手法もいろいろで、口頭で伝えたことを紙面やメールで伝え直したり、○○の見本を渡してこの通り業務を依頼するといったことも「再確認」になるでしょう。
そこまでしなければならないか、と思われるかもしれませんが、ここまでしておいた方が後でやり直すよりはるかに効率的です。
また、「再確認」を重ねていると、“Aさんはこの水準までクオリティを求めるはずだ”、”Bさんはこういうことを意図しているな“といった仕事を進める上での勘所を掴んでくれます(組織の中の味方が増える感覚がここです)。
そうすると気持ちを推し量ったり、以心伝心に近づいたりするわけです。
ここまでしないと、部下や仲間と同じ土俵の上で仕事をしていることにはならないのです。


「ほうれんそうのしゅうかくさい」が単なる語呂遊びのように聞こえるかもしれませんが、分かりやすく、インパクトのあるキャッチフレーズやスローガンの方が記憶に残ります(ビジネス用語のようにアルファベットの頭文字を取るのは類似語が多いので要注意)。

目の前の課題を大きいまま処理(解決)しようとする状態を私は「マグロ」に例えて、「丸々1匹のサイズ」から「切り身サイズ」「刺身サイズ(一口大)」に小さくして対策を講じましょうと真面目な顔をして職員研修で伝えています(私はマジで伝えようとしています)。
組織の中の共通言語として「それじゃマグロの状態だよ🤦‍♂️」とか、「NICE、刺身サイズ👏」といったように使ってもらえることを目指しています。

キャッチフレーズやスローガンはいかに皆が興味を持って日々の業務の中で使ってもらえるか(実践に結び付けられるか)が、職員の意識を変え、行動を変え、成果・結果を変えていくことに繋がっていきます。
経営理念から紐解いたり、補完する(補足的な)行動指針的な内容を設定したり、事業計画書からキーワードを取り上げるなど、組織の中の共通言語を皆(一部の職員ではなく”全員参加”)で作り上げ、同じ方向性を向いた組織づくりを実践しましょう。


管理人

1月9日(火)のつぶやき

2018年01月10日 | 経営理念

事業所(法人)の生き残りをかけた理念経営

2017年09月04日 | 経営理念
今年最初の福祉サービス第三者評価のフィードバックを行ってきました。
第三者評価における”フィードバック”とは、経営層から第三者評価の評価項目に関するヒアリングを行い(訪問調査)、その内容を踏まえて評価結果報告書を作成し、その報告を指します。

今日お邪魔した法人様とはもう3、4年のお付き合いがあります。
フィードバック後、「今回の結果を踏まえ、何か次の一手はありませんか?」と尋ねられました。
「理念研修なんかやってみてはどうでしょうか」とお答えさせていただきました。

この法人は事業計画書に「理念の実現」ということを重点目標に掲げ、「接遇」や「挨拶」などの取り組み重点的に取り組んでこられました。
今年から標語を作成し、朝礼後に唱和をする取り組みを始められました。
標語は毎月変更し、職員への意識づけに取り組まれています。

今回の第三者評価の結果においても、これらの取り組み成果が現れるような利用者調査の結果となりました。
だからこそ、改めて「経営理念を共通の価値基準にするために、どう捉えているか(解釈しているか)共有する機会を持ってはどうでしょうか」とお話しさせていただきました。

クライアントも、「経営理念を掲げているだけという話はよく聞きますが、そういう風に深め合って活用していくんですね!」という目からウロコ的な反応を示されていました。
まだまだ「理念研修」的なマネジメント研修は福祉施設においては、メジャーじゃないんだと改めて感じさせられました。

当ブログでも、散々「経営理念は大事ですよ」と口を酸っぱくして言ってきました。
なぜならば、それが今後の福祉サービス事業所(法人)が生き残るために最低限必要な要因(ファクター)だからです。

介護職員処遇改善加算のさらなる充実や業界全体の悪いイメージの払拭などにも業界団体から声が上がっています。
しかし、「なぜ当法人で働きたいのですか?」といった質問を面接でしていますかと、”経営理念や行動指針などに共感した人財確保がブレない組織を作っていく”でも取り上げました。
まさにここが各施設(法人)レベルで充足していくと、結果として、職員一人ひとりの働き甲斐や経営理念の実現に向けた実践者としての意識の醸成に繋がると考えています。
要するに、職員の業務の矛先が”衛生・動機付け要因”の「達成」や「承認」につながっていくということです。

「あそこの法人の採用面接で落ちた。経営理念について、どう貢献するかなんかて考えてもみなかった。」といった職員を是非みなさんのお力で減らしていただきたいと思います。

では、具体的に理念研修でどんなことをするのか、少しだけ紹介させていただきます。
参考にしていただくとともに、ご要望があれば、メール等にてお気軽にお問い合わせください。

<理念研修>
1、経営理念とは
→皆さんの所属する法人の経営理念について振り返ります。

2、経営理念をどのように捉えているか、解釈しているか
→皆さんにとって経営理念とはどういった存在ですか?

