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福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」を整理しましょう

2016年10月28日 | 人財育成
職員にキャリア形成を進める上で、法人にはキャリアパスや人事考課制度があります。

これらは経営理念を具現化するための人材育成を図るためのいわば指針であり、決して、給料を上げたり、下げたりするだけの制度ではありません。
人事考課シートなんて、等級ごとに求められる役割が明文化されていますから、乱暴な言い方をすると、答えの書いてある答案用紙通りに日々の業務や役割をこなせば、「法人の求めている人材像通りなので、評価します」として賞与などに反映されるでしょう。

職員のキャリア形成を後押しするためには、職員一人ひとりの「出来ること」、「やりたいこと」、「やるべきこと」をしっかりとキャリアパスや人事考課制度を活用しながら確認していくことが重要です。
いわば、利用者におけるアセスメントと同じプロセスです。

「できること:能力(Can)」
職員一人ひとりの出来ることです。
キャリア形成を進める上で、まずは出来ることを増やすということが大事です。
新人職員に重度要介護者の食事介助いきなりさせることはなく、段階を経ながら進めていきます。
まずは「できること」を最低限まっとうすることがキャリア形成のスタートラインです。

「やりたいこと:欲望(Want To Do)」
「できること」が増えれば、興味のあることやより深掘りしたいことが芽生えます。
職員の成長の伸びしろをいかに伸ばせていけるかは、指導育成に携わる職員にかかっています。
職員の成長は1人では進められません。
しっかりと指導育成に携わる職員がフォローしながら、着実に習熟度を確認しながら進めることが重要です。

また、習熟期間などを区切って指導育成を進めると思いますが、「できること」のレベルは職員によって異なります。
利用者も同じで、全く同じ対応やケアの方はいらっしゃいません。
ですので、「A君は3ヶ月で独り立ちできたのに、あなたはどうして出来ないの?」なんていう指導はNGです。
3ヶ月で出来なかっただけで、4ヶ月目には出来るようになるかもしれません。
能力や人間性だけで評価していては、人材育成はできません。
しっかりと指導育成に携わる職員がフォローしながら、大事なのは、成長したいという意思があるかないかをしっかりと把握した上で、判断すること必要があります(成長意欲がなければ何を言っても無駄です)。

「やるべきこと:使命(Must To Do)」
「できること」が増え、「やりたいこと」が芽生えれば、必然的に経験年数や役職・立場も高くなります。
ですので、それに見合う「やるべきこと」を課していくことで、組織の一員としての意識の醸成と、マネジメントについての学びを深めていくことが必要になります。

「やるべきこと」を明示するためにも、キャリアパスや期待人材像などを明文化しておくことで、職員へ説明しやすくなる(施設長の押し付けではなく、法人・施設で求める人材が明確になる)とともに、職員にとってもキャリア形成の見通しを持つことができるメリットがあります。

「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」を3つの円とすると、三角形をなすように、それぞれが重なり合うように構成されます。
「できること」の円が大きくなれば、「やりたいこと」の円が大きくなり、「やるべきこと」の円も大きくなる。
この循環を繰り返すことで、職員の育成が図られます。

人材不足の中、即戦力となるよう職員育成を急いでしまうことも少なくないと思います。
しかし、そのような場合の多くは、現場から不満の声が上がったり、新人職員がバーンアウトしてしまうでしょう。
まずは職員の「できること」を見極めながら、やりがいとしての「やりたいこと」や役割としての「やるべきこと」をしっかりと伝え、自覚させていくことが職員育成において重要です。

管理人

聞き手にとって「わかりやすい言葉」で伝えましょう

2016年10月22日 | 経営理念
仕事柄、経営層や現場職員の方向けの研修の講師をさせていただくことがあります。

手前味噌な話ですが、受講者の方から、「管理人さんの話はとてもわかりやすいですね」「もやもやしていたことがスッキリしました」と言った感想をいただくことが少なくありません。
私に比べ、立場も上、現場経験も長い方々からそのような感想をいただくことは、講師としては非常にありがたく、うまく伝えられてよかったなと思うのですが、先日、職場の後輩からも、「管理人さんの説明を聞いてわかりました」なんて言ってもらうことがありました。

