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福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

利用者一人当たりサービス活動収益

2016年11月13日 | 経営戦略
”生産性”を示す経営指標として、「利用者一人当たりサービス活動収益」を取り上げます。
この経営指標は、サービス活動収益を年間利用者延べ人数で割って算出します(式で示すと、「サービス活動収益/年間利用者延べ人数」です)。
要するに、利用者一人当たりの単価ということになります。

ここで重要なのが、決算書などの財務データ以外に、”年間利用者延べ人数”という非財務データが必要になります。
日々の利用者管理から導き出される数値なので、数値の精度を高めるためには月次管理を徹底することが求められます。
従来型特養であれば12,000円台、ユニット型特養であれば14,000円前後が目安となります。
数字が極端に高かったり、低かったりする場合は、利用者延べ人数を再度確認しましょう。

また、目安と書いたのは、基本報酬に、さまざまな加算を上乗せした介護報酬合計になるので、加算を取りこぼさずしっかり算定していれば、一人当たりの単価は高くなりますし、日常生活継続支援加算などの算定必須加算を取りこぼしている場合は、その分金額が低くなります。
同じ業務をしても、加算に有無で全然単価が変わって来る場合もあります。
単価を上げているということと、レベルの高いサービスを提供しているということが、大変な思いをして加算を取っている理由でもあります。
職員にはしっかりと労をねぎらうとともに、質の高いサービスを提供しているという事実を伝えていきましょう。

管理人

”適正”な自己評価には、自身を測る指標の浸透が必要

2016年11月11日 | 人財育成
人事考課制度の一環として、自己評価や育成面談(フィードバック面接)を行っている法人・事業所もあるのではないでしょうか。

以前の記事で、『今後のキャリア形成のために自身の成長を振り返る機会(自身の自己分析)と捉えるA職員と、自己評価をただの作業と位置づけ、オール「B」としてしまうB職員とでは、人事考課の自己評価の目的や意味・意義の捉え方で大きな差が生じています。』と書きました。
最近は、考課者に対する研修の他に、被考課者に対する研修、要するに一般職員に対する自己評価の重要性について話をする機会も増えてきました。
人事考課制度の”How to”的な研修ではなく、自身のキャリア形成を見据えた自己評価(自己分析)の重要性についての話をしています。

そのなかで、職員一人ひとりが自身の取り組みを”適正”に評価できるよう指導育成することが重要です、と話しています。
良い取り組みは自信を持って”良い”と評価し、悪い取り組みはきちんと”悪い”と評価することです。
出来ているようで、実は出来ていないので、”過大評価(オール「A」)”や”過小評価(オール「C」)”を引き起こし、結果的に無難なオール「B」となってしまいます。

では、どうすれば”適正”な評価が出来るのでしょうか。
その解決策の一つに、しっかりと職員に求められる役割(等級や経験年数などを踏まえて)を伝えることが重要です。
しっかりと職員に求められる役割を伝えることは、出来て当たり前の水準、レベルの高い水準など、その職員を評価する指標(ものさし)を明文化し、育成面談などでしっかりと伝えていくことです。
キャリアパスや期待人材像などに明文化されているのであれば、それに基づいて伝えることが必要です。
職員にとって、「出来て当たり前」と思っていたことが、実は上位等級で求められる役割であったということはままありますし、その逆もまた然りです。
「こういうことは出来て当たり前ですよね」といった声が職員から上がってくれば、職員を評価する指標が現場に浸透してきた証といえます。
職員が自身の取り組みを指標に基づいて評価する習慣を身につけることによって、部下育成を行う上での指標も自ずと身につきます。

また、部下育成を行う上で、成功体験や失敗体験を共有することも大切です。
新人職員にとっては自信を持って業務を遂行してもらうために、中堅職員には失敗を恐れず、挑戦してもらいたいという思いを込めて、特に幹部管理職やリーダー層の方々に部下へ語ってもらいたいと思っています。
成功体験を通して、どういうことを感じたか。今にどう影響しているか。
失敗体験を通してて、どういうことを学んだか。仲間にどう助けられたか。
経験年数の長い方から話をしてもらうことで、「良いことは良い」「悪いことは悪い」と職員が認識しやすくなります。
職員一人ひとりのキャリア形成を後押しできるように自身が振り返られる指標をしっかりと伝え、成長を見守っていきましょう。

管理人

稼働率について

2016年11月05日 | 経営戦略
前回の”人件費率”と合わせてみていただきたい指標として、”稼働率(利用率)”を取り上げます。
もっとも現場職員の方にも馴染み深い経営指標のひとつが、この”稼働率”といっても過言ではないと思います。