3、他法人(民間企業)の経営理念とは
→他法人での活用事例を紹介します。

4、経営理念を身近なものにするために
→掲示してあるだけの経営理念を具体的に活用するとは?

5、経営理念と日々の業務の結びつき
→無意識から意識化するプロセスをワークを通して体験し、理解をより深めてもらいます。

以上

管理人

経営理念や行動指針などに共感した人財確保がブレない組織を作っていく

2017年05月08日 | 経営理念
仕事をする上で大事にしているスタンス(考え方)を持とう”という記事で、個人的に大事にしているスタンス(考え方)を持つことが、個人の育成と組織の発展にも大事ということを取り上げました。

今日は法人や施設、組織として大事にしているスタンス(考え方)について取り上げます。
このスタンス(考え方)の根底にあるのは言わずもがな”経営理念”です。

そして、それを具現化するためのプロセスとして、行動指針や基本方針などに具体的な取り組み姿勢などが示されています。
何気なく事務所に掲示されているだけでは、組織に浸透することはないでしょう。
経営理念同様に共通の価値観(価値基準)として行動指針や基本方針などと、日々の業務や行動がどのように結びついているかを定期的に振り返る機会を持つことが大切です。

また、昨今の人財不足がますます深刻化するなか、応募があれば、手当たり次第に採用しなければならない現実があります。
しかし、経営理念や行動指針などで共感した内容などについて、面接時にきちんと尋ね、雇い入れるに当たって齟齬がない状態になっていますか?
数ある法人の中で皆さんの法人を選び、一緒に働きたいと思い、ドアを叩いたわけです。

「当法人の経営理念について、どのように理解していますか?」「具体的に行動指針(基本方針)に則ってどのような働きぶりをしてくれますか?」と言った質問は最低限必要ではないでしょうか。
きちんと法人理解をしている職員であれば、「経営理念の○○について、私も実現するために一緒に挑戦したい」「私自身が行動指針の○○という部分に共感し、そのような仲間と一緒に仕事がしたい」といった熱意を語ってくれるはずです。
こういった人財に働いてもらわなければ、結局のところ定着しませんし、時間を取って面接したことが無駄になってしまいます。

このように組織の成熟度を高めるためには、経営理念や行動指針、基本方針などに納得し、そうした働きぶり、貢献できる人財を採用するところから始まります。
そのためには、法人ホームページや採用パンフレットなどにこれらの情報をきちんと整理し、掲載することが必要です。
ホームページに「先輩職員の声」などのページがあれば、経営理念や行動指針などのどこに共感し、日々の仕事にどう生かしているかなどをインタビュー記事として掲載することで、就職希望者の理解を深める情報源にもなりますし、そうしたスタンス(考え方)を持った人財が集まっている法人、施設であるという認知が高まります。
結果的に、行動指針や基本方針に納得した人財が集まることで、経営理念の具現化という方向性がブレない組織づくりに近づけます。
個人の仕事をする上で大事にしているスタンス(考え方)以上に、組織のスタンス(考え方)をきちんと示していくことは、これからの法人の生き残りをかけたメッセージでもあります。
ぜひ、同じ志を持った人財と一緒に働ける組織を作っていくためにも、経営理念や行動指針をこれまで以上に生かしていきましょう。

管理人

聞き手にとって「わかりやすい言葉」で伝えましょう

2016年10月22日 | 経営理念
仕事柄、経営層や現場職員の方向けの研修の講師をさせていただくことがあります。

手前味噌な話ですが、受講者の方から、「管理人さんの話はとてもわかりやすいですね」「もやもやしていたことがスッキリしました」と言った感想をいただくことが少なくありません。
私に比べ、立場も上、現場経験も長い方々からそのような感想をいただくことは、講師としては非常にありがたく、うまく伝えられてよかったなと思うのですが、先日、職場の後輩からも、「管理人さんの説明を聞いてわかりました」なんて言ってもらうことがありました。

