はみ出し行政書士日記

破天荒(?)な行政書士が、遭遇する様々な事件に挑戦する日々の実態+α

公証役場での出来事

2006年07月26日 00時31分03秒 | 業界裏情報?
今日仕事で都内某公証役場を訪問した。
待合室でしばし待つ間に、ちょっと面白い出来事が発生。

公証役場に近所の不動産屋から電話がかかってきたようだった。
受付の女性が電話に出たのだが、内容は「不動産の売却をしたいのだが権利書(登記済証が法律上の正しい名称)を紛失したので、本人であることを公証して欲しい」というものだった。

受付では当然分からず、公証人のもとへ走る事務員。
ところが、公証人もそのようなことをして良いものかどうか分からず、右往左往。
結局、「うちではそのような事務はお取扱していないのです。」と。

かつて司法書士事務所に勤務していたこともある私は、どうしたらよいかを伝えたくて、咽まで言葉がでかかった。

でも、やっぱりやめた。
いつ何が起こるかわからない世の中。
まずは自分が課された課題をクリアすることを第一とせよ!だ。

一般に、公証人は裁判官OBが務めるのだが(とういか、そうで無い人を見たことが無い)、法務局でのこまごまとした手続実務にはさすがに精通していないのだろう。

案外基本的なことなのだが、普段扱っていないこととなると、誰もが同じように戸惑うものなのだろう。
法律のプロを自他共に認める公証人であっても、このようなことは起きるのだ。

不思議な気分だった。

※このような場合、保証書(当該不動産を管轄する法務局管内の不動産の登記をしている人に「この人で間違いない」と書いてもらう書類)を2通(つまり2人から書いてもらう)作成して、権利書の代わりに添付するというのが一般的な解決方法だと思うのです。
でも、司法書士事務所を退職してからかなりの時間が経つので、法令改正があったかもしれません。
現状と違う場合は、なにとぞご容赦を。

ウソのようなホントの話

2006年07月14日 21時56分44秒 | 衝撃の事件
というのは、世の中たくさんあるけれど、我々法律の世界に棲む人間は、ナニワ金融道みたいな世界に遭遇することは珍しくない。
大変な事態が起きた。

普段お世話になっている外国会社の日本支店。
業績悪化で規模縮小が決定されたのだが、日本で代表をしている人が会社の代表印(つまり実印)と通帳を持って逃げてしまった。

本国から役員が来て、今後のための打合せをしていたのだが、翌日になって行方不明に。
本国を含めてアメリカやヨーロッパにも支店、子会社がある会社だけに、日本での失態が公になれば、会社の名前に傷がつくのは明らかで、早く事態を収集させなければいけない。

日本の代表者が行方不明のままなら、裁判所からの停止命令が無ければ、その後の業務に多大な影響がある。

幸い、事が大きくなる前に何とかなったのだが、そのときの損害が数千万円となり、それが響いて大赤字。
思わぬところに落とし穴があった事件だった。

人の心

2006年07月03日 16時50分21秒 | つぶやき
学生の頃、法律の授業を受け(私は阿呆学部御世辞学科出身なので、もともとの専門は行政学)、法律は筋を通した者勝ちだということを知ったのだが、実はそれだけではないことをこの世界に入って何度と無く見てきた。

その典型例は、「人の心を法律が縛ることは出来ない」ということ。

偶然にも、数年前、結婚時の手続についてアレコレとお手伝いをした女性から「離婚したいのだけれども、どうしたらよいだろうか?」という相談を受けていた。

聞けば、嫁姑の争いが絶えず、ダンナとの関係も冷め切って、結婚当初のような気持ちはもう戻ることは無いという。男女の関係は難しい。つい数年前熱々カップルだったのが、今では冷え切って「キモチワルイ。恐ろしい。鳥肌が立つ。」とか。

法律では、「離婚する、しない」で調停や裁判をすることは可能だが、たとえそれで婚姻継続という結論が出たところで、人の心は戻ってこない。
一度離れた人の心を戻すのが如何に難しいのかを思い知らされる。

今回の依頼は、そのことをダンナに思い知らせるという嫌な役割なのだが、こういったことも仕事のうちだと思ってしまえば、なんとも思わずに出来てしまうところがまた恐ろしいところでもある。

で、やったことというと、妻の代理人として、「あんたには愛想尽きた。結婚していてもお互いにいいこと無いから、とっとと別れましょ。」という手紙を送ること。

でも、我々が仕事として受ける以上、相手に威圧的かつ合法的でなければいけない。
(文面については明記できないことご理解ください。)

理屈上は、結婚も離婚も両性の合意によって成立するのが原則であるから、ダンナが納得しなければ、離婚は出来ない。もし強制的にしようというのであれば、裁判に出るしかないのだが、相手もそれを拒否する反訴をしてきたら全面的に争うことになってしまう。仮に婚姻継続という結論を得たところで、妻の愛を取り戻すことは難しい。そのギャップこそが、法律の無力さを痛感させる部分でもある。

さて、結果はどうなることやら。