”稼働率”の算出式は、「年間利用者延べ人数/定員数/営業日数」となります。
仮に、定員100名の特養が、365日、空床なく稼働できれば、年間利用者延べ人数は36,500名となります。
36,500名/100名/365日=1(100%) となります。
ですので、稼働率を高めるためには、「年間利用者延べ人数/定員数」で導き出される”1日あたり利用者数”をいかに確保できるかということが重要です。

施設では、長期入院者の居室確保や次入所される方待ち(ベッドコントロール)など、”1日あたり利用者数”が減ってしまう要因がいくつもあります。
また、特に特養においては、以前のようにショートステイで空床を埋めるということが難しい状況の中、いかに本入所の稼働率を下げないかが施設経営において重点要素となっています。

まずは入院させないようなサービス提供に力を注いでみてはいかがでしょうか。
入院者の多くは、転倒・骨折や誤嚥性肺炎が主な原因です。
ある施設では、誤嚥性肺炎予防のため、口腔ケアに重点的に取り組み、入院者を激減させた好事例もあります。
バランストスコアカード(BSC)の時に戦略マップとして取り上げましたが、なぜ口腔ケアに重点的に取り組むか、それが安定経営につながるという目的を職員全体で共有し、同じ方向性を向いて取り組むことが大切です。

特に”稼働率”という経営指標は、現場職員の方にも馴染みのある経営指標です。
だからこそ、経営感覚を持ってもらうために活用しない手はありません。
また、”稼働率”というと拒否反応を起こす職員もいることから、もっと馴染みのある”空床率”という呼び方に変えて、意識づけを図ったという事例もありました。
うまく経営指標を活用して、経営感覚を根付かせてみましょう。

管理人

人件費率について

2016年11月02日 | 経営戦略
”経営指標”といわれると、「難しい」「わからない」という拒否反応を起こす方も少なくないのではないでしょうか。
かくいう私もその一人でした。
ただ、「難しい」「わからない」と思うのは、知ってるか、知らないかの違いだけです。
「経営指標」というカテゴリを追加し、経営指標のことを知ってもらい、その指標の意味すること、その指標をもとに経営改善する上で重要な視点(捉え方)について取り上げていこうと思います。

これらの指標の意味を理解することで、例えばバランストスコアカード(BSC)で事業計画書を作成している法人であれば、具体的にどのような行動計画を立てればよいかのヒントにしていただきたいと思います。

今回は、”人件費率”について取り上げます。
”人件費率”とは、収益計に占める”人件費”の割合を指します。
算出式は、「人件費」と同じ性格の科目として「福利厚生費」を加えて、『(人件費+福利厚生費)/サービス活動収益計』となります。

よく「人件費率が高いので、どうすればよいか」といったご相談をいただきます。
”人件費率”を下げるためには、方法は2つあります。
まず、「人件費」を下げるという方法です。
人件費を構成する要素は、「職員の人数×賃金の水準」です。
職員の人数が過剰なのか(”職員一人当たりサービス活動収益”という経営指標をみてみましょう)、または賃金水準が地域相場に比べて高すぎるか(”職員一人当たり給与費”という経営指標をみてみましょう)、といった経営課題を抱えている可能性があります(詳しくは後日取り上げます)。

では、”人件費率”を下げるために、過剰な職員を辞めさせる、また賃金水準を下げるという経営判断は正しいでしょうか?
その経営判断は誤っている可能性が高いといえます。
人材採用、定着がこれほどまでに困難な状況のなか、上記のような経営判断はいわば最終手段です。

”人件費率”は収益に占める割合です。
”人件費率”を下げるもう一つの方法は、収益を増やすという方法です。
例えば、”利用率”にまだ伸びしろはありませんか?算定できる加算を取りこぼしていませんか?
収益の合計額が増えれば、「人件費」の占める割合が小さくなり、結果的に”人件費率”は下がるという数字のマジックが起こります。
”利用率”や加算による”利用者一人当たりサービス活動収益”が改善されれば、結果的に増益につながります。
この収益に占める割合で算出される”事務費率”や”事業費率”、”委託費率”、”減価償却費率”などは、収益の増減により大きく数値が変化しますので、経年で推移を把握さえている法人・事業所であれば、収益の合計額についても確認しておく必要があるでしょう。

収益の約60〜65%を「人件費」で占める福祉事業においては、経営状況を左右する重要な経営指標といえます。
ぜひ、誤った経営判断をなさらないよう、”利用率”などの他の経営指標と合わせて管理してください。

管理人