改めて「なんでそう思ったの?」と尋ねてみたところ、「わかりやすい(平易な)言葉で、順序立てて話してくれるので、何がわからないかも整理できました」ということ。
後輩には、私自身、特に「わかりやすい(平易な)言葉」というのは、非常に気をつけている部分かなという話をしました。

よく、頭のいい人は、難しいことを「わかりやすい(平易な)言葉」で説明できる人と例えられることがあります(私が頭がいいとはいいません)。
ようするに、「わかりやすい(平易な)言葉」で伝えられる人は、それだけ自分自身がそのことに理解・納得し、自分自身の言葉で表現できる領域まで達している人といえます
経営理念の浸透段階の「理解・納得」、そして「実践・実現」と同じロジックです。

研修レジュメもそうです。
例えば、「経営理念」は重要な考え方だという事実情報を箇条書きでまとめるより、「経営理念」と「事業計画書」「人事制度(人財育成の仕組み)」の関係を三角形を見立てた図で示したほうが、受講者もそれぞれの関係性が視覚的に理解でき、なおかつ私自身も説明しやすくなります。

また、物事を突き詰めて自分自身が「理解・納得」し、自身の言葉で表現できる領域まで達することとは、結果的に物事を多様な視点で捉えることにもつながります。
例えば、人事考課で自己評価をするケースを想像してみてください。
今後のキャリア形成のために自身の成長を振り返る機会(自身の自己分析)と捉えるA職員と、自己評価をただの作業と位置づけ、オール「B」としてしまうB職員とでは、人事考課の自己評価の目的や意味・意義の捉え方で大きな差が生じています。

「わかりやすい(平易な)言葉」で伝えられるということは、物事の本質を理解し、原理原則を抑えながら、他者に説くことがということです。
経営層やリーダー層が部下や現場職員に物事を伝える際も、できるだけ伝える職員のレベル感などを意識しながら、「わかりやすい(平易な)言葉」にできるだけ置き換えながら、伝えてみてはどうでしょうか。
職員の反応やその後の行動にも大きな変化が現れることでしょう。

管理人

BSCを用いて、目標達成を目指す好循環な組織づくりを目指せ

2016年10月12日 | 経営理念
事業計画書を作成するポイントである、課題整理の仕方の一つとして、バランストスコアカード(以下、BSC)について取り上げたいと思います。

前回の記事からの再掲となりますが、BSCでは、4つの視点と2方向の流れが生まれます。
4つの視点とは、”財務の視点(経営に関する要素)”、”利用者の視点(利用者満足に関する要素)”、”業務プロセスの視点(サービス内容などに関する要素)”、”成長と学習の視点(人財育成に関する要素)”です。

これらの4つの視点間で2方向の関係性(流れ)が生じます。
”財務の視点”の目標を達成するために何をする

”利用者の視点”の目標を達成するために何をする

”業務プロセスの視点”の目標を達成するために何をする

”成長と学習の視点”の目標を達成するために何をする
という計画立案の流れができます。

そしてBSCのポイントの一つは、
”成長と学習の視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった

”業務プロセスの視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった

”利用者の視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった

”財務の視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった
という評価(目標達成への検証)の流れができます。

計画立案と評価(目標達成への検証)を行い、経営理念の実現を通して、組織の成長を具現化するというマネジメントシステムです。

BSCのもう一つのポイントとして、目標の数値化が挙げられます。
BSCのS(スコア)です。
「取り組み成果がどうなったか」を測る指標として、数値化(定量的)された目標設定が必要になります。
ただし、福祉施設の経営においては、必ずしも数値化できる目標ばかりではありません。
「利用者の笑顔あふれるサービス提供」という重点目標があった場合、そのゴールは普遍的であり、定量化できないゴールといえます。

そのような場合は、①出来るだけ定量的な目標を設定できるような行動内容(アクションプラン)を設定する、または②定性的なあるべき姿(ありたい姿)を具体的に示す、の2つが考えられます。
①であれば、「利用者の笑顔あふれるサービス提供」を例えば利用者向けアンケート調査の満足度で測ったり、外部ケアマネジャーからの紹介件数などで測ることが出来ます。
②であれば、ユニットの利用者同士が楽しく会話を楽しめるような仲介役を務めるや日中活動にできるだけ多く参加してもらえるよう声かけを工夫するなどが挙げられるでしょう。

具体的な目標を設定する目的は、ゴールの共有化です。
目指すべきゴールを明確にすることで、組織の一体感の醸成にもつながります。
BSCを導入している法人様では、目標を数値化する習慣や、目標達成の意識が高く、目標達成に向けた建設的な意見が活発に出るという組織風土の好循環も効果として現れています。
BSCと戦略マップの相乗効果で、戦略的なツールとしての事業計画書の活用を実現しましょう。