改めて「なんでそう思ったの?」と尋ねてみたところ、「わかりやすい(平易な)言葉で、順序立てて話してくれるので、何がわからないかも整理できました」ということ。
後輩には、私自身、特に「わかりやすい(平易な)言葉」というのは、非常に気をつけている部分かなという話をしました。

よく、頭のいい人は、難しいことを「わかりやすい(平易な)言葉」で説明できる人と例えられることがあります(私が頭がいいとはいいません)。
ようするに、「わかりやすい(平易な)言葉」で伝えられる人は、それだけ自分自身がそのことに理解・納得し、自分自身の言葉で表現できる領域まで達している人といえます
経営理念の浸透段階の「理解・納得」、そして「実践・実現」と同じロジックです。

研修レジュメもそうです。
例えば、「経営理念」は重要な考え方だという事実情報を箇条書きでまとめるより、「経営理念」と「事業計画書」「人事制度(人財育成の仕組み)」の関係を三角形を見立てた図で示したほうが、受講者もそれぞれの関係性が視覚的に理解でき、なおかつ私自身も説明しやすくなります。

また、物事を突き詰めて自分自身が「理解・納得」し、自身の言葉で表現できる領域まで達することとは、結果的に物事を多様な視点で捉えることにもつながります。
例えば、人事考課で自己評価をするケースを想像してみてください。
今後のキャリア形成のために自身の成長を振り返る機会(自身の自己分析)と捉えるA職員と、自己評価をただの作業と位置づけ、オール「B」としてしまうB職員とでは、人事考課の自己評価の目的や意味・意義の捉え方で大きな差が生じています。

「わかりやすい(平易な)言葉」で伝えられるということは、物事の本質を理解し、原理原則を抑えながら、他者に説くことがということです。
経営層やリーダー層が部下や現場職員に物事を伝える際も、できるだけ伝える職員のレベル感などを意識しながら、「わかりやすい(平易な)言葉」にできるだけ置き換えながら、伝えてみてはどうでしょうか。
職員の反応やその後の行動にも大きな変化が現れることでしょう。

管理人

BSCを用いて、目標達成を目指す好循環な組織づくりを目指せ

2016年10月12日 | 経営理念
事業計画書を作成するポイントである、課題整理の仕方の一つとして、バランストスコアカード(以下、BSC)について取り上げたいと思います。

前回の記事からの再掲となりますが、BSCでは、4つの視点と2方向の流れが生まれます。
4つの視点とは、”財務の視点(経営に関する要素)”、”利用者の視点(利用者満足に関する要素)”、”業務プロセスの視点(サービス内容などに関する要素)”、”成長と学習の視点(人財育成に関する要素)”です。

これらの4つの視点間で2方向の関係性(流れ)が生じます。
”財務の視点”の目標を達成するために何をする

”利用者の視点”の目標を達成するために何をする

”業務プロセスの視点”の目標を達成するために何をする

”成長と学習の視点”の目標を達成するために何をする
という計画立案の流れができます。

そしてBSCのポイントの一つは、
”成長と学習の視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった

”業務プロセスの視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった

”利用者の視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった

”財務の視点”の目標を達成するための取り組み成果がどうなった
という評価(目標達成への検証)の流れができます。

計画立案と評価(目標達成への検証)を行い、経営理念の実現を通して、組織の成長を具現化するというマネジメントシステムです。

BSCのもう一つのポイントとして、目標の数値化が挙げられます。
BSCのS(スコア)です。
「取り組み成果がどうなったか」を測る指標として、数値化(定量的)された目標設定が必要になります。
ただし、福祉施設の経営においては、必ずしも数値化できる目標ばかりではありません。
「利用者の笑顔あふれるサービス提供」という重点目標があった場合、そのゴールは普遍的であり、定量化できないゴールといえます。

