はみ出し行政書士日記

破天荒(?)な行政書士が、遭遇する様々な事件に挑戦する日々の実態+α

嫡出推定規定に関する議論に対する私なりの見解

2007年05月02日 20時45分53秒 | つぶやき
ここ1,2ヶ月、民法の嫡出推定を巡る議論がメディアを賑せている。
結果、離婚から300日以内に出生しても、医師の診断書などがあれば、嫡出推定を否定してよいという通達を法務省が出したそうだ。

しかし、私はこの処置に対して大きな不安を感じる。
以前から300日の嫡出推定については、私も疑問を感じていた。
6ヶ月の待婚期間の定めも合理的根拠を欠く。
何しろ、どちらも医学的に親子関係を確定させるだけの技術が保障されているのだ。
今更、明治時代の規定を尊重する意味を見出すのは困難といわざるを得ない。

国際結婚や国際離婚の相談を受ける立場からすると、こういう規定が依然として残る日本の後進性を痛感させられることが度々ある。

さて、本題に戻って何が問題なのか、それは「手続」という問題。

元々、法律はピラミッド構造になっていて、上位規定に反した規定を作ることは許されない。全ての法律に優先するのが憲法であり、その憲法に基いて民法などの法律が作られる。仮にその法律に違反する規定を作る場合は特例法という法律を新たに作ることで部分的に一般法を否定する手法をとるのが正しい手続だ。その各法律を実施するに当たり、細かい手続などを定めるのが政令であり省令であり、規則、通達、といった下位規定になる。

ところが、今回の法務省の通達による措置は、法律そのものの存在を無視しているとしか言いようがない。民法の嫡出推定の規定を否定することを定めた法律はどこにもない。唯一、裁判所の決定や判決のみが嫡出推定を否定することを許されているに過ぎない。
にもかかわらず、一行政庁に過ぎない法務省がこんな勝手なルールを作ることが許されて良いのだろうか。

コレでは法治国家でも何でもなく、行政庁の横暴が幾らでも許されてしまう事態になるのではないかと不安を抱かせる。

実は、同じようなことは過去にもあった。

比較的記憶に新しい「電気用品安全法」を巡る騒動だ。
別名「PSE法」と呼ばれた法律だが、法律の周知が甘く直前になって騒動がおきた中古電気製品の販売を巡り、本来であればきちんと法令に則って検査を受けて安全性を確認した上で、PSEのマークを付して販売しなければいけなかったにもかかわらず、経済産業省は「リース」などという苦肉の策を持ち出して実質的な販売を許してしまったのだ。

ココまで来ると、法律の意味が無いのではないかと首を傾げたくなる。
そういう事態を招くようにしか行政庁をリードできない閣僚や国会の責任も大きいと思うのは、私だけだろうか。

とにかく、今回の「通達」による法律の捻じ曲げは許されてはならないように思う。
早急な法改正による解決を期待したい。

<参考>
(嫡出の推定)
第七百七十二条  妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

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