管理人

戦略マップを用いて、行動内容を整理する

2016年10月07日 | 経営理念
そろそろ平成29年度の事業計画書の策定に向けて、少しずつ準備を始めた法人・事業所も出てきたのではないでしょうか。
皆さんの法人、事業所の事業計画書はどのような視点で作成されていますか。
経営理念の実現のため、「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営資源ごとの視点や「経営満足(CoS)・利用者満足(ES)・職員満足(CS)」のいわゆる三者満足の視点など、さまざまな視点で課題を整理し、それぞれに重点目標を掲げ、行動内容(アクションプラン)を詰めていっていることと思います。
SWOT分析など、法人・施設の強みや弱みから戦略的な視点も盛り込んで作成しているのではないでしょうか。

しかし、「一つ一つの行動内容(アクションプラン)になぜ取り組むのか?」ということがしっかりと現場職員レベルにまで落とし込むことができていますか。
事業計画書を戦略的なツールとするためには、経営理念を浸透させて、目的意識や意義をしっかり押さえる必要があります。
そのための整理の仕方として、「戦略マップ」という考え方をご紹介します。

本来であれば、「戦略マップ」は”バランストスコアカード(以下、BSC)”というマネジメントシステムの補完的なプロセスですが、事業計画書をより戦略的なツールとして活用していただきたいため、それぞれの行動内容(アクションプラン)同士をどのように関係(関連)させればよいかという概念的な内容を中心に解説したいと思います(BSCについては、後日詳しく取り上げたいと思います)。
「戦略マップ」で検索していただければ、イメージ図が出てくると思います。

BSCの基本的な考え方について少しだけ触れておきます。
BSCでは、4つの視点と2方向の流れが生まれます。
4つの視点とは、”財務の視点(経営に関する要素)”、”利用者の視点(利用者満足に関する要素)”、”業務プロセスの視点(サービス内容などに関する要素)”、”成長と学習の視点(人財育成に関する要素)”の4つです。

では、2方向の流れについて説明します。
上記4つの視点において、”財務の視点”の目標を達成するためには”利用者の視点”に関するどのような取組みをすればよいか。
また、”利用者の視点”の目標を達成するためには、”業務プロセスの視点”に関するどのような取組みをすればよいか、というように”財務の視点”→”利用者の視点”→”業務プロセスの視点”→”成長と学習の視点”という流れができます。
そして大事なのは、”成長と学習の視点”→”業務プロセスの視点”→”利用者の視点”→”財務の視点”という逆向きの矢印です。
その取組みを行って、次の視点の目標を達成できるものなのかどうかという評価(検証)を行い、目標を達成するというマネジメントシステムです。

「戦略マップ」は、BSCで設定されている”財務の視点”、”利用者の視点”、”業務プロセスの視点”、”成長と学習の視点”という4つの視点で課題を整理し、それぞれの視点ごとの取り組みがどのように関係(関連)しているかを線や矢印でつなぎ合わせ図式化したものです。
いわば戦略的な”ストーリー”といっても過言ではありません。

一つずつの行動内容(アクションプラン)では全体像がつかみにくいことがありますが、「戦略マップ」で整理すると一つ一つの行動内容(アクションプラン)により深い目的や意義がみえてきます。
それは職員へ行動内容(アクションプラン)を分かりやすく伝えることにもつながりますし、なにより経営層(理事長や施設長)、リーダー層の皆さんが職員に説明しやすくなるという効果も発揮することでしょう。

また、日々の業務とは別に事業計画書の行動内容(アクションプラン)を行うのではなく、できるだけ効率的に取り組みを進めることにもつながります。
例えば、

誤嚥性肺炎を予防するため歯科衛生士を招いた内部研修を実施する
(成長と学習の視点)

利用者の口腔状態に適した口腔ケア用品の充実や口腔ケア加算の算定を可能とする取り組みの促進
(業務プロセスの視点)

経口摂取の維持や栄養状態の改善
(利用者の視点)

誤嚥性肺炎による入院者の減少による空床の抑制、収入増
(財務の視点)

という流れに整理することができます。
内部研修をして口腔ケアについて学ぶことが、実は空床の抑制につながり、法人・施設の経営の安定につながると結び付けられる一般職員はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

