偽史倭人伝 ~ Carnea Historia

march madness の次が April Foolなんて小粋ぢゃないか。

「ご存じ」みたいに進めてんぢゃねーよ~ベストセラーから学ぶ英語と名言と~「チェリー」ニコ・ウォーカー その5+「拳銃使いの娘」~

2020年03月29日 22時40分41秒 | ◎海外スポーツ&ニュース見出しdeポン
ピザ屋でバイトをはじめた主人公が老店員に生地廻しを習う場面。

 I saw him and I thought, Oh, here comes a nice old man. He said, “Come on. Let me see you do it.” So I tried, but the dough didn't get much spin on it, and it came down in roughly the same shape as it had begun. There'd been an all-encompassing sadness in its trajectory. I didn't have the magic. The old guy went nuts on me. “WHAT THE FUCK WAS THAT, YOU COCKSUCKER?YOU'RE ALL WRONG, COCKSUCKER. DO IT AGAIN. THIS TIME, DO IT BETTER.” 
(俺は爺さんを見て、ああくそ、来た来た、優しい爺さまがと思った。
 爺さんが、「おい。一丁やってみろ」と言った。
 俺は一丁やってみた。が、生地はあんまり何度もまわらず、だいたい元と同じ大きさのままで、へなっと落ちてきた。生地の描いた軌跡はめっちや哀愁に満ちていた。俺には魔法の力がなかった。爺さんはどなった。
「何やってんだバカ野郎。全然だめだ、このチンポ吸い。もう一遍やってみろ。こんどはちやんとやれよ」 

なんで「ああくそ」なんだろう?
badがgoodみたいにniceもshitってことなんだろうか?
単純に優しそうだと思ったのにぃもうっ…という流れでいいと思うのだが。
で、なぜここをとりあげたかというと「翻訳モノ」の伝統芸ともいえる独特の世界観について考察してみようと思った。
 最近では3時のヒロインの持ち芸だったりもするが、映画の吹き替えというのは音だけ聞いていても、それとすぐにわかる独特の文体がある。
 翻訳モノの独特の文体というのは子供のころに読んだ児童書の中にもすで散見された。
「つまりこういうことだね~」みたいな英語的な語順とか「なんてこった」みたいに確かに日本語ではあるんだが日常では決して耳にしたことのない表現の数々。
「チンポ吸い」なんてコトバねーよ(笑)。「ケツの穴野郎」とか「おまんこ野郎」なんてのもついぞや耳にしたことはないが、なぜか活字だと何度もある。

 大学受験のころに英語雑学の読み物などでようやく「マザーファッカー」などの罵倒ワードの解説を目にするが、翻訳モノの小説にはそうしたワードの説明はほぼない。
 よくバラエティ番組で「ご存じ」みたいなノリでハナシすすめてんぢゃねーよと突っ込まれてたりするが、翻訳モノというのは終始そのノリで進むカンジ。

The Denver Mustangs Cheerleaders were on display at the DFAC for an hour, talking to the soldiers, taking pictures with the soldiers.
それはデンヴァー・ムスタングのチアリーダー・グループだった。彼らは食堂で一時間パフオーマンスをし、兵隊どもと話し、一緒に写真を撮った。 

え?
え?
デンヴァー・ムスタングって何?
マイナーリーグの野球チームか?
…ググったら独立リーグ系アイスホッケーチームだった

「ご存じ」系だと
「拳銃使いの娘(A Lesson in Violence by Harper Jordan)」
というこれまた海外小説の一節

The bedroom where Nate found them had taped-shut windows and a white nois machine, signs of a day sleeper.
(ネイトかふたりを見つけた寝室は、窓かぴっちりと閉めてあり、ホワイトノイズ・マシンが置いてあった。昼間に寝る人間の印。

For a long time there wasn’t anything between them but the shower’s white noise and thick air.
しばらくのあいだ、ふたりのあいだにあるものといえば、シャワーのホワイトノイズと、どろどろの重たい空気だけだった。

いやいやいや
ホワイトノイズマシンって何?
自分はたまたまシンセサイザー弾きだったので
ギリ、ホワイトノイズが何かはわかってる
でもカタギな人々はホワイトノイズすらも「?」ぢゃね?

今年の1月22日放送のTBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」
ゲストは医師で睡眠コンサルタントの森田麻里子さん
お題は「安眠のための“ホワイトノイズ”が話題らしい」
だった。
あのスーさんでさえもホワイトノイズ知らなかったぞ。

さて
「チェリー」にハナシを戻す
今作、一番のご存じ強要ネタはこれ
.
 I went in saying, "ATTICA. ATTICA. ATTICA ATTICA."
(店内に入りながら、俺は言った。「アッティカ。アッティカ。アッティカ・アッティカ)

これ、いまどきの若者はわからんよぉ
注釈は読書のリズムを崩すから
イマドキは各自でググれよってことか?
元ネタは銀行強盗ムービーの歴史に燦然と輝く
「狼たちの午後」の中で
アル・パチーノが連呼するセリフ
素通りはないっスよ。
とりあえず「拳銃使いの娘(A Lesson in Violence by Harper Jordan)」も映画化決定らしいので
ポリーを演じる子役は誰なのかしらんが
きっとスターになると予言しておこう。
.

【ベストセラーから学ぶ英語と名言と】
「チェリー」その6


『チェリー』
ニコ・ウォーカー 黒原敏行
定価:本体1,950円+税
発売日:2020年02月20日
ジャンル:エンタメ・ミステリ
文藝春秋


Cherry
by Nico Walker
Hardcover, 336 pages
Published February 28th 2019 by Jonathan Cape


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