そのような場合は、①出来るだけ定量的な目標を設定できるような行動内容(アクションプラン)を設定する、または②定性的なあるべき姿(ありたい姿)を具体的に示す、の2つが考えられます。
①であれば、「利用者の笑顔あふれるサービス提供」を例えば利用者向けアンケート調査の満足度で測ったり、外部ケアマネジャーからの紹介件数などで測ることが出来ます。
②であれば、ユニットの利用者同士が楽しく会話を楽しめるような仲介役を務めるや日中活動にできるだけ多く参加してもらえるよう声かけを工夫するなどが挙げられるでしょう。

具体的な目標を設定する目的は、ゴールの共有化です。
目指すべきゴールを明確にすることで、組織の一体感の醸成にもつながります。
BSCを導入している法人様では、目標を数値化する習慣や、目標達成の意識が高く、目標達成に向けた建設的な意見が活発に出るという組織風土の好循環も効果として現れています。
BSCと戦略マップの相乗効果で、戦略的なツールとしての事業計画書の活用を実現しましょう。

管理人

戦略マップを用いて、行動内容を整理する

2016年10月07日 | 経営理念
そろそろ平成29年度の事業計画書の策定に向けて、少しずつ準備を始めた法人・事業所も出てきたのではないでしょうか。
皆さんの法人、事業所の事業計画書はどのような視点で作成されていますか。
経営理念の実現のため、「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営資源ごとの視点や「経営満足(CoS)・利用者満足(ES)・職員満足(CS)」のいわゆる三者満足の視点など、さまざまな視点で課題を整理し、それぞれに重点目標を掲げ、行動内容(アクションプラン)を詰めていっていることと思います。
SWOT分析など、法人・施設の強みや弱みから戦略的な視点も盛り込んで作成しているのではないでしょうか。

しかし、「一つ一つの行動内容(アクションプラン)になぜ取り組むのか?」ということがしっかりと現場職員レベルにまで落とし込むことができていますか。
事業計画書を戦略的なツールとするためには、経営理念を浸透させて、目的意識や意義をしっかり押さえる必要があります。
そのための整理の仕方として、「戦略マップ」という考え方をご紹介します。

本来であれば、「戦略マップ」は”バランストスコアカード(以下、BSC)”というマネジメントシステムの補完的なプロセスですが、事業計画書をより戦略的なツールとして活用していただきたいため、それぞれの行動内容(アクションプラン)同士をどのように関係(関連)させればよいかという概念的な内容を中心に解説したいと思います(BSCについては、後日詳しく取り上げたいと思います)。
「戦略マップ」で検索していただければ、イメージ図が出てくると思います。

BSCの基本的な考え方について少しだけ触れておきます。
BSCでは、4つの視点と2方向の流れが生まれます。
4つの視点とは、”財務の視点(経営に関する要素)”、”利用者の視点(利用者満足に関する要素)”、”業務プロセスの視点(サービス内容などに関する要素)”、”成長と学習の視点(人財育成に関する要素)”の4つです。

では、2方向の流れについて説明します。
上記4つの視点において、”財務の視点”の目標を達成するためには”利用者の視点”に関するどのような取組みをすればよいか。
また、”利用者の視点”の目標を達成するためには、”業務プロセスの視点”に関するどのような取組みをすればよいか、というように”財務の視点”→”利用者の視点”→”業務プロセスの視点”→”成長と学習の視点”という流れができます。
そして大事なのは、”成長と学習の視点”→”業務プロセスの視点”→”利用者の視点”→”財務の視点”という逆向きの矢印です。
その取組みを行って、次の視点の目標を達成できるものなのかどうかという評価(検証)を行い、目標を達成するというマネジメントシステムです。

「戦略マップ」は、BSCで設定されている”財務の視点”、”利用者の視点”、”業務プロセスの視点”、”成長と学習の視点”という4つの視点で課題を整理し、それぞれの視点ごとの取り組みがどのように関係(関連)しているかを線や矢印でつなぎ合わせ図式化したものです。
いわば戦略的な”ストーリー”といっても過言ではありません。