バラバラになっている課題を「戦略マップ」を用いて見える化することで、計画の着実な実行に向けた行動内容(アクションプラン)を整理しましょう。

管理人

理念の”実践・実現”のために経営層やリーダー層が”調整弁”となれ

2016年10月03日 | 経営理念
経営理念の浸透段階の最後である”実践・実現”について述べていきたいと思います。
”実践・実現”を強力に推し進めるためには、これまでみてきた「周知→浸透→理解・納得」のプロセスを各階層の職員へしっかりと根付かせ、経営層(理事長や施設長)、主任クラスなどのリーダー層も含め、方向性を常に確認し、職員を叱咤激励し続けることです。
理念やビジョンの方向性が誤っていれば、経営層やリーダー層が正す機能を発揮することが必要です(”怒る”のではなく、”叱る”です)。
そして目標を達成したり、”あるべき姿(ありたい姿)”に少しでも近づいたら、しっかりとその気持ちを職員に伝えることです。
いわば、経営層やリーダー層がマネジメント機能を有する”調整弁”となることです。

法人や施設が向かうべき目的地への”地図”が事業計画書である」でも述べたように、事業計画書の運用や人事考課制度による人財育成(後日、紹介します)などとの相乗効果により、経営理念の実現を成し遂げます。
裏を返すと、事業計画書の運用や人財育成をしていかなければ、経営理念の実現は不可能と言っていっても過言ではありません。

これらの仕組みを用いて、経営理念の具体的な姿を可視化し、浸透を図っていくことができます。
経営理念の”実践・実現”の段階では、すでに職員は”考動力(考えて行動する力)”を有しており、法人・事業所の目指すべき理念やビジョンに向かって取り組みを進めています。
しかし、大切なのは経営層やリーダー層の役割です。

海軍大将であった山本五十六の有名な言葉があります。
「やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」

この「経営理念」のテーマの最初の記事で、「経営層が語っていますか?」と投げかけました。
経営層やリーダー層が率先して経営理念について語り、経営理念の実現に向けて具体的な行動を起し、職員に示していけば、必ずあなた(リーダー)のフォロワーとして、職員は後ろからついてきます。
そのように成功した法人をいくつも目の当たりにしてきました。
経営理念が浸透し、法人・事業所の目指すべきありたい姿(ありたい姿)を実現するかどうかは、実は経営層やリーダー層に当たる皆さんの働きかけにかかっているのです。

このブログでは、引き続き、社会福祉法人や福祉施設のマネジメントに関する内容を取り上げていきます。
何かのお役に立てれば幸いです。

管理人

中長期的な視点をもとに、今やるべきことを設定する

2016年09月29日 | 経営理念
前回の記事で3年後、5年後の”ありたい姿(あるべき姿)”を示して、取り組みを積み上げましょうと述べました。
読者の皆さんであれば、もう”ありたい姿(あるべき姿)”が経営理念から通ずる姿であることは百も承知だと思います(しつこいほど繰り返していますから)。
しかし、その姿を目指すために、「1年目、2年目、3年目・・・と何をしていけばよいのか?」と戸惑う方もいるのではないでしょうか。

例えば、こんな事例で考えてみてはどうでしょうか。
あなたはケアマネジャーの資格取得を目指しています。
受験資格には国家資格を取得し、実務経験5年(900日以上)が必要です。
その5年間を通して、1年目にはどのような勉強を行う、2年目は・・・、3年目は・・・とイメージすることができるのではないでしょうか。

同様に、事業計画書で今年度どのようなことをしなければならないかを考えることは、3年後、5年後の”ありたい姿(あるべき姿)”から逆算して検討することが重要です。
1年目にはどのような状態に達していなければ2年、3年経っても、目指すべき姿にはたどり着けません。
だからこそ、それぞれの行動内容に目標を設定し、それを必達するんだという意識付けが欠かせないわけです。

いわば習熟チェックを行いながら新人職員を2年、3年かけて一人前に育て上げるのと同様、法人・施設のサービス水準や組織力を高めていくには同様の年月が必要です(制度改正や職員不足などの外・内部環境の変化により、それ以上の年月が実際には必要ですね)。

今年何をやらなければならないかを積み上げて、中長期の計画となる場合もあります。
このプロセスでは、結果として(偶然)”ありたい姿(あるべき姿)”になったという結果になればよいですが、そのほとんどが絵に描いた餅となるケースが少なくありません。
地図の例えでいえば、行き当たりばったりで毎回地図を書き直しているような状態ですから、最短距離で目的地にはたどり着けないでしょうか。

