すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「雪の降る光景」第1章Ⅰ~6

2006年02月08日 | 小説「雪の降る光景」
 ボルマンは、ちらっと窓の外を見た。そして、こう言った。
「・・・で、今日は何だね?」
「あぁ、実は、ワルシャワゲットーのことなんだが。」
「ゲットーはなるべく早く壊すつもりだが。」
「中にいるユダヤ人は?」
「昨年は40万人いたユダヤ人が、今は20万弱に減った。最終的には、ゲットーを壊した時点で残りの者を逮捕し、収容所へ送る。」
「その予定の日時と人数は?」
「いつになるかは、わからない。が、我々はここから、約3万の輸送しか見積もっていない。だから、ゲットー内が3万になるのを待つか、もしくは、・・・万が一、何か問題が起こって、それ以前にゲットーを破壊することになれば、ゲットー内で彼らを処理しても良いことにしている。・・・と、まぁ、こんなところだ。」
「わかった。」
「何か、不満でも?」
「いや、ただ、実験に間に合わずに死んでいくのが惜しいのだ。どうせ、死んで皮を剥ぎ取られ、油を搾り取られるのなら、黙って死ぬよりも、実験の成果を残して死んでもらいたいものだよ。」
「材料ごとき、そんなにけちって使わなくても良いさ。足りなくなったら、またどこかから連れて来ればいいんだ。S.S.ならユダヤ人どころか、カトリック教徒、チェコスロバキア人、ポーランド人、ロシア人、・・・とにかく被支配人種であれば、なんでもありだからな。」
「ヒムラーに頼めば、どこかの国の大統領だって国王だって調達してくれるだろうな。」
「そういうことだ。」
 彼はそう言うと、グラスにブランデーを注ぎ、1つを私に手渡し、もう1つを、自分の目の高さで窓から射し込んでいる日の光に透かして、にっこりと笑った。


(つづく)
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