一つずつの行動内容(アクションプラン)では全体像がつかみにくいことがありますが、「戦略マップ」で整理すると一つ一つの行動内容(アクションプラン)により深い目的や意義がみえてきます。
それは職員へ行動内容(アクションプラン)を分かりやすく伝えることにもつながりますし、なにより経営層(理事長や施設長)、リーダー層の皆さんが職員に説明しやすくなるという効果も発揮することでしょう。

また、日々の業務とは別に事業計画書の行動内容(アクションプラン)を行うのではなく、できるだけ効率的に取り組みを進めることにもつながります。
例えば、

誤嚥性肺炎を予防するため歯科衛生士を招いた内部研修を実施する
(成長と学習の視点)

利用者の口腔状態に適した口腔ケア用品の充実や口腔ケア加算の算定を可能とする取り組みの促進
(業務プロセスの視点)

経口摂取の維持や栄養状態の改善
(利用者の視点)

誤嚥性肺炎による入院者の減少による空床の抑制、収入増
(財務の視点)

という流れに整理することができます。
内部研修をして口腔ケアについて学ぶことが、実は空床の抑制につながり、法人・施設の経営の安定につながると結び付けられる一般職員はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

バラバラになっている課題を「戦略マップ」を用いて見える化することで、計画の着実な実行に向けた行動内容(アクションプラン)を整理しましょう。

管理人

理念の”実践・実現”のために経営層やリーダー層が”調整弁”となれ

2016年10月03日 | 経営理念
経営理念の浸透段階の最後である”実践・実現”について述べていきたいと思います。
”実践・実現”を強力に推し進めるためには、これまでみてきた「周知→浸透→理解・納得」のプロセスを各階層の職員へしっかりと根付かせ、経営層(理事長や施設長)、主任クラスなどのリーダー層も含め、方向性を常に確認し、職員を叱咤激励し続けることです。
理念やビジョンの方向性が誤っていれば、経営層やリーダー層が正す機能を発揮することが必要です(”怒る”のではなく、”叱る”です)。
そして目標を達成したり、”あるべき姿(ありたい姿)”に少しでも近づいたら、しっかりとその気持ちを職員に伝えることです。
いわば、経営層やリーダー層がマネジメント機能を有する”調整弁”となることです。

法人や施設が向かうべき目的地への”地図”が事業計画書である」でも述べたように、事業計画書の運用や人事考課制度による人財育成(後日、紹介します)などとの相乗効果により、経営理念の実現を成し遂げます。
裏を返すと、事業計画書の運用や人財育成をしていかなければ、経営理念の実現は不可能と言っていっても過言ではありません。

これらの仕組みを用いて、経営理念の具体的な姿を可視化し、浸透を図っていくことができます。
経営理念の”実践・実現”の段階では、すでに職員は”考動力(考えて行動する力)”を有しており、法人・事業所の目指すべき理念やビジョンに向かって取り組みを進めています。
しかし、大切なのは経営層やリーダー層の役割です。

海軍大将であった山本五十六の有名な言葉があります。
「やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」

この「経営理念」のテーマの最初の記事で、「経営層が語っていますか?」と投げかけました。
経営層やリーダー層が率先して経営理念について語り、経営理念の実現に向けて具体的な行動を起し、職員に示していけば、必ずあなた(リーダー)のフォロワーとして、職員は後ろからついてきます。
そのように成功した法人をいくつも目の当たりにしてきました。
経営理念が浸透し、法人・事業所の目指すべきありたい姿(ありたい姿)を実現するかどうかは、実は経営層やリーダー層に当たる皆さんの働きかけにかかっているのです。

このブログでは、引き続き、社会福祉法人や福祉施設のマネジメントに関する内容を取り上げていきます。
何かのお役に立てれば幸いです。

管理人