皆さんも出かける前はスマホなどで乗り換え案内アプリを使って下調べをするように、法人・施設経営においても、目的地を明確にした上で、それに必要な工程(中長期的な計画書)を立て、寄り道(単年度の事業計画書)しながら、着実に目的地へたどり着けられるよう想(行動内容に)を練って行きましょう。

管理人

法人や施設が向かうべき目的地への”地図”が事業計画書である

2016年09月28日 | 経営理念
経営理念の浸透段階の最後である”実践・実現”について述べる前に、その要である「事業計画書」について今日は取り上げます。

皆さんの社会福祉法人や株式会社にも事業計画書を毎年策定し、事業経営やサービスの質の向上に日々お取り組みのことと思います。
しかし、皆さんの法人や施設の事業計画書は以下のような状態になっていませんか?

・年度だけ更新し、毎年内容が同じ
・”事業”の計画書ではなく、”行事”の計画書になっている
・単年度の行動内容が中心で、中長期的な視点の行動内容が十分ではない
・達成目標や達成期日、担当責任者等が明確になっていない
・事業計画書を作成したことに満足してしまい、実際に運用できていない
・進捗管理が十分ではなく、達成目標や達成期日の概念があいまい
・経営層で作成しているため、職員が事業計画書を知らない

などなど。
挙げ始めるとキリがありませんが、1つでも該当する場合は、事業計画書をより戦略的なツールとして活用するための改善が必要です。
経営理念が法人や施設が目指す”目的地”であると例えるならば、事業計画書はそこへ向かうための”地図”といえます。

その地図が、世界地図のような全てを見渡せるような縮尺であれば、職員はあっちからも、こっちからも、そっちからも行けてしまう状態(行動の統一を図れない状態)を引き起こしかねません。
その一方、〇〇町△△番地□号のようなピンポイントの縮尺であれば、職員はその先どちらに進んでよいか、先を見据えて進むことができない状態(組織のビジョンや方向性の不透明さに対する不安・不満を抱く状態)となってしまいます。
また、古い地図ばかり見ていては、利用者ニーズに応えるサービス提供が遅れ、結果的に社会資源として地域社会から認められることはないでしょう(古い旅行雑誌を見ながら観光して、行きたいお店がなくなっていた時の気持ちはお分かり頂けると思います)。

そうならないためにも、事業計画書に経営理念を実現するための具体的な行動内容を落とし込むこと、また法人や施設の3年、5年後の”ありたい姿(あるべき姿)”を示し、それに向けて1年目、2年目、3年目・・・と取り組みを積み上げ、目的地に近づいていくことが重要となります。
そのように事業計画書を一般職員も参加しながら作成していけば、おのずと年度だけ変更したり、達成目標が欠けたり、進捗管理が不十分といった状態にはならないでしょう。

なぜならば、事業計画書はいわば法人や施設のケアプランと例えることができます。
ある利用者の抱える生活課題を多職種連携で解決できるよう取り組むための指南書(地図)がケアプランです。
定期的にカンファレンスを開いてモニタリングを行い、長期・短期目標のサービス内容をの達成状況を評価します。
”達成”であれば、新たな生活課題についてサービス内容を追加することになるでしょう。
”未達”であれば、その生活課題をクリアするために、違ったアプローチやサービス内容の見直しが必要になります。
このようなケアマネジメントサイクルは、PDCAサイクルで運用しています。
事業計画書もまたこのPDCAサイクルに沿って運用されています。
事業計画書と聞くと、馴染みのない”言葉”ということで拒否反応を起こす職員もいますが、実はすでにケアマネジメントで実践しているわけです。

法人や施設の3年後、5年後どのくらいのサービス水準を目指すか、どういった組織作りをしていきたいか、地域にはどのような存在感を示すことができるかなど、職員一人ひとりが経営理念を実現するために、社会資源の一つとして、どんな役割を果たしていく必要があるのかを考えることで(経営理念を”理解・納得”している状態が求められます)、優先順位をつけて行動内容が導き出されます。
皆さんの法人や施設の事業計画書が戦略的なツールとして使いものになる”地図”となっているか、改めて確認してみましょう。

管理人


職員の成功・失敗体験を通じて、理念の”理解・納得”を促す

2016年09月24日 | 経営理念
経営理念の「周知→浸透」と続いて、次の段階が”理解・納得”です。
経営理念を”理解し、納得している”組織の状態とはどういった状態を思い浮かべますか?
ちなみに”理解・納得”を経て、最終段階である”実践・実現”につながる重要な段階です。

”理解・納得”の段階は、前回の記事でいう「フォアグラという食べ物は知っていて、味や香りも自分の言葉で表現できる」状態と例えられるでしょう。
要するに、「経営理念を実現する実践者の一人として、成功・失敗体験を繰り返しながら、職員自身が経営理念を咀嚼して理解し、自信を持って、話せ、伝えられ、行動することが出来る状況」といえます。
経営層による経営理念に関する語り、事業計画書と日々の業務内容との連動性の意識化、そして”理解・納得”を促すためには、職員一人ひとりの「考動力(こうどうりょく)」の醸成が重要です。
「考動力」とは「考えて、自ら行動に移すことが出来る力」であり、職員一人ひとりが自立し、自律することを求めていくことになります。

最終段階の”実践・実現”を担う幹部管理職(幹部管理職だからと言って、必ずしも”実践・実現”の一翼を担っているとは言い切れませんが)、そのフォロワーとしての上級職員(リーダー職員)に求めらる組織のあるべき状態と言えます。
言い換えると、法人・施設の次世代を担う職員であり、それを具現化するための「考動力」が必要になるということです。
この段階に近づけるためには、前回の記事でお伝えしたように、日々の業務内容と経営理念の結びつきが、職員にとって意識化され、目的意識や組織の帰属意識を高めていくアプローチが重要です。

最近、現場からはこの「考動力」を持たない、また「考動力」が弱い職員が多くという声をよく耳にします。
そのような場合、職員自身に「考動力」がないのか、または「考動力」をうまく引き出せていない場合のどちらかが考えられます。

特に後者の場合では、コーチングの手法を用いた育成指導を実践してみてはいかがでしょうか。
指導する立場として、自らの意見や指導内容を伝えることをぐっとこらえ、意図的に考えさせる投げかけを職員に行ってみましょう。
職員はすでに答え(いわば意見)を持っています。
職員の持つ答えをいかに引き出し、その答えに対して、方向性があっていればその答えを尊重し、誤っていれば緩やかに答えの軌道修正を行います。

そして行動に移すわけですが、ここで重要なのがほったらかしにしないことです。
行動に移しどのような成果をあげられたか、どういうところが難しかったかなど、職員をフォローし、保育でいう「共育て」を実践してみてはいかがでしょうか。
冒頭に「成功・失敗体験を繰り返しながら〜」と書きましたが、是非ともよい形で職員が成功体験を味わえ、失敗体験を次の成功に結び付けられるよう、コーチングも参考にしながら、経営理念の”理解・納得”を進めていきましょう。

管理人

経営理念を浸透させるために、事業計画書を活用しましょう

2016年09月21日 | 経営理念
経営理念を"周知(知っている)"という状態から、さらに組織へ"浸透"させるためにはどうすればよいでしょうか?
スポンジにじわっと水分がしみ込むように、職員への経営理念の浸透を促進させるためには、経営理念がより身近な存在であると感じことが出来る状態づくりが重要だ、と私は考えます。
例えて言うならば、「フォアグラという食べ物は知ってるけど、食べたことないから分からない」と同じです。
「経営理念は知っているけど、どのような取組みがその実現に関連するのか分からない」、経験がないから実感がわかない(自信がない)という状態です。

しかし、経験がないわけではありません。
経営理念と日々の業務内容と経営理念がどのように連動(関係)しているかを職員が考える(整理する)習慣をつける(=意識化させる)ことで、「もうやっている」という実感(自信)を持たせることが出来ます。
そうすることで日々"作業"として行っていたことについても"目的"意識が芽生え、たとえ嫌々行っていたことに対しても意義や役割を見出すことにつながります。
このように、日々の"作業"や"業務"が事業計画書の行動計画(アクションプラン)にも結びついていることを職員が気づけば、経営理念のさらなる"浸透"は加速します。
なぜならば、「経営理念→事業計画書→日々の"作業”や”業務”」というロジックで成り立っており、事業計画書は経営理念を実現させるための行動計画(アクションプラン)がまとめられているからです。

現場では、計画を立てた(作った)ことに満足してしまい、事業計画書のPDCAサイクルごとに十分機能しない課題を抱えているケースが少なくありません(このテーマについては、後日、深掘りしましょう)。

そこで、この経営理念と関連付けて事業計画書の運用についても一緒に見直してはいかがでしょうか。
「なぜこの取組みが必要なのか」、「この取組みを通して経営理念をどのように実現することができるか」について考える研修や勉強会を通して、日々の"作業"や"業務"が経営理念と結びついていることを再確認することが職員にとってはわかりやすい取組みと言えます。
裏を返すと、経営理念を実現させるために、この取り組みが必要なんだというロジックが成り立つわけです。
事業計画書の活用を通して、漠然としていた経営理念が、より身近に感じられ組織の状態、"浸透"を進めていきましょう。

管理人

経営層が経営理念について語っていますか?

2016年09月13日 | 経営理念
全ては経営理念に通ずる」でもふれましたが、経営理念について”知らない”という組織の状態から、周知→浸透→理解・納得→実践・実現のプロセスを、職層ごとに段階を経て進めていくことが重要です。

では、"知らない"という状態から”周知(知っている)”という段階に進むためには、どうすればよいでしょうか。
朝礼での唱和などを例として挙げましたが、まずは経営理念について、経営層(理事長や施設長クラス)が職員に対して語っていますか?
言い換えるならば、雲の上の存在のように崇高な概念である経営理念というものを、できるだけ分かりやすい言葉に嚙み砕き、より身近な存在に思わせられるプロセスが、「経営層が語る」という取り組みです。

「経営理念とは〜」という堅苦しい、難しい伝え方をするのではなく、理事長や施設長のこれまでの職業人としての体験談の中で、振り返ってみると経営理念につながっていた、といった感じで伝えてみてください。
職員に「理事長や施設長はやっぱりスゴい!」と思わせるのが目的ではなく、「日々の業務や体験の中で、自ずと経営理念につながる取り組みをしているんだよ」、とった伝え方をすることで、新たな気づきが職員に芽生えます。
このようなメッセージの中には、経営層の法人や施設に対する思いやビジョン・方針などの今後の展望などの内容もおのずと含まれ、職員にとっては理事長や施設長との距離もぐっと縮めることにつながるでしょう。

そのためには、経営層は経営理念について自分の言葉で表現できる(伝えられる)よう、日々考え、メッセージを発信していくことが役割として求められます。
”知らない”状態から”周知(知っている)”という段階に進むためには、経営層はの経営理念に対する向き合い方を振り返ってもよいのではないでしょうか。

管理人

全ては経営理念に通ずる

2016年09月09日 | 経営理念
社会福祉法人のクライアントのご支援をさせていただく際、初回訪問でのヒアリングで経営改善や人財育成、事業計画書策定など、さまざまな課題をクライアントの担当者(特に理事長や施設長などの経営層)が口にします。

しかし、その課題を整理していくと、結論的に、「法人の経営理念が十分に浸透していないがために生じている」ということがままあります。
第三者である我々が法人や施設の課題を聞き、客観的に整理することで、いわゆる新たな”気づき”を感じ取っていただくことにつながるわけです。

例えば、経営理念の実現のための職員の行動計画(アクションプラン)に該当するものが事業計画書であり、経営理念の実現のための人財育成の指針が人事考課制度といえます。
その2つに課題があるとすれば、まずは経営理念をどのように捉えており、事業計画書や人事考課制度にどのように反映されているかを振り返る必要があります。

そこからズレていれば、事業計画書の策定支援や人事考課制度の見直しなどのご支援をさせていただいたとしても、結果的に法人や施設が期待する結果(成果)にはつながりません

ただし、法人や施設の規模や職員の成長度、予算などもあり、いきなり全ての改善に着手することはできません。
まずは、職員一人ひとりが法人の経営理念を実現するための実践者であり、組織の一員であるという意識を持てるようなアクションを起こすことが必要です。
例えば、毎日の朝礼時に唱和をしたり、経営理念と日々の取り組みがどのように関連しているのかを研修を行うなどが挙げられますが、取り組んですぐに成果が出る”特効薬”的な取り組みはありません。
だからこそ、できるだけ早い段階でアクションを起こすことが重要です(最低でも3年はかかるでしょう)。

経営理念について”知らない”という状態から、周知→浸透→理解・納得→実践・実現のプロセスを、職層ごとに段階を経て進めていくことが重要です。
具体的な取り組み事例として、”毎朝の朝礼時の唱和”を挙げましたが、職員が経営理念を暗記してスラスラいえる状態を作ることが目的ではありません(歴史上の出来事を暗記するばかりで、その背景を理解していないことと同じ状態といえます)。

日々の業務や取り組みが経営理念とどのように結びついているかを意識しながら、職員一人ひとりが経営理念を実現するための実践者であるという自己覚知を促し、組織への帰属意識を醸成していくための共通目標としての経営理念が真に浸透した組織を作っていくことを目標に取り組んでいただきたいと思います。

管理人